旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ボラー連邦群艦艇の特徴

 

 

 ボラー連邦艦隊はそのカラーリングや見た目、武装配置からある意味でヤマトⅢをヴィジュアル的に特徴づけた。また、わらわら湧いてくるその巨大艦隊は、従来のヤマトとは大いに方向性の異なる演出であったがボラー連邦艦隊は、その重責を良く果たしたと言えるだろう。

 

 

 

 武装配置

 艦首方向への全門集中が特徴的と言えるだろう。後方へはほぼというか全く指向できない艦がほとんどである。次いで、旋回しない事。そして鬼のようにこだわる格納式。これらが特徴と断言できる。

 

 

 戦艦タイプAや一部の艦のみ、いわゆるボラー砲=150度程度ほど旋回可能な艦首砲を備えているし、これはかなり長大な射程を備えているため有用な兵器しかし、これ以外はなぜか砲塔が旋回不能なのだ。それが艦首についているのみであるから武装配置としてかなり割り切ったモノ。

 艦橋は艦尾最後部に位置しているため――つまり、艦尾には武装がない。そのため、敵に後ろを取られた場合は回頭が終わるまではやられっぱなしの沈められっぱなし。例外はかなり少なく、バース星守備艦隊旗艦〈ラジェンドラのみ、一撃必殺並みの巨大な副砲を有し、これを以てガルマン・ガミラス駆逐艦を多数葬り去ったが、その程度。他の艦は艦尾方向へは武装が指向できない。

 さらに言えば、艦首ボラー砲以外の砲熕兵器は舷側方向へすら指向できない。反対に舷側に向いたそれは、艦首へ指向できないのである。やべぇ。

 

 ボラー艦隊の通常兵器はプレート式砲身で、これは砲口が大きい為に一門当たり通常火砲の下手をすれば4倍強のエネルギー投射を見込めるだろう。つまり、大抵砲塔が2基一組(2門一組)であるから艦首方向へ最大、敵火砲8門分のエネルギー投射量と言える。これは非常に強力であるり、破竹の勢いで進撃するダゴン艦隊を砲撃戦で圧倒する事に成功していた。

 そうであるのだが、旋回できないある意味では特徴なのだが、これが致命的に運用の幅を狭めている。

 上90度仰角+多少の俯角であるから狙いが定められないというほどではないし、巨大艦隊であれば自艦の砲撃不可能域の敵艦に対しては僚艦がカバーしてくれると期待できる。砲塔が平たい為に砲塔が敵の砲撃の的になることやうっかり被弾も少ないから有用なのだろう。きっと構造も比較的単純だろうから、機械的故障とは無縁に近いだろう。船殻を形成し防護に寄与するのだろうが――砲塔を旋回しない代わりの効用であるならばこれは考えもの。採用した際の利点がボラー連邦限定的過ぎるし、デメリットを排除できる勢力もボラー連邦限定と言えよう。

 味方艦の数を期待できるボラー連邦だから、どんな戦況変化でも一定程度踏ん張ることが出来るボラー連邦だから採用できた兵器他の勢力だと、多分このプレート式は運用に失敗する

 

 対空兵装、或いは副砲を多数持つのだがこれもまた、格納式。〈ラジェンドラ〉に関しては完全固定露出の艦尾副砲で、これも威力はバカ高いが使い勝手が悪い。

 先に述べたように、旋回不能で下手をすれば基部を駆動させなければ仰角俯角を取ることが出来ない可能性が非常に高い。艦首正面と舷側に͡コの字型に配置されているが、砲の指向性が低い為あまり役に立っているとは思えない。また、艦載機迎撃のためなのか、敵艦迎撃のためなのか、よくわからない使い方をされている。

 味方艦隊が巨大である前提であればこそ艦隊として弾幕を張って敵を寄せ付けないという戦術が可能になる。この兵装もその戦術を前提とした運用下ならば有効だろう。しかし、基本的には能力不足。

 或いは〈ラジェンドラ〉のように、どうしようもないぐらい多数の敵に囲まれた時。

 

 

 ミサイル兵装はあるのはあるらしいのだが、使用シーンはなし

 例外の一つはミサイル駆逐艦と言えるデストロイヤー艦で、ミサイルサイロから 次々とイスカンデルミサイルみたいな軌道のミサイルをぶっ放してゆく。結構敵を圧倒するのに有用な感だが、逆にサイロに集中砲撃を食らうと艦が爆沈してしまうのが難点。

 他の例は、戦艦タイプB。大型ミサイルを艦底部に一発格納し、複数隻がこれをぶっ放すと惑星を破壊出来てしまう。小型の惑星破壊ミサイルと言える。

 問題なのは、この艦が普通の戦艦である事つまるところ、前線に出ざるを得ない艦種という艦隊に内包された危険因子

 下手をすれば艦隊を巻き込んで爆発してしまいかねない。プロトンミサイルであるからミサイル自体の爆発力は意外と小さいのかもしれないが、危険因子であることには違いない。

