旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

暗黒星団帝国の考察――概論――

 

 今回はもろに宇宙人のイメージをぶち込み、そこにロシアを仮託させた巨大国家:暗黒星団帝国を全体的に網羅的に簡単に考察したいと思う。

 

 

 国家名:暗黒星団帝国(通称:ウラリア)

 国家体制:専制政治君主制から共和制へ移行と推定)

 拠点:二重銀河・白色銀河内/デザリアム星

 場所:乙女座宙域方向(地球より40万光年先)、暗黒星雲内二重銀河

 主要推進機関:不明

 サーダがマスクをかぶっていなかった場合は前提が崩れるが、帝国を構成する民族は一つだけ。肌は灰色で白目が青い。また彫りが極めて深い顔貌で目に影が映る程。頬骨の突き出し方は地球人にも結構居るが、前頭骨の眼窩部上部というのだろうか――この部分の突き出し方が極めて大きい。

 地球人のボディを欲しがるのだから生理学的に何とかつなぎ合わせられる程度の遺伝子の差異なのだろう。だとすれば肌の色は極端なたんぱく質不足で白く、灰色になったのか……あるいは銀皮症。銀皮症の場合、腎機能が低下すると言われているが暗黒星団帝国の人々はそもそも機械の体だからそう言ったことには無縁。きっと、機械のどこかに銀が使われて長年使用するうちに色素沈着を起こしたのだろう。

 といった感じにしておいてもらいたいと思う。

 


 国家体制

 暗黒星団帝国は連作の都合2作品に登場した。しかし、その中で明らかに大きな転換が行われ、外観的には全く別の勢力といっても差し支えないほどの変化をきたした。大人の事情と大人の記憶力の問題とするのが妥当だろうが――それではつまらない。

 そのため合理的解釈を無理やり試みる。


 宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち〉グレート・エンペラーによる専制君主制

 グレート・エンペラーという最高権力者による恐らくは専制政治であろう。たとえ立憲君主制であっても、エスワニティでみられるような絶対君主制というのが妥当。地球を征服する理由がない段階で、地球侵攻の可能性に触れるなどを鑑みると、最低でも独裁体制下の者が上の者に詰問される際のあの緊張感を加味すれば、統治者と非統治者の身分が完全分離する専制の裏付けという見方もできなくはないだろう
 マゼラン方面軍に直接連絡を取っていた事から、方面軍が軍と行政の双方を兼ねている可能性がある。他方で、特命で派遣した可能性もある。ただ、セリフの内容から考えて少なくとも、議会の類があるとは考えにくい。


 〈ヤマトよ永遠に〉聖総統による自由主義専制(共和制)

 グレート・エンペラーの後に登場した聖総統による統治であるが、侵攻の目的から考えて繁栄した専制国家とは考えにくい。ガミラシウム採掘、イスカンダリウム採掘の双方に失敗した結果、グレート・エンペラーの失策として国民の支持を失った。あるいは宇宙間戦争の敗北か劣勢によって政権が転覆したという可能性もあるし、元々の本星を失えば当然、政権交代して当然といえるだろう。これらの理由の中で、聖総統がグレート・エンペラーから政権を奪取して新たな政治体制となったと考えるのが自然

 前政権が専制君主制であるならば、それを打倒した政権は別の君主制か共和制のどちらかが普通――聖総統という君主らしさの無い元首の肩書を考えれば、独裁であるかは別として共和制というのが妥当

 性質としては、前政権をある程度引き継いだものと考えて構わないだろう。

 ただ、かなり個々の意志というものが発露する場面が多く――個々の存在を認知・容認するが国家全体=聖総統に対する敵対行為は許さないというのが近いのではないだろうか。旧体制の悪癖を一掃し、しかしその国家の維持する根幹部分には手を付けない。そういう体制であろう。民主集中制でも、比較対象が腐った貴族による専制であれば……物凄い進歩した民主主義に見えるかもしれない。

 

 新立ちから永遠にへの、暗黒星団帝国の国家体制変異は――ロシア帝国からソ連への転換のその全てへのオマージュと言えるかもしれない。

 そう言う事にしておこう。

 

 

