旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガトランティス超兵器 超巨大戦艦――ガトランティスの切り札・闇の前兆――

 

 超巨大戦艦はガトランティス文字通りの切り札である

 予想外の劣勢に追い込まれたガトランティスが生き残るため最後の最後、都市帝国すら破壊された緊急事態において、戦況をひっくり返す唯一にして最大の術。敵を粉砕するガトランティス最大最強の巨砲を備えた怪物、それが超巨大戦艦なのだ。海外ではこの戦艦を〈Portent Of Darkness〉つまり”闇の前兆”と呼ぶ……これ程に相応しい名称は他にあろうか。

 今回はこの闇の前兆について考察してみたいと思う。

 


 といいつつ、実は私は超巨大戦艦があまり好きではないのであるだって巨大に見えないから。これ、話によると緊急的に登場が決定したためで、魅力的な宇宙戦艦群をデザインしてきたあの宮武先生も、デザインの詰めが甘かったと回顧なさったとか。

  要は、色々と難のあるのが超巨大戦艦である。だが、そのインパクトと絶望感は都市帝国以上であった。華麗な、物質社会の崇拝者的な都市帝国とは対照的に、超巨大戦艦は破壊のみを目的としたエントロピー増大傾向の象徴として恐ろしさを確かに内包しているのだ。

 

 

 デザインについて
 独特の艦首は何の機能を有しているか不明。ものすごく大きな艦首から連なる中央部は艦尾に6角形に近い縦断面を持ち、巨大なウィングを持つ。艦首には潜宙艦に近い形の第一艦橋、その後方に砲塔を頂いた第二艦橋、更に後方に砲塔を重ねて頂いた第三艦橋と複数の構造物を持つ。塗装は全くの黒一色で、艦橋の窓と艦首のライト様部位からオレンジ色の明かりが煌々と宇宙空間を照らす。

 あまたある砲塔はほとんどが長砲身砲で、輪胴砲塔は一部の少数配備にとどまる。エンジン形式も複数ノズルをまとめ上げて艦尾に位置させているが、艦首後方にも噴射洸らしきものがある。艦の全体的なイメージとしては大戦艦に類似するものもあるが、一通りデザインの発想元が不明

 ただ、ある程度は通ずるものを見つけることは可能だ。例えば――

 

 アメリカ流
 一つ気に入っているというか、ぜひ注目していただきたいのが、最後部の第三艦橋とみられる部分の砲塔である。何と砲塔の上に砲塔を重ね、更に砲塔を重ねているのだ。
 そんな馬鹿な、なデザインであるし、実際に運用したらあんまりうまくいかない。

 もし、自分がガトランティスの技術将校であれば――あるいは現場の砲雷長であれば、積み重ね砲塔は廃止した方が良いと進言する。

 

 でも、ものすごくアメリカンなデザインなのである。アメリカ人以外、絶対やらない形式なのだ。なぜこんな知った風な口を利くかといえば、実際に運用した場合の欠点を知っているからである。理由は私がガトランティス人であるからとかそんな話ではなく、現実に地球の戦艦に存在しているからなのだ。

 

 キアサージ級戦艦、その孫であるバージニア級戦艦。この二つの艦級は二重砲塔(直訳、原文:double turret )と呼ばれる形式の砲塔を採用した。前弩級戦艦好きならば、割と有名なアレな砲塔の事である。

 主砲=前者は33センチ砲、後者は30センチ砲の真上に、中間砲塔ないし副砲塔である20センチ砲を据え付けた、これを二重砲塔と言う。

 副砲の視界を主砲と同等まで広げ、弾薬庫や揚弾機を同一の区画に収めることで装甲でかさむ重量を低減。また、揚弾機を近いところに設ければ効率もそれなりを見込めたし、どうせ砲戦距離は最大射程ではなく有効射程よりも大分近い距離である為、中間砲と主砲を同一の指揮系統で制御できる方が、命令を下す上で効率がいいと判断された。

 しかし、そうは問屋が卸さない。

 当然重くなるため、機械に負担がかかる。しかも別々には旋回できないから、どんな時でも指向する目標は一緒。10センチ違えばも砲弾も装薬量も異なるから、土台無理な話だった。

 ちょっと考えればわかることだが、やってみなければわからない事もあると、本当に作ってしまった。冒険心豊かなアメリカ人らしい発想と勇気の産物、それが二重砲塔なのだ。
 嘘だと思うなら検索してほしい。ビックリするよ。

