ガミラス艦艇・軍の特徴
ガミラス艦の特徴は非常に小型である事。また、概ねにおいてずんぐりした艦体で背が高い。その割にはかなり高速で艦隊運動をする機敏さを持つ。
ガミラス、そのデザイン
デザインはみな生物的で、概ね爬虫類。デストロイヤー系艦艇はみなカメレオン顔だし、空母は無機質に見えた艦橋はみんなイグアナ顔。デスラー艦のみがその系統に乗らないが、これはもともとデスラー総統府の建物として設計されていた為例外中の例外と言えよう。
グリーンが基調で、ほぼ必ず差し色を入れる、結構気を使ったカラーリングであるといえよう。内装は円形で面取りをされており、キノコ的。例外はやはりデスラー艦のみだが、どことなく蜂の巣的なイメージで無機質と有機物の中間のイメージである。
艦の能力・砲撃/雷撃
残念ながら火力はかなり低い。砲力も雷撃力もかなり低い。何せ主兵装がフェーザー砲。ショックカノンとわざわざ表記が異なる為、恐らく意味合いが違うのだろう、スタートレックなどでは=高威力ビーム砲であるが――どうやらこれらより格下とみられる。さらに発射口自体が数が少なく、一部の艦艇のみに集中した雷撃能力が付与されているが、大半は砲撃による戦闘が主。この砲撃に関しても、あの無砲身砲が仰角を取った描写がなく、殆ど弾道的な意味でのゼロ距離射撃。
理由は、残念ながら一つには絞れない。
砲身の部材自体があまり十分な強度がない為、簡単に膅発事故と言うより砲身が破裂してしまい使い物にならない。という事が考えられる。ガミラス軍自体が精度の高い装甲板を造れない、或いは作る必要がないと判断したとあれば、当然砲身も強いものを造れず、明らかに出力の高いヤマトのショックカノンを防げないし、あまり装甲も打ち破れなかった。と、説明づけられる。
膅発を起こさせないためには初めから砲身がなければいい。だから無砲身にしてその代わりにかなり発射甲を大きくとり、出力を上げて威力と射程を担保した。ただ、結局艦の機関の出力が大したことない為残念ながら威力が足りなくなり、ヤマトにも暗黒星団帝国にも苦戦する羽目になった。
或いは、換装する手間を惜しんだという可能性もある。もっと言えば、砲身の価値としては当然、荷電や加速装置としてだろうが……何せ粒子では無くビーム(波)にウェイトを置いた砲であるとすれば、発振装置を砲塔内に置けばいいだけで砲身はそもそも必要ない。無い方が安全ともいえる。
何にせよ砲身というものに大きな価値を見出していなかったといえる。
一部長砲身砲があるが、これは砲口を見ればわかる通り、ラムジェットというかスクラムジェット。これを採用する理由としては、自由電子レーザーのような出力を可変できるレーザーを発射するため、特に電磁場の発生が必要だから――とか、そんな感じの理由をでっち上げられる。
こちらはまあまあ大型艦か、反対に砲自体があまりに小型な場合が多い。これは、必要とされる出力を満たせるエンジンを積んだ艦か、小さすぎて威力を担保出来ない砲の威力を担保するため特別に砲身を付けていると説明できるだろう。
ガミラスの戦術
ガミラス艦の標準兵装である、この仰角のほとんどとれない無砲身砲塔はかなり出来損ない。だって、そうとしか表現できないもの。
その代わり、徹底した高機動集団戦を行う。振りかぶった拳の力不足を助走で補うのだ。
つまり、敵艦隊よりも出来るだけ多数の艦を用意し、出来るだけ高機動を行い敵艦隊からの攻撃を避けつつ味方の攻撃に敵艦隊を晒す。速度を防御として、数を火力として艦隊を編成。
少なくともガミラス艦はヤマトと異なり、小マゼラン雲で集結したガミラス艦隊が即時白色彗星周辺へ前進することが可能。第一作で示されてようにワープをする場合、宇宙全体でばれてしまう可能性がある為、これを避けるには通常航行する他ないだろうが、少なくともガミラスのマインド的には隠密行動するにはワープを避けるはずで、それにもかかわらず白色彗星に追いついたという事はポテンシャルとしてかなり高速艦ぞろいという事が言える。
しかもシュルツの率いる冥王星前線基地艦隊が特攻をかました時、彼らは小惑星帯に突っ込んでいったし、特攻をかます前からあの小惑星帯に潜んで悠々と索敵を行っていた。ここから見てもかなり機動性が高いと結論付けられる。
快速かつ高機動と、とにかく足回りに自信のある艦隊であるといえよう。
ドメルの活躍のおかげでガミラスは航空戦力を重視しているように思えるが、実はそうでもない。アレは元々別個の戦域で戦っていた空母を呼び寄せたのである。元から空母を集中運用して投入すればいいのに、高速空母を2度ほど散発的に投入したのみで、第一作ではシリーズを通してまともな航空戦力との戦闘はヤマトは七色星団でしか行っていない。
常識的なシュルツがそうしたのだから、恐らくガミラスでは空母の集中運用は発想としてあってもあまり用いない手段なのだろう。ヤマト2においてもこの傾向は変わらず。
理由の可能性として挙げられるのは、空母の存在理由を艦隊戦力の火力増強ないし、防空と考えていた。と出来るだろう。戦艦を指揮艦やら敵大型艦へのメタに使うのと同じように、限定的な役割を与えられていたという事。
防空任務ならば当然、そこそこ数があればいい。200機も300機もあっても全部使うわけでは無いだろう。
反対に火力増強ならば、艦隊の補助戦力としての役割だから――こちらもそこそこの数があればいい。
雷撃力のないガミラス艦隊の雷撃を補完するならば第3空母のような雷撃専門空母が、火力を補完するならば第2空母のような急降下爆撃が相応しい。
拠点防衛の為の艦隊であれば、雷撃も爆撃も大して必要ない。自ら基地と連携して行えばいいだけであり、問題は敵艦載機群――つまり、第1空母の飛行隊のような戦闘機群が必要となる。このような限定的な使用であれば、あの戦力分布と構成は妥当性を得られる。
つまるところ、ガミラスにおいて艦載機は中核戦力や決定打を与える飛び道具ではなく艦隊の能力補完が主な目的と説明づけられる。
普通の国家にとって、航空戦力は極めて普通の兵器群である。しかしこれをある意味ゲテモノ的扱いと言うか、特殊兵装とするならば、生物兵器の多用傾向も当然と言えるかもしれない。だって空母って結構脆弱でしょ? 味方の防空能力に信用が置けないなら集中運用なんて危険すぎるじゃん? だったら常時大量に運用するよりも局地的に使った方が安心安全じゃない?
ガミラス帝国の特徴的なのは生物兵器の多用であり、第一はガス生命体。第二はバラノドン特攻隊。さらにヤマト2の宇宙蛍。これらはすべて生物兵器であり、元来宇宙に存在しているものの性質を幾らか変更した、ガミラスの科学力を結集したものだ。
生物由来の兵器は、その性質を解明するまでは一切対策が立てられない。本軍とは半ば独立して活動する、広がる、大いに恐ろしい兵器である。これが最大の特徴であり、利点だ。
味方はその危険性も有用性も弱点も一通り把握しており、知らぬは敵ばかりなり。推測だって難しい。物によっては自律的に動き、敵を襲うのだ。一回こっきりの襲撃なのか、周期的な襲撃なのか、相手が人間ではないからこそ予想が難しい。
他の勢力より特殊なのは他にも傾向があり、ドメルのような心理戦を行ったり、宇宙要塞を適宜配置してこれをヤマト迎撃に使ったりと、戦略的に地形を用いる傾向は興味深い。数でねじ伏せる系の艦隊編成を行う割に、力でねじ伏せるよりも頭を使って相手の足を掬う系の戦略を立てるところが非常に特徴的。
ある意味、リソースが地球と同様に集結に不安でかつ、専制国家である為に決戦兵器を汎用化できない。そのため頭を振り絞る必要性があるのだろう。
ガミラス最大の特徴
ガミラス軍の特徴はワイマール共和国やナチス・ドイツのような方面ごとあるいは戦線毎に、それぞれ赴任した指揮官が惑星基地や艦隊を統括して運用する点である。これはシュルツが割にオーバーワーク気味な地球占領の全権を任されていた点、ドメルの挙動から推測できる。史実に置いて艦隊規模が比較的小さい勢力だと、しばしばみられるタイプの運用だ。艦隊が敵大戦力との戦闘に供せないため重点を置かず、戦略拠点の奪取・維持に重点を置いてそのネットワークで面として制海権を得ようという事――だったはず。
ガミラス艦隊の特徴は快速・高機動だ。小型でそれを実現するには出来るだけ重要も軽くなければならない。これを考えると、紙装甲でも仕方がないだろう。しかも元から強い装甲板を造れない可能性が幾らか残るこの国において、強烈な装甲を求めること自体が無理な話なのかもしれない。
射程が短い、数が足りない、威力が低い。これらの不足を補うために必ず登場させるビックリメカやビックリ兵器、そして宇宙の地形を戦略的に利用して敵と戦うしせい。リソースが少ないからこそ、そのリソースを常に最大限に利用するのがガミラス軍。
しかし、最もガミラス軍に特徴的で最も性格を印象付けるのはこれらの要件ではない。
忠誠心、これこそがガミラスの神髄。
ガミラス軍最大の特徴は、総統の為ならいくらでも死ねるという忠誠心である。これは専制的でしかも支配力のあったズォーダー大帝でも敵わないところ。ガトランティスは最上級指揮官に関しては忠誠心は高いが、しかし下層まで行き届いているかは不明。
しかし、ガミラス人は第一シリーズにおいては諦観の面も大きかったが、総統の為に、ガミラスの為にヤマトと最後まで戦い抜いた。ドメルも横やりを入れたのは総統なのだが、結局ゲール君の方に怒りの矛先を向けた。
さらばにおいても、敗戦の原因をつくったのは他ならぬ総統なのだが、しかしタランは最後までついていった。
ヤマト2においては残存艦隊は総統の逮捕に際して、ガトランティス艦隊と一戦交える覚悟で出撃して、救出に向かった。ガミラスを失った理由は自分にあると告白した上での事なのに、彼らは冒頭から一年も連絡せずとも、すぐさまはせ参じた。
ぶっちゃけ、ガミラスにとってヤマトを倒す事など大した意味はない。だが、総統には意味のある事。それに命を懸けてガミラス人は付き従ったのである。
しかし、いつの間にか総統は自分で因縁を消化してヤマトをあきらめてしまった。それでも総統への忠誠心は尽きなかったのである。総統の気が晴れたのなら、それでいいとみんなが納得してしまったらしい。
納得できるんだ……。
新たなる旅立ちに至っては、ガミラス本星――母なるガミラスが爆発してしまったことよりも、総統がひざを折って母星の爆発を嘆いている事の方がガミラス人にとって重大だった。
ひざを折って嘆く総統に対し、心配そうなまなざしを艦橋クルーほぼ全員が向けていたのである。幹部から一般兵まで、皆が総統に視線を注いだのだ。
挙句、スターシャの為に艦隊を全滅に近いところまで追いやってしまうのだが、結局それでもガルマン・ガミラス建国まで行ってしまう。
総統の為なら常に士気が120パーセント。総統の元へなら白色彗星だろうが重力星雲だろうが、艦のキャパシティを超えてでもついていく。それがガミラス。
デスラー総統と言うのは不思議な人物で、意外と自分の弱みを平気で人に見せるところがある。しかも大して高官でもない相手に。案外謝罪もする。
彼が唯一、求心力で負けたといえば――神であるマザー・シャルバートのみ。
これは、元々ボラー連邦に支配されていたガルマン人の信仰であるらしいから、当然居合わせたガルマン系将軍はハイゲル将軍の射殺に動揺した。
反対に、元来のガミラス人には大した影響力はなかった様子。あの副官、普通に総統に銃を渡して、使い終わったら普通に受け取っているもの。彼はハイゲル将軍がどうなろうと、気にも留めていなかった。
この徹底した個人崇拝、それも国民が心から自然に心酔している。この総統への忠誠心・高い士気で無理やり艦隊のキャパシティを超えさせている。
これが実はガミラスの最大の弱点であり、同時に唯一に近い強みなのである。
ガミラスの考察――概論――
当ブログでは各論に入るまいに大まかに登場国家を把握するため、概論を設ける。
今回は、ガミラス帝国が対象だ。
国家名:ガミラス帝国
国家体制:共和政をベースとした独裁制(ファシズム的色彩を加味)
拠点:太陽系サンザーの第8番惑星"ガミラス大帝星”
主要動力機関:波動エンジン(かもしれない)
国家体制
総統による独裁体制。ただし、総統はヴィジュアル以外で貴族としての描写が強調されているかと言えば微妙なラインであり、単なる金持ちと見る事も高貴な出身と見る事も出来る。ブルジョアのようでもあり、昔ながらの騎士のようにも見える。
これは描写からは判断がつかない。
独裁国家にありがちなのは先軍政治で、最高権力者に対する個人崇拝を求める=ファシズムだが、ガミラス帝国もその例に漏れない。
一見すると民主主義からは極めて遠いようであるが、民主主義から独裁(独裁だからと言って必ずしもファシズムとは限らない事に注意)が生まれることは地球人の特にドイツ人やイタリア、スペイン人はよく知るところだろう。故にデスラー総統が民主主義に立つ独裁であっても全く論理の破綻はない。そこから転化してファシズムに至るのも不思議はない。何なら、国民から自発的に独裁を受け入れファシズム国家を作り上げたとしても、歴史上有りえる事。
女王が隣国に存在している以上、かつてガミラスにおいて血による統治=君主制が行われていても不思議はない。が、現状行われていない点とイスカンダルと没交渉な関係を考えると、ガミラスが君主制から脱した過程は比較的穏やかだったと思われる。
君主制から脱したのに結局、強力な指導者である〈総統〉を国家元首に据えたのはガミラス星が寿命を迎えた、或いは戦線が拡大し官僚機構を通していてはいつまでも国家運営が出来ないから――そのどちらかであろう。この場合、国民もまた独裁的なトップダウン的政治を望んでいた可能性が高い。つまり、〈総統〉が生まれる素因が存在していたという事。現状独裁でも、元来は民主的プロセスを経て民主主義を擁護する立場の行政官であったとしても不思議はない。
ただ、ガミラスの植民地運営のレベルの低さというか放置度合いを考えると、行政組織は脆弱だろう。結局大小マゼラン雲を緊急的にまとめてヤマトと対峙する事は出来ず、ヤマト2で総統が直接呼びかけてようやく招集できた程度。
行政機構が脆弱という事は基本的に官僚機構が脆弱という事。古代ローマや神聖ローマの様なタイプであると推測され、結果、各占領地や植民地あるいは下手すれば本国直轄地も行政の在地トップを中心とした部族的統治が行われても不思議はない。これは近代国家というよりも、中世の貴族政国家。正直、この手合いの国家で真の意味で統率がとれたためしはない。
ダメだ。この国ではヤマトに勝てない。
逆にいえば、高度な行政や政治の機構が存在して居ないからこそ、デスラー総統と各司令官の信頼で戦争が有る程度進んでいた。地球侵攻という少々乱暴なグランドヴィジョンも、グランドヴィジョンを示す事自体に意味があった。という表現もできる。
当然、ガミラスの科学力があったればこそ、実現可能な範囲のグランドヴィジョンではあるが。
国家のモチーフ
モチーフは当然、ナチス・ドイツだろう。外観的な要素は概ねナチスだし、デスラーという名前やシュツルをはじめとした他の将官もドイツ的な名前である。また、地球を求めたのも東方生存圏を求めた彼らにイメージとして近い。
ただ、内情は先に述べたように神聖ローマ帝国や或いはポーランド王国に近い。曲がりなりにも行政機構がしっかりしていたナチスとは、大分違う。
地球侵攻・戦争の動機はナチス・ドイツの東方生存圏を大きくイメージさせるものであるが、東方生存圏はドイツ民族の生存圏確保であると同時にドイツ民族の亜流的民族を住まわせる事を念頭に置いていた為、少々ガミラスの行動とは性質が違う。どちらかと言えば、ブルガリア・ツァール国やルーマニア王国のような、彼らはなんとかして領土拡大しようと、生存圏を広げようと必死に努力していた国に近い。動機も人口が少なかったり、隣国が強力だったり、様々な理由で今まで勢力が拡大できなかった国々である。ブルガリアに至っては建国当初から列強の思惑に振り回されたから、多少は可哀想な面もある。
ヤマト2は完全に亡命政府であるから最早何と表現のしようもない。よくある亡命国家一般。国家元首ないしナンバー2の政府高官を中心として複数人が集まり、それを承認する別の国家が存在すれば十分成立する。
デスラー総統
デスラー総統は、ガミラスをそのカリスマ性でのみ支える恐ろしい男である。ガミラスの等身大であり、ガミラスそのものともいえる。彼の存在がガミラス帝国にファシズム的色彩を加える。つまり、彼の居ないガミラスは存在しない。
デスラー総統は不思議な人物である。普通のカリスマとは少し性格が違うのだ。
カリスマにありがちな凡人へのきつい一言があるかといえば、意外にもそうでもない。単純に余計な事ばかりするヒスに対しての当たりが強い以外は別に特段の描写はなかった。はっきり言って、同じカリスマ・天才タイプのドメルがものごっついパワハラ男であることを考えると、むしろ穏やか過ぎるくらい。
ヤマト2においても、しくじったバンデベルに対しても特に目立ったお小言もなく射殺。そして、他の面々への処罰はなし――責任の所在をはっきりさせて一点を断じるのはむしろ優秀な統治者であり経営者である。
大量処罰するだけが能ではない。それに、大抵の独裁者あるいはカリスマはこれでもかと非難し否定し、相手の心を潰す。場合によってはつぶしたうえで処刑する傾向がある。そんな平凡な独裁者やカリスマとデスラー総統は一線を画すのだ。
さすがに人間が丸くなったヤマトⅢにおいては、作戦継続に失敗した将軍をその場で射殺、なんてことはなかった――それどころか普通に総統の命令を無視したガイデルに対しても、激怒しただけで人格否定的な発言も特になかった。
統治を危うくし、テロ活動をしてきたシャルバート星に対しては果断な処理をする点は確かに難点。もう少し人道的な事を考えて欲しいが、テロ活動を当然と破壊活動を行うのは……そりゃ排除されるでしょう。人民を守る為、デスラー総統は心を鬼にしなければならない。
考え方が狂っているのかといえばそうでもない。地球人類を滅ぼさねば惑星規模の移住は不可能というのも、今日の地球人類の増加や他者に対する不寛容さを考えれば、地球のキャパシティ上……地球人を滅ぼすという考えは理に適っている。共存など、不可能なのだ。
ヤマトⅢで見せた平和への意欲は多少ねじ曲がってはいるが、力により周辺を征服するというのも極めて迷惑だが、強い国家の元にそれなりの自由を持った小国家群が存在するという形は一定の繁栄と平和をもたらすというのはありえる。例えばオーストリア帝国は諸族を内包していながら、基本的に血で血を洗う戦いを内部に対しては行わなかった。
『下品な男は不要だ』発言も、恐怖政治を体現するように見えるが、シーンの描写的には『本当に下品な男を始末していただき感謝します総統』というような様子であり、つまらないダジャレが本当にガミラスでは嫌われている可能性がある。総統は基本的に男気とプライドで構成された性格であり、案外愛というものに弱い。
結構なサディストだが、それ以外はどうも性格的にはかなり普通の人間と言える。だからファシズムの根幹たるカリスマになれたのかもしれないが。逆にね。
戦闘指揮能力は残念ながらあまり高くはなく、基本的に兵器の能力が負けていればそのまま負けてしまう事の方が多い。これは擁護できん。
カリスマの割に人間としてのデスラー総統は案外普通の人間であり、演説のタイミングでスイッチが入るタイプ。遠大な構想を持ちながらも基本的な人間性は一般市民と大差ない存在。しかも相手を一度信頼すると全く疑わない、少々の失敗もわざわざ尻拭いしてあげるアフターフォロー。
この人間的な弱さを平気で見せられる大胆さが人柄に接してもなおカリスマを維持できる原動力と思われる。
この圧倒的なカリスマ性を示す好例が、〈宇宙戦艦ヤマト新たなる旅立ち〉おける一コマ。デスラー戦闘空母の艦橋クルーのほとんどが、ガミラス星が目の前で爆発し消え去った事よりも、母星の消滅にひざを折って嘆く総統の方に視線を注ぎ、こちらの方が重要で心配に値する事と認識しているシーンがある。これは非常に印象的。
ヤマトⅢになるとそのカリスマ性に若干の陰りが見えるものの、相手は神であるマザー・シャルバート。しかも反乱を起こしがち、動揺しがちなガルマン民族はガミラス人とは少々歴史の違う道を歩んだ民族。
生粋のガミラス民族相手とは多少、勝手が異なるようになったのも仕方がないだろう。もっと言えば脚本は第一作の山本暎一氏だし、SF設定担当にはあの 出渕祐氏だから……。
デスラー総統について興味深いのは、総統という役職にこだわっている点だろう。だって、ズォーダー5世は大帝だし、スカルダートは聖総統だし、ルガールに至っては大神官大総統。みんな、自分の役職に色々箔をつけている。
その中でベムラーゼ並みに平凡というか、民主的側面さえ見える役職の総統をデスラーは選び続けた――意味があるとして受け取った方が、キャラクター設定に深みが出る。
もしデスラーがただの独裁者になりたければ、王を名乗ったってかまわない。実際に皇帝を名乗った大統領が中央アフリカにいた。隣国イスカンダルのスターシャは女王などと呼ばれることもある。だからこそ〈総統〉にこだわった点が特徴となる。民主的な色彩を持った〈総統〉だから、デスラーにとって意味があったのではないのか。
ひょっとすると、デスラー総統は独裁者になりたかったわけでは無いのではないか、とさえ考えられる。
第一作の時点で彼はあくまで民族の未来を賭けていた。当然、トップダウンでなければ物事は動かないだろう。独裁者は大抵、自国民に負担を強いるがデスラー総統は違う。地球人的には迷惑だが。
第一作で果たせなかった民との約束やヤマトへの執念によってさらばやヤマト2ではガトランティス側に付いたが、ガトランティスが一体民の為に何をしたのか。反対にヤマトクルーは民の為に何をしているのか――デスラー総統が民の事を思って凶行に走ったとすれば、あの心変わりは極めて自然。
