旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガトランティス側登場人物考察

 

 今回はガトランティス側の登場人物について、ざっくり考察というか――簡単な解説を行いたい。人物について簡単であっても解説を付ければ、彼らの行動をより合理的に解釈をする事が出来るだろう。 

 ちなみに容姿の傾向は肌はほぼ全員緑色。眉毛は非常に濃く、もみあげと繋がりそうなほどである点がおおむね共通している。髭についてはそれぞれの趣味らしく、生やしていることが地位など何かを示すわけではないらしい。

 なお、英語での名称や音転写は適当にネットで拾ってきたので、その点は申し訳ありません。私、英語が出来ないため妥当性があるのか若干不明。

 

 

 

 ――国家元首――
 氏名:ズォーダー5世(Zwordar the Great  英語版:Prince Zordar)
 階級/役職・位:不明(君主国の常より大元帥と推定(推測・実務可)/大帝
 年齢:不明(壮年後半ないし中年、ヤマト2の方が若干老けて見える)
 容貌:緑色の肌、白い長髪、黒い虹彩、均整のとれた中肉中背
 名の由来:ソード=剣

 

 額際から一本、さらに眉ともみあげが一連で繋がった特殊な髪型をしている壮年ないし中年男性。ガトランティスの制服の内、彼のみが黒に白点線の特殊なデザインのものを着用している。また彼のみマントは、パルダメントゥムというローマ期のマントと同じく方で留めている。まさに元来の設定どおりで、ガトランティスがローマ的である査証な人物。威圧感によって高身長にも見えるのだが、意外にもデスラー総統より背が低いという事がヤマト2で判明する。

 戦闘指揮能力と部下の統率力は実はそんなに高くない。だが、ガトランティスという国家自体の体力の高さで物理的に突破する傾向にある。残念ながら、火力だけは高い地球軍と反物質テレサには通用しなかった。


 性格は大胆で一見ワンマンに見えるが、その実案外人の助言に耳を傾け、部下を簡単に信用する珍しいタイプ。どうも、元来の人間的性質はかなり純粋というか、真面目な傾向にある人物といえよう。ごく普通、或いは結構出来のいい指導者。人間としては意外と付き合いやすい感じ。ただ、その性格も劇場版とテレビシリーズで微妙に異なっている。つまり――

 さらばではガトランティスの打ち立てたイデオロギーを体現したような一部の隙も無いキャラクター。常に冷静で泰然自若としているために人間味がないのだが、その一方で欲や闘争性質が具現化したような存在。キャラクターとして大人物で敵の総帥に相応しいと同時に、人間という存在の負の本質を表す人物に仕上がっている。

 他方でヤマト2では強者には敬意を忘れない武人としての性質や、兵士を想う理想を求めた、為政者としての性格を加味人間が求める人間味を備えた大人物で指導者としてはかなりの能力を有する。確かに宇宙という、マクロ視点では明らかにガトランティスとズォーダー大帝は混沌をもたらす邪悪な存在ではあるが、ガトランティスというミクロ視点では自己を確立し指導者として十分に役割を果たす為政者として描かれた。さらば以上の思慮深さが垣間見える描写も多数存在するし、特にテレサのテレザート爆破攻撃やヤマトによる都市帝国上下挟撃でも動揺しなかった。

 最期だけは演出マターで、描写が一貫しなくなり残念だったが……。

 大帝に関して一貫して問題なのが――一度信頼すると、とことん信頼してしまう、独裁者らしからぬ素直な一面加えて堂々としており、多少不安材料を過小評価する傾向にある。これらの要因で色々と小さな采配をミスを重ねた。この性質・要因は人間として付き合う分には何の問題のもないのだが、為政者としては必ずしもプラスの影響をもたらすわけではない

 さらばでは、デスラー総統がただ単に敗北しただけでさほどの影響はなかったため、「死に場所を得たのだ」という反応でも問題はなかった。中枢に攻め込まれたのは痛かったが、都市帝国を切り捨て地球へと拠点を移せばいいという打算は成り立つ。部下もいまいち役に立たなかった程度で、幸いにして替えの手立てがいくつもあったのが劇場版なのだが……

