旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ストーリー考察Ⅳ バーの一件、懲罰案件

 

 

 ヤマトⅢは乗組員の成長も描こうとしていたといわれる(単なる又聞き、未確認情報)。故に銀河系大戦の推移から言えば、枝葉といって差し支えないエピソードが度々差し挟まれていた。

 例えば第3話の南十字島の相原君と昌子さんとの出会いと危うくの逃避行。総統の内面的成長を表す第4話の御前会議でヒステンバーガーが命拾いするシーン。あるいはヤマトの火星圏での戦闘訓練、第5話ラジェンドラ海王星寄港から続く第6話の弔い合戦

 これらは東宝怪獣映画に挿入される人間模様・恋愛エピソードと同様で……あった方がいいかもしれないが、無きゃ無いでいいようなエピソードあんまり長くなると冗長になり、短いと脚本家の腕によっては挿入が無意味になる

 反面、効果的に短く挿入した方が重心を引き付けることが可能になるからチャレンジしたくなる気持ちもわかる。特に、ベースとして軽く見られがちな対象年齢低めな作品ほど、この手合いのエピソードに力を入れて格を上げようとする方向性が見られ――人間エピソードの投入について、シンゴジで頭を抱えたとされる庵野監督の気持ちもよくわかる。

 

 

 人間模様は作る側も、本気の製作者集団であれば頭を抱えて悩みに悩むだろう。他方、見る側もその苦悩が何となくわかるが同時に、うっとうしい。製作者側と感性が決定的にずれている場合は悲惨で……要は、人間模様は非常に考察しずらい要素である。 

 ヤマト2の考察時に第2話第3話のヤマトの改装や古代と雪の絆第7話第8話の空間騎兵隊との軋轢第14話のラストから第16話にかけての島とテレサのロマンスやテレサの決意第17話テレサのテレザートを以ての白色彗星侵攻阻止第18話のヤマト艦内の様子第23話第24話の古代と雪。そして第25話第26話のヤマトクルー周辺の描写を全くないし、ほとんど触れなかったが、それと同じ対応。

 よくよく考えれば、結構重要エピソードである第22話の都市帝国による月の砲撃と地球連邦の降伏にかけても……十分な考察とは……。

 

 という事で今回は色々すっ飛ばしてヤマトⅢ第7話、アルファ星第4惑星の一件に続いて、第8話の太陽冷却作戦とバーナード星の山上一家のストーリーもさっくり考察したい。

 

 

 

 第7話、アルファ星第4惑星

 アルファ星第4惑星はキャップの話だと白金族元素であるオスミウムが取れてちょっとした賑わいだった星らしい。オスミウムが地球の現代で指し示すところのオスミウムであるならば、これは少し話が変

 

 多分だけど、仮にアルファ星第4惑星が地球と似たような環境や成分構成や歴史をたどった惑星であるとすれば、オスミウムが単体で取れる可能性は低い。もっと言えばオスミウム自体はそこまで利用価値(利用価値と値段は必ずしも一致しない)の高いものではないのだから、コレをこれを目的に賑わうほどの大量採掘をするという事が正直合理性があるとは思えない。

 そこでオスミウムに焦点を当てると――天然ではオスミウムという金属はあの希少元素イリジウムと共にオスミリジウム、イリドスミウム、イリドスミンを形成する。しかも、その化合物はオスミウムの発見の歴史からわかる様に、プラチナと共に産した。という事実が判明する。

 つまるところ、アルファ星第4惑星がにぎわったのは本当はプラチナが第一の目的では無かったのか幾ら技術が高まったとしても、ほんの数年程度で鉱脈を全て掘りつくという可能性はゼロといっても過言ではないだろうにもかかわらず、なぜアルファ星第4惑星が廃れたのか

 

 無論、オスミウムイリジウム非常に硬い金属で波動エンジンの部品に使えるという事もあるかもしれないが、決して宇宙艦隊の縮小期ではない当時の地球においてその需要が低下するとは思えない。しかし、惑星を枯渇させてしまうほどの宇宙艦隊の建設は完成していない。これではますます廃れる理由はない

 

 

 一方で、プラチナが目的なら――実は第4惑星鉱山は、”廃れる理由”以外存在しない

 まず、工業的にプラチナは触媒として煤煙処理などに使われるが、23世紀の地球はガミラス戦役で地下生活=排気ガスが致命傷になりうる生活を経験している。恐らく、排ガス処理よりも、そもそも論的に排ガスを出さないエネルギー抽出を行っていると考えて妥当だろう。多分、あの透明なハイパーループの中を通っている車はリニアとかの電気自動車の類だろう。磁性体としても、恐らく採掘が海が干上がったことで容易になるであろう希土類に劣る。つまり、23世紀の工業においてプラチナはいらない子……

 他方で貴金属などの面――金やダイヤモンドと同じで非常に資産として価値の高いプラチナ。23世紀の物質文明の境地においては、あの白く輝き銀よりも扱いが楽な金属。これは魅力だろう。人間の贅沢に対する根本的欲求・追及からすれば、プラチナが23世紀においても価値が維持し得る余地がある、といえるのではないだろうか。

 であればこれは実は産出量の人為的低下する可能性が非常に高く確実となるのだ。

 

 先に述べた通り、金や銀やダイヤモンドなどの希少物質は資産としての価値を認めらている。この資産形成に関わる物質は、その重要性ゆえに意図的に市場の流通量を操作されているという――話があるらしい。という程度にしておいてください(怖いから逃げを打ちました)。

 つまるところ、どっからどう考えても、金や銀並みの扱いを受けるプラチナだけがバカスカ掘って市場に投入する必要性も合理性も妥当性もない。これを市場に大量投入となれば、少なくとも地金業者やジュエリー業者や投資会社が黙っていないだろう。企業同士で血を血で洗う戦争が起きていても不思議はないし、あんまりにも価格が暴落すれば地球で業界内で自殺者が激増していても不思議はない。

