旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

宇宙キロを探る! ――詳細完全不明の単位――

 

 

 宇宙キロはヤマト世界独自の単位である。正確には松本作品の基本度量衡だ。しかし、全く明確なキロ換算数値が提示されていない。

 作品ごとに微妙に差がある為、考察しても、算出しても意味がない気がするが、それでも頑張ってみたい。それでこそ考察協会だ!

 

 

 

 土星決戦から考える。

 土星決戦はヤマト史上最も熱い戦いである。しかも地球艦隊とガトランティス艦隊の双方からサンプルを抽出できる極めて興味深い戦闘だ。

 これを参考に算出してみたい。

 

 

 タイタンは土星から平均122万1865キロ離れた地点を公転している。直径5149.86キロ、岩石の中心部を分厚い氷の層が覆い、更に大気層がその表面を覆う大型の衛星である。大気成分の主なものは窒素であり、次いでメタンが2パー程度。15日をかけて土星の周りをまわる、ひょっとしたら生命があるのかもしれないと噂される興味深い衛星だ。
 一方、ヒペリオンは土星から平均148万1100キロ離れた地点を公転している。いびつな形をしており、長手では360キロ・短手では200キロと差が大きい。表面に大気はなく、密度もかなり低い為、氷が主成分であるかあるいは岩塊の緩やかな集合体=ラブルパイル天体である可能性が指摘される。形状からカオス的自転と呼ばれる不規則な回転を行っている。公転に掛る日数は21日の、度の衛星を基準とするかで比較的大型とも比較的小型ともいえる衛星だ。

 両者の距離は実はヒペリオンがいびつな軌道を描いているため、タイタンに極めて近づいたりあるいは離れたりと3:4 の平均運動共鳴の影響でふらついた軌道を描く。
 面倒なので平均値で両者の軌道を測ると、25万9235キロの距離がある。月と地球との距離の75パーセント程度だ。

 

 戦闘経過
 まず、ヒペリオンは土星本星から向かってタイタンの右側に位置する地点でヒペリオン艦隊はバルゼー艦隊に会敵した。つまり、バルゼー艦隊の左舷側から接近して攻撃を開始。

 バルゼー艦隊がヒペリオン艦隊を観測したのは12万6000宇宙キロ地点である。敵の不意を衝く作戦の為、バルゼー艦隊がヒペリオン軌道を通過した直後に出撃した


 第二に、主力艦隊はヒペリオン艦隊がバルゼー艦隊の隊列を乱した後に急襲する作戦――ジュットランド沖海戦の変形っぽい雰囲気ですね――であると想像できるが、実際はうまくいかなかった。

 これを受けて、土方総司令はバルゼー艦隊が3万7000宇宙キロ(多分、37万宇宙キロから30万7000宇宙キロの間違い)に到達した時点で揮下の艦隊を出撃させた。

 一方、バルゼー総司令は23万8000宇宙キロで火炎直撃砲の準備を開始アンドロメダ艦橋ではあと11万宇宙キロでバルゼー艦隊が拡散波動砲射程圏内へ侵入と(一部意訳)報告があり、メダル―ザ艦橋では22万宇宙キロで発射準備完了し、逐次発射。
 


 これらの数値を推定に使いたい。

 


 一つ、ヒペリオンからヒペリオン艦隊の会敵地点までの距離が12万6000宇宙キロ
 二つ、タイタン近傍から37万から30万宇宙キロアンドロメダが観測したバルゼー艦隊の位置。両者を合計すると約50万から43万宇宙キロになる。
 三つ、ヒペリオンとタイタンの距離は平均で25万9235キロ


 やばい……また変な数値になってる。

 つまり、全ての戦闘が直線コースで行われた場合は1宇宙キロは約0.5キロとなる。

 わざわざ宇宙キロを設定する意味……と疑問になって来たので、もう少し長い宇宙キロを算出できないか探ってみる。

 

 

 

 思いついた。 

 

 


 もしも、両艦隊の進路が直進ではなく曲線ないし斜線を描いたものであるならば、ひょっとしてもう幾らか大きな数値を見る事が出来るのではないだろうか。だって実際の艦隊運動は直進よりも自由な運動を行うのだから。

 

 

 まず、ヒペリオン艦隊とシリウス方面軍第二艦隊(バルゼー艦隊)の会敵地点。

 ここは、第二艦隊が観測した距離を基準にしている。衛星ヒペリオンから斜めの位置でヒペリオン艦隊は進軍しているわけで、タイタンへの直線コース上に占める割合は12万6000よりも短くなるだろう。