 ヤマト2ではデスラー総統を見逃した事により、ヤマトとの再戦を促し結果としてガトランティス攻略を助力してしまった。他にもテレサを過小評価し都市帝国を損傷させ、また信用してはならなかったサーベラー以下の残念な部下を信用しすぎて手札を全部失った。信用した分だけ、失望も大きくなるが、その失望で時々冷静さを欠いてしまうのもヤマト2におけるズォーダー大帝のマイナス面と言えるだろう

 

 デスラー総統の理解者

 さらば、ヤマト2どちらにおいてもデスラー総統の実力を彗星帝国の中で最も理解している人物というのが特徴的だろう。武人としての側面を高く評価しての事だろう――それは武人と断言できる性格の部下がヤマト2のバルゼー総司令とゲルン提督以外にあまりいない事の裏返しと表現できる。

 そっけないさらばであっても、ヤマトに関する一切を委任。更にその出撃に際し駆逐艦を下げ渡してフリーハンドでの戦闘を許した。監視艦隊司令ミルも厳密にはサーベラー総参謀長の命で張り付いていただけで、ズォーダー大帝としては監視すらする気がなかったように見受けられる。またその敗北に対しても一種の哀悼の意ともとれる発言をした。デスラー総統とは明確な上下関係を有しているとはいえ、一種の先輩後輩ではないが信頼関係を構築していた。

 ヤマト2においてはデスラー総統を同盟国の国家元首かつ、同盟艦隊の最高位司令官待遇で処す。両国の力関係は判りやすくガトランティスが上なのだが、大帝は完全に武人としての総統に惚れ込んでおり信頼関係を早期に構築していた。正直、これは問題でガトランティス首脳部と軋轢を生み、サーベラーの策謀で総統は窮地に立たされるが――その際に彼は総統がビビッて逃げ帰ったと伝えられ……さすがに仕えて久しいサーベラーの事を信じてしまい、聞かされた内容の無様さに対しても激怒した。だが同時に、総統に対しての怒りよりも、ビビッて逃げ帰る人間を信頼した自分自身に腹を立てていた。ある意味でそれほど惚れ込んでいたともいえるだろう。

 結局これは策謀であることが判明し、脱出した総統に対し彼の旗艦を返還することで一種の謝意を示した。大帝、結構義理堅い男である。

 

 最大の特徴はよく笑う事
 さらばでは総統との戦闘中にイメージ映像としての初笑いをかました後、地球艦隊を壊滅させた後に再びイメージ映像として大笑い。都市帝国の戦闘開始時もヤマトをせせら笑い、最後は超巨大戦艦を出撃させボロボロのヤマト相手に勝ち誇った大笑いをかましていた。2時間で4回も笑ってるぞ、この人……。

 ヤマト2に至っては第一話からガンガン笑いっぱなし。本当によく笑うというか、陽気なじい様。更に、ラストエピソードでは“7段笑い”をかました挙句に、「主砲発射よーいッ!! 目標は地球だァ!!」と艦橋でテンション爆上げ、笑いっぱなし。全エピソード中1/4のエピソードで1回は絶対に笑っている。

 まさかの劇場版とテレビシリーズで概ね同じ割合で笑っているのだから、ある意味見てる方も笑うしかない。まるで黄金バットだ。

 

 まとめると――
 ズォーダー大帝は平時や、同格以下の敵と対峙する際の指導者・為政者としては十分な能力を持ちそれを発揮した。だが、火力狂信者の地球や反物質テレサと対峙したが為に通常の判断を超えた判断を要求された……その判断を出来るだけの柔軟さや周到さに欠けた部分は否めない。しかし、基本的には気持ちのいい人物というか、憎めないキャラクターだろう。「力に頼るものは力によって滅びる」と自己紹介気味な発言をしたり、部下の失態にかなりぶちキレたり、テレサの特攻に驚愕したり、なんだかんだで人間味にあふれた人物と言える小林さんの演じる役でよくあるパターンですね。