ヤマトⅢにおいてデスラー総統は、わざわざ選挙を実施し総統に選出された。そんな事する必要はないのにあえて行った。それがデスラー総統がいかに民を第一に考えていたのか、民によって選ばれた存在であることに意義と誇りを見出していたのかという証として説明できる。
色々ブレることのあるヤマトの世界観だが、デスラー総統はブレることなく民に尽くす為政者を体現し続けていた。
だからこそ、カリスマ性を発揮できた。だからこそ、民は彼を信じてどこまでも付いていったのではないだろうか――それこそ、ヤマト援護に総統がはせ参じた際も。
文化面
下品なダジャレは嫌い。死刑に値する。ダジャレとウィットと何が違うのかと聞かれたら答えずらいが、米連邦最高裁判事であったポッター・スチュワート氏の言葉をお借りしたい。ともかく、スマートでない事は避けるべきなのだろう。
ともかくとして、文化は結構貴族的。ドメルの発言からすると、ガミラス帝国の指揮官は多かれ少なかれゲール君の様に前衛美術にはまっているらしい。当然の如く、軍の司令部に私物を大量に持ち込み、しかも前衛美術であることから……そういう豊かさをうっかり求めてしまう所は貴族的と言えるだろう。
飲酒文化(と思われる)が存在し、地球のそれと同じように景気付けであったりねぎらいであったりと様々な場面で見受けられる。
あの下品な将軍の様に、主賓や主人であろうデスラー総統よりも先に酒を飲み、挙句恐らくはお替りをしたのだろう――思いっきり泥酔してしまう。これをしてしまうというメンタル自体が、ある意味で飲酒をかなり普遍的なものとして捉えていると説明づけられる。
また、思いっきり酒を飲んでから戦闘を行うシーンがヤマト2においてみられたが、そこから察するにガミラス人は酒に強い模様。じゃあ、アイツはどんだけ酒を飲んだんだ。
最も特徴的なのは、恥のような文化がある事。無論、他の勢力にも同様の文化は存在するが、内容が特徴的。つまり、敗北自体はそんなに恥ではないという事。敗北に伴う醜態が、最大の問題であるという事。
デスラー総統は何度も敗北している。タランなど、他のガミラス軍人も割と何度も敗北している。だが、最後のワンチャンスを与えられたり、処刑そのものを回避した人間は多数存在するのだ。反対に、問答無用に処刑されてしまった人物もいる。
彼らの違いは何か――弁明の仕方だろう。
シュルツ、ゲール、ドメル、キーリング(ヤマトⅢの登場人物)らは戦闘に失敗し戦線を後退させた。だが、彼らは正直に失敗を謝罪し、挽回することを誓った。シュルツに関しては誓わされた感が強いが、ドメルも弁解はしたがこれは事実関係の説明だから多少方向性が違う。キーリングに至っては謝って青ざめただけで処刑を回避できた。
ともかく、彼らは自らの行動に責任を持とうとした。
他方でヒスとバンデベルは、わざわざ長ったらしい弁明やらを加えて自らの失敗を弁明した。これはかなり無様で騒がしかった、そう評せざるを得ない。
ヒスは散々太鼓持ち発言を開戦時からべらべらしゃべっておきながら、今更引き返せない段階になってから和平だ何だと叫んだ。バンデベルも凡ミスをべらべらと、失態を――と、二人とも普通に謝罪だけに収めておけばよかったものを、弁明しまくるから撃たれてしまうのだ。
ガトランティスの場合、敗戦は恥である。しかし、それが全力を尽くした上のやむを得ないものであった場合は必ずしも厳罰ではない。監視艦隊司令ミルからすれば、バンデベルは十分頑張ったように見えたのだろう、多分、バンデベル本人も頑張ったのだろう。しかし、ガミラス基準では長ったらしいし弁明をしたのがまずかった。
ガミラスにとっても敗戦は恥である。
しかし、より大きな恥は敗戦の責任をごまかそうとする事。責任の所在を自身から遠ざけようとする事だ。騎士道的あるいは武士道的というか、カタストロフィ的恥の文化と形容できよう。
この潔さ――デスラー総統自身のカタストロフィとガミラスのこのカタストロフィ的恥の文化の結合が極めて強固で、ガミラス人の熱狂と結びついたのは無理からぬことであろう。
波動エンジン
本当に波動エンジンを用いているかは不明。ただ、恐らくはガミラスも波動エンジンを主要機関としているだろう。場合によってはイスカンダル製の波動エンジンより性能が劣るか、量産タイプで性能がいまいちであるかもしれない。
が、波動エンジンは動力源(主発電機)としての使用で推進に関しては案外、核パルス推進だったりするかも。正直な所、全部不明。
少なくとも確定的なのが、ガミラスのエンジンはイスカンダル・地球の製作した波動エンジンより一段劣る。という点。
イマイチ、ヤマトに勝てなかったのは兵装が悪かったからなのかもしれない。が、エンジンが悪いのかもしれない。ともかくとして、数字だけ見れば有能そうな艦のスペックが生かし切れていない。常にガミラス艦は発電力ないしエンジン出力が不足で、足も砲も全て他の勢力より下方傾向にある。残念ながら。
この辺りの設定は示されておらず、描写にもない為不明だが……ガミラス人は波動エンジンを主に星間航行用の機関として見ていたという、2199案を採用すると波動エンジンの出力をノリノリで兵器の動力源とはさせなかった。だからいつも出力が中途半端だったと説明できる。波動エンジンはワープに使うだけの、ごくごく限定的な利用で、電源として動かした際のエネルギーはほぼほぼ航行用の動力に消え、その余剰を兵装使用に使ったという事。それでも電源としての波動エンジンは大出力だから今までは特に問題なかったが、ヤマトが波動エンジンを直接兵装の動力源として使った結果、明らかに後れを取ってしまった。
つまり、彼らは波動砲を見るまでは兵器にそのまま転用できるという発想はなかった。どっちみち、今までのやり方ではアレは作れなかった。という事になる。
波動エンジンの能力発揮の前提が航行に限定されており――本来は戦闘に用いる出力を提供する機関ではなかった。これ、悔しいけど意外と納まりのいい話かもしれない。
兵器
全般に火力不足な感は否めない。数は大小マゼラン雲を制覇しただけあって総力としては十分だが、火力も装甲もあまり質の良いものではない。ショックカノンのような特殊なものでは無く、フェーザー砲という実は単なる高出力なビーム砲が主兵装。これは心もとない。
また、戦力に関する考え方もかなり特殊な部類で、航空戦力に対してあまり理解がない。大型の戦略兵器もデスラー砲以外にないというのも、不思議だが――ガミラスはガトランティスやボラー連邦以上の数の力を以て敵を粉砕するのがベースの戦略を立てていた。と説明づけられるだろう。
確かに、個の戦力はかなり低い。肝心の数も、可及的速やかに集めるには一個一個の艦隊が少し小規模で不安が残る。そもそも、艦隊単位よりも指揮官ないし軍管区を基準とした単位での運用=ワイマール共和国及びナチス・ドイツ式の運用である可能性が高く……物量以外の正攻法では勝てる要素がどんどん少なくなってくるのがガミラス軍。
その代わり、生物兵器や特殊兵器等のビックリメカに力を入れた。軍全体の弱点を、アイディアで上回ろうという事だろう。若干精神論的だがそれなりに意味と効果のある方針で、後代ガトランティスとの同盟でガミラス式の奇襲・強襲戦は一つの戦略・戦術的完成を見た。
また、地形や要塞を用いた戦略的な戦闘も行うなど、軍としてのあたりの弱さをカバーしている。戦闘を一個の物として認識するよりも、戦略の一環として認識している、と説明できるだろう。
第一作において総統は本国を離れたから、ガミラスは壊滅した。さらばにおいて総統は瀕死であり、また彼が最期を迎えたからガミラスは滅亡した。
他方でヤマト2において総統は健在で健康、だからガミラスも強力だった。総統の意志が強固だったから暗黒星団帝国との交戦にも生き延び、帝国を再建した。総統が年を重ねて角が取れたから、ガルマン・ガミラスはその統治が若干困難になった。総統がヤマトと地球に心を寄せたからこそ最後の艦隊は共にヤマトの窮地を救うべくはせ参じた。
ガミラスがガルマン・ガミラスとなった時から総統の役割にはめどが付き、ガルマン・ガミラスがその姿を消したからこそ総統もまた姿を消した。
ガトランティス側登場人物考察
今回はガトランティス側の登場人物について、ざっくり考察というか――簡単な解説を行いたい。人物について簡単であっても解説を付ければ、彼らの行動をより合理的に解釈をする事が出来るだろう。
ちなみに容姿の傾向は肌はほぼ全員緑色。眉毛は非常に濃く、もみあげと繋がりそうなほどである点がおおむね共通している。髭についてはそれぞれの趣味らしく、生やしていることが地位など何かを示すわけではないらしい。
なお、英語での名称や音転写は適当にネットで拾ってきたので、その点は申し訳ありません。私、英語が出来ないため妥当性があるのか若干不明。
――国家元首――
氏名:ズォーダー5世(Zwordar the Great 英語版:Prince Zordar)
階級/役職・位:不明(君主国の常より大元帥と推定(推測・実務可)/大帝
年齢:不明(壮年後半ないし中年、ヤマト2の方が若干老けて見える)
容貌:緑色の肌、白い長髪、黒い虹彩、均整のとれた中肉中背
名の由来:ソード=剣
額際から一本、さらに眉ともみあげが一連で繋がった特殊な髪型をしている壮年ないし中年男性。ガトランティスの制服の内、彼のみが黒に白点線の特殊なデザインのものを着用している。また彼のみマントは、パルダメントゥムというローマ期のマントと同じく方で留めている。まさに元来の設定どおりで、ガトランティスがローマ的である査証な人物。威圧感によって高身長にも見えるのだが、意外にもデスラー総統より背が低いという事がヤマト2で判明する。
戦闘指揮能力と部下の統率力は実はそんなに高くない。だが、ガトランティスという国家自体の体力の高さで物理的に突破する傾向にある。残念ながら、火力だけは高い地球軍と反物質テレサには通用しなかった。
性格は大胆で一見ワンマンに見えるが、その実案外人の助言に耳を傾け、部下を簡単に信用する珍しいタイプ。どうも、元来の人間的性質はかなり純粋というか、真面目な傾向にある人物といえよう。ごく普通、或いは結構出来のいい指導者。人間としては意外と付き合いやすい感じ。ただ、その性格も劇場版とテレビシリーズで微妙に異なっている。つまり――
さらばでは、ガトランティスの打ち立てたイデオロギーを体現したような一部の隙も無いキャラクター。常に冷静で泰然自若としているために人間味がないのだが、その一方で欲や闘争性質が具現化したような存在。キャラクターとして大人物で敵の総帥に相応しいと同時に、人間という存在の負の本質を表す人物に仕上がっている。
他方でヤマト2では、強者には敬意を忘れない武人としての性質や、兵士を想う理想を求めた、為政者としての性格を加味。人間が求める人間味を備えた大人物で指導者としてはかなりの能力を有する。確かに宇宙という、マクロ視点では明らかにガトランティスとズォーダー大帝は混沌をもたらす邪悪な存在ではあるが、ガトランティスというミクロ視点では自己を確立し指導者として十分に役割を果たす為政者として描かれた。さらば以上の思慮深さが垣間見える描写も多数存在するし、特にテレサのテレザート爆破攻撃やヤマトによる都市帝国上下挟撃でも動揺しなかった。
最期だけは演出マターで、描写が一貫しなくなり残念だったが……。
大帝に関して一貫して問題なのが――一度信頼すると、とことん信頼してしまう、独裁者らしからぬ素直な一面。加えて堂々としており、多少不安材料を過小評価する傾向にある。これらの要因で色々と小さな采配をミスを重ねた。この性質・要因は人間として付き合う分には何の問題のもないのだが、為政者としては必ずしもプラスの影響をもたらすわけではない。
さらばでは、デスラー総統がただ単に敗北しただけでさほどの影響はなかったため、「死に場所を得たのだ」という反応でも問題はなかった。中枢に攻め込まれたのは痛かったが、都市帝国を切り捨て地球へと拠点を移せばいいという打算は成り立つ。部下もいまいち役に立たなかった程度で、幸いにして替えの手立てがいくつもあったのが劇場版なのだが……
ヤマト2ではデスラー総統を見逃した事により、ヤマトとの再戦を促し結果としてガトランティス攻略を助力してしまった。他にもテレサを過小評価し都市帝国を損傷させ、また信用してはならなかったサーベラー以下の残念な部下を信用しすぎて手札を全部失った。信用した分だけ、失望も大きくなるが、その失望で時々冷静さを欠いてしまうのもヤマト2におけるズォーダー大帝のマイナス面と言えるだろう。
デスラー総統の理解者
さらば、ヤマト2どちらにおいてもデスラー総統の実力を彗星帝国の中で最も理解している人物というのが特徴的だろう。武人としての側面を高く評価しての事だろう――それは武人と断言できる性格の部下がヤマト2のバルゼー総司令とゲルン提督以外にあまりいない事の裏返しと表現できる。
そっけないさらばであっても、ヤマトに関する一切を委任。更にその出撃に際し駆逐艦を下げ渡してフリーハンドでの戦闘を許した。監視艦隊司令ミルも厳密にはサーベラー総参謀長の命で張り付いていただけで、ズォーダー大帝としては監視すらする気がなかったように見受けられる。またその敗北に対しても一種の哀悼の意ともとれる発言をした。デスラー総統とは明確な上下関係を有しているとはいえ、一種の先輩後輩ではないが信頼関係を構築していた。
ヤマト2においてはデスラー総統を同盟国の国家元首かつ、同盟艦隊の最高位司令官待遇で処す。両国の力関係は判りやすくガトランティスが上なのだが、大帝は完全に武人としての総統に惚れ込んでおり信頼関係を早期に構築していた。正直、これは問題でガトランティス首脳部と軋轢を生み、サーベラーの策謀で総統は窮地に立たされるが――その際に彼は総統がビビッて逃げ帰ったと伝えられ……さすがに仕えて久しいサーベラーの事を信じてしまい、聞かされた内容の無様さに対しても激怒した。だが同時に、総統に対しての怒りよりも、ビビッて逃げ帰る人間を信頼した自分自身に腹を立てていた。ある意味でそれほど惚れ込んでいたともいえるだろう。
結局これは策謀であることが判明し、脱出した総統に対し彼の旗艦を返還することで一種の謝意を示した。大帝、結構義理堅い男である。
最大の特徴はよく笑う事。
さらばでは総統との戦闘中にイメージ映像としての初笑いをかました後、地球艦隊を壊滅させた後に再びイメージ映像として大笑い。都市帝国の戦闘開始時もヤマトをせせら笑い、最後は超巨大戦艦を出撃させボロボロのヤマト相手に勝ち誇った大笑いをかましていた。2時間で4回も笑ってるぞ、この人……。
ヤマト2に至っては第一話からガンガン笑いっぱなし。本当によく笑うというか、陽気なじい様。更に、ラストエピソードでは“7段笑い”をかました挙句に、「主砲発射よーいッ!! 目標は地球だァ!!」と艦橋でテンション爆上げ、笑いっぱなし。全エピソード中1/4のエピソードで1回は絶対に笑っている。
まさかの劇場版とテレビシリーズで概ね同じ割合で笑っているのだから、ある意味見てる方も笑うしかない。まるで黄金バットだ。
まとめると――
ズォーダー大帝は平時や、同格以下の敵と対峙する際の指導者・為政者としては十分な能力を持ちそれを発揮した。だが、火力狂信者の地球や反物質のテレサと対峙したが為に通常の判断を超えた判断を要求された……その判断を出来るだけの柔軟さや周到さに欠けた部分は否めない。しかし、基本的には気持ちのいい人物というか、憎めないキャラクターだろう。「力に頼るものは力によって滅びる」と自己紹介気味な発言をしたり、部下の失態にかなりぶちキレたり、テレサの特攻に驚愕したり、なんだかんだで人間味にあふれた人物と言える。小林さんの演じる役でよくあるパターンですね。
ガトランティスという存在の確かさや、その正統性を誰よりも確信していたガトランティス人がズォーダー大帝であり、ガトランティスの宇宙征服は例えるならば「マニュフェスト・デスティニー」として確立され、彼はその指導者としての自身を明確に打ち出していた。
この天命という認識はある意味人類共通の正当化の意識・手段であり、これもまた人間味。作品を構成するキャラクターとしてのズォーダー大帝は、徹底して人間の負の側面をむき出しにした人物と表現できるだろう。
なお、英語版でプリンスとされるが――これは王子様という意味では無くキングではないがモナークではあるという微妙なラインの元首に用いられる称号である。語源は古代ローマの第一人者(プリンケプス)。
多分、偶然だろうが……でかしたぞ翻訳担当の方。
――彗星帝国最高幹部――
氏名:サーベラー(Sabera 英語版:Princess Invidia)
階級ないし役職:帝国支配庁長官(ヤマト2、行政官)/総参謀長(さらば、ヤマト2。名誉大将推定)
年齢:不明(20代中盤から30代前半)
容貌:ピンク色の肌、白い長髪、、黒い虹彩、均整のとれた細身(さらば)/地球人準拠の肌、長い黒髪、黒い虹彩、均整のとれた細身(ヤマト2)
名の由来:サーベル
さらばとヤマト2ではまるっきり容姿も性格も異なる。一致しているのは長い眉毛の美女で、デコに黒縁で内側が赤い▼を張り付けている事。あと性格がきつい傾向にある事。
さらばにおいてはピンク色の肌色に白髪、白のほぼ全身タイツ身を包んだ性格のきつそうな雰囲気の女性。雰囲気通り、かなり性格のきついタイプで、ラーゼラーが常識的感覚でヤマトやテレサに懸念を示したにもかかわらず、臆病風と一蹴する。また、ヤマトに敗北したデスラー総統を揶揄した。
つまるところ、他者に敬意を払うという事がまるっきり欠如していたのである。その癖ヤマトが目の前にワープアウトすると口をあんぐり開けて固まってしまうという、態度と度胸が伴わない人物。ズォーダー大帝と似たような振る舞いをするのだが、しかして縮小モデルでしかない。結局彼女が大帝の情婦なのか、完全に仕事上の付き合いなのかは永遠の謎。酌をしていたシーンも業務時間中のスキンシップなのか、単なる業務時間外の飲みニケーションなのかは最後まで分からなかった。ゲーニッツの反応からして日常的なのは間違いない。
都市帝国登場以降、出番なし。
ヤマト2においては黒髪に地球人と同じ肌色、丈の長いドレスに身を包み裾を指に掛けたスタイルで常に登場。さらばよりも幾らかセクシー度合いの増した表情を見せる一筋縄ではいかない女性に設定変更された。のび太ではない。
性格は面倒で、他者に対してかなり尊大な態度をとる。が、利害が一致すれば一瞬にして手を組んだり、物理的にエスコートしたりと純粋に目的のために邁進するタイプ。実はゲーニッツとは遊び半分で権力闘争を繰り広げていた可能性もあるが……。また、割合適正に脅威評価を行うなど結構頭が良い。同時に物凄く根に持つタイプ。どうやら、第一話で総統に出したグラスを受け取ってもらえなかったのが決定的な決裂とみていいだろう――そんな個人的理由ってアリかよ……と思うが、それ以外に決定的決裂が起きるようなことはない為……あの行動が決定的とみる他ない。
ただ、うっかりボロを出してしまう事も少なくなく、デスラー総統に女の浅知恵を見破られるなど残念な面も多い。自尊心が強いからか、視野狭窄に陥ってしまうと立て直しが効かないタイプらしい。繰り返すようだが、基本的に利己主義で非常に面倒な人間。挙句にもの凄く悪いタイミングでひそひそ話を大帝に聞かれると、なんだか色々とままならない人。
最期は大帝の逆鱗に触れて生存を許されなかった。
ヤマト2において大帝と恋仲であったのかは不明で永遠の謎。
美人である以上、大帝も寄り添われて嫌な気がするはずはないだろうが彼女の性格を鑑みると、恋人にしたいと大帝が思うとは考えにくい……と思ったが、逆にありかもしれない。ただ常識的に考えて、彼女の行政や軍略の手腕に対して、惚れたのだろう。ただ好きなだけで高官に引き揚げるのはさすがに独裁な大帝もしないだろうて。
実際、ただの大帝付き女官であるというにはほど遠い働きをし、彼女は実際的に支配庁長官など果たすべき業務を理解し実行していた。しかも、ヤマト2においてテレサの行動や総統の行動に加えてテレザートでの戦闘の顛末も的確に見定めていたのである。結構まともな参謀。それを考えれば、大帝からすれば手元に置いておきたい優秀な女性官僚・軍属という認識だったとするのが妥当。
他方で、大帝は髪型こそアヴァンギャルドだが割とカッコいい。体型も均整がとれており、筋肉質な傾向であるから、後は年齢の問題だけだがこれに関しては何とも推測のしようがない。さらばの方は定かではないが――ヤマト2の場合、サーベラーが猛烈な嫉妬を総統に対して抱いていた事を考えると……好きな方ではあったのだろう。
そう考えると、彼女も結構可哀想。頑張ったのに、イマイチ評価されたわけではない。いつもゲーニッツとラーゼラーとまとめての評価だし……大帝がもう少し彼女を評価してあげれば、彼女の自尊心満足しただろう。そうすれば逆恨み的に総統も独房でシーツ無交換の刑に処せられる事も無かったのに。
サーベラーは、ズォーダー大帝と同様のある意味で人間味あふれるキャラクターで、更に人間の弱さと恐れを強調した人物に仕上がっている。
さらばでは懸念を示すラーゼラーを嘲笑ったが、その割に一応ゴーランドに連絡を取った。デスラー総統に対して不必要な牽制球を放ち、敗戦の報を受けて嘲笑う。そのくせヤマトが目の前に現れた途端に固まってしまった。優位な立場を保持し続けることを志向し、それを誇示して敵を牽制する……極めて人間的反応だ。