 3平方の定理――昔習ったんだから文系でもこれくらい紙の上で計算できます。といいたいところですが、割と高性能な電卓があるので力借ります――用いて計算すると、まず2辺が等しい場合は8万9000、3:1の割合であったばあいは10万2880:7万2750となる。


 次に、土方司令がバルゼー総司令率いるシリウス方面軍第一艦隊の捕捉地点。

 こちらも、タイタン近傍空間に展開して、自身=アンドロメダを基準として前方を計測した場合は、タイタンを基準とした場合は斜めの動線と仮定できる。これの仮定を元に単純計算でタイタンからの平面直角でのシリウス方面軍第一艦隊の距離を算出すると、2辺が等しい場合は21万7000から26万1630、3:1の場合は25万:17万7250から30万2100:21万3620となる。

 

 

 合算しよう。

 37万がセリフの修正の選択しとして考えられるとか前に述べたが、どうも仮定として長すぎるきらいがある為、30万7000を採用する。面目ない。


 2辺が等しい場合の直線距離は30万6000宇宙キロ。3:1の場合は長手で計算すると25万2880宇宙キロ、短手で計算すると25万宇宙キロとなる。

 

 

 戦闘経過の修正。

 まず、バルゼー総司令率いるシリウス方面軍はタイタンめがけて直進する。方面軍がヒペリオン軌道を通過した時点で、側面をつくためヒペリオン艦隊が軌道から平面上斜め左方向に進む。シリウス方面軍は第二艦隊を分離して迎撃させ、第一艦隊は依然として直進する。
 タイタンの主力艦隊はヒペリオン艦隊壊滅を受けて、遠距離攻撃の為に拡散波動砲攻撃を画策。バルゼー総司令はシリーズ初期の時点で、すでにその威力と効果範囲をおおむね知っているため、火炎直撃砲によりアウトレンジ戦法を敢行。仮に情報が間違っていた場合に備えて被害範囲を最小限にする為――と空想して――細長い突撃隊形を展開する。対する土方総司令も、効果範囲を最大にするため縦陣を展開したバルゼー艦隊に対して斜めに陣取り、先頭から右舷側中央部までの範囲を撃滅したのちに砲撃戦ないし2度目の拡散波動砲攻撃を行う――としたら格好いと思いません?――様に艦隊運動を行った。
 だとすれば、最も短い値を採用した場合、ヒペリオン―タイタン間の25万9235キロの中に十分納まるのではないのだろうか。また、この25万キロ強という距離は、平均値である。狭い距離はこれよりずっと短いし、広い距離はこれよりずっと長い。

 

 

 つまるところ、宇宙キロは約1キロと同等。

 


 宇宙キロとキロは明確なのか不明確なのかは微妙だが、両方劇中で使われている。

 このままでは、わざわざ分ける必要が無くなってしまう……。1宇宙キロが1キロから0.5キロでは、宇宙空間においてわざわざ距離を設定する必要性に欠けるといわれても仕方がない。

 だが、ここであきらめては長々と書き綴った意味はない。何とかウルトラCを決めようと、がんばってみる。

 

 

 

 地上では重力だの圧倒的な空気の抵抗だので運動の第一法則は途中で破綻してしまう。だが、宇宙空間ではおおむねの抵抗がない為、運動の第一法則が成立してしまう。

 また、大小さまざまな大きさのスペースデブリが高速であったりゆっくりであったりが飛び交っている――。


 漁船が時々大型船舶に衝突して悲劇的な事故を起こす時がある。ほどんど同じぐらいの大きさの船同士がぶつかり合う事がある。あるいは、全く大きさの違う船同士がぶち当たって恐ろしい結果を晒すことがある。
 車を運転する感覚であれば、確かに内輪差でやらかす事故は小さいものならば結構あるだろうが、さすがにお互いが時速4、50キロ程度で横っ腹に突っ込むというのは多い話ではない。多分、何で船はそんな凡ミスが起きるのだろうか、と思う人も多いかもしれない。車も船も相対運動というものを頭に入れておけば回避できるはずなのだが……ただ、船の場合は全然様子が違うのである。