 

 

 そんな形式をガトランティスは採用しているのである。さすがに、先代や先々代とは異なり個別旋回が可能になっているなど、世代を経て進化している。

 が、給弾方式がエネルギー注入に変更したとして――3つの砲塔に一気砲撃可能なまでのエネルギーが注入をしなければならない。単なる電気エネルギーなのか、荷電粒子なのかは不明だが、どちらにせよ基部に大きな負荷がかかることは間違いない。しかも、砲塔一個に問題が生じて仮に爆発すれば下2つにも幾らかの被害が及ぶことは間違いないだろう。

 危ないって、この方式……

 


 ガトランティスは常々アメリカモチーフであるといわれてきた。私もそう思う。原理主義者レベルに、この説の熱烈な支持者と言っても過言ではない。
 アメリカという国家の成り立ちや理念や首都のデザイン、没ネタやその他もろもろが、その類似性を如実に示す。古代宇宙飛行士説を信じている奇特な人(私は違うよ?)なら、一発でピンとくるだろう。


 それはともかくとして、ガトランティスアメリカモチーフである。

 これはそれ以上考える必要はないくらいに座りのいい説であることを、図らずも後押ししてくれるのが超巨大戦艦の三重砲塔が体現してくれている、私は強弁する。

 

 

 由来の想定

 何で都市帝国の中から割って出て来たんだという話である。これは結構難しい話で、何を重視して想定するかによって話の流れが変わるのだ。

 

 想定1:超巨大戦艦がベースになって都市帝国が出来た。

 最もわかりやすい話で、遊牧的な傾向とも合致する。つまるところ超巨大戦艦はメイフラワー号だったという事

 一隻だけでもいいし、船団でもなんでもいい。宗教かイデオロギーか、何らかの理由によって現在のガトランティス人を構築する集団が超巨大戦艦の原型に乗って宇宙を渡り、どこかの金属資源豊富な小惑星に着陸。そこで手に入れた資材、或いはいくつかの廃戦闘艦を組み合わせて無理にでも大型の強力な戦闘艦を創り上げ、手ごろな文明度数の低い星を征服文化的に進歩させガトランティスの元になる国家を建設

 普通に惑星に定住してもいいはずだが、祖先の歴史をたどるというままある行動(アイデンティティの確立)が次第にイデオロギー化し、深くガトランティス人に刻まれ、定住するという発想が消滅。フロンティアを目指し、本人たちは未開な野蛮人を文明開化させるつもりで拠点ごと移動をするようになった。という風に説明できる。

 この場合、あの超巨大戦艦の不格好とまでは行かないが、無理に組み合わせたような感じのぬぐえないデザインも片付く。艦首のあれが元々“コスモ・メイフラワー号”で例えば“コスモ・ゴッドスピード号”に“コスモ・スーザン・コンスタント号”、“コスモ・ディスカバリー号”などなど、様々な艦の使える部分を組み合わせて超巨大戦艦を構築した。元々別の船で、別の思想で設計された艦だから無理に一つにしたらそりゃ不格好。どの艦も長期航洋用の戦闘艦で、結構巨大だから完成したのもかなり大型になってしまった。

 で、全宇宙にガトランティス覇を唱える事を正しい事と、一種の布教の為に拠点ごと移動を開始。元々の出発点である超巨大戦艦を大切に都市帝国ないに収容し長い旅路に就いた。超巨大戦艦は切り札であると同時に、一種のよりどころで丁度メイフラワー号がアメリカにおいて大きな存在として扱われているのと同じ

 メイフラワー号も度々切手であるとかのデザインになったりレプリカ製作が行われたり渡米成功の記念行事が行われたりするのと同じように、ガトランティスを記念する存在となった。ただ、頻繁に使わないしガトランティスの覇権も随分と長く盤石なものになった為少し重要度が落ちてしまった

 といったようなストーリー展開がでっち上げられる。

 

 ちなみに〈メイフラワー〉は清教徒であるピルグリム・ファーザーズがジョージ1世から逃れる為、イングランドプリマスから新天地求めて出帆した船の事。現マサチューセッツ州(つまりプリマス植民地)に到着し、植民地を建設した。

 〈ゴッドスピード〉と〈スーザン・コンスタント〉に〈ディスカバリー〉はイングランドの勅許会社であるバージニア会社が派遣した船でジェームズタウン植民地を建設した。〈ディスカバリー〉は植民地運営と拡大の文字通り足として残留し、他2隻は本国帰還を果たす。