ヤマト2などの場合――本来は余程の失態でなければ、一定程度の評価を維持してくれる大帝にわざわざ気に入られようと血道を上げる必要は無かった。素直に言えば、その上で対処を行えば大帝も激怒こそすれ、サーベラーを都市帝国残留させたりはしなかっただろう。彼はワンマンではあるが、法を無視するほどの愚か者ではない。しかしサーベラー(ヤマト2およびPS版)は恐怖に駆られてこの簡単なことすら思い至らなかった。人間は何かしらに執着したり、或いは一度疑念を持つとそれは中々解消できない。人間の醜く情けない側面が強調され、不愉快というほどではないが、ある意味でむき出しの人間と評価できる。
大帝が古代の正反対に位置する存在であると仮定すれば、サーベラーは雪の正反対の位置に属する人間であると言えよう。
英語版ではプリンセスと銘打たれているが、これも恐らく大帝の英語版肩書と同じと思われる。
氏名:ゲーニッツ(Goenitz 英語版:Dyre)
年齢:不明(中年と推測)
階級/役職:不明(大将ないし元帥と推定・元帥は上級大将でも可)/遊動艦隊司令長官(さらば) 総参謀長(ヤマト2)
容貌:白髪、シェブロン系口髭、中肉中背、虹彩色不明(さらば)/白髪禿頭、メキシカン&サイドバーンズ、若干ふくよか、虹彩色不明(ヤマト2)
モデル(推測):カール・デーニッツで決まり。ほぼまるっきり名前が同じで役職も海軍総司令とゲーニッツと類似。
さらばでは単なる高官としての登場。青黒い軍服を身に纏い上品な雰囲気漂う、おじ様であること以外は特に特徴ナシ。他方でヤマト2では彗星帝国のかじ取りの一翼を担う大幹部へ出世した――代わりに前髪と思慮を喪失してしまった。服もマントこそ有しているが、緑の他の高官とさほど変わら物へと一般化。
彼の場合、サーベラーに負けず劣らず二つの作品でその容姿があまりに違うが、しかして眉毛ともみあげがあと一歩繋がっていない点は同じ。
さらばでは彼の働きは定かではないものの――ヤマト2においては対地球戦争の基本プロットを立てた人物であり、艦隊配置等を全て掌握した。ナスカの不甲斐ない戦闘や、自身より高位のサーベラーによって一部作戦が無理やり変えさせられたが、基本的には彼のプロット通りに戦闘は進んだ為、軍人(参謀)としての能力は高いと言える。
同僚のラーゼラーに対しては結構同情的で、人間的に悪い人とは思えない。一方で、デスラー総統に対する態度やズォーダー大帝の「我らは宇宙の王道を進めばよい。このまま真っ直ぐにな」というセリフを拝借するなど、微妙に驕った性格が影響し、脅威評価を時々ミスるのが玉に瑕。ただ、基本的には優秀な人材といえよう。残念ながら全部基本的な事しか、しない人だが。また、周囲に波風立てない姿勢は本来ならば美点としてあげられるだろうが如何せん戦時の軍人としてはマイナス面をはらむ。やはり、基本的な事以外をするのを周りがする事も嫌うが、自分がする事も嫌う傾向にある、と言えるのだろう。
サーベラー相手では敵わないが、艦隊のみならず陸上戦力も掌握しているガトランティスの最高幹部の一人。ゲーニッツは服装などから考えて登場人物中、大帝を除いて最高幹部の並ぶもののない立場と言って差し支えない。犠牲を強いる戦い方をあまり良しとしない傾向の、ごく一般的な認識の人物。その点は凄く普通な軍人。
サーベラーとは敵対しており権力闘争を繰り広げているが、残念ながら全く敵わない。もっとも、サーベラーも本気でゲーニッツと権力闘争を繰り広げているというより――他にやることがないから喧嘩している、ただ単に何となく、そりが合わない、という程度の感があって追い落とせるタイミングでなぜか互いに追い落としをしない。普段から結構二人で雑談をしており……下手すりゃ後輩の扱いに苦慮する先輩のようなじゃれ合いにも見えてしまう。
ゲーニッツ最大の問題点は、度胸が普通のおっさん以上のものを有していない点。テレザート戦などの好機に際してもあってもり、わざわざサーベラーを追い落とそうとしたり、彼女の縄張りを荒らすようなことはしないため、軍司令官としての側面よりも行政官としての側面の方が強いように思われる。この波風立てないように、たとえデスラー総統相手であってもそれなりに重んじる姿勢は、完全に官僚の行動原理だろう。平時ならそれで構わない、普通の相手ならそれで構わない、サーベラーがもう少し周りの意見を聞く人物だったらそれで構わない、だが全てのゲーニッツが普通の官僚であっても問題ない要素が失われた状態では……彼の波風立てない姿勢はマイナスに作用してしまった。官僚的な彼が都市帝国に加えられた奇襲攻撃の反撃を指揮できるはずもなく、失態を重ね……
なんだかんだうまく危機を乗り越え、第25話まで生き残ったが――動力炉に侵入したヤマト決死隊に対する対応でサーベラーに追随した結果、最期は大帝の逆鱗に触れて生存を許されなかった。
氏名:ラーゼラー(Razela 英語版: Gorse)
階級ないし職責:不明(中将、職責に合わせて大将特進と推定)
年齢:不明(壮年か老けて見える30代)
容貌:緑の肌色、肩までかかる長髪(ヤマト2のみリンカーンタイプの髭をプラス)、虹彩色不明
名の由来:不明
ゼラ(Zela)であれば、現在はジレと呼ばれる都市が存在する。ここでの戦闘報告でカエサルは≪来た、見た、勝った≫の名文句を元老院に送りつける事になる。小アジアのそれなりに繁栄した都市。別に関係ないと思うが。
さらばにおいてはライトブルーの服に裏地が紫のマントに身を包んだ服装で登場。ヤマトの存在に懸念を示すが、サーベラーに一蹴される。高官の一人としての登場で、どんなにキャラクターのボリュームを膨らませても方面軍の司令官であるとか、軍政部門の高官という程度。推測はほぼ不可能。
一方でヤマト2では髭を追加され、男らしくはなったが服装などの描写からワンランク落ちたように思われる。服から言えば現場指揮官のゲルン提督や第11番惑星の兵站基地司令と同格だが、色などの違いが判然とせずラーゼラーがどれほどの立場なのかは結局判らなかった。本国勤務だから多分、一番の高官だとは思うが……。
ヤマト2におけるガトランティスの主要人物で通称:三馬鹿の一人で一番位が低く、実は一番まともな軍人。そして、一番割を食っている人物でもある。
ナスカの報告を直接受け取ったり、都市帝国での戦闘で大帝に直接意見具申するなど、参謀部系の軍人としての資質が十分ある事を劇中で示した。軍政を司る人間なのか不明だし、その描写は特になかったが能力は恐らく及第点に達するとみられる。劇中の発言を考えて、多分この人がナスカにはっぱをかけたか――ナスカに度胸があるとは思えないため、何なら潜宙艦での最終攻撃を提案したのかもしれない。その点は割合に攻撃的な性質の持ち主と言えるだろう。
ゲーニッツが戦略の骨子を造るならば、ラーゼラーは戦闘計画を含むその細部をま
とめ、微調整するような立場と推測できる。
この男は結構可哀想な人物で、自分発信の失態で叱責されるより巻き込み事故の被害を受ける方が多い。残念ながらラーゼラーは肝心の場面でとばっちりを受ける傾向にあり……ナスカ自身の無能が引き起こした失態でサーベラーの八つ当たりを受けたり、デスラー総統失脚事件に直接関わっていないのに大帝に叱責されたり、預かり知らぬヤマト決死隊の動力炉突入の責任まで負わされるという最悪の展開。これは、哀れすぎるのではないだろうか……。
確かに、部下としてサーベラーやゲーニッツに忠言なりをする事をしなかったのはまずかったかもしれない。まずかった――が、ラーゼラーの立場からすれば無理からぬこと。ゲーニッツでもサーベラーに抗すことが出来ないのに、より階級の下なラーゼラーに一体何が出来ようか。
階級は服装から言えば、バルゼーより下であることは確実だが、類似した服装のゲルンが現場指揮官でバルゼーより下位である。これらを鑑みると、元来の階級は役職に見合う階級ではないため、アメリカでみられるように特例的に階級を引き揚げた。とするのが妥当だろう。きっと、ガトランティスの内部ではラーゼラーの能力は高いと評されていた、そう見て不自然はない。
女性に正式に軍人としての階級と実際の権限を付与しているという放送当時からすれば圧倒的先進性を鑑みて、ガトランティスは柔軟な組織体制と考えられ、能力の期待値を鑑みて役職に据えてしかる後に階級を調整するのは、非常に合理的かつ十分妥当な設定と言えるだろう。
この前提が正しければ彼の軍人や行政官としての能力は高い。しかしながら、劇中においてそれを見せる機会は極めて限定的で殆どなかった。仮に彼が活躍する場面があるとしたなら、もっと組織的に反抗する敵と対峙した時や、軍政を敷く際などだろうが劇中ではそんな機会はついぞ訪れなかった。
つまるところ――彼はただひたすら、運の悪い人だった。サーベラーの悪企みにどっぷり浸かっていたかは結局不明。大帝への報告時の感じだと、本当に知らず大帝と一緒に激怒していた可能性さえある。自ら降り立った降伏勧告も直前になって翻されるて泥を塗られるし、動力炉の一件でも主導的立場では無かったのだが……最期は大帝の逆鱗に触れて生存を許されなかった。
本当に、運の悪い人だ。
――現場指揮官――
氏名:バルゼー(Valsey 英語版:Bleak)
階級ないし職責:第7遊動機動隊司令・第6遊動機動隊司令(さらば・中将)/第一機動艦隊司令・シリウス方面軍司令(ヤマト2・大将ないし元帥・上級大将)
年齢:不明(中年と推測)
容貌:もっさりしたロン毛で太い眉毛に丸い目つき(さらば)/毛先鋭いロン毛、眉毛ナシの釣り目(ヤマト2)
モデル(推測):ウィリアム・ハルゼー ・ジュニア
さらばとヤマト2では容姿も性格も手腕も異なる。驚くほど乖離した、同一人物とは思えないほどのリファイン。
さらばにおいてはもっさりとした雰囲気の凡将で、非常に慎重で堅実な戦術を取ったが……力押しの地球艦隊相手には敵わなかった。見た目といい、戦う前の手抜きといい、まるで山岡士郎。
ヤマト2ではロン毛、いかつい容姿でモデルというより名前の由来だろうが、名に違わぬ猪突猛進系のしかも結構智将なキャラに仕上がっている。豪胆さ・強引さに加えて容姿もまるで海原雄山。英語版だと実は初期にはTirpitzと呼ばれていたらしい。
さらばでは太陽系へナスカを遣って偵察し、攻略作戦の勅命が下ったのちは艦隊を占領地の前線基地から発進させて太陽系へ突入。
土星圏に地球艦隊をおびき寄せて決戦を挑み、それまでの軍略と遂行と同様に戦闘をそつなくこなした――が、アンドロメダの拡散波動砲を前に艦隊のほとんどを喪失。地球艦隊が第二次戦闘宙空域到達時は「思う壺だ」とか、突破された時は「敵の隊列は乱れている、包囲してひねりつぶせ」と、さほど外れた情勢分析ではないのだが――波動砲の威力を、しかも拡散タイプだと知らなかったのが物凄く痛かった。
冷や汗が止まらぬ最中、大帝から「無様だぞ、もうよいどけィ!」と下げられてしまう。最後の出番は地球に対しての降伏勧告だったが、元から威勢のいい表情をほとんど見せていないバルゼーだが、思いっきり沈んだ表情を見せていた。
幸いにして地球に対する降伏勧告の使者を申し付けられたが、その後の消息は不明。帝国に帰還したのか、地球に残留し制圧戦を試みたのか、全くわからない。
この山岡士郎は基本的にはそんな悪い人ではないはず。ただ、一緒にいて楽しいタイプかは疑問。しかも、見通しが少し甘い。艦載機戦力の使い方が雑で敵うはずもない機数で突っ込ませるのは指揮官としてマズイなど、擁護は出来るがやってほしくない戦い方を平気でしてしまっている。しかしそれ以降の戦い方は普通で、力押ししてくる地球艦隊がおかしいと言っても過言ではない。本来守勢側がどうしたことか侵略軍張りの火力押しなのだから面食らっても不思議はなかろう。それでも味方の猛攻を加え続けたのだから――臨機応変という言葉は彼の辞書には無いのかもしれない。最初に立てた計画に固執してしまい、結果として大戦艦を大量に喪失してしまった。艦載機投入も、本人的には勝てると思っていた可能性さえあるような展開で、だとしたら理論派ではあるが実践能力に欠けるタイプかもしれない。
土星決戦の間、確証バイアスに陥っていたのは間違いない。だからそれ以前は勝ちを重ねて来たのだろうし、戦術は当たって来たのだろう。だがその一方で柔軟さにかけ、それを気付ける繊細さや内省は行わない――結果として、割合に雑な性格として結論付けられる。向上心が無いわけではないが、あと一歩及ばないタイプ。当然、柔軟性はない。
ヤマト2では初登場時から威勢のいい様子。絶対パワハラもセクハラも自覚なくやるタイプで、一方で相性が良ければ絶対的な信頼関係を構築し得るだけの度量のある親分肌だろう。確実に強力な軍司令官として、多数の隷下部隊をまとめられるだけのカリスマ性を有するとみて間違いない。静的な土方総司令の対を成す動的な指揮官として描かれていると言えよう。
興味深いのが彼の下す敵の脅威評価。あんまり仲の良くないデスラー総統がもたらした過大評価的な情報提供と、ナスカの奇襲に狼狽えた実情を鑑み、ヤマトを笑って侮る。ただ、第1話こそヤマトを侮ったが――しかしその実力が見え始めると一転して地球艦隊を含め地球勢力全てに十分な警戒をした。この躊躇ない評価改定は見事で、歴戦の武人といった雰囲気を見せる。特に第19話で兵站補給基地と第25戦闘艦隊がヤマトによって葬られると、「ヤマトかァ!」とむしろニヤリとキラリと闘志を見せた。
本国と盛んに通信を取り、第18話にて地球大攻略作戦の勅命が下るや否や、直ちに太陽系に突入。本国の掴んだ情報や、タイタン方面へ斥候を放つなど、敵情把握に努めた。故に、地球艦隊に対する脅威評価は非常に正確で、指揮下の艦隊では砲戦では確実な勝利は難しいと判断。航空戦力により大規模攻撃を指向し、ゲルンに部隊を任せ自身は地球艦隊の布陣の中央突破を狙った。
第20話にて計画は残念ながらヤマトによって阻止されるが、大して動揺せず。動揺した艦橋クルーを一喝し、むしろ速度を上げてタイタン基地へと進軍。作戦プロットを大幅に転換し、強襲してきたヒペリオン艦隊に対し第二艦隊を差し向けその必殺に近い兵器‟衝撃砲”発射を下令し血祭りにあげた。この心理的インパクトを囮にして、艦隊決戦は火炎直撃砲による戦闘一本に絞ることで、見事地球艦隊を密集隊形に誘導して狙い撃ちしたしたのである。
「地球艦隊の中央を突破する、全艦隊集結せよ」との号令からの〈アンドロメダ〉転進までの流れは、「拡散波動砲発射隊形」と応じる土方総司令の反応はまさに血沸き肉躍ると言った具合で、23万8000宇宙キロの長距離での火炎直撃砲用意と射程距離到達まであと15分の段階での拡散波動砲エネルギー注入、用意の命令。個の応酬は最早、芸術品と言っていい。
この海原雄山は非常に大胆で臨機応変な人物である。まるで戦国武将のような果断さと、勝利をつかみに行く貪欲さを見せたのである。彼は集中している時は極めて有能で比類なき名将かつ猛将となるのだ。
だが、しかし途中で緊張の糸が緩んだのか地球艦隊を侮る。このすぐに気を緩めてしまう傾向がバルゼーの痛いところ。集中が最後まで続かないのである、それゆえにコスモタイガー隊や土星の円環の脅威評価を完全に誤った。残念ながらバルゼー総司令は集中力が切れるとただの猛将で、名将というよりも前後不覚になってしまうのだ。ここはさらばと同じく、詰めが甘い。多分、拡散波動砲対策としてのメダル―ザ=火炎直撃砲を彼は待ち望み、何なら要求していただろう。そして、その威力を確信していたのだろうが……ちょっと自信過剰だった。予想通りの威力を見せつけ、舞い上がっていたのかもしれない。それで最後は嵐に巻き込まれるって……ちょっと情けない。確かに、勝利は自分の鼻先にまで近づいたのだから油断してしまうのは判るが……ねぇ。
さらばでも、アンドロメダの火力を侮り、艦隊を失ったが――ヤマト2では新兵器を利用することで、新兵器故の弱点がいまいち体感しないままに戦闘に投入していた節がある……。これは危険な行動としか言いようがない。仕方がない面もあるのだが、しかして実際に生じてしまうと最悪な結果をもたらしてしまう。本来はリカバリー方法を考えてから戦闘に用いるべきなのだが。その詰めを誤り、ヤマト2でも艦隊を喪失してしまった。
個人的にはハンニバルとか信長とかあのあたりな雰囲気を感じてしまうし、物凄く史実のハルゼー提督を思い起こさせる。
史実のハルゼー提督も、結構イケイケな性格で他人の好き嫌いが結構はっきりする方だったらしい。強固で足の速い戦艦=アイオワ級最新鋭戦艦を用意するように迫るなど、軍事的な見識は確かだがし、それを実現させられる人間的パワーと運を持つが……色々、かなり強引。
また、不見識から真珠湾攻撃直前に嵐に突っ込み、フィリピン沖でコブラ台風に不注意で突っ込み、沖縄周辺でコニー台風に襲われるという――どうにも荒天に縁のある人。だからその意味ではバルゼー総司令は完璧に近いオマージュ……というか、そこまでオマージュしなくてもというほど。
ただ、彼の場合は敵艦隊に対して敗北したという事はなく――強いて言えば台風には負けた。それぐらい。
バルゼー総司令は強引な戦闘の結果、地球艦隊を深追いして逆襲を喰らい、自艦隊は壊滅。残るは自らの旗艦ただ一隻となる。更にヤマト機動部隊が土方艦隊に合流直前の窮地に陥った。
ただ、立派なのはガトランティスを背負った軍司令官として、敗戦必至の状況でも決してあきらめる事はせず、せめてアンドロメダを道ずれにと砲撃戦を敢行。猛烈な砲撃戦を繰り広げたが――しかし、たった2門の固定砲台では敵うはずもなく、メダル―ザ爆沈の直前に炎渦巻く艦橋で倒れ、戦死。後を追うようにして旗艦も爆沈した。
「死して大帝にお詫びを……」
最期のセリフは軍人というよりも、まるで武人といった死に様だった。
氏名:ゲルン(Gern 英語版:Manic)
階級ないし職責:プロキオン方面軍司令(中将推定、職責から大将に一時昇進の可能性あり。ただし別の可能性も……)
年齢:不明(中年と推測)
容貌:青みがかった灰色短髪だが若干サイドにボリューム、もみあげとつながった太い眉毛、中肉中背
名の由来:不明
ミュンヘン地下鉄の駅の一つにゲルンがある。が、関係ないと思う。
服装を考えれば恐らく、ゴーランドと同格の指揮官だと思われる。ただ、艦長が本来の職責という可能性もなくはない故、判断がつかない。艦長から経験を重ねて昇進し隊司令にクラスチェンジするのは当然だから、それが早まっただけという見方も可能。
どちらにせよ、かなり真面目な航空指揮官でバルゼーの下でプロキオン方面軍を預かった。バルゼーとは違い、カリスマ性を感じない容姿だが一方で年齢が比較的高そうで、ラーゼラーよりかは信頼感というか安定性のある感じ。
描写から、絶対堅い性格で泣き落とし以外は通用しないと言った雰囲気。イメージとしては飲み会とか、偶然聞いた家庭の話でようやく部下との信頼関係が始まる感じ。
バルゼーからの信頼は十分あったらしく、事前の打ち合わせもそこそこレベルで、基本的にはゲルン自身が空襲のプロットを立てた模様。別に地球艦隊を侮る事も無く、またプロキオン方面軍の航空戦力だけでは地球艦隊を殲滅できないと思っていた節があり、ともかくとして合戦の露払いという確固たる意志を以て指揮に当たった。
何度も言うがかなり、真面目というか慎重な人物であると評せる。
言い方を変えれば、自分の分を弁えて居る人物ともいえる。物凄く汎用で凡庸な能力の持ち主で、苦境をひっくり返せるほどではないが、十分な作戦下地があれば能力は当然発揮できる。最も評価すべきは、劣勢でも戦場に踏みとどまろうとした点で、これを鑑みると戦意・士気は十分に高く信頼に足る。軍人というより武人に近い気概の持ち主だろう。彼我の評価も基本的には間違っていなかったし、それなりに早い段階で迎撃機を出そうと命令した点など、決して無能ではない。
ただ、堅すぎて普通過ぎて、臨機応変とは縁遠い。
恐らく過不足ない襲撃計画を立ててタイタン基地を空襲する予定であったのだろう。実際に攻撃が行われればタイタン基地は火の海になっただろう――が、直掩機なしの隙をつかれてヤマト機動部隊の大空襲を受ける。
これは痛い凡ミスだ。誰にでも凡ミスはあるとはいえ、本当に痛い……。なぜ故に直掩機を上げなかったのか……。或いは下がった状態を放置したのか……。しかも、密集隊形を取っていた事もあって味方護衛艦は身動き取れず、空母も身動き取れず。迎撃機を発進させようにも滑走路を破壊され打つ手はなく。事ここに至っては、普通の軍人では状況をひっくり返すことは不可能。何なら主人公パワーのチートを使っても挽回できなかったのではないだろうか。正直あの状態になってしまってはもう、敗戦必至……。
第一波空襲以降、必死にプロキオン方面軍を指揮するが、残念ながら力及ばず。敗戦の責任を取る形で艦橋で拳銃自殺、直後に自身の旗艦も後を追うように爆沈してしまった。「バルゼー司令、私は負けた……」
可能性として、彼がナグモー提督に代わり艦長からスライドした方面軍司令というパターンは割に自然な流れで存在し得る。劇中、自殺する直前のシーンでの呼びかけを重視すればの話。ガトランティスでは航海士が艦長の任を任されている可能性もあるから断言はできない。
この場合、そもそも艦長職の中でも最も激務であろう空母の艦長と航空艦隊司令官が兼務というのが驚きだし、無理がある。業務的に。副官も明確な人物はいなかった故、プロキオン方面軍は位置が秘匿されているというアドバンテージを失えば容易に崩壊し得る危険をはじめからはらんでいたと言えよう。元々指揮する立場にない人物なのに指揮をしたとあれば、残念さのぬぐえない詰めの甘い指揮もある意味では当然。この場合はゲルンばかりの責任ではなく、ガトランティスのそれまでの組織の問題もある。
ゲルンという人物は――非常に無念というか情けない面があったとはいえ……普通の指揮官。彼に難がなかったわけではないが、常識の上を行くヤマトの奇襲を受けては正直反撃はかなり苦しかっただろう。これらの事情を考え合わせれば――やはりものすごく、凡庸で真面目な指揮官であったと評すことが出来よう。