 ガトランティスという存在の確かさや、その正統性を誰よりも確信していたガトランティス人がズォーダー大帝であり、ガトランティスの宇宙征服は例えるならば「マニュフェスト・デスティニー」として確立され、彼はその指導者としての自身を明確に打ち出していた。

 この天命という認識はある意味人類共通の正当化の意識・手段であり、これもまた人間味。作品を構成するキャラクターとしてのズォーダー大帝は、徹底して人間の負の側面をむき出しにした人物と表現できるだろう

 なお、英語版でプリンスとされるが――これは王子様という意味では無くキングではないがモナークではあるという微妙なラインの元首に用いられる称号である。語源は古代ローマの第一人者(プリンケプス)。

 多分、偶然だろうが……でかしたぞ翻訳担当の方。

 

 

 ――彗星帝国最高幹部――

 氏名:サーベラー(Sabera  英語版:Princess Invidia)
 階級ないし役職:帝国支配庁長官(ヤマト2、行政官)/総参謀長(さらば、ヤマト2。名誉大将推定) 
 年齢:不明(20代中盤から30代前半)
 容貌:ピンク色の肌、白い長髪、、黒い虹彩、均整のとれた細身(さらば)/地球人準拠の肌、長い黒髪、黒い虹彩、均整のとれた細身(ヤマト2)
 名の由来:サーベル


 さらばとヤマト2ではまるっきり容姿も性格も異なる。一致しているのは長い眉毛の美女で、デコに黒縁で内側が赤い▼を張り付けている事。あと性格がきつい傾向にある事。


 さらばにおいてはピンク色の肌色に白髪、白のほぼ全身タイツ身を包んだ性格のきつそうな雰囲気の女性。雰囲気通り、かなり性格のきついタイプで、ラーゼラーが常識的感覚でヤマトやテレサに懸念を示したにもかかわらず、臆病風と一蹴する。また、ヤマトに敗北したデスラー総統を揶揄した。

 つまるところ、他者に敬意を払うという事がまるっきり欠如していたのである。その癖ヤマトが目の前にワープアウトすると口をあんぐり開けて固まってしまうという、態度と度胸が伴わない人物。ズォーダー大帝と似たような振る舞いをするのだが、しかして縮小モデルでしかない。結局彼女が大帝の情婦なのか、完全に仕事上の付き合いなのかは永遠の謎。酌をしていたシーンも業務時間中のスキンシップなのか、単なる業務時間外の飲みニケーションなのかは最後まで分からなかった。ゲーニッツの反応からして日常的なのは間違いない。
 都市帝国登場以降、出番なし

 

 ヤマト2においては黒髪に地球人と同じ肌色、丈の長いドレスに身を包み裾を指に掛けたスタイルで常に登場。さらばよりも幾らかセクシー度合いの増した表情を見せる一筋縄ではいかない女性に設定変更された。のび太ではない。

 性格は面倒で、他者に対してかなり尊大な態度をとる。が、利害が一致すれば一瞬にして手を組んだり、物理的にエスコートしたりと純粋に目的のために邁進するタイプ実はゲーニッツとは遊び半分で権力闘争を繰り広げていた可能性もあるが……。また、割合適正に脅威評価を行うなど結構頭が良い同時に物凄く根に持つタイプ。どうやら、第一話で総統に出したグラスを受け取ってもらえなかったのが決定的な決裂とみていいだろう――そんな個人的理由ってアリかよ……と思うが、それ以外に決定的決裂が起きるようなことはない為……あの行動が決定的とみる他ない。
 ただ、うっかりボロを出してしまう事も少なくなく、デスラー総統に女の浅知恵を見破られるなど残念な面も多い。自尊心が強いからか、視野狭窄に陥ってしまうと立て直しが効かないタイプらしい。繰り返すようだが、基本的に利己主義で非常に面倒な人間。挙句にもの凄く悪いタイミングでひそひそ話を大帝に聞かれると、なんだか色々とままならない人。
 最期は大帝の逆鱗に触れて生存を許されなかった