 

 定2都市帝国の緊急脱出シャトルとして後から収容した。

 このパターンは逆に都市帝国がどこから湧いてきたという疑問が生じてしまう。どこかの星の防衛用の大規模な戦闘衛星をかっぱぐって出奔した一団がガトランティスの元という事になろうが――しかし、どこから超巨大戦艦を入れたのかという疑問が生じてしまう。また、あのイマイチ計画性の無い見た目の理由が説明できなくなってしまう為……この案はボツ。

 

 

 

 スペック
 さて、超巨大戦艦の中身である。ガトランティスの切り札であるにもかかわらず、これが実は何だかよくわからないというのが如何に緊急的に作成された存在であるかがわかるだろう。


 ――データ――

 艦名等:不明
 全長:12,200メートル(ないし8キロ)
 全幅:6,029メートル
 全高:2,305メートル
 武装:超巨大砲(主砲)1門、4連装巨大砲塔3基、3連装巨大砲塔11基、砲身付き旋回砲塔多数、回転速射砲塔多数、ミサイル発射管多数

 以上はウィキから借りて来たスペック。これは表現の違いや認識の違いによって色々人によって異なってしまったりする。たとえば、キーヴィジュアルやらパンフレット等の画を見て上面にある武装を数えてみると、少々異なった武装になる。

 つまり――

 超大型主砲1門、大型砲3連装砲塔:7基、大型4連装砲塔:3基、中型3連装砲塔:9基、中型6連装前後両用砲塔1基、小型4連装砲塔:2基、3連装対空砲:8基、回転砲塔:26基、翼端ミサイル発射管:両翼18門。ミサイルランチャーらしき装置:2基。

 どのみち極めて重武装。しかも、元の艦体が巨大である為その全てが途方もなく巨大。砲身を持った砲塔は固定ではなく旋回可能で、どうやら出力は制御可能らしい。

 

 

 ヤマトと比較してその巨大さを測りたい。この方法だと結局、全部推測になってしまうが……他に方法がない。だって設定が不明瞭だから。

 

 ヤマト前面に立ちはだかる超巨大戦艦のあの印象的なキーヴィジュアルから推測して、中型砲塔の砲口はヤマトの波動砲と同等以上であろう。豆粒のような大きさの回転砲塔の一門一門ですら波動砲と同等以上の砲口とみられる。翼端の魚雷ないしミサイル発射管らしき9つの穴は、恐らく――破滅ミサイルと同程度の巨大ミサイルを発射できるはずだ。

 大きさは目玉的ライト部分とヤマトの比較から察して、ヤマトの全長はライトの奥行きの半分か1/3前後程度の大きさだろうか。だとすれば、あの巨大な主砲の砲口は――1,2キロぐらいか。小さい方の原作数値を尊重した場合でも300から400メートルは下らないはず。どちらにせよ破格の巨大砲である。

 

 ヤマトの数値が原作通りにした場合、艦の全長は大体36キロ。ヤマトの数値がおおむね3倍の値が正しいとすれば、全長108キロの宇宙要塞となる。

 やっぱり、原作数値の12キロだと細かい齟齬が生じてしまう。個々の数値にズレや無理がある上に、数値にブレがある都市帝国ありきの艦全長なため、どうにも合わないのである。

 

 

 確かに、超巨大戦艦は巨大だ。12キロから36キロ、最大08キロの戦艦なんて聞いた事無い。が……6600キロの白色彗星の中に内包されていた都市帝国の、その中に存在する切り札としては案外小さいかもしれない

 仮に都市帝国の直径が白色彗星の直径と比較して、説明画等のヴィジュ的に座りの良い1200キロだと設定して、だとすれば――艦全長は900キロ程度が妥当だろうという事になろう。一方で900キロまで巨大化すると幾らテレサ反物質を使えても機関部をオーバーヒートさせても勝つのは無理な感がある。

 話をまとめると……この艦の全長に関しては本当に、十人十色レベルで妥当な数値と言うものが出てきてしまう。描写に依れば10キロ未満程度だろうし、テレサに依れば、3桁キロの範囲内に収まるだろう。

 今回は、妥当な数値が……設定できない。無念だ……。

 

 

 

 戦闘能力

 当たり前だが、ものすごく高い長砲身砲だけで大中小合わせて70門、しかも砲身の厚みはとんでもなく、砲身の電磁拘束だのどんな機能だって付与できるだろう……恐らく粒子ビームの収束率は非常に高いはず。