だから、ヤマト勝てなかった。凡庸じゃ、勝てんのだわ。「合戦の露払いだ、存分に叩きのめしてこい」とか「迎撃機を発進させろ、急ぐんだ!」とか、結構かっこよかったし、頑張ったんだけどね……。
氏名:ゴーランド(Goland 英語版:Torbuck)
階級ないし職責:ミサイル艦隊司令(中将クラス推定。さらばにおいてはテレザート星守備艦隊、ヤマト2においてはミサイル艦隊と指揮下の艦隊の名称が異なる)
年齢:不明(中年と推測だが、さらばの方が老けて見える)
容貌:緑色の肌、禿頭、エプロンないしオールドダッチ(髭の話)、中肉中背よりガタイがいい
名の由来:不明
ゴーランドないしガウランド(Gowland)は英語圏ではそう珍しい苗字ではない。ただそれだけ。
禿頭の髭面おっさん。コートを羽織り、恐らくラーゼラー辺りと同格。さらば、ヤマト2の双方でミサイル艦隊を率い、テレザート前面域でヤマトを迎え撃った。
容貌に作品での違いはほとんどないが、なぜだが若干ヤマト2で若返っている。性格は若干、ヤマト2の方が気性が荒い。どちらにせよ、意外と部下には丁寧な対応だし部下もそれなりの信頼を見せている様子。多分、構成員が全員荒っぽい性格の幕僚部なのだろう。だとしたら多分ゴーランドは大分馴染んでいたと思われる。
さらばではサーベラーの中途半端警戒情報にもかかわらず、結構本気の迎撃を展開。地形を利用した戦術でヤマトを苦しめるも、ヤマトの擬死行動に引っかかり一歩及ばず。波動砲によって艦首ミサイルごと押し流されて敗北した。
ヤマト2ではデスラー総統の下で働かされるという個人的に不愉快な状態で戦闘を強いられる。この不和を引きずり、戦闘方針はまるっきり一致せず、半ば当然の如く単独行動へ。地形を利用したり、中々に策を巡らし、別にまずい指揮を執ったわけでは無いが――さらばと同様に波動砲に破滅ミサイルごと押し流されて敗北した。配下のデスタールがあんまり使えなかったのも、痛い。
彼の周辺で特徴的なのが、ガトランティスの現場指揮官で唯一明確かつ固定の副官が居た事。また、彼のミサイル艦隊は規模こそ小さいが、別動隊を編成して隷下部隊として前線に派遣するなど、登場した艦隊の中で最も複雑な運用を見せている。
特殊戦闘部隊としての側面を強調した結果の描写なかもしれないが、登場したガトランティスの艦隊の中では一番、リアリティのある内幕を見せた。
さらばにせよ、ヤマト2にせよ基本的に豪快なおっさん。
乗る艦はバカでかいミサイルをひっさげ、ヤマト2では恐竜狩りでデカい重砲をぶっ放す。腕前は見事なもので、部下を一人襲われた以外は、周囲を恐竜で囲まれたがこれを瞬殺。部下も唖然として開いた口が塞がらない様子だった。逃げようとしていた一頭も躊躇なく狩ったのは野蛮人すぎて将の器にあらず、といったところだが。もっと言えば、どうせ破滅ミサイルで惑星ごと吹っ飛ばすくせに無駄に殺す点は、やはり将の器にあらず。ともあれ――とにかく豪快で、デカいのがお好きな人。きっとコスモ・テキサス州のご出身なんでしょう。
彼について残念なのが――完璧な作戦を立てただけで満足してしまう悪い癖があり、実際に戦闘に移した際の些細な問題に大してうまく対処できないなどの弱点がある。硬直するとか臨機応変でないとか、それ以前の問題。普通の対艦戦闘であれば問題なかったかもしれないが、相手はヤマト。形だけ優秀な計画はむしろ致命傷となる。
さらばでは職場環境は決して悪いものではなかったが、ヤマト2ではデスラー総統は余計な事をしてくるし、テレサはべらべらしゃべるし、イライラの種は尽きない最悪な職場環境で少将可哀想。だからといって恐竜を狩って挙句に星事粉砕する暴挙はどうかと思う。が、精神衛生は業務に大きく影響するため――演習半分のアンガーマネジメントなのだろう。
せっかく幕僚部が居心地よくても、その周りが最悪な職場環境では、最悪な状況がより強調されてしまい……残念な指揮になってしまうのもある程度は理解できる。
だが、詰めが甘いのである。実際の指揮が甘いのである。破滅ミサイル発射隊形に〈戦闘隊形F-Z〉なんてカッコいい名前を付けている場合ではない。ほぼただの横陣でしかないのにさ……。
散々批判してきたが、それは彼の人間的な部分の甘さが指揮に影響した場合の話だ。それが無ければ、もっと活躍できただろうし、もっと名将として名を挙げたはず。つまり――脇を締めれば、指揮官として決して落第ではない。むしろ頭が良い方なのである。だが何度も言うように――いかんせん豪快な性格過ぎてヤマトの脅威を認識するまでに時間がかかってしまった。頭でっかちなタイプにありがちな、作戦を立てるだけで満足してしまったのである。
多分、ヤマトの本当の脅威は……さらばでは彼自身の敗北直前に気が付いただろう。ヤマト2ではテレサに気を取られ過ぎて、最期までヤマトが脅威という認識はなかった節がある。自信満々で戦闘隊形F-Zでヤマトを攻撃し、‟不意打ち”とはいえ真正面から波動砲を喰らっちゃったし。
もう少し早くヤマトの脅威に気が付ければ、展開は変わったかもしれない。それじゃ映画として、テレビシリーズとして成立しないけどさ。
氏名:デスタール(Destar/Major Hyrex)
階級ないし職責:ミサイル艦隊分遣隊隊長(准将ないし少将クラスと推定)
年齢:不明(壮年と推測)
容貌:緑色の肌、栗色のロン毛、細い眉、鋭い目つき、細身中背
名の由来:不明
テスタール(Testard)はフランスにままある苗字。マレーシアの伝統的なヘッドギアであるテンコロクはDestarとも呼ばれる。ただそれだけ。
正直な話――ロン毛の金髪ブタ野郎と言っても過言ではない。目つきが悪いが、性格も悪い。あっちこっちに喧嘩売って、あっちこっちで言質を取られて自分で自分の首を絞めるタイプ。絶対に知り合いにすらなりたくないタイプだ。階級は判らないが、ゴーランドよりは下だろう。手袋がロングであるのが特徴的で、特殊工作班という事なのかもしれないが判らん。
特殊工作任務に就いていたメーザーがうっかりヤマトに捕らわれたのを良しとせず、帰還を拒否した。うっかり捕まるメーザーが一番悪いのだが、だからといってテキトーな理由を付けて帰還を拒否するというのは……仮に、ガトランティスの軍法に捕虜になってはならないというのがあるのならば、メーザーも初めから諦めただろう。メーザーが洗脳されたのではとデスタールが怯えていたのなら、仕方がない。しかし、そうではない。捕虜になった軍人に関してもし、テキトーな事言っていびったのであるならば、むしろデスタールが軍法会議にかけられるべき。
コイツのしでかした最大の失態はヤマトに関する資料・試料を得る機会を自らサルガッソにぶち込んだ事だろう。
もしコイツがメーザーの帰還を許したならばヤマトに関する大きな試料を得ることが出来た。これは非常に大きなアドバンテージを得るまたとないチャンスだった。なのにもかかわらず、古代進にすら思いつく事であるのに実行しなかった。先にも述べたように無論、ヤマトクルーに洗脳されて艦内で暴れる危険もあったが、それはそれで単純に隔離しておけば良かっただけ。
最期は接近するヤマトに対し突っ込んでゆく。残念ながら破滅ミサイルの発射許可が下りていなかったのか、策の無い状態でヤマトを迎え撃つ。しかも、ミサイル飽和攻撃を使用ともせず、散発的に攻撃を行い、接近された挙句にパルスレーザーで装備したミサイルを誘爆させられるという物凄く残念で救いようのない戦闘を見せた。戦闘の残念さはナスカよりひどい……。
普通に考えれば思いっきり無能。無能中の無能、ナスカと同格かそれ以上のベストオブ無能だ。
ただ――無謀を判っていながらヤマトに突っ込んだのは、メーザーに対して威勢のいいことを言っただけの事はあった。と言っておく。
他の部下があまりにも可哀想だが。
氏名:ザバイバル(Zurvival 英語版:Scorch)
階級ないし職責:機甲兵団 兵団長(中将ないし、それ以上)
年齢:不明(中年と推測)
容貌:緑色の肌、ベースはオールドダッチだがサイドバーン的な左右の広がりを持つ髭、大柄で筋肉質
名の由来:不明
どう考えても英単語のサバイバルが由来だろう。違ったら逆にびっくりだ。
テレザート星内部表面に展開する陸上戦闘部隊の指揮官。さらばにおいては突如戦車軍団を率いて登場、ヤマト2においては角が生えた笹かまの先端だけみたいな形の司令本部に拠して空間騎兵隊を待ち構えていた。
よくわからないのが部隊名称で、さらばでは〈テレザート基地突撃格闘兵団〉としてテロップが出たが――他方で、ヤマト2においては思いっきり錯綜し統一名称がない。ただ、大帝にテレザート展開の報告を入れた際に〈ザバイバル機甲兵団〉と連絡将校が告げていた為、一応兵団という点では合致。よって、ザバイバルは複数師団を束ねる結構な高官としておくのが妥当だろう。
思いっきりガタイのいいおっさんで、しかも結構豪快な戦闘展開を行った。が、性格は恐らくナスカと同様に結構ビビり屋。戦闘スタイルや方針はどの作品でも一致しているが、容貌はさらばとヤマト2で微妙に異なりる。
さらばでは戦闘服はタイツっぽくヘルメットが幾らか小さい。加えて眉毛が太く目つきがギラギラ。
他方でヤマト2では幾らか戦闘服がゆったりし、ヘルメットが多少大きくなったのか眉毛が隠れてしまっている。一番の容貌の違いは顔の傷で、ヤマト2の眉毛のない何となく頼りなさげな雰囲気を、鼻梁から左頬骨の下あたりにかけて大きな傷が払拭――出来ているというほど、目つきがりりしくないためなんとも頼りない。これじゃサーベラーに見捨てられる。
さらばではヤマト迎撃にT-2を発進させたが、ヤマト2では登場ナシ。後者は空間騎兵隊の油断を誘う効果があった――そしてさらば、ヤマト2共に大平原に空間騎兵隊が到達したタイミングで大戦力を投入、これを砲撃。物量・火力で空間騎兵隊を押しつぶそうとするも、意外にも頑強に抵抗されて第一波攻撃は不発に終わった。そこで大規模な増援を投入し、比較的劣勢な空間騎兵隊を更に劣勢に追い込むことで、一時は押し戻す事に成功。
しかし直後、ヤマト工作班の多弾頭砲が炸裂。これには敵わず、損害多数で自身の指揮戦車のみが残存。事実上の敗北を前にガトランティス人には珍しく怯えたようにして撤退、それを同じくガタイのいい青年である斉藤隊長に追撃される。
空間騎兵隊員を幾ら排除したのかは不明だが、結構頑張って一対一の肉弾戦に移行――しかし、土壇場で落とした自分の銃で撃たれて絶命。倒れた際は顔面が地表にめり込むほどで、だいぶガタイが好い事が判る。
元来はゴーランド艦隊と共同歩調をとって敵に当たるという戦術をとっていたというのが妥当な推測だろう。しかし、ゴーランド艦隊はヤマトに敗北し、ヤマト2では後詰のデスラー艦隊がサーベラーの策略で引きはがされてしまった。この時点でザバイバルは極めて劣勢な状況に押し込められたと言えるだろう。増援を送らないというのは、ゲーニッツが言っていた通り、見殺し状態。
そうはいっても、ザバイバルは割とうまく戦闘をやってのけていた。つまり、逐次戦力投入では無く、機を見計らって大戦力をドバっと投入するセオリー通りの戦闘を行い、平野の空間騎兵隊が隠れる場所の無い地点で押しとどめた。
驚くほど普通、セオリー通りの戦闘。セオリーになっているという事はそれだけ汎用性が高いという事であり、全然間違った判断ではない。むしろ褒めた方がいいレベル。加えて空間騎兵隊は生身での突撃で自身は大戦車軍団での戦闘。これは空間騎兵隊を圧倒できて当然だっただろうし実際――多弾頭砲さえなければ、このまま押し切る事も出来ただろう。
ここまでは良かったのだが……ヤマト工作班の上陸に気が付かないという失態をしでかす。基本的に戦闘計画が甘く、しかも憶病が悪い方に作用しがち。まるで陸上版ナスカだ。根本的にビビり屋であるから空間騎兵が反撃に移ると途端に後方に引っ込んで身の安全を図ってしまった。そのくせ戦闘方針自体は変えなかったため、部隊を敵の攻撃にさらすばかりか突撃させる形になってしまい全滅。これ、部隊全体に安全策を取らせれば慎重な指揮官と云えたのだが、自分だけ後方に逃げたのだからビビり屋としか表現できない。
残念ながらあまり面白いエピソードのある人物ではないし、語るほどの中身の厚いキャラクターになる要素もない。ガトランティス人なら戦って死ねとは2202のゲーニッツのセリフ。ザバイバル将軍、耳に痛かろう
氏名:コスモダート・ナスカ(Cosmodart Nazca 英語版:Naska)
階級ないし職責:偵察遊動艦隊司令(ヤマト2のみ、准将ない少将)
年齢:不明(青年から壮年の若い方)
容貌:緑色の肌、ほとんど青な黒髪、もみあげとつながった眉毛
名の由来:不明
ナスカという語は≪ナナスカ≫つまり、「つらく過酷な」に由来がある――とネット検索でかかった立正大学地球環境科学部のPDFの冒頭にそう書いてあった。他にもそう書いているサイト多数。
容貌は若年風で、しかしミルのような女性らしさは全くない。意外と襟足が長く、前髪もガトランティスの短髪の中ではちょっと長いように思われる。これが眉毛ともみあげがつながっている要因なのかは不明。威勢のよさが目つきから伝わるような感じで、意外と容貌の年齢層が高めに描かれているガトランティスのでかなり異質。
なお、さらばでは名前が出ただけで出番なし。
一方でヤマト2においてはモブの士官と大差ない服装で登場するが、キャラは濃くヤマトやヤマトを恐れるデスラー総統を侮ってあざける。その一方で冒頭からヤマトに牽制攻撃を仕掛けたりと大活躍。金星のエネルギー中継基地を破壊し、地球全土を停電に陥れた。さらに第11番惑星守備隊に対して大攻勢をかけて一時は占領寸前まで作戦は達成度を高める。
意外と普通な指揮を見せた。
しかし、救援に来航したヤマトに対し、最初の遭遇戦のままの認識でいたため脅威評価を誤る。「ヤマトだとぉ? 小癪な叩けェ! 11番惑星に近づけてはならぁん!」と、大戦艦をヤマトに差し向けるも全て沈めらる。沈められたのにそれに気が付かないのだから情けない。自発的にデスバテーター隊が迎撃に向かったが……部下の方が有能じゃないか。更に陸上におろした装甲歩兵戦闘車も壊滅。幸いにもヤマトが砲撃をミスったおかげで旗艦の中型高速空母は無傷であったが、護衛の大戦艦を散開させて襲撃させるもこれも全滅。冷や汗タラタラで「引き揚げろぉ!」と、醜態をさらす。
挙句にシリーズ冒頭で臆病者と罵っていたデスラー総統に大帝へのとりなしを願うなど、かなり情けない姿も見せた。散々臆病だ何だと陰で罵った後だから、やっぱり情けない。
この敗戦はガトランティスの恥辱とされた。そのおかげ様で本国では上司ラーゼラーがそのまた上司サーベラーにこってりと絞られ、そのあおりを食らって徹底抗戦を擦る羽目になる。しかも劇中には登場しないからさすがに可哀想――そんな中でも最後のリベンジとして潜宙艦を以て決死的奇襲攻撃を敢行。
だが、密集隊形を取ったり通常航行のまま作戦域に向かったりと、一々凡ミスを繰り出す。当然、敗死。
正直な所、作戦展開的にはこの男は割と普通で及第点レベル。意外な事にね。
まずもってデスバテーターで第11番惑星を空襲。これは直接陸戦隊を下して大反撃を受けたり、基地砲台で艦隊に損害が出ないようにという、極めて当たり前の作戦展開である。更に、デスバテーター隊は周辺域までを警戒空域として巡回していたようで、これは加点要素。ヤマト接近に対して、残念な警戒意識であったとはいえ一応戦闘艦を差し向けたのも、間違いではない――ヤマト相手では、戦力分散は明らかな失敗だったが。
徹底した空襲の後、大量の陸戦隊を生身ではなく装甲兵員輸送車で送り出したのもポイントが高く、そのまま機甲師団同士の野戦もできたし相手が生身なら押しつぶすことも可能だった。ここまでは、物凄く筋の通った合理的な作戦。
だが、ヤマトとコスモタイガーの接近に対する警戒意識が低く、結局は接近を許してしまった。第11番惑星相手の戦闘にもヤマト相手の戦闘にも集中できなかった。これらは仕方のない面があったとはいえ……マイナス要素。結局、将来的には有望株な指揮官だったかも知れないが第11番惑星の時点ではただの凡人。
そりゃ、頑張ったのは認めるさ。それなりにうまくやっていたのも事実。しかし、積み重なった己のおごりと詰めの甘さの結果、全部台無しになってしまったといえよう。
とはいえ、やけっぱちとしても逃げ帰らなかったのはガトランティス軍人として評価できる。一度は撤退した事は変えようのない事実だし、総合的に物凄くレベルの低い評価だが。
ちなみに、ナスカにとっては過分にも一応ハゲの副官を付けてもらっているようだが全く役に立たない。途中でヤマト接近の警報を伝えたザバイバル戦車軍団との通信要員の方がよっぽど副官っぽい動きだし、副官はナスカの隣にいるだけで全然動かないため――本当に副官なのか永遠の謎。
氏名:ミル(Miru 英語版:Morta)
階級ないし職責:監視艦隊司令(推測困難・中将か大将格扱い)
年齢:不明(青年の範疇だろうが、かなり若年と推測)
容貌:緑色の肌、黒い短髪、華奢で長いまつげに細い眉(さらば)/中肉中背で太い眉(ヤマト2)
名の由来:不明
ミーリ(миль)はロシアの苗字で、英語読みするとミル。デスラーを‟見る”からミル、なんつってな……。
さらばとヤマト2では、立ち位置やデスラー総統との関係や容姿がまるっきり異なり、服装こそ大した変更がなかったがゲーニッツのキャラリファイン以上に別人に仕上がる。だが、ベースとしては美少年で白い軍服に身を包み、基本的に総統の気迫にボロ負けする気の弱さが共通。さらばとかプレステの方だと有能そうなんだけどね。
さらばにおいてサーベラーの命でデスラー総統を監視するべくデスラー艦に乗り込む。作戦の基本ラインについては特に何を言うでもなく、傍観者だったが――駆逐艦を犠牲にするヤバい作戦に対してはさすがに異議を申し立てる。だが、結局退けられる。以降はほとんど発言ナシ。
白兵戦でアンドロイド兵部隊が壊滅した後、総統の敗北を確信。顛末を大帝に報告すると退艦しようとしたところを総統に射殺される。
違う、射殺じゃない。意外にもガッツがあり、執念でリベンジに立ち上がるが、ミスって森雪を銃撃――デスラー総統怒りの連続狙撃を受けて完全に死亡する。
ちょっとかわいそう。
軍人や行政官としての能力としては多分、高い方。作戦指揮能力は多分、高い方。監視艦隊司令という立場であるから監視する相手の指揮で損害が出たとしてそれがド下手なのか乱暴なだけなのか判断せねばなるまい。非積極的な指揮だったとしてそれが臆病なのか慎重なのか判断せねばなるまい。それを判断するには自分が一通りのガトランティス流の作戦プロットを把握しておく必要があるだろう――少なくとも数理の上では多彩な戦術を頭に入れていると言って差し支えないはず。兵棋演習では高評価を納められるだろう。それが実践に生きるかは疑問だが、そもそも監視艦隊司令が実践で辣腕を振るうというのはあまりイメージが出来ない。派遣議員程の指揮権を持っていない故に。
性格は押しが弱いのか、実は柔軟なのかは不明だが結局デスラ―砲の発射を黙認した。上から目線というよりガトランティスの代理といった風を、監視の生きた目という前提を崩していない点を鑑みると、真面目ではあるがそれなりに融通が利きそうかもしれない。貴族なのか、気位が高いのか、ただ丁寧な人間性なのかは不明だが、立ち居振る舞いはにじみ出る優雅さ。
かなり中性的なキャラクターで、マッチョイムズの権化のような見た目のガトランティス勢の中で異彩を放つ。その為、彼をそのままのキャラクターとして深堀するととっても楽しい考察になる。例えば、ジェンダーについてのガトランティスの先進性とか能力至上主義とか、幾らでも話を構築することが可能なのだ。
問題はその考察が出来るだけの分量が劇中からは中々ピックアップできない事……。
ヤマト2においては、さらばより総統に対し幾らか強い態度に出た。男らしい美男子にリファインされたパワーか。
だが、常に総統に気圧される。まずい事に総統とタランはミルに隠れて秘密会議を行い、結局監視任務が出来てない――あげくに総統がサーベラーの横やり通信のあおりを食らって指揮ミス、その怒りを通信装置の受話器が被弾してしまい総統が受話器は床に投げつけられた。その受話器が跳ね返ったものを……避ければいいのにうっかりおでこで受け止めてしまうものだから、見事に切ってしまう。
もう、痛々しい。ガトランティス人の血の色って赤なんだね。大体、この人が誰の支持でデスラー艦に乗り込んだのか、判然としない。しかも、デスラー総統怒りの受話器投擲以降、出番がない。
性格としては生真面目、挙句に空回り。権威に物凄く弱いのか、サーベラーを絶対的に信用しているのかはわからない。青年将校と言って思い付く感じの要素を全部ぶち込んだ感じだろう。
個人の性格や能力や、経歴を推測できるほどの描写はない。幾らでも拡大解釈は可能だけどね。ただ、どうしても見せ場は特になく……さらば、ヤマト2共に何とも可哀想な人物である。
氏名:メーザー(Mazor)
階級ないし職責:ミサイル艦隊所属戦闘員(特殊工作班、少尉ぐらいか)
年齢:不明(青年の後半から壮年の前半か)
名の由来:不明
メーザーないしマザー(Mather)などと発音されるこの単語は、英語圏にままある苗字。こんな苗字もあるんですね。
ヤマト2にのみ登場する戦闘員。特殊工作を行うために同僚と共にデスバテーターを用いて活動していたが、ヤマトに捕捉されて加藤機の攻撃を受ける。場合によってはヤマトに対する工作であったかもしれないが、詳細は不明。
立場がどれほどなのかも不明で、推測のしようがほとんどない。デスタールに直接口を利く勇気を考えると、さすがに隔絶した階級差ではないのだろうが……不明。階級に圧倒的な差が有ったら、それはメーザーが物凄いガトランティスに対する忠誠心の表れとして表現できる。
色々あって同僚は死亡、当人だけが生き残る。