 船は常に俯瞰ではなく水平面を見て――車も同じだが――運航する。船の場合は大海原な。ここに落とし穴がある。基準のとなる建物なりがない為、感覚としては相対運動が見えてこないのだ。
 例えば交差点で正面のビルを基準にする。すると自身がどれだけ交差点に近づいているのかが立体的にわかるし、速度も視覚的にわかる。侵入してくる車に対しても、ビルの手前側なのか向こう側なのかビルに入っていくのかで、進路が交差する位置が視覚的に想像できる。
 が、大海原にはそんな便利な標識があるとは限らない。島、も瀬戸内海のような多島海であれば似たような風景があるから初見殺しだし、大洋ではそもそも何もない。航海する上で燃料は命そのものである為、全力で節約したいために、コースはできれば直線が望ましい。ぐるぐる回ったり曲がったりはしない。大洋においてはそんな船が頻繁に交差するようなことはないが、港周辺の場合は今度は進入コースが明確化されており、しかもかなりタイトなスケジュールである。何が言いたいかといえば、海には“道路”だってあるし、“信号待ち”だってあるという事。

 仮に2隻が接近したとして、危険であると判断しなければ船は当然直進し続ける。特に優先航路を進む側は当然の権利である。で、直進し続ける船は相手側には進む方向側が変わらず距離が近づく、船がそのままこちらに横滑りしているように見えるのだ。うっかり視界が悪ければ、どちらにかじを切っているのかがわからない可能性もある。うっかりして両方が回避しようとしてさらに鉢合わせコースを進んでしまう可能性もある。
 だから、優先順位というものがあり下位のものの方に回避義務がある。飛行機も似たようなもので、回避に関して言えば機械の信号が優先で、管制官の指示は優先するべきものではない。故に、優先される側は下手に回避したら余計に事故の確率を上げてしまう。で、相手を信じて優先側は直進しなければならないのだが――回避すべき側が回避しなかった場合に悲惨な事故が起きてしまう。
 


 宇宙でも似たような事が起こらないとは限らない。仮に、宇宙で起これば諸突した破片が即デブリとなって面倒な事になる。戦闘でもないのに大破して、挙句危険なごみを増やしてしまっては話にならん。
 だったら、端から短い単位で周辺を測定、レーダーの波長も短くしてより細かい精度で周辺を把握した方が良いかもしれない。

 

 だから、1宇宙キロが1キロから0.5キロの間の数値であっても不思議はない。特別に設定する必要性がある事に変わりはないのだから。

 

 

 


 一方、別の数値を取り出すと――全く別の結果が出てしまう。
 ヤマト2の第一話。ここで白色彗星の位置は地球から約50万光年、この距離をガトランティス時間で6660時間で走破すると説明があった。後に判明するが、この時点での白色彗星の速度は100万宇宙キロ毎時ほどであったらしい。

 

 白色彗星から算出する
 白色彗星は つまり、1ガトランティス時間当たり75光年強を進むという事になる。1光年は約9.5兆キロであるから、7.125×10の14乗キロ(712兆5000億キロ)。故に1宇宙キロは7億1250万キロと言う計算が成り立つ

 第15話ではテレザートより3000光年、地球から23000光年の位置を120万宇宙キロで航行中だった。これが46日で地球に到達すると観測されている。46日は1104時間だから、つまり13億2480万宇宙キロの行程と言えるだろう。故に計算すべきは――

 2.185×10の17乗キロ(21京8500兆キロ)÷13億2480万=1億6493万555キロ

 1宇宙キロが約1億7000万キロなければ計算が合わない

 

 

 前述とは、大いに異なる数値だ……

 

 

 こじつける。
 これを合理的に説明するならば……まず、地球とガトランティス、あるいはテレザートとガミラス各国で1宇宙キロ当たりの距離が結構差があるという事。これで、何とか説明が付けられるはずだ。

 

  地球の場合、 1宇宙キロの値が16493555キロとガウスの引力定数=0.017 202 098 95に割合と近い。ゼロやコンマの位置を無視すればだが。また、天文単位au)=149597870.700キロとそんなに離れた数値ではない。

 理由として考えられるのは……例えば、宇宙進出に当たり元来は天文単位の値である1億6000をベースに調整した距離を海里的に新しい度量衡を設定した。と考えればそう不思議な数値でもない。放送当時を鑑みれば、ガウス定数でも構わないだろう。まだ定数が現役だった時代では、こっちの方があり得る値。

 