 ヤマト2において大帝と恋仲であったのかは不明で永遠の謎

 美人である以上、大帝も寄り添われて嫌な気がするはずはないだろうが彼女の性格を鑑みると、恋人にしたいと大帝が思うとは考えにくい……と思ったが、逆にありかもしれない。ただ常識的に考えて、彼女の行政や軍略の手腕に対して、惚れたのだろう。ただ好きなだけで高官に引き揚げるのはさすがに独裁な大帝もしないだろうて。

 実際、ただの大帝付き女官であるというにはほど遠い働きをし、彼女は実際的に支配庁長官など果たすべき業務を理解し実行していた。しかも、ヤマト2においてテレサの行動や総統の行動に加えてテレザートでの戦闘の顛末も的確に見定めていたのである。結構まともな参謀。それを考えれば、大帝からすれば手元に置いておきたい優秀な女性官僚・軍属という認識だったとするのが妥当。

 他方で、大帝は髪型こそアヴァンギャルドだが割とカッコいい。体型も均整がとれており、筋肉質な傾向であるから、後は年齢の問題だけだがこれに関しては何とも推測のしようがない。さらばの方は定かではないが――ヤマト2の場合、サーベラーが猛烈な嫉妬を総統に対して抱いていた事を考えると……好きな方ではあったのだろう

 そう考えると、彼女も結構可哀想。頑張ったのに、イマイチ評価されたわけではない。いつもゲーニッツとラーゼラーとまとめての評価だし……大帝がもう少し彼女を評価してあげれば、彼女の自尊心満足しただろう。そうすれば逆恨み的に総統も独房でシーツ無交換の刑に処せられる事も無かったのに

 

 サーベラーは、ズォーダー大帝と同様のある意味で人間味あふれるキャラクターで、更に人間の弱さと恐れを強調した人物に仕上がっている

 さらばでは懸念を示すラーゼラーを嘲笑ったが、その割に一応ゴーランドに連絡を取った。デスラー総統に対して不必要な牽制球を放ち、敗戦の報を受けて嘲笑う。そのくせヤマトが目の前に現れた途端に固まってしまった。優位な立場を保持し続けることを志向し、それを誇示して敵を牽制する……極めて人間的反応だ。

 ヤマト2などの場合――本来は余程の失態でなければ、一定程度の評価を維持してくれる大帝にわざわざ気に入られようと血道を上げる必要は無かった。素直に言えば、その上で対処を行えば大帝も激怒こそすれ、サーベラーを都市帝国残留させたりはしなかっただろう。彼はワンマンではあるが、法を無視するほどの愚か者ではない。しかしサーベラー(ヤマト2およびPS版)は恐怖に駆られてこの簡単なことすら思い至らなかった。人間は何かしらに執着したり、或いは一度疑念を持つとそれは中々解消できない。人間の醜く情けない側面が強調され、不愉快というほどではないが、ある意味でむき出しの人間と評価できる。

 大帝が古代の正反対に位置する存在であると仮定すれば、サーベラーは雪の正反対の位置に属する人間であると言えよう

 英語版ではプリンセスと銘打たれているが、これも恐らく大帝の英語版肩書と同じと思われる。

 

 

 氏名:ゲーニッツ(Goenitz 英語版:Dyre)
 年齢:不明(中年と推測)
 階級/役職:不明(大将ないし元帥と推定・元帥は上級大将でも可)/遊動艦隊司令長官(さらば) 総参謀長(ヤマト2)
 容貌:白髪、シェブロン系口髭、中肉中背、虹彩色不明(さらば)/白髪禿頭、メキシカン&サイドバーンズ、若干ふくよか、虹彩色不明(ヤマト2)

 モデル(推測):カール・デーニッツで決まり。ほぼまるっきり名前が同じで役職も海軍総司令とゲーニッツと類似。

 

 さらばでは単なる高官としての登場。青黒い軍服を身に纏い上品な雰囲気漂う、おじ様であること以外は特に特徴ナシ。他方でヤマト2では彗星帝国のかじ取りの一翼を担う大幹部へ出世した――代わりに前髪と思慮を喪失してしまった。服もマントこそ有しているが、緑の他の高官とさほど変わら物へと一般化。