その後、佐渡酒造の検査を受けて生体データを収集される。一連の検査終了後、今度はファンからの通称:拷問の山田君の苛烈な尋問を受ける。あくまでヤマト側の認識は苛烈な尋問。結果、口を割らず。
しかし佐渡酒造と酒盛りをする事で多少打ち明けるも――脱出を図った。ヤマトクルーを出し抜き、見事成功して所属部隊帰還を目指した。しかし、隊長であるデスタールに拒否され断念。他方で、古代がガトランティスから地球へと鞍替えを説得する。 だがデスタールは反転、祖国の繁栄を叫んでヤマトに激突した。
だが、彼は艦橋ではなくく舷側に突っ込んだ。艦橋を狙えたしそれが一番ヤマトを損傷させ得るのだが……彼はあえて舷側へ突っ込んだ。自分を武人として迎え入れようと語った古代の説得と、仕えて来たガトランティスへの忠誠のはざま――登場人物の中で最も哀しい運命をたどった人物である。
2199のノヤっさんオルタとほとんど同じ構成のストーリーであり、総監督のファンサ精神からすれば恐らく……あの話の原型と言えるだろう。
忘れられた人
なお、恐らく南雲忠一中将がモデルであろうナグモー提督もいた。元来はプロキオン方面軍を預かる航空部隊の指揮官であるはず。が、第一話でゲーニッツの口から語られただけ。あとは知らない。
設定だけならばパラノイア隊を率いる予定だったダンマク将軍というのもいたという話。知ったこっちゃない。お前は弾幕を張られる側だろうが。
その他――
人ではないが……バルゼーが出動させた偵察艇の名称。あれが〈ビードル〉が正しいとすれば、音感的にはアメリカチック。ジェームズ・ビドル(James Biddle)という1845年~1848年にかけて東インド艦隊を預かり、日本に来航したアメリカ海軍司令がいるのだ。ウィキに見られるように〈ビーダス〉が正しいとすれば、根底からこの解説は覆る。
以上が氏名と階級など情報が判明しているガトランティス人である。他にも――ザバイバル師団から出向したらしいゴーランド艦隊の連絡将校とみられる軍人(第3話)と役に立たんナスカのハゲ副官とヤマト接近を伝えた威勢のいい連絡員(共に第6話)、不敵な笑みを見せた金髪天パなゴーランドの副官(第8話)、なんか全体的にもっさりした兵站補給基地司令(第19話)、ゲルン旗艦の艦橋クルー(第20話)等々、印象的な人物は多数存在する。第14話に登場した警備兵たちも彼ら自身は特に目立つ言動はなかったが。正規兵たちと施設の警備についての縄張りで想像を膨らませる事が可能。
別に物語的には大した意味はないのだが、しかし仮にウォーシミュレーション的・架空の戦争を描いた作品としては欠くことのできない人物である。
印象としては基本的にアメリカ人的な雰囲気を受ける。
名前の語感、性格の傲慢さとヒロイズム――日本人が想像するアメリカ人の典型例に近い。また、下手をすれば日本人以上に所属する集団への帰属意識・貢献欲求(ケネディズムとでも呼ぼうか)を非常によく表した事例も多数ある。これがガトランティスのキャラクターのそこかしこに見られる。例えばデスタールとかメーザーとか。 実際の国家を一定程度トレースしたからであろうか、中々に複層的な人物の設定や描写が行われたと評せるだろう。
もっと言えば、対日戦争勝利後、ベトナムなどでは苦杯をなめさせられる傾向が多い……それはひとえに、勝ったパターンを踏襲しあまり用心をしなくなったからと言えるのではないだろうか。あと一歩警戒が足りず、あと一歩見通しが甘い。ガトランティスも長い歴史の中で勝ち星を重ねに重ね、重ねまくった結果勝ちに驕っていたのかもしれない。だから本来は有能であったり負ける様な指揮をしないと思われる人物が、結果として負け戦に臨んでしまった。例えばバルゼーとかゲルン。
極めて濃厚にアメリカ――或いはアメリカに少し遠慮して覇権国家・超大国一般に見られる、幾らか驕り根拠のない自身にあふれ、ナチュラルに相手を虐げてしまう国民や軍人らしいキャラクターを描いたと言えるのではないだろうか。
ヤマト③――宇宙最恐の戦艦――
6万トンを超える基準排水量、主砲たる46センチの巨大砲を3基の3連装砲塔に収めた世界最大級の戦艦。特に、46センチに達する主砲を実際に備えた戦闘艦はこの大和型戦艦以外には存在しない。一番艦の艦名にして型名である大和は、現在の奈良県周辺を指した旧国名であると同時に日本国全体の別称でもあるのだ。
大戦中は徹底してその存在を秘匿され、日本の切り札として、連合艦隊の移動司令部として運用されていた。この上ない華々しさ――
だが、華々しい要目とは裏腹に、その戦歴は苦しい。
初陣のミッドウェー海戦では山本長官直々の座乗によってミッドウェー海域へ進軍。南雲機動部隊の後方に位置し、同機動部隊がミッドウェー島の守備戦力を粉砕したのち、その砲火を以て味方上陸部隊の行軍を支援する予定だった。
しかし、会敵する前に空母3隻が枕を並べて討ち死にし、残った飛龍は単独反攻を試みるも敵わず――日本機動部隊の基幹空母のほとんどを喪失してしまった。この結果によって、長官は帰投を決意。ミッドウェー島攻撃の機会は失われる。
マリアナ沖海戦にて栗田中将の旗艦として参戦。あまりにも敵機動部隊を恐れすぎて味方を誤射する失態を見せる。当然、肝心の米空母攻撃隊に対しても対空用の三式弾を2桁発射し、損害を与えた。しかし、敵機動部隊や護衛そのものとの会敵は叶わなかった。敵機動部隊の攻撃を引き受けることもできなかった。
続くレイテ沖では大和型戦艦2隻を投入、第二艦隊の基幹戦力として奮戦した。しかし、序盤から潜水艦の雷撃を受けて艦隊旗艦愛宕が戦没、代わって大和が旗艦を引き受けた。中盤、ハルゼー機動部隊の攻撃を受けて姉妹艦武蔵が戦没。タフィ2、3をハルゼーの機動部隊本隊と誤認したまま戦闘を開始し砲撃戦を敢行、しかしその不気味な展開に危惧を示した栗田艦隊司令は反転命令。後方にいるとされた機動部隊に対処すべく前進したものの……実際には誤報。レイテ沖海戦は作戦的には失敗してしまった。
そして最期の作戦参加は、一面ではそれなりに意味のある作戦だが――他方で一面では海軍の矜持の為に行われた天一号作戦であった。
アメリカ陸海軍は日本本土上陸に先立ち、戦艦8空母18を擁す太平洋側戦力の中核・第58機動部隊を日本付近へ前進させる。
イギリスも戦艦2空母5からなる太平洋艦隊を派遣、これと合流。さらに陸軍および海兵隊18万人を呼び寄せ、戦艦以下1千数百隻の大戦力を沖縄沖に集結させた。
これに対し日本軍は航空作戦である菊水一号作戦を発動、呼応する形で天一号作戦を発令。現地守備を担う陸軍第32軍らを救援・上陸部隊を撃滅すべく大和以下の第二艦隊は日本海軍最後の水上部隊として決死の覚悟で出撃した。
米英艦隊約1千隻の巨大艦隊に対し、第二艦隊は戦艦1・軽巡洋艦1・駆逐艦8の極めて少数の戦闘艦隊で――挑まざるを得なかった。
偽装進路を取るも早々に米機動部隊に看過されたと判断した第二艦隊は一転、沖縄への直進コースを取る。
1945年4月7日、第二艦隊は米・第58任務部隊と坊ノ岬沖にて会敵。延べ機数300を優に超える攻撃機群を前に奮戦。次々と襲来する敵編隊に敵わず朝霜が沈没したのを皮切りに浜風、矢矧と沈没。そして大和も2時23分、北緯30度43分 東経128度04分の地点に沈没。霞、磯風も続いて航行不能によって処分、これにより日本海軍最後の戦闘は完全敗北に終わった。
終戦後の1945年8月31日、大和は先に没しその戦没を隠されていた武蔵や扶桑、大鳳や瑞鶴ら大型艦艇と共に除籍された。
そして2199年、イスカンダルの技術を含んだ徹底改装により空を飛ぶ戦艦へと変貌、地球人類の存亡をかけて14万8000光年の彼方への苦難の旅に身を投じたのである。
では、元々のヤマトの任務は何だろうか。
それは作品によって異なる。石津版の小説や実写版ヤマトでは、宇宙戦艦ヤマトは星間移民船ヤマトであった。
ガミラスの侵攻に耐え切れず、頼みの地球防衛艦隊は完全に劣勢。人類という種の存続を果たすにはたった一つ、別の惑星に移住する、それだけが取り得る手段であった。そのための大型移民船がかつての大戦艦大和であったという事である。
それを、たまさかに懐に飛び込んだ奇跡――イスカンダルからもたらされた波動エンジンの設計図。これを転用してコスモクリーナー受領の為の長距離航海や途中のガミラスの攻撃に耐えられる強力な戦闘艦に仕立てた。
というストーリーだ。
一方、テレビシリーズ等のいわば広くコンセンサスを得た原点は、コスモクリーナー受領の為の光速突破艦である。あまり移民船だとかの話は大きく出ていない。
肝心なのは兵器は基本的に自衛用という事だ。この点について複数の考察がある為、波動砲の項目で述べたいと思う。何にせよ、元々の建造目的には深い言及とういうものはなく、初めから戦闘艦として建造されていたという見方もできる。
松本零士っぽさを重視した場合、やはり星間移民船を元に戦闘能力を引き揚げた艦。
西崎義展っぽさを重視した場合、どちらかといえば元から有力な新戦艦として建造され、その能力を見込まれイスカンダルへの派遣を拝命した艦。
ベースとしてはやはり強力な自衛火力を有した星間移民船、というところに落ち着くだろう。
ヤマトの立ち位置とは何かについて考察したい。
一つ確実なのはヤマトがガミラス戦時で最新鋭最大最強の戦艦であった事。
それまでの純地球性宇宙戦艦とは違い、ガミラスと同等の技術を持つ勢力であるイスカンダルの技術をダイレクトに組み込んだ戦艦だ。隔絶した能力を持つという説明に一切のご都合主義と言われる隙は無い。考えようによっては、スターシャが地球人が造れる範囲でガミラスに対抗できるような戦闘可能艦を建造するよう誘導した可能性がある。少なくとも、イスカンダルの技術の全てを掌握している彼女ならばそれが出来る立場にある。
この時点では、沖田艦長とその幕僚、ひいては地球防衛軍全体がこのヤマトをあくまで外敵を追い払い、地球再生の切り札を持ち帰る為の“希望”であると考えていたとして何ら不思議はない。全くの博打ではあるが。
北号作戦や天一号作戦のような博打では、それでも軍の高官かと問い詰めたくなる運任せな発動が結構ある。この博打に松本零士作品的な冒険譚な側面を見出せる。
敵と戦うのはあくまで火の粉を振り払うためであり、全く敵意を見せていないような敵に対してわざわざ出向いて殲滅することはついぞなかった。が、反対に勝負を挑んでくる敵には容赦なく波動砲攻撃を視野に入れた戦闘を行った。
この艦の立ち位置が少し変わるのが、ガトランティス戦役。
この時点でヤマトは完全に旧式艦だ。廉価版の主力戦艦の数が揃い、大統領の発言にある様に拡大政策を始めた地球連邦には別になかったらなかったで構わない戦艦となっていた。
さらばでは、政治的というか報復的な意味で廃艦とされてしまうが、一方でヤマト2では廃艦ないし改装を宣告されても仕方がない状態だった。
第三外周艦隊の旗艦として輸送船団を護衛していたが、艦隊の統率も取れず護衛も失敗しナスカ如きの攻撃に手も足も出ないという大失態をしでかした上に、航行について優先権のあるアンドロメダに対してよくわからん意地を張って軍立違反を艦長代理が犯すという大問題を抱えた。
さらばでは全く政治的でかつての帝国海軍の報復人事を見ているようで胸糞が悪くなるが、ヤマト2では実際的にガトランティスに勝てない上にわけわからん動機で軍律違反をしでかしたのだから報復されても文句は言えないだろう。
この度の戦闘では、テレサの通信を探るというふわっとした目的で発進したが、ガトランティスの正体を知ると同時に、明確に宇宙と地球を破壊から守る為の作戦行動へと変更した。つまり、敵を殲滅するという初めて能動的な対処方針を固めたという事だ。
冒険、というのが松本零士作品の一つのテーマと言える。
善悪の対立やその中にあって善に近い悪や悪に近い善といったものを織り交ぜる。単純に悪と言い切ることが出来ない存在が現れる、それが松本零士作品の特徴といえよう。軍や海賊、あるいはストリートチルドレンが主人公であったとしても方向性は同じ、旅路の中での成長が物語のウェイトを占め、やみくもな戦闘は行わない。戦闘の動機は合理性以上に大義や意義を重視するのだ。
これが、第一作のヤマトと非常に高い親和性を見せた。
一方さらば以降のヤマト――西Pの意向が強くなったとされる作品群はどちらかといえば軍紀物、ウォーシミュレーションな側面が強い。無論、メッセージ性はかなり強いものであることは間違いないく、内容も別に戦争バンザイではなく松本零士氏と同じような大義であるとかの精神論が強い。じゃなかったらさらばの副題に愛の戦士たちなんて書きませんわ。とはいえ、ヤマトが純粋な軍艦としての表情を見せたのはこのガトランティス戦時が初めてであると言える。
次いで暗黒星団帝国との戦闘だが、ヤマトはガトランティス戦と同じく軍艦としての責務を最大の任務としていた。地球が擁するあの時点で唯一戦闘可能な有人戦闘艦であり、もはや旧式とか新式とかそんな理由でどうのこうのいえるような地球軍の状況では無かった。
そして、直後のボラー連邦との対決時にはなんと、再び元来の方向性に立ち返る。作品自体が、回帰している――つまり、地球を救うための冒険だ。
ダゴンがやらかしてくれたおかげで太陽の核融合化異常増進され、人類は移住先を見付けなければならなくなってしまった。そこでヤマトは惑星探査の特務艦として太陽系外へ派遣される事になる。これが物語の冒頭、つまり未知の宇宙と未知の敵との戦闘を軸にした冒険譚だ。どうも数が確保できていないらしい地球防衛軍はワンオフないしプロトタイプ戦艦を投入してまで移住先探索に力を入れたが、全滅の憂き目を見る事になる。その中で、ヤマトは適宜行われていた改装と、それ以上にクルーの経験や友情という武器によって戦闘を乗り切ってきた。
(ヤマトⅢに関しては内容の毀誉褒貶があまりに激しい為、さらっと流したい)
そして完結編……これもまたさらば系への作品の回帰である。
物語が始まってすぐ、ヤマトが撃沈されて地球艦隊は全滅する。イメージとしてはヤマト2で白色彗星がワープアウトした直後のシーンから映画が始まった、という感じだろう。冒険と言うよりも、地球を救うための作戦行動という側面が極めて強い。メッセージ性というか、メッセージの方向はヤマトⅢと同様に受け取る人によって大いに異なるだろう。そもそも、受け取る前に鬱陶しくなるかもしれない。
これ以上脱線するわけにはいかないので、作品についてはココで切り上げる。
ヤマトの主人公
作品の主人公ともいえるのがヤマト。正確な事を言えば、古代が主人公というわけでもないし、沖田艦長ら歴代艦長が主人公というわけでもない。2199や2202はベースとしてクルーが主人公であるが、旧作はヤマトが主人公と言って差し支えない。
この辺りの感覚は説明するのが難しい。
一度、『HMSユリシーズ』という本を読んでいただきたい。そうすれば私の言いたいことが判ってもらえるだろう。読む気が無い方向けに何とか絞り出すと、艦とクルーは不可分という事。これは海軍あるあるという言い方もできるし、冒険譚あるあるという事もできる。沈む軍艦の上で万歳三唱をしてみたり、羅針盤に体を括りつけて心中する艦長や司令。
艦は無機物であり、語り掛けたところで答えてくれるわけでは無い。しかし、その精神的なつながりは余人には分からない深いレベルで形成されるもの。これが判らないと、海軍物はいまいち理解しがたいストーリーや描写の連続になってしまうのだ。
ヤマトは主人公である以上、作品によって性格が異なってしまう。作品のメッセージせいによって、ベースは変更ないが表層的な部分が幾らか変更になってしまうという事。
本当はその傾向が強いとまずいわけですが、それは別として……第一作目以降は戦う事が前提の艦になったことだけは間違いない。ヤマトⅢでは原点回帰な方向性があったものの、原点に比べて戦闘を行う事をいとわないという点が異なる。ラジェンドラ号やバース星でのことは完全にヤマトが余計な横やりを入れていると言って構わないだろう。
これらをまとめると――
ヤマトは戦艦であり他方、特務艦でもある。
ヤマトは地球防衛軍の所有物であり、クルーの戦友でもある。
ヤマトクルーの遵法精神ははなはだ疑わしい。対する防衛軍のガバナンスの利かせ方も、防衛会議は狂犬的に強権発動し反対に長官は黙認という、だいぶ怪しい状況。組織としてどうなんだろうか……。というマジまめな話は置いておいて――
こうなってしまっては旧式であるとかないとかは全く関係なくなってしまうだろう。ヤマトであることが重要で、それによって戦意向上とかの副次的な効果を期待する、艦隊全体ではそういう立場と言えるだろう。かなり無理があるけど。
クルーとヤマトは不可分な存在であり、その結びつきは非常に大きいものであったとして不思議はない。であるからこそ他の防衛艦隊の艦とは異なり徹底した活躍や、必死の復旧作業による戦闘力維持が行われ、であるからこそ敵と常に優位性を以て戦う事が出来た。
ヤマトでなければ、あのクルーは能力を発揮できないだろう。実際、他の艦に配属された時には全員中途半端な勤務状況。クルー一人や二人に焦点を置いても物語はつづることが出来ない。クルーが集まったとしても、ヤマトでなければ物語は進まない。ヤマトがあって初めて物語が展開する。
ヤマトこそが真の主人公、そう結論付けることが可能だろう。
旧式艦の活躍
旧式艦は大抵消えるか、改装されて全く異なる姿になることが多い。それはそれとして、旧式艦が新鋭艦と同等の活躍をする余地自体は結構あったりする。
例えば、イタリアの軽巡洋艦ジュゼッペ・ガリバルディ。彼女は1937年12月1日に就役し、改装のため1953年に一度退役してその後1957年から1961年になんとミサイル巡洋艦に改装されて再就役、そして1971年2月20日に退役したのだ。34年間もの長きにわたってイタリア海軍を支え、しかも退役は財政面が大きかったりする。また、カイオ・ドゥイリオ級戦艦は1916年6月13日に就役して大改装や戦争を挟んで1956年まで40年間運用された。貧乏な国だと、この傾向が強い。
全く違う、戦力ではないが生存しているという艦もある。
1866年11月8日就役、今も一応現役扱いの装甲艦ワスカルや、1797年10月21日就役のフリゲート艦USSコンスティテューションがある。こいつらは何と3桁年間もの長い間生存している戦闘艦だ。当然、実践には参加しないが居る事が重要だったりする。
もう一つ、たまげた海軍所属艦として救難艦コムーナがある。ロシア帝国最末期の1911年に発注された潜水母艦であり、後にサルベージ艦となり、現在は潜水救難艦として運用されている。日本でいえば明治・大正・昭和・平成・令和と生き延びてきたことになる。
長く運用されている艦と言うのはある為、旧式艦が活躍する事の理由づけは難しい事はないのである。むしろ簡単だ。
それが言いたかった。
白状すると、私は別に地球戦艦ヤマトはそんなに好きじゃないんです。むしろアンドロメダや主力戦艦の方が好き。もっと言えば、ガトランティス艦の方が好き。
戦艦としての大和も、本音を言えば扶桑みたいな危なっかしいヤツとか三笠みたいな可愛いのとか、摂津みたいな過渡期なデザインが好きで別に大和にはそんなに惹かれない……。加えて、基本的に敵を好きになる人間でして、特撮でもアニメでもおおむねの場合において敵側を応援してしまうので――ヤマトに肩入れする理由がない。味方側を好きになる場合も結局、ちょっと不遇なヤツの方を肩入れをしてしまう。
魔戒騎士よりホラーの方が好きだし、騎士の中なら鋼牙の黄金騎士は別格としても白夜騎士が好き。実際にはプレイしないから言えることですが、ヲ―とかカステリスクやらメダリオンの弱体化具合がなんとも哀れで肩入れしてしまう……
例えがバラバラかつ分かりにくくて申し訳ないが、私はこんな感じの傾向です。
ヤマトで唯一私が肩入れするというか、私が地球侵攻側の指揮官であるなばら――としてヤマトを気にかける理由はたった一つ。真田技師長です。彼が居なければヤマトなど存在しないも同然、彼の発明があればこそヤマトは究極の困難を切り抜けられる。出来れば彼を自軍に率いれたいが……無理だろう。
とまあ……だから、ヤマトにはあんまり思い入れが無いんです。
そんな私でもこれだけ色々と述べられる。やっぱりすごい艦――と言えなくもない。
地球戦艦ヤマトは決して無茶な設定を詰め込まれたご都合主義の塊などではない。
数値に関して言えば若干、問題あるがその描写としては大きな齟齬や矛盾はない。立ち位置も現実に類例がないわけでは無いし、その活躍も単独行動を中心とするからこそ、これもまた現実に類例が存在する。不条理な展開もあるにはあるが、大抵が常識の範囲内に収まったストーリー、その主人公がヤマト。
殺戮兵器を抱え込んではいるが、元来の任務は星間移民船であり地球人類の希望の為に困難な旅路へと臨んだ。軍艦として存在を確立しても、地球人類の命を守る為、ひいては全宇宙の平和を守る為に発進し、クルーと共に命を賭けて飛び立った。
最期の航海もまた、地球人類を守る為に満身創痍ながらも再び飛び立つ。クルーと共に最善を尽くし、そして自らと引き換えに地球を水没の危機から救ったのである。
ヤマト②――宇宙最恐の戦艦――
ヤマトの活躍、その理由。
軍事作戦的な観点から言えば、ひとえに艦載機にあるだろう。
搭載する戦闘機であるコスモゼロ、ブラックタイガー。ブラックタイガーの後継機であるマルチロール機・コスモタイガーⅡ。特にベストセラー機であるコスモタイガーⅡは最低4発のミサイルを抱えて敵艦を粉砕し、機銃と格闘性能によって敵機を圧倒する。単座、複座、三座と雷撃専門の合計4種が劇中に登場し、それぞれがヤマトや地球艦隊の強力な攻撃手段として活躍した。
特にヤマトは純然たる戦艦でありながら、艦内に40機近くの戦闘機を内包する強力な航空戦艦であり、これが確実にヤマトの単艦での任務遂行に寄与した。