 これが、全門斉射=砲塔の斉射で一舷打ち方が可能なのである。 猛烈なエネルギー生成量と投射量といえよう。また出力は可変なのか或いは演出なのかは知らないが、砲はヤマトのような小型の目標も正確に射抜くことが出来た。多分、ズォーダー5世大帝……ブチ切れておられたのでしょうね。

 仮に長砲身砲が実体弾を利用した場合、一発一発がとんでもない重量になる。例えば描写から想像して砲身砲の砲口が約4メートルであれば14トン、設定値からすれば40メートルあっても不思議はないのだから140トン。再設定値であれば、400メートルあっても問題ないから、砲弾の重量は1400トンに上る。

 これらが70門であるから、計算すると――

 

 劇中描写からすれば総投射量980トン

 設定値・キーヴィジュアルからすれば9800トン

 再設定値からすれば9万8000トン

 

 となる。設定値以上であれば、ちょっとした駆逐艦巡洋艦を2、3隻ブチ落としたような重量になる。しかもこれは砲弾の概ねの質量が鋼鉄であることを前提としている。タングステンのような高比重の物質を用いた場合はいずれの値も2.4倍されるからそれぞれ……2352トン、2万3520トン、23万5200トンとなる。最大値では破滅ミサイルが運動エネルギーであった場合の一隻当たりの発射トン数と大体同じ。

 これらは全て一回の斉射によってもたらされる。大和よろしく一発当たり40秒であるとすれば、10分間に15発発射することが可能。つまり――最小値で1万4700トン、最大値で147万トンとなる。高比重物質ならば3万5000から352万トンにも上る。

 地球を木っ端みじんに裁けるかは微妙な所だが、地表面の特に居住可能域はボロボロに出来る。だってバリンジャー隕石孔を何十個か作れるほどの質量を10分間に投射できるのだから。

 

 仮に内部に炸薬を用いたとしても……一発当たり330キロから最大30トンにも上る。普通の火薬を仕込んでいたとしてもこれは恐ろしい。

 炸薬反物質であった場合はその維持には困難が伴うが、最小で7425TNT換算メガトンから最大で67万5000TNT換算メガトン=675TNT換算ギガトンとバカみたい。

 核爆弾を内部に仕込んでいた場合、16インチのW23なんかは総重量860キロで15ないし20TNT換算キロトン。これを参考にすると最小で6TNT換算キロトンから最大700TNT換算キロトン。これだけの威力を持った核爆弾を内包しつつ、外部は分厚い鋼鉄で覆って大気圏と迎撃ミサイルを突破する。自分で想定していて気味が悪い。

 やっぱり、地球を抉るには主砲のお出ましを願うほかないが、地表面なら確実に粉砕できるだろう。人類を滅亡させることなど、容易だろう。

 そもそもだが長砲身砲の場合、何を利用する兵器だって規模がデカすぎて恐ろしい以外の言葉がない。

 別にビーム砲だってとんでもない高温のエネルギー振幅としてで敵に迫っていくだろう。荷電粒子砲ならばこれはもう、怖気の立つようなエネルギーの壁・津波となって襲い掛かってくる。大気圏にぶっ放したとしても、存外地表には中々到達できないかもしれないが――それにしても上空で猛烈なEMPを生じさせたり、熱を与えたり衝撃波を与えたりすることが可能だろう。いわんや地表に落ちたらその被害は誰もが目をつむるほどだろう。

 

 

 恐ろしげなのは長砲身砲だけではない。回転砲塔だって敵にとってはかなりの脅威である。何といっても回転砲塔はどう見積もっても大戦艦のそれを10倍から40倍した程度の巨大さがある。めまいがするほどの巨大さであり、恐らくこれは‟超巨大戦艦にとって”小型艦艇か対空用か。これがバカスカ敵に対してぶっ放されるのである。長砲身砲と同じかそれ以上に危険かもしれない

 超巨大戦艦にとって小型艦艇であっても、普通の勢力にとっては大型戦艦……何なら随一の巨大戦艦でも小舟どころか木の葉扱いになってしまうだろう。下手なエンジン出力の攻撃部隊であればこれ、砲撃に伴う衝撃或いはビームないし粒子を拘束するための磁場に巻き込まれてそれだけで機能停止になりかねないはず。

 こんな艦に対峙する敵が哀れで仕方がない

 

 