 

 

 防護性能

 おおむねただ、ガルマン・ガミラスよりかは厚い傾向にある。意外とコスモタイガー相手に善戦したため、これは確か。

 一方で、弱点が明らかな艦についてはその限りではない。先に述べたようにデストロイヤー艦は集中攻撃を受けたため自分のミサイルで見事に爆沈してしまった。また、艦砲レベルであれば、被弾すれば普通に沈む。

 無理やり説明すれば、ビームや粒子兵器の類に関しては暗黒星団帝国のように防衛する方法があるのかもしれないが、一定程度以上のエネルギー投射には無力。まして、実弾の直撃にはむしろ脆弱になる。という事である程度描写に整合性が取れるかもしれない。

 この程度の防護性能でよくもタイプBにあんなやべぇミサイルを積めたなぁ!

 

 

 デザイン

 イモムシ。さほどかっこよくはない(特に、乗りたくなるガトランティスの美しさに比べれば)

 デザイナーの問題なのだろうが、正直イモムシにしか見えないし、暗黒星団帝国の時と大して変わらないデザイン傾向。まあ、あれよりかは、均整の取れたデザインに見える。

 

 戦艦や旗艦級戦艦は概ね紡錘形か葉巻型で統一され、多分航行する環境を選ばないだろう。また、艦首方向にしか最大火力を発揮できない=舷側を見せたら死亡の可能性大である、艦首方向以外を向く合理性がないという前提がある為、紡錘形や葉巻型は絶対的に敵艦に対して的が小さくなる。的が小さくなるという事は被弾する確率が当然下がる為、これはかなり筋の通ったデザインと言えるだろう

 他方で空母は扁平。そりゃ、艦載機を格納する上では普通に考えれば平らな方がいいだろう。奇をてらった形より、ずっといい。戦闘空母も、バルコム艦に関しては微妙なラインだが、通常型に関しては合理的な説明をしようと思えばいくらでも可能だ。ボラー連邦にはビックリどっきりメカは特になく、ブラックホール砲以外の超兵器もろくになかった。

 だからこそ、惑星間ワープミサイルという割に普通の兵器しか使ってこなかったボラー連邦らしいデザインと表現できるのではないだろうか。

 意外と、合理性のあるデザイン傾向にあると言えるだろう。

 

 

 艦隊の傾向

 誤解を恐れず、かつ直接的に言うならば……スターリン時代のソ連海軍〈大艦隊計画

 派手好きで自己顕示欲の塊みたいな男、スターリンはそれまでソ連が考えていた陸軍の補助としての海軍ではなく、敵国家と正面切って戦える大海軍を熱望した。

 理由はいくつもあり、例えば日独の大艦主義の拡大や英米の巨大艦隊、伊仏の小粒だが強力な戦闘艦隊等と戦う事を見据えれば当然大型艦は必要となる。或いは、海軍建設の父と称され大帝の尊称を戴くピョートル1世と言った指導者と肩を並べるにはスターリンが大型艦を海洋に並べる海軍を求めても不思議はない。

 

 前から持っていたものはガングート級戦艦3隻。 頂き物だと〈ノヴォロシース(旧名:カイオ・ジュリオ・チェザーレ、借り物に〈アルハンゲリスク(旧名:ロイヤル・サブリンの5隻。加えて、建造予定だった未成艦は戦艦クラスではソビエツキー・ソユーズ8隻(実際には4隻)21号計画戦艦24号計画戦艦27号計画戦艦等。

 巡洋艦クラスではキーロフ級マキシム・ゴリキー級。未成でクロンシュタット級重巡16隻、クロンシュタット級のリベンジであるスターリングラード重巡3隻。

 この内、戦艦8隻と重巡16隻を以て大艦隊計画を実行、列強と肩を並べる巨大艦隊を実現しようとスターリンは目論んだ

 

 アルハンゲリスクに関に関しては実際的に必要であったため微妙なラインだが、おおむねこれらはソ連が必要としたというより、スターリンが欲しがった艦といって差し支えない。特にソビエツキー・ソユーズ以降の戦艦建造計画や雨後の筍のように建造を目論んだ重巡(実体としては高速戦艦)は明らかに不要。

 かつてあったウクライナ(意外と強力な艦隊を有していた時期がある)の脅威が去ったと言える時期においてはまさに不要。列強と戦うにはソ連はあまりに国家として産業構造や技術水準が歪だった。

 