 

 もしアルファ星第4惑星でプラチナラッシュが発生し、市場にあふれることが確実となれば――

 全地球の業界人を挙げて阻止する他ない。阻止する以外の選択肢があるなら教えてほしいレベル。私が関連業界人だったら絶対に阻止すると、自信を持って申し上げる。

 恐らく、この惑星は宇宙開拓省の管轄だろうそうであれば、現代のように連邦の族議員が圧力をかけて宇宙開拓省なり、資源省(あるかどうかは知らない)なりを操作し同惑星のプラチナラッシュを強制終了させるとしても不思議はない。非常に危険なかほりのする話に容易に転じる。防衛軍だって様々な利用法のあるプラチナ、ある意味で軍事物資である貴重品を民間市場にドバドバと流されるのを傍から見ていて気分はよくないだろう。

 つまるところ地球上にプラチナラッシュを望む権力者は一人もいないのだ

 

 では世論はなぜ動かないのか? この手合いの談合じみた話は世論の反発を非常に強く受けるはずなのに。

 理由は想像しやすい――ガトランティスの直接攻撃や暗黒星団帝国の占領を受けてもなお、地球市民は火星やその他のスペースコロニーより地球を選ぶ。そして他の惑星については、地球の勢力圏内部の本来はくまなく知っておきたいはずの情報なのに、入手できる情報が又聞き程度の〈らしい〉程度の内容。にもかかわらず、特に疑問を抱かない。

 それじゃ世論は動かないだろう。基本的に世間というものは、問題の重要度より話題度の方に比例して盛り上がるものだし。

 さらに言えば、ヤマト2で発覚したように、地球連邦政府は結構情報操作をうまくやっている。この地球連邦政府の手にかかれば、余程気骨のある雑誌や新聞社でなければこれは暴けないだろう。

 

 

 

 さて、話はバーでの一件に移る

 一言、あれはマズイ。単純に監督不行き届きで救いようがない、更に大甘処分で――どうやらヤマト艦内は相撲協会よりはるかに風通しが悪いらしい

 

 初めに現場に遭遇した副長彼は新米クルー相手にはヤマト副長以上に航海班長だし先輩である。ガミラス戦とガトランティス戦とウラリア戦を経た歴戦の勇士としての風格を全力で見せつけてやればよかったのだ。そもそも論として、喧嘩を止めることは当然の事であり何ら問題はない。止めて当然。

 つまり、全てにおいて、新米クルーは島副長の言葉に従うべきだったのであり

 仮に、それで止まらないというのは、これはクルーの方が悪い。すべてにおいてクルーの方が悪い。露呈するかもしれない指導力の無さ以前の問題に、規律に従わない新クルーが悪いのだ。必要に応じて、戒告どころか、なんなら不名誉除隊でもしてやればいい。

 しかし、ちゃんと止めなかった事で副長にも責任というものが出てくる

 

 さらに古代艦長が途中から現れるその際に彼は静止を躊躇ったが――判断としては、わからんでもない。後に二人が語る様に、この問題の落としどころを見付けるのは非常な困難

 島は友人だし、ここでクルーとの信頼という副長との格の差を見せてしまえば島は存在意義を失う。だが、止めるべきだった。最低でもバーの主人の安全を確保してやるべきだった。

 しかし、折衷案というものは存在しえただろう。

 島副長は航海班長を兼務したままだし古代艦長は戦闘班長を兼務したまま。つまるところ、それぞれがその班長権限において乗組員を押さえつけたってよかったし、それで体面は保てたはずだ。航海班は航海班で結束していたし、戦闘班は戦闘班で結束していた。故に、それぞれの班長が同時に静止すれば十分喧嘩の終了が見込めた

 にもかかわらず、笑ってそのまま……。だから、話がおかしくなる。頭がおかしいぞ、二人とも。そしていつの間にか始まった戦闘に彼らは飛び出していった。

 

 おい、貴様らバーへの謝罪はどうした? 割れた窓やグラスやイスは補償されたのだろうか。これは防衛司令部の責任で何とかせざるを得ない。一体いくらになるだろうか。

 少なくとも騒動を大きくした雷電やキャップは懲罰決定だろう――と思ったがそういった描写はなく、バーナード星域で活躍しているのだから不問に付されたらしい

 それはダメだってば。最悪、喧嘩が起きるまでは何とか擁護可能。しかし、それ以降のバーやかかわった人物に対する関連の描写全てがダメ。

 もやはご都合主義の範疇すら超えてしまっている

 

 

 そもそも、ヤマトに二人の副長というのがまた疑問というか演出マターだって意味がねぇもん

 副大統領とか副知事が二人というのはあるが……どっちにせよ、結局は誰が上位であるかを明確にする必要は有る。いざという時の権限の継承というものはコレ、明確にしなければならない。

 また、軍艦というものはすでに細分化された組織であると考えられる。これを再統轄する長職とその次席というのが艦長と副長である。それをどうして副長を二人も設けて役割を再分割しようとするのか、どうせ中途半端になるのが判っているのに意味の分からない――救いようのない描写だ。

 また、島君が一体今までヤマトの作戦や戦略的運航の何に貢献したというのか非常に疑問である一方、真田さんに副長を任せることによって彼に不必要な仕事まで任せてしまっているのではないのか。ヤマトの機能を充実させる観点からすれば、すでに古代君が序列をすっ飛ばして艦長に就任している以上、島君単独で副長を預かるのが合理的な展開だっただろう。

 ゆえに、二人の副長というのはまったく、効果がない上に妥当性に欠く演出。残念無念、また来週。