 他方……自慢であろうあの超巨大主砲は、実はどれだけの威力があるかは全く不明不思議な事にね。

 さらばでは月に向かって砲撃、この表面を砕き……エネルギー再充填ないし砲身冷却のためか何ぞ超巨大戦艦向きの力が加わり砕けた月表面がヤマトに殺到していった。

 一報、ヤマト2での描写では月軌道より幾らか地球に迫った軌道から主砲を発射、火線は完全に地表へ到達し、核兵器並みの爆発を引き起こし――大きく見積もった場合はサドベリー隕石孔に衝突した隕石の突入と同じ程度の影響を及ぼした。これは最悪、一撃で東京都区部全域が木っ端みじんに吹き飛んでしまうだろう。

 ここから計算して、最低でも射程は35万キロは確実。威力は恐らく80TNT換算テラトン。

 

 絶対、威力絞ってる……よね。

 だって、あの暗黒星団本拠地を南北に貫くパイプと同じぐらいの砲口から、大型隕石程度の威力しか出ないのは――あの第11番惑星で見せた絞ったであろう威力の波動砲と同じ程度って情けない

 確かに、大気という分厚い盾を貫いて到達させるのは難しいのかもしれない、存外エネルギーのロスが生じているのかもしれない。だが、あの程度の威力ではこれでは月を抉る事も数発こなさなければならなくなってしまうだろう。となると、悪くするとあの〈ラグナロク〉号より能力が低めになってしまう。これでは〈ジョージ・W・ブッシュ〉以下、フィンランドを除いた地球艦連合で十分に対抗できてしまう。

 砲口からしても、主力戦艦の波動砲口を大きく見積もって30メートル程度として、その波動砲の……40倍近い直径を持つため当然という事ではないが、40倍のエネルギー投射が可能だろう。

 つまり、波動砲の威力が明確化されている2199の想定では1発3.5TNT換算ゼタトンだから、140TNT換算ゼタトン。再設定値であれば、さらにゼロを一つ上乗せしても構わない。

 とどのつまり、超巨大戦艦の主砲は一発で惑星を仕留めてしかるべき。だって地球艦隊の波動砲一斉射撃と同格に近い攻撃が可能な規模なのだから。

 何なら星系ごとぶっ壊す威力があってしかるべき。懐かしのスターウォーズのスター・キラー基地のように。それをわざわざ、あんな低威力に絞って……大帝、本当にブチ切れてたんでしょうね。そんなに地球をなぶり殺しにしたかったの……。

 

 宇宙空間でぶっ放すのと地表に向けてはそりゃ勝手が違うだろう。その過程で威力がしぼむのはある程度は仕方なない事だし、出力調整が行われていたと解しても何の問題もない。全く出力調整出来ない方が使い勝手が悪すぎて話にならん。出来てしかるべきだし何をもったいぶるのかと言われたら、ブチ切れ半分処刑半分に地球をなぶるのが目的なのだからもったいぶって当然。

 まあ、どっちみち威力自体は問題では無いかもしれない。

 極めて高い速射性能。この方が恐ろしい。ヤマト2で披露した2から3秒ほどで一発を発射するこの早打ち。確かに、威力を絞ったからこその連射性ともいえるし着弾点の被害もそこまで大きくはないが……威力を絞ったのにも関わらず隕石衝突レベルの被害を地上にもたらすのは……恐ろしいというほかはない。

 ほんの数秒で射撃を行えるとすれば、今まで行ってきた想定がひとつ桁が変わってくる。いや、恐ろしい。相手の組織的反撃を行う隙を作らないぐらいの速射性、恐ろしいという言葉以外見つからないだろう。

 

 想定する全長によってこの艦はその火力が大きく変わる。砲がビームなのか粒子なのか実体弾なのかでも評価が大きく変わる。ガトランティスの切り札だけあって非常に強力である事には変わりないのだが、評価は非常に難しい。

 何といってもヤマト2。大帝が地球をなぶり殺しにしようとしてくれたおかげで最大威力が全く不明になってしまった。これは返す返すも残念だが、最大威力が見えたら地球は木っ端みじんだから困ったモノである。

 

 艦の運用

 何度も述べているが、間違いなくガトランティスの切り札だ。守ってダメなら攻めに回って敵をつぶすというのがこの艦だろう

 白色彗星は直線方向でしか影響力を及ぼせない、攻撃兵器でもあるが受け身な姿勢をぬぐいきれなかった。しかもヤマト2とさらばの描写を考え合わせると後方や側方に対しては意図しなければ、さほどの影響をもたらせない。都市帝国は回転ベルトは極めて強力な武器であるが、下方に潜り込まれた場合や上方に攻め込まれた時は相手の数によっては劣勢に持ち込まれるかもしれない。まして、ヤマトのように決死隊を送り込まれればかなり危険。上下に弱く、白色彗星よりも敵に対して受け身な傾向が強いのである。