 無論、列強と戦い共産主義を守るには巨大海軍は欠かせない。近接する海洋を守る、島しょ部を守る、シーレーンや同盟国を守る、その意味では海軍は当然必要だし敵が巨大ならそれだけ自国艦隊も強力である必要が有る。多少分散されても艦隊が強力かつ総数として巨大であった方が有利。

 潜水艦は確かに脅威だ。造れるだけ造って海にばらまいたらいい。だが、潜水艦だけでは継続的な海洋におけるイニシアチブは保てず、ましてプロパガンダとしても中途半端。一隻一隻の火力は低く生存性も高くはない、活動域とその期間が限られる。しかも火力増強に目を向けると必然的に核兵器を使わなければならないが――核戦争の引き金を引くわけにはいかない。だって怖ぇんだもん。これではイニシアチブは取れないし保てない。

 まして敵を脅かすことはできても、国を守れない

 

 結果海"上”戦力の拡大はソ連にとって必要。前にも(暗黒星団帝国軍艦艇の概要の記事)述べたが――だからゴルバチョフあたりの指導者や軍部も大型艦の建造に踏み切ったのである。一定程度の大型艦はどんな国でも海洋に面している限りは必要なのである。大型艦とその周辺の艦艇を含めて充実した海軍力を養う事が大国のみならず必要な事なのである。

 セルゲイ・ゴルシコフが「国家の海洋力」で述べたところの国家の海洋力の構成部分である海軍、輸送船隊、漁業船隊、科学調査船隊等は後3者に関しては結局海軍力の充実がなければこれは安定し得ない。

 

 

 翻ってボラー連邦であるが、一通りスターリンの〈大艦隊計画〉

 明らかに巨大艦隊と戦うべくの艦隊編成である。それも、味方は少々の不具合があっても物量で押し通す気だ。また、大型兵器のキャリアとしての運用など元来的な戦闘艦の運用も行っている。艦はどうにも大型で、しかも圧倒的多数(ソビエツキー・ソユーズ級は元来8隻建造予定――8隻って……)という点も類似している。

 そして何より辺境への閲兵式に大艦隊を集結させて見せびらかしている。幾らガルマン・ガミラスが相手と言っても、精鋭がバース星に勝てない時点で大艦隊を集結させる必要性は低いのだが、ルダ王女奪還のためにハーキンスの第8親衛打撃艦隊とバルコムの本国第1主力艦隊に加えてゴルサコフの本国第2主力艦隊を派遣するオーバーアクション。明らかに戦力な過剰集中。

 他方、劇中で見えたバース星への囚人輸送も、考えようによっては輸送船隊の強固さを示したと言える。惑星ファンタムをガルマン・ガミラスより先に見つけたのも科学調査船隊の充実と評価できる。何より遠方までボラー連邦の勢力が伸びているという点が、ボラー連邦艦隊の巨大さと充実さの査証と言えるだろう。まさにスターリンが求め、ゴルシコフが述べた必要条件にばっちりだ。

 戦い方の傾向としては陸戦におけるソ連。ただ、艦隊の運用については〈大艦隊計画〉のそれ同様と言って構わないのではないだろうか

 

 

 戦術

 先に述べたように、陸戦風。物量で押し切るタイプで、しかも電撃戦とゴルサコフは述べていたが実際にはすべての敵陣に攻撃を加えているため正しくは縦深戦術これはソ連がまさに得意としたことだろう。頭より先に物量を効果的に用いる戦術(頭使ってないとは言ってない)に振り切った点、物凄くソ連っぽい戦い方と評せるだろう。

 

 バース星の場合は全艦隊を展開させて全艦全砲を用いた一斉砲撃と、戦術が異なるがこれは相手が機動性に富むダゴン艦隊であるからと言える。最初の一撃で出来るだけ敵を漸減ないし殲滅しなければならない――それがうまくいけばダゴン艦隊を圧倒できたはずだし、一時はうまくいった。

 ラム艦長の作戦勝ちだが、ボラー連邦本国のそれとは異なると言える。たとえるならば、後にソ連に事実上吸収されてしまうポーランドに近いだろう。時間軸で見れば大したことがないかもしれないが、その内容をよく見れば――ポーランド共和国軍も、陸海空全てが持てる力をフルに使い概ねの場合において最善の戦闘を行いドイツ軍相手に対等といっていいほどの大立ち回りを見せた。

 バース星もこれと同じ。

 

 

 偶然かもしれないが意外とよくスターリン時代のソ連をトレースした国家と言えるだろうし、その国家が擁する艦隊〈大艦隊計画〉として非常によくできていると言えるだろう。ヤマトⅢだし、ソ連っぽいし褒めたくはないが武装配置など非合理的と言い切れない点など、その艦隊構成など、褒めざるを得ない

 色々残念な面のある艦隊だが、しかしながら見た目とは裏腹に意外とリアリティのある艦隊と評せる。