 この想定をガトランティスに当てはめた場合、どうなるだろうか。

 ガトランティスの場合、天文単位の5倍に近く太陽より26倍の光度を持つ恒星系が元来の居住地であるか、或いは6倍の光度をもつ恒星系が元来の居住地である可能性があるだろう。彼らの元来の居住地における天文単位をベースに構築した宇宙キロがたまたま7億1200万だったという話。

 特に惑星を征服していく必要のある彼らにとって、ハビタブルゾーン算出に資する値ならばなおの事自然に策定されたと考えて不思議はない。

 

 全宇宙で度量衡がすでに統一されているという可能性は非常に低いだろう。

 別にこの点は細かく考察するまでもなく、群雄割拠なヤマト世界では不思議はない。

 まあ、我らガトランティスが全宇宙を席巻出来れば、ガトランティス基準の宇宙キロに全てが帰結したはずだ。

 

 

 二つの宇宙キロ

 結局最低でも2つの宇宙キロが出現してしまった。長い単位としての宇宙キロと、短い単位での宇宙キロだ。長い方でさらに長短が出たのは地球とガトランティスの違いとして説明できよう。短い方でも距離に幅があるのは、あくまで想定値だからであって、土星決戦での航路を明らかに出来れば簡単に確定値を出せる。

 問題は明らかに二つの種類の宇宙キロが現れたという事。

 

 

 理由としては……基本的に使用する距離感によって二つの単位体系ないし運用を用い、暗黙の了解で使い分けているとして決着を見たい。つまり、航海用の長距離と、戦闘用の短距離の二つだ。

 つまり、戦闘宇宙キロとでも呼ぶべき1キロ前後の――何かしらの基幹技術に用いた単位をベースとした長さを戦闘では用いていると想定できよう。

 

 戦闘宇宙キロは電波の伝達範囲であるとか、割とそれっぽい。

 例えば、周波数600キロヘルツ(0.6メガヘルツ)は波長が499メートル。300キロヘルツ(0.3キロヘルツ)なら999メートル。あとは生活や実務に役立つ計算サイトでも使って【周波数と波長の変換】をしてください。

 つまり、中波の範囲内に収まる周波数帯の波長が宇宙キロの範囲内であると言える。「だからなんだ」と言われてしまえば――「どうなんでしょうね?」と答えざる負えないが……。

 

 航海宇宙キロは以前述べたように、単純に勢力圏内のハビタブルゾーンをベースにして考えた。わざわざハビタブルゾーンを数値の基準にする必要性は薄いが、光年はそのまま利用するには長すぎる。もう少し短い単位が必要なのだが、放送当時は確か天文単位au)はまだ規定されていなかったはず。

 とあれば、独自に丁度いい長さの単位を松本の御大が独自に設定する必要性や、合理性が生じる。



 と、こじつければ何とか光明が見える

 他にも、人類種がベースとして獲得できる宇宙船の航行速度の最大値であるとか……いくらでも理由は付けられるだろう。

 

 


 正直、それっぽい雰囲気を出すためにテキトーに宇宙ってつけただけに思える。基本的にヤマトはタメであるとか、数値の読み上げと言った臨場感を大切にした作品だ。臨場感とスピード感。それも単なる速さ、秒的な意味でのスピード感や臨場感ではなく、肌で感じる雰囲気。

 波動砲発射までのシークエンスはアニメの描写的には省いても問題ない。あの一連のシークエンスはスピード感とは程遠い――はずなのだが、あの刻々と変わる状況を長ったらしく説明するあれが、臨場感となって反対にスピード感を生む。

 宇宙キロはこのヤマト独特の臨場感やスピード感を醸し出すためのツールの一つと言えよう。

 

 数値の設定の雑さは、そりゃあヒペリオンの形すら判明していなかった時期であるから多少のブレや現実感の無さは、仕方がないともいえる。が、それにしたってテキトー。最初にざっくり規定してくれればよかったのにね。

 このアバウトさが松本作品っぽさともいえるかもしれない。

 だが、SFである以上、Sの構成要因ぐらいはしっかりしていて欲しかった。前半作品はまだロマンという松本作品っぽさと、サイエンスっぽさ大いに存在していたが――後半作品のロマン減退に加えてのサイエンス減退と、中々に擁護派としては苦しい。

 ここら辺がガンダムとの違いなんだろう……。

 旧作支持者は結構この辺りを飲み込んで、製作陣を甘やかしてしまったし。これをベースとしてしまうから、2199も2202も肝心なところで結局ご都合主義に走ってしまった。

 

 やっぱり……ヤマト世界における数字は――信用ならない。