 国名

 この名称は説明しがたい――暗黒星団帝国ってどないやねん。そりゃ字面はカッコいい、中々堂に入った感じの国家名である。

 だが、白色彗星に次ぐ勢力であるから黒と思い付いたのだろうが……これはちと安直。星団や星雲という部分についても色々あるが、本拠地を見ればそんなに外れた名称ではない。という擁護はできるが、直接過ぎて面白みも名称的な膨らみもないというのはかなり残念。

 俗称というか、PS版に登場するウラリアという名称も、アメリカの次の勢力という意味でロシアを想像させる名前でこちらも正直なところ安直ではあるが、多少はひねりが効いている分マシ。

 


 文化面
 発達した機械先進国。半面、機械を信用しきることはなく人間の支配下に置く傾向が強い。少なくとも劇中、暗黒星団帝国側にロボットが登場した事はなく、仮に存在していたとしても、緊急事態を除いて人間の完全なる制御下に置かれているとみて不思議はない。

 また、人間らしさという点においても重きを置いている節があり、自分の感情に忠実だったアルフォン少尉や機械でセーフティーを掛ければ死なずに済んだグロータス司令など人間らしい部分で身を滅ぼした人物が登場する。また、機械の体にも拘わらず体型がまちまちでカザンの部下や、さかのぼればデーダーの部下もお世辞にもカッコいいとは言えないようなタイプが登場している点を考えても人らしさという点に極めて重点を置いている。いうなれば、固執している感がある

 帝国の人間は基本的に禿頭であるが、髪がふさふさしている人物も登場。頭の形も結構まちまちで、そう言った身体的な他者を分ける特徴を維持している点はかなり人間の生物的側面に恋焦がれていると表現できるだろう。

 

 真面目な話、2202の劇中にあった生物として効率を図るなら人間の形をとる必要はないとのセリフがあったが、これは十分妥当。この非人型という形式を暗黒星団帝国がとっても構わなかったはず。

 機械に頼らず『宇宙の戦士』のバグやキムタクヤマトのデスラー/スターシャのような進化の選択肢=集合精神もあり得た。特に前者は当時の時点で古典に近いSFであった。あるいは、『ドクター・フー』のダーレクのような姿に自らを変えるという方法もあっただろう。

 しかし暗黒星団帝国の人々は、そうはしなかったそのあたり、本当は大人の事情に落ち着くのだろうが……人型を捨てなかったという事にこだわりがあるという説明の方がSFらしくて相応しいだろう。その方が、強烈かつある意味無意味に人間的感情=恋に固執したアルフォン少尉の行動も、人間らしさへの渇望が祖国を売る行動につながったと説明できるし。

 

 

 想定される主機関・推進器
 恐らくバサード・ラムジェット推進カシミール効果を利用した斥力推進という形式になるだろう。何といってもあの極めて高い機動性を考えれば、推進機構が一方向への推進力しかないモノだけに頼るというのは描写に合わない

 動力源(発電機)は、そりゃ原子炉でしょう。ガミラシウムやイスカンダリウムと言った放射性物質を採掘しようとしていたのだから無論、デスラー総統の話からすれば核パルス推進でも問題はないし、メルダーズ長官の話からすれば核弾頭に使用する可能性もある正直、この辺りはよくわからないというのが本音。

 

 カシミール効果、正確には静的カシミール効果は二枚の金属板が真空中で引き合う事を云うが、反発する斥力としてその効果が現れる場合がある。

 この斥力を発揮する際の‟相手”を自在に設定し――この場合、自艦側がカシミール効果を維持するために必要な挙動を行う必要があるが――利用できれば、推進剤のロスが一切ない形でも推進が期待できる。

 艦同士でこれを働かせれば、当然ながら衝突事故は防げるし必要に応じて密集隊形も散開もかなり乱暴な方法ではあるが、非常な即応体制が構築出来ない事はない。何より開口部を減らせるのが利点。艦の防護性能を強化するには側面形状を邪魔するノズルは最小限にしなければならない、圧力のかかる点を排除するには艦内で外と隔絶して運用できるエンジンが必要だろう実現できればの話

 また、意外にも長距離遠征が多く、その癖に濃密な星間物質の存在する空間以外ではろくに活動しないことも考えると、波動エンジンと同じような星間物質を吸入して動力に替えるバサード・ラムジェット推進が推力のベースというのが妥当だろう。無論、こちらも実現できればの話