 彼の場合、サーベラーに負けず劣らず二つの作品でその容姿があまりに違うが、しかして眉毛ともみあげがあと一歩繋がっていない点は同じ。


 さらばでは彼の働きは定かではないものの――ヤマト2においては対地球戦争の基本プロットを立てた人物であり、艦隊配置等を全て掌握した。ナスカの不甲斐ない戦闘や、自身より高位のサーベラーによって一部作戦が無理やり変えさせられたが、基本的には彼のプロット通りに戦闘は進んだ為、軍人(参謀)としての能力は高いと言える

 同僚のラーゼラーに対しては結構同情的で、人間的に悪い人とは思えない。一方で、デスラー総統に対する態度やズォーダー大帝の「我らは宇宙の王道を進めばよい。このまま真っ直ぐにな」というセリフを拝借するなど、微妙に驕った性格が影響し、脅威評価を時々ミスるのが玉に瑕。ただ、基本的には優秀な人材といえよう。残念ながら全部基本的な事しか、しない人だが。また、周囲に波風立てない姿勢本来ならば美点としてあげられるだろうが如何せん戦時の軍人としてはマイナス面をはらむ。やはり、基本的な事以外をするのを周りがする事も嫌うが、自分がする事も嫌う傾向にある、と言えるのだろう。


 サーベラー相手では敵わないが、艦隊のみならず陸上戦力も掌握しているガトランティスの最高幹部の一人。ゲーニッツは服装などから考えて登場人物中、大帝を除いて最高幹部の並ぶもののない立場と言って差し支えない。犠牲を強いる戦い方をあまり良しとしない傾向の、ごく一般的な認識の人物。その点は凄く普通な軍人。

 サーベラーとは敵対しており権力闘争を繰り広げているが、残念ながら全く敵わない。もっとも、サーベラーも本気でゲーニッツと権力闘争を繰り広げているというより――他にやることがないから喧嘩している、ただ単に何となく、そりが合わない、という程度の感があって追い落とせるタイミングでなぜか互いに追い落としをしない。普段から結構二人で雑談をしており……下手すりゃ後輩の扱いに苦慮する先輩のようなじゃれ合いにも見えてしまう。

 

 ゲーニッツ最大の問題点は、度胸が普通のおっさん以上のものを有していない点。テレザート戦などの好機に際してもあってもり、わざわざサーベラーを追い落とそうとしたり、彼女の縄張りを荒らすようなことはしないため、軍司令官としての側面よりも行政官としての側面の方が強いように思われるこの波風立てないように、たとえデスラー総統相手であってもそれなりに重んじる姿勢は、完全に官僚の行動原理だろう。平時ならそれで構わない、普通の相手ならそれで構わない、サーベラーがもう少し周りの意見を聞く人物だったらそれで構わない、だが全てのゲーニッツが普通の官僚であっても問題ない要素が失われた状態では……彼の波風立てない姿勢はマイナスに作用してしまった。官僚的な彼が都市帝国に加えられた奇襲攻撃の反撃を指揮できるはずもなく、失態を重ね……

 なんだかんだうまく危機を乗り越え、第25話まで生き残ったが――動力炉に侵入したヤマト決死隊に対する対応でサーベラーに追随した結果、最期は大帝の逆鱗に触れて生存を許されなかった

 

 


 氏名:ラーゼラー(Razela 英語版: Gorse)
 階級ないし職責:不明(中将、職責に合わせて大将特進と推定)
 年齢:不明(壮年か老けて見える30代)
 容貌:緑の肌色、肩までかかる長髪(ヤマト2のみリンカーンタイプの髭をプラス)虹彩色不明
 名の由来:不明

 ゼラ(Zela)であれば、現在はジレと呼ばれる都市が存在する。ここでの戦闘報告でカエサルは≪来た、見た、勝った≫の名文句を元老院に送りつける事になる。小アジアのそれなりに繁栄した都市。別に関係ないと思うが
 

 さらばにおいてはライトブルーの服に裏地が紫のマントに身を包んだ服装で登場。ヤマトの存在に懸念を示すが、サーベラーに一蹴される。高官の一人としての登場で、どんなにキャラクターのボリュームを膨らませても方面軍の司令官であるとか、軍政部門の高官という程度。推測はほぼ不可能。