これは述べるまでもない事だったかもしれない。
クルーもヤマトの能力向上と維持に貢献した事は確実だろう。
クルーの自主性を決して軽んじない歴代艦長、常に航空戦力との組み合わせた戦闘プロットを立てる戦闘班。レーダ―による観測も、位置情報や動きとは別にその脅威評価を人員を分けて観測を行う慎重さ。敵の罠にかかる前に引き返す判断を出来る航空隊。意外にも充実した艦内の食事や娯楽設備、腕は確かか微妙なラインだがそれなりに親身になって相談に乗るカウンセラー的な軍医。何よりも、絶妙なタイミングで新兵器や敵の弱点を見破る真田技師長。
彼らの一人でも欠けてしまえば、ヤマトは普段の能力を発揮できない。
あの相原だって、居れば居たなりに役に立ったし、森雪は古代のモチベーションに関わるのだから、せめて生きていてもらわなければならないだろう。
巨大戦艦的には114人などあまりに少ない人数である。何せ元になった戦艦大和は竣工時乗員約2500名の圧倒的多数だ。比べ物にならない人数の差である。
ヤマトの場合、約40人の航空隊員自身が整備員であることを鑑みると、何と70人程度しか艦の運航と戦闘には人員を割けない。純粋に航海班だけを考えると、案外外国航路のタンカーと同じ概ね20人前後という事になるかもしれない。不安というか、補充要因が不安だが……裏を返せばそれだけで十分運航できるという極めて高い省人化に成功した戦闘艦と言える。
とはいえ――だからこそ、その個々の能力は一級品であり、であるからこそヤマトの航海に貢献できた。
彼らの存在があったからこそ、ヤマトは戦闘でその命脈を繋げたといえるだろう。反対にクルーも人類を救うための旅、そのイスカンダルへの旅を共に過ごしたヤマトであるからこそ死に物狂いにその能力保持につなげた。と説明できる。
ヤマト自身の武装。当然これもまた活躍に貢献したといえる。
強力なショックカノン。それまでの地球艦隊の主砲とは比べ物にはならない。他の勢力の砲撃に比べても遜色ないし、一発当たりの破壊力はむしろヤマトのショックカノンの方が上だろう。
多数据えられたパルスレーザー砲群も恐ろしいほどの火力を有する。この猛烈な弾幕の前では大抵の敵艦載機が撃墜され、或いはミサイル群も簡単に爆散させてしまう。恐らく、このパルスレーザー砲群が無ければ艦載機があったとしても大きな対空能力は期待できなかっただろう。
そして何よりの波動砲。小さな宇宙一つ分のエネルギーを有するとされる、強力な戦略級の戦術兵器だ。これを艦首に据え、エンジンのエネルギーを全て前方投射。何度この波動砲にヤマトは救われただろうか。ほとんど必殺に近い兵器。ヤマト最大の火砲であり、後に地球艦隊の標準的な決戦装備となった。
これらの要因が複合的に重なり合い、ヤマトは非常に強力な戦闘力を発揮したのである。
ヤマトの活躍、実際。
ヤマトの初陣は第一作のガミラス戦役。
古代と島が調子に乗ってガミラスの偵察機と戦闘を使用とした際に撃墜され、たまたま大和の残骸の近くに行き着いた。そのシーンが大和(ヤマト)の初登場となる。テレビシリーズではその後、乗り組みを命じられた際に艦尾艦底部が地下都市の天井部から覗いている。これが物凄く大胆なヤマト(大和)初登場である。さらに初戦闘もテレビシリーズと劇場版では異なり――
テレビシリーズではあの高速空母(十字空母とも)を撃墜すべく、艦の整備員と古代と島と沖田艦長というものスゴイメンバーで補助エンジン始動しショックカノンの初発射を敢行した。これが最初の戦闘である。他方で劇場版では超大型ミサイルに対するショックカノン初発射が初の戦闘である。
以降は初ワープにおいてエンジン部にトラブルが生じる、波動砲が思っていた以上の威力を発揮する等の初期不良に苦しめられるも、ブラックタイガーやヤマトの武装、クルーのタフネスに支えられて航海を続行。冥王星前線基地とその所属艦隊を撃破し、優勢爆弾の脅威から差し当たって地球を守る事に成功した。続くドメル艦隊との決戦、或いはガミラス本星における最終戦争を行い、見事勝利。
イスカンダルへ寄港しコスモクリーナーを受領。地球へ帰還し、人類を救うことに成功した。なお、テレビシリーズでは銀河系突入後にデスラー総統のリベンジを受けたが、これを真田技師長の発明である空間磁力メッキによって退ける。
映画版においては続くガトランティス戦役において最後になる。他方でテレビシリーズのガトランティス戦役ではテレサの助力によって辛勝を得た。
テレザートに幽閉されていたテレサからのメッセージを受け取った古代進。防衛会議にこのメッセージを奏上するもまともに取り上げてもらえず、反対に懲罰人事を受けることとなった。これが映画版。テレビシリーズでは懲罰人事は免れるものの、防衛会議の体質自体は変わらず――これによりヤマトクルーは発進を強行した。
テレビシリーズでは第11番惑星が本格的な戦闘開始である他方、劇場版では戦闘に加わる前に戦闘が集結し、艦隊司令であった土方竜を艦長に迎える。劇場版での初作戦はゴーランド艦隊との戦闘であった。複数の戦闘をこなし、テレサより白色彗星に対する大まかな情報を手に入れたヤマトは迎撃のため、太陽系へ帰還の途に就く。
復活のデスラー総統。劇場版では白色彗星の迎撃前に最終決戦を挑む。他方テレビシリーズでは白色彗星の迎撃を挟んで合計3度ヤマトを攻撃。熾烈な戦いの末、古代と心を通じどちらのパターンにおいても、ヤマトにガトランティスの弱点を教えて“去っていった”。そもそも、どちらのパターンであっても彼の戦闘はヤマトにとって塞翁が馬的なタイミングであったことは間違いない。
劇場版ではヤマトが帰還する前に白色彗星の前衛艦隊が太陽系に突入、地球艦隊は総力を挙げてこれを殲滅。続く白色彗星の侵攻に対して拡散波動砲を以て迎え撃ったものの、敗北し壊滅した。他方、テレビシリーズではヤマトは地球艦隊と合流に成功。機動部隊を率いて敵前衛に対し奇襲を敢行、これを撃滅。土方総司令率いる地球艦隊本隊も苦戦しながらも勝利し――直後白色彗星の奇襲を受け、ヤマトは落伍。迎え撃った土方艦隊もガス体を吹き飛ばす健闘を見せるも、敵わず。
唯一残ったヤマト。
劇場版では白色彗星のガス体を吹き飛ばした後、現れた都市帝国と戦闘を開始。多くのクルーを失いながら、その機能を停止させた。しかし、ガトランティスの切り札である超巨大戦艦の登場により万事休す。古代と、ヤマトが自己犠牲的に突撃を敢行するに至って、古代の決意を見て取ったテレサがそれに同行、反物質の対消滅によって超巨大戦艦を葬った。
テレビシリーズ版においても都市帝国に対して決死的攻撃を敢行、多くのクルーを失いながらも都市帝国を機能停止に追い込んだ。だが、やはり超巨大戦艦の前には手も足も出ず。代わりに、島への愛を示すがごとくテレサが突撃を敢行、劇場版と同じく反物質の対消滅により超巨大戦艦を葬った。
続く暗黒星団帝国戦役では地球艦隊のほとんど唯一の戦闘艦として参戦。
新たなる旅立ちにおいては、イスカンダル守護に奮戦するデスラー総統を支援するために戦闘に参加。マゼラン方面軍のほとんどの戦力をコスモタイガー隊とその砲力によって殲滅。ゴルバ戦においてはデスラー総統の鬼気迫る様子に出遅れて戦闘のテンポが乱れて不発。イスカンダルの自爆によって、ゴルバは葬られた。
他方で永遠にでは地球を急襲した暗黒星団帝国を排除すべく発進、中間補給基地を破壊し、地球占領を行っていた黒色艦隊の引付にも成功した。敵を粉砕しながら、暗黒星団帝国の本拠地である二重銀河へ到達。本星の守備隊と戦闘を繰り広げ、最終的には破壊。これにより地球の危機を救った。
ヤマトⅢにおいては再び人類の新天地を求めて探検に出る。そして、いわゆる銀河大戦とか、銀河系大戦というやつに巻き込まれるのだ。
ガルマン・ガミラスのうっかりミスにより惑星破壊プロトンミサイルが太陽に直撃、燃焼異常増進によって太陽系全体が消滅の危機に襲われた。そんな中、ガルマン・ガミラスの太陽系進出とバース星守備艦隊旗艦ラジェンドラの地球圏への偶発的な接近により本格的に戦闘に参加。
しかし、バース星の宗主国であるボラー連邦の国家戦略に対してもヤマトクルーは疑問を持ち、図らずも敵対関係に突入。他方で、デスラー総統が国家元首たる、地球にとっては味方であるはずのガルマン・ガミラスに対しても、宗教勢力であるシャルバートへの処遇を巡ってヤマトクルーは対立。幸い、総統が漢であったため、武装解除したシャルバート星への攻撃を取りやめたため一定程度関係改善。他方でシャルバート星へ攻撃したボラー連邦とは完全・徹底的に決裂。
シャルバート星からたまさかに持ち帰ったハイドロコスモジェン砲によって太陽制御を――開始する直前にボラー連邦が太陽系に突入。それを追ってデスラー総統が艦隊を率いて乱入。コスモタイガーと総統の活躍によりボラー艦隊を撃滅、ヤマトは太陽制御に成功し、再び人類は救われた。
最期の戦いであるディンギル戦役。
同盟的立場であるガルマン・ガミラスに天変地異が発生。その調査のためにヤマトは発進。本星の状況を見てその滅亡を確信、肩を落として帰還する――途中に不明な敵からの攻撃を受けた。この攻撃主体ががディンギルである。
太陽系へ侵入したディンギル帝国の攻勢はすさまじく、地球艦隊は壊滅。さらにディンギルが回遊を加速させた水惑星アクエリアスの接近により人類滅亡は確実となった。
ヤマトは水惑星アクエリアスのワープを阻止すべく発進、損傷未回復であった。2度、大規模な戦闘を行い、2度目はディンギル自慢のハイパー放射ミサイルへの対策を完了し返り討ちに成功。さらにディンギルの本拠地であった都市衛星ウルクへ強行着陸、攻撃を開始。ほとんどその勢力を打ち破ることに成功したが、アクエリアスのワープ阻止には至らなかった。
最期、実は生きていたデスラー総統が危機に駆け付け邪魔者ディンギル残存艦隊を撃破。この支援を受けてアクエリアスと地球の中間点へワープし、同地点で自沈しその衝撃波で水柱を断ち切り、地球の水没を阻止。
これにて全ての航海を終えた。
ヤマトが活躍できた理由は――当然主人公だからというのが一番だろう。そりゃそうさ、そうだもの。
ただ、それ以外にも様々な理由を付けることが出来る。ヤマトのスペック、クルー、そしてヤマトが置かれた環境。これら全てが絶妙にかみ合った結果、活躍できた。
歴史上の戦闘艦に照らせば、さすがに国を救った艦は少ないだろうが、しかしその輝かしい経歴に類例はあるだろう。
例えば伝説的な英国の7代目〈ウォースパイト〉、帝国海軍を勝利に導いた墺装甲艦〈フェルディナント・マックス〉や比類なき勇気を見せた戦列艦〈カイザー〉。改装に改装を重ね、老体を鞭打って戦い続けた我らが金剛型戦艦。
あるいは若干活躍に欠けるが伊戦艦〈アンドレア・ドーリア〉や西戦艦〈ペラヨ〉は長い間、同国の旗艦・象徴としての労働をこなした。
伊勢型戦艦は大戦末期にもかかわらず見事アメリカ艦隊の裏をかき続け、本土と戦地の往復往復に成功した。露戦艦〈スラヴァ〉や〈ツェザレヴィッチ〉の見事な大立ち回りも特筆に値するだろう。
これらは全て偶然の重ね合わせで歴史に名を残した戦闘艦であり、一方でその偶然による果実を捥ぎ取れるだけの訓練を重ねて来た。
偶然というものは現実にあり得るもので、決してご都合主義ではない。
それが裏付けられるものがあればこそ、その偶然は妥当であり奇跡となる。
ヤマトの問題は、それを描写に活かせなかった事……
ヤマト①――宇宙最恐の戦艦――
それは地球の希望にして、宇宙最凶の戦艦の名である。
データ
全長:265.8メートル(復活編では280メートル)
全幅:34.6メートル(復活篇では20メートル近く拡)
全高:77.0メートル
基準排水量:62,000トン
最大速力:光速の99.9パーセント
乗員 114名
主機:波動エンジン1基
補機:補助エンジン2基
兵装:艦首波動砲1門、48センチ(ないし46センチ)三連装衝撃砲塔3基、20センチ(ないし15センチ)三連装衝撃砲塔2基、煙突ミサイル8セル、艦首魚雷発射管6門、後部同発射管6門、舷側ミサイル発射管片舷8門、連装対空パルスレーザー砲片舷4基、連装小型対空パルスレーザー砲片舷8基、艦橋3連装対空パルスレーザー砲片舷2基、艦橋対空パルスレーザー砲片舷1基、4連装対空パルスレーザー砲片舷3基、側面機雷投射機、波動爆雷投射機
艦載機:コスモゼロ、ブラックタイガー→コスモタイガーⅡ
艦載艇 :コスモハウンド(ヤマトⅢ以降)、救命艇(さらば以降)、上陸用舟艇(さらば以降)、中型雷撃艇、修理艇ないし運搬船、100式探索艇、特殊探索艇
ヤマトが滅ぼした勢力はあまりに多い。
たとえ滅ぼされずとも、関わっただけで大きく勢力が衰退する。この悪魔の艦に関わった勢力は全て累々たる残骸を宇宙に晒すのだ……。
“被害者”1ヶ国目:ガミラス帝国
ヤマト記念すべき初陣、意図しなかったとはいえどもガミラス本星を居住不可能にした。行く先の基地を必要が有ったとはいえ、ことごとく使用不能にして、来襲する艦隊をことごとく粉砕していったのである。案外波動砲の使用も簡単に決定。
他方で、ガミラスも民族の存亡をかけた戦いであった故に総力を挙げて迎撃。その最終局面では、本星を以てその進軍を阻止しようとしたがすさまじい攻防の果てにガミラスは敗北。そのあおりを食らってガミラス星自体がほとんど居住不可能になってしまう。事実上の滅亡。
総統に対しては本星まで荒廃させたのには賛否の意見がある。(物語としては確かに賛否はあろうが、ウォーシミュレーションとしてはあり得る展開とも……)
が、実は亡命政府が我らガトランティスの庇護のもと樹立されていた。
総統はもう一度ヤマトを打ち破るべく戦闘を試みたが、さらばにおいては敗北。ヤマト2においては幸いにもステールメイトに持ち込んだ。しかし、国家再建ができてない以上、滅ぼされたままであるし、敗北であることに違いはない。
“被害者”2ヶ国目:大帝星ガトランティス
「全宇宙はわが故郷」をイデオロギーに掲げ、全宇宙を席巻する帝国主義国家。
国家=存在理由、存在理由=国家である。最大にして究極兵器である白色彗星の内側に、移動大本営ともいえる都市帝国が内包されている国家そのものが科学の粋と言える。
元々、敗北は即滅亡な危険な国家体制だったのであるが、その圧倒的な武力において敵を常に圧倒し、その危険はないと思われた。また、侵攻に用いる艦隊は大型の戦闘艦を中心に編成された大戦力で、地球艦隊史上最強の世代を相手に真正面から正攻法で攻撃を敢行した。
しかし、前線するも前衛艦隊は敗北。最終的には地球艦隊やヤマトを前者は壊滅させ、後者は戦闘不能になるまで追い込んだ――が、ヤマトクルーに感化されたテレサに阻まれ光芒の中に消える。国家消滅。
とはいえ、最強の地球艦隊を殲滅し、更にヤマトを相打ちに持ち込んだ、確実に史上最強の勢力である。
“被害者”3ヶ国目:暗黒星団帝国
ガミラスに近い、「地球人の健全な肉体が欲しかった」という切実な願いのもと地球に侵攻。グレートエンペラー時代に目を付けた地球を、聖総統の時代に入ってから侵攻を開始したため、非常に綿密な計画と迅速な実行力を以て地球を占領した。これは敵勢力で初めての事。
メガロポリスを急襲して民軍構わず攻撃したためかなり問題のある開戦となった。本星の地球への偽装など、奇想天外な作戦を敢行するなど、結構地球人やヤマトクルーの神経を逆なでする傾向が強い。
とはいえ、だからと言って本拠地の属する二重銀河ごと消滅させられるのは哀れすぎる……。史上、最も派手に滅んだ国家。
“被害者”4ヶ国目:ボラー連邦
ガルマン・ガミラス帝国の仇敵であり、周辺の星々を陣営に飲み込み従える核恒星系の超大国。味方したというだけで地球を陣営に組み込もうとした、現実の見えていないと言うべきか頭がおかしいというべきか悩む感じのやつら。
丸腰の相手に攻撃はしない紳士・デスラー総統とは違い、ボラー連邦はためらいもなく攻撃。やっぱり現実の見えていないボラーのトップ・ベムラーゼ首相はのこのこ太陽系圏内へ侵入し――自業自得な展開に。モンキーモデルなんてものを構成国に輸出した罰が当たった。
あまりにも中途半端な終わり方で、国家が滅亡したのか不明。指導者を失ったのだから多分、分裂するだろう。
次作で時間を巻き戻された挙句に、天変地異に遭遇して多分滅亡。
首相をおく大統領制国家はかなりのパターンで首相の方が権限が強いので、大統領が出てこないというのも別に不思議ではない。説明をしなきゃ突っ込まれるのは必至だけど。
“被害者”5ヶ国目:ガルマン・ガミラス帝国
ボラー連邦と天の川銀河の支配権を巡り勢力圏争いをする超大国。
ガトランティスから離れたデスラー総統が、流浪の旅の中でガミラス民族の母集団をボラー連邦領域に発見。これを速やかに解放・吸収して打ち立てたのがこのガルマン・ガミラスである。
技術は一部ガトランティスからの流用であり、プロトンミサイルも考え方と使い方は破滅ミサイルそのもの。能力主義らしく、ガミラス人の登用にこだわらずガルマン人の登用が非常に多いとみられ、特に東部方面軍は地球やヤマトの存在を知らなかった。
幸いにも宿敵ベムラーゼ首相を滅ぼすことに成功、一時は天の川銀河の支配権を確立した――かに見えた。
が、次作で時間を巻き戻された挙句に、天変地異に遭遇して多分滅亡。
しかし、カッコいい雄姿を最後の最後に見せてくれた。
“被害者”6ヶ国目:ディンギル帝国
アンファ恒星系第4惑星ディンギルを中心に栄える神権国家。
さすがに、こいつらは自業自得。映画版ならばウルクの起動が遅れた――とか説明は付けられるが、にしたって2,3秒の距離ぐらいアクエリアスをワープさせられなかったものかね。更に、ほかの媒体では臣民を思いっきり見殺しにしている。何という人でなし……。
基本的に地球人から見ればあまりに卑怯な手を使うのが、常套らしい勢力。罰が当たって波動カートリッジ弾で移動要塞母艦他、太陽系制圧艦隊を喪失。波動砲でなけなしの艦隊を殲滅され、強行着陸されて市街地はボロボロ。
最期は何とヤマトではなくデスラー総統・怒りの突撃で全員宇宙の藻屑へ。当然の帰結です。
多少可哀想だったのは、最後のディンギル人になったかもしれない大総統自身の息子を自身の手で殺めてしまったこと。これは、さすがに哀れ。
以下は一応、旧作の流れに乗ったシリーズという事で列挙する。本当は同じ枠組みに入れていいのか、大いに疑問な作品だが。
ヤマト復活編より―“被害者”7ヶ国目:アマール
大ウルップ星間国家連合を構成する一国。中東のイスラム系国家風なイメージの比較的豊かで、軍事力はあまり高くない。
単なる好意か政治的な動きか、いづれにせよ王宮と軍で意見が分断されるという国家的危機が地球人の移民によって発生。しかも国家連合が地球を敵と認識したため、あおりを食らって制裁発動される。が、最後には国家としてのプライドとアマール人の自由を守る為にSUSと対峙することを決定、守備艦隊が全艦発進。地球艦隊と舳先を並べて共に戦った。
多分、滅亡はしていない。現状は。
古代の勝負勘が大分鈍っていた為、アマール星守備艦隊がヤマトを援護せねばならなくなった。そして、ヤマトを守るべく前進――ハイパーニュートロンビームの照射を受けて全滅してしまった。パスカル将軍……
これからは政治力が試される局面であることは間違いないが、全権大使的立場だったパスカル将軍を失った痛手が回復できるかは大いに疑問。肝心のイリヤ女王が政治手腕を見せたシーンがない為、非常に不安である。
被害者”8ヶ国目:エトス
アマール同様に大ウルップ星間国家連合を構成する一国。独自の武士道を持つ、プライドの非常に高い国家。地球の古代国家よろしく、高位軍人=概ね政治家と言うような体制とみられる。
闘将ゴルイ提督に率いられた守備艦隊が国家連合隷下の連合艦隊に参加、ヤマトら地球艦隊と交戦する。が、その過程で感化されてしまいアマール星上空でSUS連合と敵対・国家連合を離反し刺し違える覚悟で突撃を敢行。艦隊は全滅するものの、SUS艦隊旗艦マヤを仕留めた。
滅亡したかは不明、守備艦隊の主力を喪失している以上、かなり危険。さらに保守系であるゴルイ提督を失った――と思われるのもかなりマズイ。国家運営は難しい局面を迎えると思われる。
その後のエトス星の命運は2柱神=西Pと太陽族の親玉のみぞ知る。と思ったら次代にバトンタッチ……不安。
被害者”9ヶ国目:SUS(Space United States)
正式名称がイマイチ不明な、大ウルップ星間国家連合の中心国家。戦乱をまとめて平和と国家連合樹立を呼び掛けた巨大国家で、圧倒的な軍事力を誇る。まるでアメリカだ。しかも主要基地である要塞が国家連合の議場を兼ねているのだから恐ろしい。
軍総司令官と総督の力関係がなぜか逆転しているが、先軍政治を強調しているのだろうか。戦闘の仕方がまずく、同盟国がドン引きして手を引く中でも戦闘を続行。
挙句、自艦隊を自ら滅ぼし、巨大要塞まで失う羽目に。滅亡したかは不明だが、南北程度の分裂は必至。なんなんだよアンタら……結局さ。
被害者”10~11ヶ国目:ベルデル、フリーデ
SUSに騙されて地球と戦闘、無駄な損害を出した。
緑っぽい艦内照明が好みなのがベルデルで、航空戦力を重視している。赤っぽい塗装が好きなのがフリーデで、ミサイル兵装をどの国よりも重視している。
今後、国家連合の中のパワーバランスが確実に変わるが、よりどころにしていたSUSが大損害を負った今、この二か国が生き残れるかは不明。少なくとも地球勢力と協力関係にあるアマールには、戦っても勝てない事は確実。
つまりヤマトは3ヶ国を滅亡に追いやり、内一か国の存する銀河も消滅させたのである。
衰亡した2大超大国は見る影もなく、その結果銀河に戦乱が発生。更に復活編の登場国家を加えると合計5ヶ国に大損害を与え、2ヶ国に立ち位置の確認を強要するという結果になっている。
しかも、うち2ないし3ヶ国は友好国や友好関係を結びうる国である。どんだけ疫病神なんだよ。
更に更にィ!