 

 無論、ワープ機関は別個に搭載していても不思議はない燃焼系のエンジンを用い少数のノズルを側面に配して強力な推進を行うのも、別に上記の推測と反するものであない。活動環境が必ずしも燃料豊かというわけではなさそうな暗黒星団帝国からすれば、一つの要素に頼るのは危険で避けるべきだろう

 問題は波動エンジンを搭載しているかどうかであり――これが微妙。反タキオン粒子を利用した動力源・推進機関を用いているのか、或いは荷電状態にあるタキオン粒子の振る舞いが暗黒星団帝国の用いる装甲物質にとって効率的に負荷を与えてしまう為に危険視しているのか。どんな理由でヤマトを恐れているのかがわからないために波動エンジンに関しては全く推測のしようがない。当然、技術は知っているだろうがそれを用いているかは全く別問題なのだ

 


 兵器
 ステルス性を中心に据えた能力。次いで、使い捨て用の木っ端兵器は機動性とそこそこの火力に紙装甲。反対に基幹戦力は重武装とまではいかずとも、防護性能は極めて高くショックカノンすら通じず、採用する戦術によっては波動砲攻撃の隙も与えないほど速射性と集団性が高い。これが兵器の全体的な傾向である。
 決戦兵器は無限β砲――しかし、これはまったくの駄作。語るに値しない。


 弱点
 後に登場するディンギル帝国のように、リミットのある戦力は地球も含めてあるにはある。ガトランティス兵站基地を設けたし、ガミラスも同様。しかし、これら勢力は――その勢力内で明確に共通した弱点があるかといえばそれは否。

 気を付ければ乗り切れるという問題ですらない弱点を内包しているというのは珍しい。

 暗黒星団帝国にはその弱点が存在するという不思議な点がある。つまり……ヤマトの波動砲に弱いという特性があり描写からして演出上の理由で多用されたセリフをガン無視すればタキオン粒子に弱いという事になろう。先にも述べたが、この設定が非常に厄介でご都合主義的。

 

 無理やり理由を付けるなら、暗黒星団帝国は安定化した反タキオン粒子を何らかの有効利用をしているため波動砲をぶっ放されたら対消滅が起きて大惨事になる。例えば――タキオン粒子はエネルギーを加えられると静止し、失うと高速で移動し始める。反対の性質を持たせるとすれば、恐らく通常物質のようにエネルギーを加えられると高速移動し失えば停止する。

 仮にこれを防護に使うとすれば、装甲の中に反タキオン粒子を封入し、これによって敵のエネルギー兵器を吸収させ、装甲から放出することで崩壊から身を守り、抜けた部分に吸収した波長を熱として一時収容し速やかにこれも放出する。

  自分で書いていても意味わからん。

 

 或いは――これも先に述べたが、暗黒星団帝国が利用する物質の中で荷電状態のタキオン粒子の振る舞いと組み合わせるとエネルギーを発しつつ崩壊するモノがあるのか。どれか、或いは両方の理由でタキオン粒子を操る上に有人艦であるヤマトが極めて危険な存在として認識された。

 それっぽく話を造ったが、正直これはご都合主義には変わりない

 もっと情緒的な理由……ヤマトクルーの勇気、というのは一つあるかもしれないし作品的にはこれが正解な気がする。だが、合理的な説明にはならない。だって人間の勇気が武器であるならばこれ、ヤマト以外の艦や機体でも強力な迎撃手段になるわけでヤマトを警戒する理由にはならない。マゼラン方面軍が全滅したのはヤマトの力もあったが半分はガミラス艦隊の健闘であり、最期の一刺しはイスカンダル星爆発である。

 残念ながらヤマトを殊更に警戒する理由は見当たらない。それっぽい理由を見つけても劇中のセリフと相反するため、大変ややこしいというかもどかしい。

 

 

 暗黒星団帝国は勢力として非常に弱含みな存在である

 居住する住人の身体的機能は限界にきており、種としては存亡どころかほどんど滅亡状態。高度な機械化文明ではあるが、根幹となる技術に弱点が存在するなど非常にもろい。挙句、作品の間の時間に政変まで起きたと説明できる大きな転換が見られた。

 これでは勝てるはずもない。まして相手がヤマトだ――ますます勝てない。