 しかして超巨大戦艦。この艦は当然だが全方向に対して攻撃をする事が可能であり直線状以外にも影響力を与えられる。白色彗星は接触したい手をゴリゴリ削ることが可能と目されるが、限度はあるだろう。一方で超巨大戦艦は少し離れた距離から地表面をゴリゴリあぶっていくことが可能。装甲も分厚い事が予想できるし、何より敵は白色彗星と都市帝国という倒すに極めて困難な存在を倒して死にかけであると期待できる。味方艦隊は相当数が失われ、残存艦も中破異常という時……そんな時に戦うにはあまりに巨大であまりに強力な戦艦ではないだろうか。攻撃に移りやすいタイミングで登場する、超攻撃型の戦闘艦。これは卑怯に近いぐらいの仕込みと言えるだろう。

 

 場合によっては――惑星をガトランティックにリノベーションするための利用も出来るだろう。あれだけの高威力主砲だ、残存の防衛設備を粉砕し残存民に恐怖を植え付けるなど容易な事。ゴリゴリ地表を削って利用可能な鉱脈を露天掘りして露出させ、何なら近くを引っぺがす。

 そして利用可能な金属元素マントルの熱エネルギーを併用して艦隊や都市帝国の回転ベルトを再製造。核が丁度いい冷え方したころに、その金属さえも利用して新たな都市帝国を完成させる。艦隊、都市部の再建を終えた後に超巨大戦艦をもう一度その内部へと収容し都市帝国を慣性。しかる後に白色彗星を再建し全宇宙に覇を唱えるべく再び出陣する。

 あれだけの巨大戦艦であるし、ミサイル兵装があればそれを補充しなければならない。だが、超巨大戦艦が出撃するのは危機的な状態だろうから外部からの補給は難しいだろう。という事は艦内工場があっても不思議ではない。その艦内工場を利用すれば、全ての構造物を再建することは出来ないだろうが再建に利用可能な部材や工場などを惑星上に再建することは可能だろう。

 

 冒頭に海外では超巨大戦艦は分類としてはDreadnaught、艦名を〈Portent Of Darkness〉と名付けていると述べた。それはこの艦の実態を見事に言い表していると言えるだろう。ガトランティスにとっては救い主のような存在だが、しかしてそれ以外の人々にとっては禍というほかない存在なのだから。

 何といっても、それまでの前提を、概念を、全てを覆すDreadnaughtのような存在。それが超巨大戦艦だ。破格の巨大さで、最早戦艦という概念を超えている。普通の戦闘艦では倒す事は叶わないだろう、普通の戦艦でも敵わないかもしれない。この艦が現れるという事はすなわち、敵にとって敗北を意味する。つまり闇の訪れる前兆――長い被支配・隷属の時代がやってくるという終末の角笛なのである。

 ガトランティスが再び白色彗星を構築した時……一度敗北に近い劣勢を味わう事でそれを挽回しようとガトランティスは物資を求めより強力に制服を進めるだろう。大きな負けを味わい、そこから学びより強く倒し難い存在として宇宙に覇を唱えるだろう。

 新たなる強力なガトランティスが誕生する、その前兆が超巨大戦艦。個々に自由を求める、安寧や調和を求める人々にとっては禍が更に大きな禍として迫ってくるのだ。むしろ、以前の方がマシだったかもしれないと思うほどにガトランティスが強力になっても不思議ではない。

 全宇宙を包む闇がより深く、より強くなる。その前兆として現れるのがこの漆黒の巨体:超巨大戦艦なのではないだろうか。

 

 

 登場シーンはあまりに短く、全くと言っていいほど真価の見えないのがこの超巨大戦艦である。語るべきことが多いはずなのだが、語るべきとっかかりすら見えない。あるいは、語るべきことが多すぎて手を付けられないだけなのかもしれない。

 じっくり、腰を据えて取り掛かれば何か見える事もあるのかもしれない。しかし、それは容易ではない。

 まるでガトランティスそのもの。

 それがこの超巨大戦艦なのだ。
 

 

 話が全然まとまらなかった……
 面目ない……