地球艦隊は何度も壊滅の憂き目にあっているが、そのうちガトランティス戦役とウラリア戦役に加えてディンギル帝国戦役、ならびに対SUS戦では間違いなく古代進に大きな責任がある。適正な脅威判断や入手した情報を司令部に上げず、あるいは指揮系統を理解せずに情報を不適切に扱ったのか。
ともかくとして、アンドロメダ以下の第二期地球艦隊はガトランティスの戦略にはまって壊滅。第四期地球艦隊もまた、ディンギルの奇襲的戦術にはまって全滅した。SUS機動要塞戦では個艦戦闘に注力しすぎてD級や“スパドロメダ”を見殺しに。挙句アマール星守備艦隊も犠牲になった。
何と罪深い艦であろうか。
そんなヤマトの性能と、その整合性に迫ってみたいと思う。どんな導入部だよ……。
さて、宇宙戦艦ヤマトの中で最もご都合主義と呼ばれ、あるいは神聖視されてロマンとして扱われるのが、この地球戦艦ヤマトだ。
ご都合主義の最たるものとして、数値がある。このヤマトという戦艦についての数値面でのご都合主義――これは私も擁護できない、というか数値はほとんど擁護した事ない――は極めて大きな問題である。リメイク製作陣に限らず二次創作者やその手前の頭の中で妄想して楽しむ同志諸君にとっても、頭が痛い問題なのだ。
私も遅ればせながら頭を痛めたいと思う。
数値の再設定
265メートルではあの艦橋等の描写にならない事はどうあがいても事実である。
大体、ブラックタイガーが40機近くも艦内に積まれているが、元になった大和が艦載機を6ないし7機しか積めないのに、あり得ようはずがない(天知茂風)。
しかも、元々の大和が積んでいた零観や零式水偵はそれぞれ全長9.5と11.49メートルしかない。全長17メートルのブラックタイガーや40センチ全長の伸びたコスモタイガーⅡなど、二桁機数格納できるはずがない。
忘れがちだが、大和の7機だって実はたいそうな艦載機数なのだ。
機数でいえば、航空巡洋艦などと称される利根型重巡洋艦と同数。無論、より格上の最上(上限11機)や伊勢型戦艦(改装後上限22機)に比べれば図体のわりに全然積んでいない事になるが、設計段階で計画された搭載機数としては確実に多い。
零観や零式水偵積みこみにあたり、前者は“戦闘観測機”とも呼ぶべき性能を(大戦当初は、熟練パイロットの手によって)発揮し、後者は“雷撃観測機”とも呼ぶべき性能であり(大戦当初は、熟練パイロットの手によって)、それなりの機数が発艦出来た場合は一定程度の攻撃力を持つ水上機編隊となり得る。
若干脱線したので話を戻します。
まずは簡単にクルーの主たる活動場所、艦橋について。
ヤマトの艦橋は元々のヤマトの艦橋より明らかに横幅が大きい。一度でも大和の図面を見たことがあれば、真っ先に気が付くであろう。簡単に言うと、大和は長方形に近い塔型の艦橋であったがそれがヤマトに改装されるにあたって正方形ないし桁行ではなく梁行き方向が長手の長方形に変更されている。残念ながらヤマトの正面図を当たっていないので、正確な事は言えないが、先ほど述べた通りの形状なので艦中心線方向の数値が判るだけでもある程度は推測が出来るだろう。
単純にヤマトの図面を265メートルで計算すると――
第一艦橋:艦中心線方向9.6メートル
第二艦橋:艦中心線方向13.8メートル
第三艦橋:艦中心線方向20メートル
であるが、これは多分通路の分を勘定していない。図面が厳密には横断面図(パンフレットのやつですから)では無い為正確なものは分からないが、実質の床面積はより少ないだろう。エレベーターのスペースなのだろうが、結構幅を取る。
故に、恐らく――
第一艦橋:艦中心線方向5.5メートル
第二艦橋:艦中心線方向6.9メートル
第三艦橋:艦中心線方向13メートル
ぐらいだろう。護衛艦こんごうのCICは艦幅21メートルの結構ギリギリまで幅を取っているし、艦橋の操舵室面積もそう変わらない規模で取られている。まあ、まずまずの規模である。が、描写からすればかなり狭いんじゃァないだろうか。まあ、こんな程度は……序の口。もっとまずい問題として、艦載機収容能力がある。
先に述べた通り、全く持って論外レベルにスペースが足りないのだ。
艦載機を積む。
ヤマトの艦載機数は恐らく40機。何故そう言えるかと言うと、七色星団決戦での描写でブラックタイガーが全機発進する際の格納庫右舷側の俯瞰カットがあった。この際、立体駐車場――もとい、駐機場は縦4段横4列の計16機が描かれていた。左舷側も同様だとすると、倍で合計32機。
考察において問題なのが描写のブレ。
一度たりとも端から端まで格納庫が描かれていた事は無く、第一シリーズで複数登場したコスモゼロの分の格納庫は……さてどれだけを用意すべきか。妥当なところで左右に一列をプラスして8機分のスペースを確保しておこう。とするとコスモゼロ、ブラックタイガーと予備の機体の合計が40機となる。
一時に半数強ないしほぼ全機を発艦させるため、40機弱を稼働可能機体・補用を数機として勘定すれば劇中の描写と合致させられるだろう。
ブラックタイガーは全長17メートル全幅7.9メートル、コスモタイガⅡーは全長17.4メートル全幅8.2メートル全高3.2メートルとの設定が一番浸透している。
数値が近似なのに一つ考えられるのがブラックタイガーが余剰の多い設計であったという可能性。その無駄を削減した結果が、コスモタイガーⅡ。あるいは枠組みを共通することで艦内配置の設計を簡略化することをもくろんだか。
問題はどの程度の容量が必要かという事。
推測するにあたって、ブラックタイガーを縦17メートル横8メートル高さ3メートル……だとギチギチに詰まってしまい整備だとか移動だとかが完全に不可能になってしまうため、余分なスペースを取って縦21メートル横14メートル高さ8メートルの立方体として考える。
つまり2352立米。32機分だと7万5264立米、40機分だと9万4080立米となる。高さ32メートル横69.6メートル奥行き14メートルの躯体が2つ、40機分だと高さ32メートル横87メートル奥行き14メートルが2つという計算になる。
困ったことに、ヤマトの発艦口付近の水線下は13メートル程度しかない。格納庫内をエネルギー伝導管が通っている描写はない為、中央より下と考えて構わないだろう。完全にはみ出てしまう……。
高さ32メートルはほぼ確定だ。これより小さくなることはないといえるだろう。だって駐機場機構の分は勘定に入れていないから。問題は長さである。次に問題なのが幅。14メートルに機構分をおまけして16メートル幅の格納庫が二つ並列に並び、その間を滑走スペースが存在する。
ブラックタイガーのうち、山本機が格納庫内をあっちへこっちへ激突して停止したことがある。そこから考えてブラックタイガーの全長分は最低でも幅としてほしい。多少余裕を持たせて21メートル程度か。となると格納庫内全体の幅は53メートルは確実な線となろう。これはあくまで内寸だから装甲だのを合わせると更に2から4メートル程度はプラスする必要があろう。合計で57メートルぐらいか。
この時点で艦幅34メートルを大幅に超えてしまう。格納庫の長さが70から80メートルと全体の1/4を超えるのはもう問題にならないだろう。
どう頑張っても巨大な躯体が艦尾付近にぶら下がる状態になってしまう事には変わりないのだから。
2199や2202のようなリボルバー的の格納・カタパルト射出であれば16機を3機+α程度の幅で納められる。格納庫の長さも2機+αと全長の拡大も相まって占める割合は1/8程度となる。が、この陳列タイプだとどうしても巨大になってしまう。だから原作の描写に寄らない、リメイク作の解決方はかなり合理的でうまくいっていると思う。
ただ、あえて旧作の描写にこだわるのがこのブログ。故に全長再設定を続行する。
艦幅を2倍にした場合、大和のシルエットであれば72メートルを大体の場所において確保できる。ヤマトが若干細身であることを考慮しても、大した問題はないだろう。水線下も2倍寸法にすると26メートル程度で、多分艦載機格納スペースは描写通りの規模で収納できるだろう。
さて、このスペースは方形である為どうやっても一辺が弧となるデッドスペースが生じる。が、この部分を補助エンジン関連のパイプ用の通路を確保できたという見方も可能。被弾が心配だけど。艦の幅をもう少し増やして1段を4列の両舷8機をプラスして格納するという方法もあろう。
増やさない場合はその他舟艇の格納場所と出来るだろう。
救命艇が艦首側の微妙な位置に格納されている設定だが、他の機体や舟艇の格納場所は判然としない。もし、横倒しで格納するとすれば、上陸用舟艇や中型雷撃艇も格納できるくらいのスペースは確保できる。
ヤマトの艦載艇は複数存在し、17.3×17.7×推定9メートルの上陸用舟艇や11.9×9.5×推定9メートルの救命艇、他にも探査艇や後期作品ではコスモハウンドなどの多数の舟艇を格納する。面倒なので20×20×15=6000立米で計算して16隻ほどを搭載(大和が内火艇11、カッター5を搭載していたという説に基づく)として9万6000立米を一旦計算してみた。多分、そんなに多くあっても復活編以外で艦載艇大集合は見られないため、半数で十分だろう。この場合8隻、4万8000立米となる。
検証するには何千分の一でも構わないからモックアップを造る必要がある為、ざっくり計算をした上の感覚でしかないが、描写を変更せずに必要な機数を収容するには、幅53メートル長さ87メートル高さ32メートル;14万7552立米が必要。艦の能力を維持したまま、艦の形状を維持するには2.2倍以上3倍以下の範囲で拡大する必要が有る。
本当は余剰となってた燃料庫の分をスペースに充てたいが、そうすると描写が変わってしまうため却下。
後は実体弾の問題だ。
ミサイル発射管は26門、装填済みの1発と予備2発に加えてできればミサイルと魚雷を両方用意しておきたいため、78発の倍(から煙突ミサイル分を除くと)だから132発が必要であろう。煙突ミサイルの8セルに関して言えば缶から延びる元の煙炉に相当する部分を利用すれば2・3発程度は収容できよう。
面倒なのでトマホークよりいくらか大振りでざっくり全ミサイルを統一想定する。
つまり、直径60センチ全長6メートル;1.6立米。(矩形として計算した場合は2.16立米)これが132発だから211立米から必要な容量としては285立米が最大となる。これをどこに突っ込むかといえば、大和の元々の燃料庫。単なる計算でしかないが、ここは相当な容量がある為、利用すれば艦容を変えずに済む。
元々の燃料庫のスペースは重油6300トン=630万リットルを収容できる。重油は1リットル当たり水1.2リットルに相当するため、換算して525万リットル故に5250立米ほどあり、これらはヤマトの運航には必要ない為転用できると考えられる。
現代の戦闘機は例えばF35Bだと6123リットル燃料を搭載できるらしいので、単純計算すると全機を1回補給するのに24万5000リットル。まあ、重油とジェット燃料では全然話が違うし、もっと言えば液体燃料であるかどうかしたい不明である。ちゃんと考察すべきだが、今回はコスモタイガーⅡが主題ではないため省く。
で、全体燃料庫全てを航空燃料にすると21回分補給できる。
普通の空母は10回程度の補給が行えるぐらいが基本の容量である為、半分は別の目的に利用したい。262万5000リットル=2625立米、艦載機格納に回したところで大した分量にはならないが、艦載機用の爆装・雷装用の兵器搭載と考えると相当な分量になる。
煙突は喫水線から頂部まで30メートルほどで長径8.5メートル、幅4メートルとなる。長射程の煙突ミサイルが入っているから20メートル近くが既に“消費”されてはいるもの、残り部分の煙炉はいまだ手付かず。これを艦首から艦中央部まで直径が2メートルぐらいで引くことが出来れば、エンジンノズルまでの距離は元のシャフト格納部を利用して軸線を整える事が出来る。つまり、波動砲と波動エンジンとエンジンノズルを繋げられるのである。
やっぱりネックは艦載機・艦載艇ですね。
どうにもこうにも総計19万立米が原作設定値では艦内に入らない。“描写に忠実であれ”という大前提を放棄してもどうにも入らない。
まあ、仮に艦内に入ったとしてもその配置は設定画とは目も当てられないほどに大幅に異なるものになるだろう。だって単なる数字合わせだから。各省庁の官僚や政治家がよくやる予算付け替えと同じ、解決策である場合も多いがしかし、多くの問題の核心に目をつむった策である時は単なるまやかしでしかない。
やっぱりちゃんと全長を設定しなおす必要が有ることが再確認できたと思う。
艦橋を吟味する。
艦橋の面積について、話を戻そう。艦内描写において、ヤマトは常に倍角寸法で描かれているらしい。
倍角寸法とは実際の寸法の倍の数値になるような見え方や描写方法の事である。1000立米の立方体を倍角で取ればそれは8000立米に見える――例えが例えになっていないので……桁行き10メートル梁行き10メートル階高10メートルの部屋が20×20×20メートルに見えるという事と説明しなおす。
第一艦橋は大体20メートル四方に匹敵する大きさで描かれている。倍角であれば半分であるから10メートル四方。では実際のヤマトの設計図はどうかといえば――もう一度数値を見せよう。
第一艦橋:艦中心線方向5.5メートル
第二艦橋:艦中心線方向6.9メートル
第三艦橋:艦中心線方向13メートル
である。
この時点で話にならない。予想床面積は第一艦橋は20畳程度=10坪、第二艦橋30畳強=15坪、第三艦橋は約100畳=50坪ぐらいとなる。
第一艦橋に関しては薄っすら手狭なLDKといったところだろう。普通の家具が置いてある程度ならば当然、問題なく暮らせる――じゃない、操艦や指揮に当たれるだろう。
第二艦橋はゆったり過ごせるLDKあるいは2台入るガレージ(6000ミリ四方)より少し広い。
第三艦橋はいつもなにがしかの整備のための基地になっているが、さすが、車8台分のガレージに相当する。他が狭いという見方もあるが。
ネットにあった計算フォーム(中京間計算だった)を使っているため、普遍的なものではない。が、そんなに外れた数値ではないはず。私が打ち込み間違えていなければ。にしても……広いような狭いような。描写との比較で言えばまるっきり狭すぎる。だが、常識外れに狭いかどうかは微妙な所。
様々なテーブルだのコンソールだのが置かれた空間であり、また描写と一致させるには、やはり2倍から3倍の間で拡大する必要が有るだろう。
仮に2.2倍すれば――
第一艦橋:艦中心線方向12メートル
第二艦橋:艦中心線方向15メートル
第三艦橋:艦中心線方向28メートル
これならば第一・第二艦橋が手ごろな数値に拡大したし、第三艦橋は整備機材を集中運用できる基地としてかなり大型化できた。少なくとも、CICが大型化した現代の艦艇並みのスペースを確保できたのではないだろうか。
しっかし……第三艦橋を巨大化させても、これでもデスバテーターより小さいんだからアイツがいかに大きいかが判る。
全長の再設定値
艦体を2.2倍して人体寸法を用いる部分はそのままにした場合、大体の部分が割合すんなり収まるという事が言えるだろう。つまり、艦載機格納スペースなどの艦内描写が妥当になるということだ。
そこで、全長をもう一度計算しなおす。
全長:584.76メートル
全幅:76.12メートル
全高:169.4メートル
これが妥当なラインではないだろうか。
この数値で個人的に評価してほしいところは、当ブログが妥当だと推奨する再設定値の内、アンドロメダよりも一回り小さく、主力戦艦より大きいという点。
ヤマトの全長に対し副砲は約9.7メートル(を2倍)、煙突は約13.8メートル、カタパルトは約20.7メートルを占める。そこにバウ(バルパスバウとか伸びた波動砲口等の全部)の長さ27.6メートルが加わる。つまり合計で61.42メートル、2.2倍すると179.12メートルだ。ヤマトの全長からこの数値を差っ引くと主力戦艦の再設定値に近い405.64メートルとなる。
どうだ! 私の想定もまんざら間違ったものじゃないでしょう?