 一方でヤマト2では髭を追加され、男らしくはなったが服装などの描写からワンランク落ちたように思われる。服から言えば現場指揮官のゲルン提督や第11番惑星の兵站基地司令と同格だが、色などの違いが判然とせずラーゼラーがどれほどの立場なのかは結局判らなかった。本国勤務だから多分、一番の高官だとは思うが……。


 ヤマト2におけるガトランティスの主要人物で通称:三馬鹿の一人で一番位が低く、実は一番まともな軍人。そして、一番割を食っている人物でもある

 ナスカの報告を直接受け取ったり、都市帝国での戦闘で大帝に直接意見具申するなど、参謀部系の軍人としての資質が十分ある事を劇中で示した。軍政を司る人間なのか不明だし、その描写は特になかったが能力は恐らく及第点に達するとみられる。劇中の発言を考えて、多分この人がナスカにはっぱをかけたか――ナスカに度胸があるとは思えないため、何なら潜宙艦での最終攻撃を提案したのかもしれない。その点は割合に攻撃的な性質の持ち主と言えるだろう。

 ゲーニッツが戦略の骨子を造るならば、ラーゼラーは戦闘計画を含むその細部をま

とめ、微調整するような立場と推測できる


 この男は結構可哀想な人物で、自分発信の失態で叱責されるより巻き込み事故の被害を受ける方が多い。残念ながらラーゼラーは肝心の場面でとばっちりを受ける傾向にあり……ナスカ自身の無能が引き起こした失態でサーベラーの八つ当たりを受けたり、デスラー総統失脚事件に直接関わっていないのに大帝に叱責されたり、預かり知らぬヤマト決死隊の動力炉突入の責任まで負わされるという最悪の展開。これは、哀れすぎるのではないだろうか……。

 確かに、部下としてサーベラーやゲーニッツに忠言なりをする事をしなかったのはまずかったかもしれない。まずかった――が、ラーゼラーの立場からすれば無理からぬこと。ゲーニッツでもサーベラーに抗すことが出来ないのに、より階級の下なラーゼラーに一体何が出来ようか。

 

 階級は服装から言えば、バルゼーより下であることは確実だが、類似した服装のゲルンが現場指揮官でバルゼーより下位である。これらを鑑みると、元来の階級は役職に見合う階級ではないため、アメリカでみられるように特例的に階級を引き揚げた。とするのが妥当だろう。きっと、ガトランティスの内部ではラーゼラーの能力は高いと評されていた、そう見て不自然はない。

 女性に正式に軍人としての階級と実際の権限を付与しているという放送当時からすれば圧倒的先進性を鑑みて、ガトランティスは柔軟な組織体制と考えられ、能力の期待値を鑑みて役職に据えてしかる後に階級を調整するのは、非常に合理的かつ十分妥当な設定と言えるだろう。

 この前提が正しければ彼の軍人や行政官としての能力は高い。しかしながら、劇中においてそれを見せる機会は極めて限定的で殆どなかった。仮に彼が活躍する場面があるとしたなら、もっと組織的に反抗する敵と対峙した時や、軍政を敷く際などだろうが劇中ではそんな機会はついぞ訪れなかった。

 つまるところ――彼はただひたすら、運の悪い人だった。サーベラーの悪企みにどっぷり浸かっていたかは結局不明。大帝への報告時の感じだと、本当に知らず大帝と一緒に激怒していた可能性さえある。自ら降り立った降伏勧告も直前になって翻されるて泥を塗られるし、動力炉の一件でも主導的立場では無かったのだが……最期は大帝の逆鱗に触れて生存を許されなかった

 本当に、運の悪い人だ

 

 

 

 ――現場指揮官――
 氏名:バルゼー(Valsey 英語版:Bleak)
 階級ないし職責:第7遊動機動隊司令・第6遊動機動隊司令(さらば・中将)/第一機動艦隊司令シリウス方面軍司令(ヤマト2・大将ないし元帥・上級大将)
 年齢:不明(中年と推測)
 容貌:もっさりしたロン毛で太い眉毛に丸い目つき(さらば)/毛先鋭いロン毛、眉毛ナシの釣り目(ヤマト2)
 モデル(推測):ウィリアム・ハルゼー ・ジュニア

