旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ストーリー考察S 銀河系大戦――物語の始まる前の話――

 

 

 考えてみればヤマトⅢは端っからおかしな話が満載だって、天の川銀河に何十年も前から大国が栄え、そして相争っていたのに全く地球は知らなかったのだ……。今まで様々な外敵と戦い、一時は拡大傾向にさえあった地球が全く外交関係を周辺国と結ぶことすらせず。

 もっと言えば、そんな巨大国家が天の川銀河に成立していたのに、情報が漏れ伝わっていて当然なのになぜ、ガミラスやガトランティスらは不用意とも思える侵攻作戦を展開したのか。

 全く整合性が取れない

  

 

 それはそうと――

 天の川銀河局部銀河群に属する直径10万光年、厚さ1000光年を誇る棒渦巻銀河である。地球の属する太陽系はオリオン腕の辺境域に位置し、よって地球から見える夜空はこの天の川銀河の美しい側面図である。

 我らが母星・地球。太陽系は持ちろん、地球は天の川銀河全体のハビタブルゾーンに属しているという事も考えられ、地球の位置取りは天の川銀河の奇跡ともいえるかもしれない。

 

 

 

 銀河系大戦――物語の前史――

 天の川銀河の面積でいえば1/3を支配するボラー連邦最高指導者にベムラーゼ首相を据えた専制独裁国家である。圧倒的物量作戦、無慈悲にも思える火力の前方投射をもって敵を蹴散らし、周辺諸国をことごとく属国として飲み込んでいった。

 ボラー連邦の領域は本国域に加え、本国との非接続域であるオリオン腕隣接地域までがその影響下にある。

 

 一方で天の川銀河中心部を起点に銀河のおおむね1/3程度を支配下におさめる新興国家、それがガルマン・ガミラス帝国である。民主主義に基づいたタイプの独裁制であり、君主制の側面さえある特殊な政治体をを擁し、根幹たる支配民族ガルマン民族の母星を中心に周辺域をことごとくボラー連邦の支配下から解放し、その勢力を日の出の勢いで拡大する帝国。新兵器や特殊兵器を多数用い、技術力で敵と戦う極めて強力な国家だ。

 支配領域は天の川銀河の中心部を完全に掌握し、さらにマゼラン雲方面の銀河辺縁部にまで拡大中、ボラー連邦との決戦を制すべく果敢に戦闘を進めていた。

 

 

 

 って――これほど天の川銀河が乱れて、地球は全く知らなかったってどういう事か

 今まで散々襲われたのだから、危機管理上あるいは地球人類の生存戦略上どう考えても銀河系大戦を察知して当然。全く関与できなかったとしても、陣営に与することをしなかったとしても、察知ぐらいはしておくべきだった。

 それにもかかわらず、全く知らなかったなんて、あまりにお粗末地球人を守る気があるのか疑問、お話にならないレベルである

 まあ、地球連邦がアルファケンタウリの植民地がに失敗していることを鑑みれば……多少は整合性が取れるか。全然好意的な評価ではないが。

 

 

 

 一方で、ボラー連邦側の描写も気になる

 どこかのパートでも述べたが、暗黒星団帝国の侵攻ルートはおとめ座から地球を結ぶため、天の川銀河のボラー連邦領域ないしガルマン・ガミラス領域を掠めている。どちらかの領域は確実に掠めているつまり、ボラー連邦は暗黒星団帝国の侵攻に関して、全くスルーしてしまったという事になるのだ

 仮に侵攻ルートが自国の領域をかすめたのであれば、黒色艦隊及びヤマトの往来を事実上の黙認してしまった。或いは、実は暗黒星団帝国と外交関係があった。

 仮に攻撃を仕掛けて返り討ちにあったのなら、余ほど脆弱な戦力しかボラー連邦は持ち合わせていないという事。或いは感知できなかったか。

 

 前者であれば、ラム艦長のガルマン帝国に対する認識と整合性が取れなくなる。暗黒星団帝国は少なくともガミラス接触があり、暗黒星団帝国とボラー連邦が接触があったとすれば、多少なりとも情報が流れても不思議はない。だが、そう言った描写は一切ない。後者であれば、天の川銀河覇権国家としてのボラー連邦という姿は誇張されたもの、実際はガルマン・ガミラスと同様に割に最近軍拡を始めた疑似的新興国家という事になるだろう。あの警戒衛星も新設されたものという事になる。

 前者でないとすれば後者の説を取るよりほかなく、後者の説であれば整合性はストーリー展開の整合性は緩やかに取れる。そう、どう転んでも整合性自体は緩やかに取れてはいるものの、どうにもリアリティに欠けてしまう