モックアップを作るのが一番であるが地球のどこにもそんな予算はない為、正直な話……どの数値が正しいのかは確定できない。ただ、最低限の値は算出できるだろう。多分、今回できたのではないかと思う。数学ぎらいの文系が行った計算だから、信用度は低いけど。
次回はヤマトの活躍を網羅的に考察する。
地球防衛軍・指揮系統と部隊(ヤマト2編)
地球防衛軍の指揮系統はかなり明確で、軍人に対しての任命権と指揮権は地球防衛軍長官に存在している。その長官を監督するのが地球連邦大統領であり、長官の任務遂行を補佐するのが防衛会議だ。
他方で現場においてはわずかに様相が異なる。
つまり、現場最高指揮官である艦隊総司令が、第一次的な指揮権を掌握しているのだ。また、作戦に対する最終的な可否の判断は同様に艦隊総司令が掌握しているとみて構わないだろう。大体がガミラス戦の生き残りなのだろう、艦隊司令官同士の結びつきは強く、明らかな命令違反であってもそれを突破できるだけの結束を有する。防衛司令部がダメダメすぎるというのも大きいが。
長官と艦隊司令が互いに一定程度けん制し、前者は政治面で後者は戦闘面で能力を発揮すれば、それは好ましい事であるといえよう。
その両者を結びつけるのが防衛会議であり、軍全体を地球連邦の政治にリンクさせるのが大統領の仕事だ。
が、大統領も政治力をいまいち発揮できず。それよりも何よりも、防衛会議の無能さよ……さらばよりかは違法性が減ったが、しかし何がしたかったのかまるっきり不明な集団に成り下がった。挙句、途中でフェードアウト。
――以下、部隊についての考察に移る――
地球軍、登場部隊
ヤマト2においては艦隊編成が判然としないわりに非常に多くの艦隊が登場する。しかも時期によってその様相が幾らか変わるらしく、一貫していない。さらばの記事と同様、空間騎兵隊は除く。
なお、部隊名称や登場話数が正確である保証はできない。
ガトランティス戦役以前(第1話から7話を参考)
名称:太陽系外周艦隊
規模:不明
戦力:不明
配備地/作戦域:外惑星域から太陽系外周域
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:地球防衛軍艦隊司令部
隷下部隊:護衛隊
太陽系の外周から外惑星圏までを担当域とする戦闘艦隊で、敵艦隊と最初に交戦する部隊である為、最精鋭が集結している。恐らくは戦艦が主力で、その戦力補完に巡洋艦や駆逐艦を要すると思われる。
主力の戦闘艦隊とは別に、外周域を航行する艦船を保護する護衛隊を隷下部隊に持つ模様。ヤマトが所属していた第3護衛隊以外の描写は無し。
登場話:第1話
第3護衛隊:ヤマトを旗艦とし、駆逐艦とパトロール艦で構成された艦隊。ナスカ艦隊の奇襲を受けて大損害を負う。
※第1、第2が存在するか保証なし。また、他にどんな戦力があるか不明。劇中に描写なし。
名称:宇宙艦隊(序数艦隊)
規模:不明
戦力:不明
配備地/作戦域:不明(太陽系全域)
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:地球防衛軍艦隊司令部
隷下部隊:不明(恐らくなし)
ナンバリングされた艦隊で外周艦隊とは別個に設けられた艦隊。一個一個の艦隊戦力はさほど大きいものではないようだが、複数個を集結させることで太陽系外周艦隊とほぼ同じ程度の戦力になると思われる。外周艦隊と別個に設けられているのだから恐らく、理由があって設けられているのだろう。
こじつけるなら、地球連邦が直轄的に招集した戦闘艦隊が外周艦隊で、各国が独自ないし同盟関係に基づいて戦闘艦を供出したのが序数艦隊。といったところだろうか。
登場話:第7話
第2宇宙艦隊/第3宇宙艦隊/第8宇宙艦隊:第11番惑星における戦闘の報を受け集結、同宙域へ前進した艦隊。怖気づいた防衛会議ないし司令部がどうやら素早く派兵を決定したらしい。端っから長官の話、聞けばよかったのにね。
※他にどんな戦力があるか不明。劇中に描写なし。
ガトランティス戦役開戦後(第18話から19話を参考)
名称:太陽系外周艦隊
規模:連合艦隊
戦力:5個艦隊
配備地/作戦域:外惑星域から太陽系外周域
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:地球防衛軍艦隊司令部
隷下部隊:第1から第5外周艦隊
地球防衛軍の外周から外惑星圏を担当域とする戦闘艦隊。第1・第2外周艦隊は最精鋭とみられ、多数の新鋭戦闘艦を有する。
開戦時から同様の編成なのかは不明だが、戦力の総量から考えて内惑星艦隊(序数艦隊)を配置替えした可能性もある。基地所属艦隊と違うのか、或いは外周艦隊が別個にあるのかは正直判然としない。
第18話において艦隊配置図が土方総司令の肩越しに映っていたが、同時に艦隊発進シーンも描写されている。両者を重ね合わせると、冥王星基地所属艦隊がある一方で第一外周艦隊が存在していると判断するのが妥当だと思う。
任務は外周艦隊が敵戦力との交戦を前提として、各寄港地の惑星軌道を警備・巡航するのだろう。
登場話:第18話
第1外周艦隊(冥王星軌道):最精鋭、艦隊総旗艦アンドロメタを擁する。
第2外周艦隊(海王星軌道):第1外周艦隊と同等。多数の主力戦艦や巡洋艦で編成
第3外周艦隊(土星軌道):戦力不明
第4外周艦隊(天王星軌道):戦力不明
第5外周艦隊(木星軌道):戦力不明
※恐らく、上記が全戦力。
名称:基地所属艦隊(前衛基地所属艦隊とも)
規模:艦隊
戦力:3個艦隊
配備地/作戦域:各惑星基地周辺域
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:地球防衛軍艦隊司令部
隷下部隊:冥王星基地所属艦隊/天王星基地所属艦隊/海王星基地所属艦隊/土星圏艦隊
各基地に所属し、基地への敵襲来に際しては前進してこれを迎え撃つ守備艦隊。作戦参謀の表現を借りれば前衛基地艦隊。
一つには早期警戒や不審船の対処などが任務として考えられる。或いは、基地に所属し、基地の航空隊や砲台等と連携を取りつつ戦闘を行い、敵を排除する防戦の要としての任務も考えらえるだろう。
木星圏は別個に上位艦隊を設けているが、これが基地所属艦隊の系列であるかは不明。土星圏も別個に上位艦隊を有している可能性があるが、作中の言及はない為不明。
各基地によって性格が多少異なり、小規模基地ではやはり重量級の艦隊は運用が不可能とみられる。あるいは、小規模基地であった場合には徹底抗戦せず快速を基点とした戦闘プロットを用いるのかもしれない。
登場話:第18話
冥王星基地所属艦隊:巡洋艦と駆逐艦で構成された水雷戦隊
天王星基地所属艦隊:主力戦艦を旗艦とした多数の巡洋艦を擁する艦隊
海王星基地所属艦隊:主力戦艦を旗艦とした多数の巡洋艦を擁する艦隊
※他にどんな戦力があるか不明。劇中に描写なし。
名称:木星圏連合艦隊
規模:連合艦隊
戦力:4個艦隊
配備地/作戦域:木星圏・木星軌道
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:地球防衛軍艦隊司令部
隷下部隊:衛星基地所属艦隊
木星の各衛星に配された基地所属艦隊の上位艦隊――だと思う。基本的にはガニメデやイオなどの各基地所属艦隊を束ねる、制度上の組織と思われる。実際的に用いられていたとしても不思議はないが、基本的にはあまり大きな戦力の艦隊では無く一個外周艦隊と同じ程度であろう。
登場話:第18話
ガニメデ基地所属艦隊:戦力不明
カリスト基地所属艦隊:戦力不明
エウロパ基地所属艦隊:戦力不明
イオ基地所属艦隊:戦力不明
※恐らく全戦力と思われる。が、詳細不明。
名称:空間輸送護衛艦隊
規模:不明
戦力:不明
配備地/作戦域:外惑星域から太陽系圏内
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:地球防衛軍艦隊司令部
隷下部隊:不明
太陽系系内の輸送船団等の護衛を担当する艦隊――だと思われる。司令部員が読み上げただけで特に描写はない。太陽系外周艦隊隷下の護衛隊を編成替えして独立した護衛任務の艦隊として成立させたという説明が可能だろう……違うかも知らんが。
防衛司令部は参謀の様に仮に戦争になっても各惑星基地を維持するつもりだった可能性が高く、対艦戦闘用の艦隊と‟コスモレーン”防衛用の艦隊を分けて作戦展開するように戦力を整えた。とすれば合理的な設定、劇中登場になるだろう。
この艦隊まで招集したとすると、本当に地球の戦力がゼロに近くなってしまう。少なくとも、万全の状態で地球に残っている戦闘艦は残存なしとなるだろう。それだけ、土方総司令はバルゼー艦隊の戦力を憂慮していた証左といえよう。
登場話:第18話
空間輸送護衛艦隊:戦力不明
※他にどんな戦力があるか不明。劇中に描写なし。
名称:内惑星防衛艦隊
規模:艦隊
戦力:不明
配備地/作戦域:火星基地・内惑星域
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:地球防衛軍艦隊司令部
隷下部隊:不明
内惑星を守備する戦闘艦隊で、事実上最終防衛ラインを担う。火星基地所属の戦力不明な艦隊。通常の基地所属艦隊よりも戦力を拡大した火星基地所属艦隊を内惑星防衛艦隊と格上げした可能性がある。指揮下に火星基地所属艦隊以外にも艦隊があるのか、隷下部隊があるのかは不明。
防衛司令部の問いにペロッと話してしまう点――結構正直というか、素直な方が指揮官らしい。
登場話:第18話
内惑星防衛艦隊:戦力不明
※他にどんな戦力があるか不明。劇中に描写なし。
名称:外惑星巡航空母艦隊
規模:艦隊
戦力:複数艦隊
配備地/作戦域:内惑星域
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:地球防衛軍艦隊司令部
隷下部隊:空母艦隊
外惑星圏全域を担当する地球防衛艦隊唯一のまとまった航空戦力。総力は空母5隻。平時は現代の空母と同じように、所属航空隊は基地にて訓練を行い、艦は艦で訓練を行い、必要に応じて合同で訓練を行う。当然、戦時においては直ちに乗り組みを行い、作戦に当たる――のだろう。どうやら木星圏の各基地は航空戦力の集積地らしい。
空母以外に所属艦があるのかは不明。仮に直率の護衛以外の戦闘艦を編入するならば――恐らく木星圏連合艦隊所属の艦隊だろう。これを加えれば空母一隻を中心とする中々に強力な機動艦隊を最低3つ、最大5つ編成することが出来る。
練度がどれだけ確保されていたかは不明。また、所属航空隊がマルチロール機で編成されているのか、劇中で描写されたように雷撃専門なのか、或いはフェーベ沖決戦直前で編成を変更されたのか。これも不明。
登場話:第18話
第1外惑星巡航空母艦隊:戦力不明
第2外惑星巡航空母艦隊:戦力不明
第3外惑星巡航空母艦隊:戦力不明
※恐らく上記が全戦力。
名称:宇宙艦隊(序数艦隊)
規模:艦隊
戦力:不明
配備地/作戦域:太陽系圏内
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:地球防衛軍艦隊司令部
隷下部隊:第1から第16艦隊(欠番の有無は不明)
恐らく、戦役開戦前と同じ部隊か――幾つかの艦隊を廃止したうちの残った艦隊だろう。司令部員に集結完了などの移動情報を読み上げられただけで、戦力などの仔細は一切不明。
登場話:第19話
第11艦隊:戦力不明
第24艦隊:戦力不明
第15艦隊:戦力不明
第16艦隊:戦力不明
※他にどんな戦力があるか不明。劇中に描写なし。
名称:機動艦隊
規模:艦隊
戦力:不明
配備地/作戦域:不明
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:地球防衛軍艦隊司令部
隷下部隊:不明
空母に随伴する護衛戦力ないし、水雷戦隊のような快速艦隊と思われる。恐らく後者の線が強い。空母は5杯がせいぜいで、結局運用できたのは3杯のみであるから、空母を要する機動部隊では意味が通じないだろう。
空母の護衛ならば木星圏連合艦隊で十分であろうが、であるならば雷撃の専門艦隊だろう。劇中の後の配備先の可能性としては、ヒペリオン艦隊あたりか。
登場話:第19話
第6機動艦隊:戦力不明
※他にどんな戦力があるか不明。劇中に描写なし。
名称:巡洋艦隊
規模:艦隊
戦力:不明
配備地/作戦域:不明
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:地球防衛軍艦隊司令部
隷下部隊:不明
詳細不明。専科艦隊の類と思われる。巡洋艦のスペックを考えるに、雷撃力も優れるが砲戦能力により優れた力を発揮する艦隊である可能性が高い。水雷戦隊では無く、主力戦艦で編成された艦隊に準じる砲戦系艦隊として編成されたとするのが妥当だろう。
恐らく、主力艦隊の砲戦能力向上のために招集されたとみられる。
登場話:第19話
第7巡洋艦隊:戦力不明
※他にどんな戦力があるか不明。劇中に描写なし。
土星決戦における編成(第21話)
名称:地球防衛軍艦隊
規模:連合艦隊
戦力:戦艦36、巡洋艦81、空母3、パトロール艦・駆逐艦複数
配備地/作戦域:タイタン前面域
指揮官:土方竜(アンドロメダ艦長を兼任)
所属:地球防衛軍
上部組織:防衛司令部
隷下部隊:ヤマト機動部隊、タイタン主力艦隊、ヒペリオン艦隊、レア艦隊、ディオネ艦隊、カッシーニ予備艦隊
地球艦隊の総力。土方総司令の独断で配置転換されたもので、バルゼー艦隊迎撃を第一目標に据えた艦隊である。バルゼー艦隊の太陽系侵攻以前は恐らくタイタン基地に置かれていた司令部だが、土星決戦を直前にアンドロメダにその機能を移したと考えるのが妥当。
艦隊の総力を挙げてバルゼー艦隊を迎撃し、撃破したしかる後に艦隊を集結させて白色彗星への攻撃に移った。
――以下、地球防衛軍艦隊の隷下部隊の考察に入る――
名称:ヤマト機動部隊
規模:艦隊(ヤマト及び旧外惑星巡航空母艦隊)
戦力:戦艦1、空母3
配備地/作戦域:タイタン前面域
指揮官:古代進
所属:地球防衛軍
上部組織:艦隊司令部(土方幕僚部)
隷下部隊:なし
ヤマト、宇宙空母の2大航空戦力を以て編成された地球艦隊の航空戦力。唯一にして全力の航空戦力である。事実上戦艦である各空母が単艦で自らの護衛をこなす極めて戦闘的艦隊であり、大抵の任務に投入することが可能な特殊な艦隊。
残念ながら、実際には宇宙空母は砲戦に参加しなかったが……。
土星決戦において――
彼我の戦力格差を危惧した土方総司令の秘策として緊急的に出動、ヤマト航空隊はほとんどレーダーを使わずに索敵を敢行。真田機の活躍によりフェーベ沖に潜伏していたプロキオン方面軍を発見。この通報により機動部隊は総力を挙げた戦闘に移行する。
真っ先に命令を受けた第一空母は直ちに第一次攻撃隊を発進、続いて大量の雷撃隊を発進させる。フェーベ沖に到達した航空戦力は、先に発進したヤマト航空隊が先陣を切ってプロキオン方面軍に突入、しかる後に宇宙空母の雷撃隊が突入。果敢な雷撃を行い敵空母の甲板を散々に破壊し敵艦載機の発進を不可能にした。
更にヤマトが前進し砲撃を敢行、空母を叩いたのちに護衛艦に照準を合わせて攻撃。同方面軍を壊滅させた。
続いて、ヤマト航空隊はタイタン前面域での戦闘に参加し、バルゼー艦隊を追い立て主力艦隊の勝利に貢献。同艦隊は土方司令の主力艦隊によるシリウス方面軍撃滅を見届けたものの……突如ワープアウトした白色彗星の重力圏につかまり脱出できず、艦載機もろとも吸い込まれてしまった。
恐らく残存艦はヤマトのみ。ほぼ全滅したのは宇宙空母の推力が図体に比べて弱かったのが原因だろう。
名称:ヒペリオン艦隊(前衛艦隊)
規模:艦隊
戦力:戦艦複数、パトロール艦複数、巡洋艦複数、駆逐艦多数
配備地/作戦域:ヒペリオン周辺域からタイタン前面域
指揮官:氏名不明(旗艦である主力戦艦の艦長を兼任)
所属:地球防衛軍
上部組織:艦隊司令部(土方幕僚部)
隷下部隊:恐らくフェーベ環艦隊、ヤペトゥス艦隊
主力艦隊に先んじてバルゼー率いるシリウス方面軍を攻撃、戦陣を乱すために出動した。戦力規模は比較的小さく、戦艦は旗艦の主力戦艦1隻程度で他はみな中型・小型の快速艦で固められている。隷下部隊は艦隊配置より推測。
土星決戦において――
土方司令の出動命令を受領し直ちに出撃、自慢の快速を以てバルゼー艦隊の後方から追いすがり、早々に砲戦距離目前まで詰め寄った。他方でバルゼーは艦隊を二つに分けて正面から迎撃を志向、対峙させる第二艦隊には準決戦兵器である衝撃砲の発射準備を下令した。
ヒペリオン艦隊は第二艦隊を射程圏に捉えると、果敢にもショックカノンを以て砲撃を開始した。しかし、電子戦でも行われたのか、敵艦隊に対する着弾は劇中では無し。一方で第二艦隊は満を持して衝撃砲を以てこれを砲撃、次々に一撃で粉砕していく。アンドロメダ艦橋内のパネルによれば、ヒペリオン艦隊は一歩も引かずに交戦を続け、第二艦隊を圧迫、第一艦隊=味方主力艦隊の方へと押し込むことに成功。
だが、ヒペリオン艦隊の活躍もここまで……奮戦敵わず、最後に残った旗艦も第二艦隊が放つ衝撃砲の餌食になってしまった。
最期の司令が発した「我が旗艦の……」の後に続く言葉は永遠の謎。出力か火力か射程か防護力か、何かが敵に及ばなかった事を示すと思われる。
一応、敵陣を乱す――主力艦隊に当たる敵艦隊を削ったことは事実。更に、戦況は全体的に不利とはいえ一時は猛打で敵第二艦隊を圧迫することに成功した。衝撃砲さえなければ、互角の勝負が出来たかもしれない。衝撃砲さえなければ主力艦隊前進まで踏ん張ることが出来たかもしれない。
その段階までヒペリオン艦隊は踏ん張ったのである。確かにヒペリオン艦隊は負けた。だが……これは結構、活躍できたと評せるのではないだろうか。
名称:タイタン艦隊(主力艦隊/土方幕僚部)
規模:連合艦隊
戦力:戦艦多数、巡洋艦多数、駆逐艦複数
配備地/作戦域:タイタン前面域
指揮官:土方竜
所属:地球防衛軍
上部組織:艦隊司令部
隷下部隊:恐らくレア艦隊、ディオネ艦隊
あらかたの大型艦をかき集めた大火力艦隊にしてバルゼー連合艦隊を正面から打ち破れる唯一の艦隊。土星決戦時、ヤマトを除けば地球連邦が保有する切り札、最後の砦でもあった。
構成としては――戦艦を集中配備し、巡洋艦を以て拡散波動砲及びショックカノンのエネルギー投射量拡大を図ったもの。更に、これら重要艦艇に対して敵空襲や小艦艇の強襲に対抗すべく多数の駆逐艦を配置し、これの護衛とした。
土星決戦において――
ヒペリオン艦隊に構わず直進する、バルゼー直隷の第一艦隊を正面から迎え撃つべく出動。元来の作戦は快速のヒペリオン艦隊が敵艦隊を圧迫して押し込め、その状態で主力艦隊が突撃・砲雷撃戦を敢行するはずだったと思われる。
しかし、大火力の衝撃砲というリスクと、ヒペリオン艦隊の壊滅を受けて戦闘プロットの変更を強いられた。そこで土方総司令は密集の利点を有し、敵の出方を見極められかつ、命中すれば敵戦力の大幅な漸減が見込める拡散波動砲発射隊形を展開。直進、強襲に対しても十分対応できるはずだった。
ところが、バルゼーの旗艦メダルーザが放つ火炎直撃砲の圧倒的な射程を前に、味方艦隊は一方的に大損害を負ってしまう。これ以上の損害を避けるべく艦隊は土星本星へ転進、後衛や予備戦力と合流しつつ反撃の隙をうがった。
火炎直撃砲の性質に気が付いた土方総司令は、援護すべく高速で接近中だったヤマトに下令し、コスモタイガー隊による敵への空襲を行い、土星の環へと誘い込む。丁度艦隊は環から脱したタイミングで――功を焦ったバルゼーの火炎直撃砲が彼ら自身に牙をむいた。乱気流が発生し、バルゼー連合艦隊は隊列を崩す。
土方総司令はこの機を逃すはずなど無く、直ちに反転しショックカノンの斉射によってこれを打ち破った。そして果敢にも単独で反抗を試みた敵旗艦メダルーザを撃滅するに及び、勝利を収めたのである。
これと時を同じくして、プロキオン方面軍を打ち破ったヤマト機動部隊と合流――その目前に白色彗星が突如ワープアウト。緊急的に白色彗星迎撃を行わなければならなくなった。
白色彗星の奇襲的攻撃に艦隊は動揺、複数隻の巡洋艦や空母などがその超重力に飲み込まれてしまった。しかし、残存艦艇はその超重力に拮抗、拡散波動砲による一撃を加えるべく艦隊は速やかにマルチ隊形を展開。直ちに発射体制を整え、間髪入れずに発射し見事ガス体を取り払った。
だが、続く都市帝国との戦闘には敵わず――回転ミサイルの乱射に対して艦隊は反抗できず、ほとんどが撃沈されてしまう。恐らく、火力維持のために機関を過剰に回して損傷させ、それにより艦の機能がそれぞれ著しく低下してしまったのだろう。
旗艦たるアンドロメダは最後まで踏みとどまったが、しかし、制御も反撃もままならず回転ベルトに激突、爆沈。これにより艦隊は完全に消滅した。
地球防衛軍が編成した史上最大最強の戦闘艦隊がこのタイタン艦隊だろう。重火力の拡散波動砲に最大のウェイトを置いた艦隊編成で敵艦隊と腰を据えた戦闘を行うための編成だろう。
彼らは十分にその役割を果たし、バルゼー艦隊を撃破してかつ白色彗星のガス体をも取り払うことに成功した。しかし、それ以上の活躍は――ストーリー展開的に必要なかったし、艦隊の状態から考えても極めて難しかった。
下記5個艦隊はタイタン基地において各司令や艦長に示された作戦配置図と土方総司令の口から語られたに過ぎない。それ以上の描写はなく、仔細は不明。確かに、一部艦隊は配備状況からその戦力が推測可能だが……基本的には不明。
合流した描写もないが、可能性としてあり得るのは転進中は各衛星の影に隠れ――艦隊集結の命令が出ると同時に出動、気流にもまれるバルゼー連合艦隊を攻撃した。
と説明するのが妥当だろう。
名称:レア艦隊(後衛艦隊)
規模:2個艦隊以上
戦力:第15宇宙艦隊、第16宇宙艦隊等
配備地/作戦域:レア周辺域からタイタン後方域
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:艦隊司令部ないしタイタン艦隊
隷下部隊:なし
名称:ディオネ艦隊(後衛艦隊)
規模:艦隊
戦力:不明
配備地/作戦域:レア周辺域からタイタン後方域
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:艦隊司令部ないしタイタン艦隊
隷下部隊:なし
名称:カッシーニ艦隊(予備軍)
規模:艦隊
戦力:不明
配備地/作戦域:カッシーニの隙間(間隙)
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:艦隊司令部(土方幕僚部)
隷下部隊:なし
名称:ヤペトゥス艦隊(恐らく前衛艦隊)
規模:一個艦隊
戦力:第24艦隊
配備地/作戦域:ヤペトゥス周辺域
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:艦隊司令部あるいはヒペリオン艦隊
隷下部隊:なし
名称:フェーベ環艦隊(恐らく前衛艦隊)
規模:艦隊
戦力:不明
配備地/作戦域:フェーベ環域
指揮官:不明
所属:地球防衛軍
上部組織:艦隊司令部あるいはヒペリオン艦隊
隷下部隊:なし
以上、残念ながらこれらはシーンとしての描写なく設定上のものとなった。
ヤマト2において、地球艦隊は非常に多彩な艦隊編成や戦力配置を見せた。しかも結構明確な運用目的というか、合理性もあり描写と合致した面もかなり多く、ヤマト2全体にわたって見られるウォーシミュレーション的側面が非常に強い。
これがヤマト2という大して評価の高くない作品中の出来事である土星決戦が、ヤマト史上最も熱い戦いの一つと数えられる所以であろう。
そして土星決戦はこれらの様々な設定が支え、盛り上げているのである。
多少、不合理な感のする名称であるとかは一部存在するが、話にならないほどひどい設定でもない。惜しむらくは全てがざっくりした描写に留まるという事であるが、当時のアニメ制作環境を鑑みると、ファンとしてあまり贅沢は言えない。
もっと簡潔に演出すればよかったのに、という批判はあろうが――それでも幾らか軍事マニア的要素がある人間であれば、一連の設定は結構テンションが上がるものではあった。何より、ヤマトを艦隊戦アニメとして決定付けかつ体現するのがこれら一連の設定と描写では無いのだろうか。
少なくとも第18話以降、私のテンションは爆上がりだった。