 天の川銀河の覇権をめぐる二大帝国が、ヤマトⅢのストーリー開始を見計らったように急速な拡大を遂げるだなんて……都合がよすぎる。

 

 加えて、ボラー連邦(バース星)と地球の関係性の希薄さ、この上ないご都合主義

 地球の勢力はアルファケンタウリまで進出しており、もう少し足を延ばせばバース星領域に到達する。実際、撤退のため緊急ワープしたラジェンドラ号以下のバース星守備艦隊はことごとく太陽系圏内にワープアウトした。

 こんな状況で、今までただの一隻も迷い込んだ船はなかったのかね?

 一連の描写は、設定として非常に合理性に欠ける

 

 

 

 実は、銀河系大戦には時間軸の問題も生じている

 後に判明することだが、天の川銀河に戦乱が訪れて25年もうこの時点でおかしい。劇中、23世紀初頭というアナウンス以外に特に時間軸の話はなかったのだが、古代と雪の関係性がさほど進展していない事やクルーが家庭を持っていない事を考えれば、2203年からさほど時間は経過していないだろう。

 ガルマン・ガミラス、その前身であるガミラスは2203年前後にならなければ、ストーリー上は天の川銀河に移動しない。それ以前では天の川銀河に拠点を置く必要はない、或いは不可能な状況に置かれている

 つまり……これではヤマトⅢの時間軸として噛み合わない。これは擦り合わせ不可能。巡礼者の長老が年齢のせいか、心理的な側面からか事実を間違って認識してヤマトクルーに語ったか、ヤマトクルーにも分かりやすいようにかいつまんだ結果事実と異なる話になってしまったのか。

 長老の昔話を切り捨てなければ整合性が取れないのである。

 

 

 

 もっと言えば、21世紀の初め以来着々と侵略を続け、ようやく2199年に太陽系に到達したガミラス帝国が、ガルマン帝国になった途端、急に侵略のスピードを上げて数ねんで天の川銀河を割拠する巨大帝国建設を成功したというのもなんともご都合主義のにおいがする

 結構、ガミラスの侵攻スピードは遅いのである。彼らは拠点や前線基地を置き、順繰りに勢力を拡大していく。ガトランティスとの違いは情報戦を軽視している点だが、それ以外は無理な拡大というものはしていないのだ。ドメル艦隊の集結で見た通り、戦力の集結も実は迅速で、その範囲内でしか戦闘を行っていないと説明が可能。

 そんな彼らが、ヤマトⅢに入って急に戦力補給も通信も中途半端になるような無茶な戦争を行うのはシリーズ内の整合性が取れない

 

 確かに反ボラーの勢力を丸々吸収出来れば、そっくり領域を拡大できるし、ガトランティスの超技術を吸収したとあれば多少は拡大スピードを速められるだろうが——或いは、モンゴル帝国のように都市限定では意外と領土が小さい癖にステップの面積を加えるから詐欺的に巨大になった、あれと同じか。

 しかし、前者であればガルマン帝国の戦闘艦艇が画一で描写されている点と齟齬が出る。勢力をそっくり吸収したならば、ボラー製の戦闘艦や独自設計の戦闘艦が多数登場しても不思議はない。というより、その方が自然。

 後者であればある程度は説明も可能だが、ボラーの勢力拡大スピード(バース星併呑は10年前)と大幅な齟齬があり、ガルマン・ガミラスのあんまり強くない戦力描写と幾らかの齟齬が出る

 

 端的にいえば、ガルマン・ガミラス建国があまりに時間軸的なボリュームが無さすぎる。おかげでリアリティもなくなってしまった

 加えて、地球とボラー連邦との関係性についてもいえることだが、地球の居する天の川銀河にガルマン・ガミラスを建国するのであれば――普通はどこかのタイミングで地球に連絡を取ってしかるべきだろう。これがなかったというのが解せない。

 古代と総統、地球とガミラスの関係性から言って連絡しない方が不自然

 

 

 

 と、ヤマトⅢは確かに壮大な設定やストーリーを擁しているものの……以前のストーリーとの整合性が取れていない。ヤマトⅢの中でも整合性が不完全

 好意的に見れば、時間軸以外は何とか整合性は取れるし、放送時間に限りがあるのだから不完全になるのは仕方がない。

 とはいえ、時間軸の整合性のとれなさや、キャラクターを踏まえた登場国家の行動などの矛盾は度し難い正直、ヤマトはストーリーが本格始動する前からズッコケていたと言わざるを得ないだろう