 さらばとヤマト2では容姿も性格も手腕も異なる。驚くほど乖離した、同一人物とは思えないほどのリファイン。

 さらばにおいてはもっさりとした雰囲気の凡将で、非常に慎重で堅実な戦術を取ったが……力押しの地球艦隊相手には敵わなかった。見た目といい、戦う前の手抜きといい、まるで山岡士郎
 ヤマト2ではロン毛、いかつい容姿でモデルというより名前の由来だろうが、名に違わぬ猪突猛進系のしかも結構智将なキャラに仕上がっている。豪胆さ・強引さに加えて容姿もまるで海原雄山。英語版だと実は初期にはTirpitzと呼ばれていたらしい。

 

 さらばでは太陽系へナスカを遣って偵察し、攻略作戦の勅命が下ったのちは艦隊を占領地の前線基地から発進させて太陽系へ突入。

 土星圏に地球艦隊をおびき寄せて決戦を挑み、それまでの軍略と遂行と同様に戦闘をそつなくこなした――が、アンドロメダの拡散波動砲を前に艦隊のほとんどを喪失。地球艦隊が第二次戦闘宙空域到達時は「思う壺だ」とか、突破された時は「敵の隊列は乱れている、包囲してひねりつぶせ」と、さほど外れた情勢分析ではないのだが――波動砲の威力を、しかも拡散タイプだと知らなかったのが物凄く痛かった。

 冷や汗が止まらぬ最中、大帝から「無様だぞ、もうよいどけィ!」と下げられてしまう。最後の出番は地球に対しての降伏勧告だったが、元から威勢のいい表情をほとんど見せていないバルゼーだが、思いっきり沈んだ表情を見せていた。

 幸いにして地球に対する降伏勧告の使者を申し付けられたが、その後の消息は不明。帝国に帰還したのか、地球に残留し制圧戦を試みたのか、全くわからない。

 

 この山岡士郎基本的にはそんな悪い人ではないはずただ、一緒にいて楽しいタイプかは疑問。しかも、見通しが少し甘い。艦載機戦力の使い方が雑で敵うはずもない機数で突っ込ませるのは指揮官としてマズイなど、擁護は出来るがやってほしくない戦い方を平気でしてしまっている。しかしそれ以降の戦い方は普通で、力押ししてくる地球艦隊がおかしいと言っても過言ではない。本来守勢側がどうしたことか侵略軍張りの火力押しなのだから面食らっても不思議はなかろう。それでも味方の猛攻を加え続けたのだから――臨機応変という言葉は彼の辞書には無いのかもしれない。最初に立てた計画に固執してしまい、結果として大戦艦を大量に喪失してしまった。艦載機投入も、本人的には勝てると思っていた可能性さえあるような展開で、だとしたら理論派ではあるが実践能力に欠けるタイプかもしれない。

 土星決戦の間、確証バイアスに陥っていたのは間違いない。だからそれ以前は勝ちを重ねて来たのだろうし、戦術は当たって来たのだろう。だがその一方で柔軟さにかけ、それを気付ける繊細さや内省は行わない――結果として、割合に雑な性格として結論付けられる。向上心が無いわけではないが、あと一歩及ばないタイプ。当然、柔軟性はない。


 ヤマト2では初登場時から威勢のいい様子。絶対パワハラもセクハラも自覚なくやるタイプで、一方で相性が良ければ絶対的な信頼関係を構築し得るだけの度量のある親分肌だろう。確実に強力な軍司令官として、多数の隷下部隊をまとめられるだけのカリスマ性を有するとみて間違いない。静的な土方総司令の対を成す動的な指揮官として描かれていると言えよう。

 興味深いのが彼の下す敵の脅威評価。あんまり仲の良くないデスラー総統がもたらした過大評価的な情報提供と、ナスカの奇襲に狼狽えた実情を鑑み、ヤマトを笑って侮る。ただ、第1話こそヤマトを侮ったが――しかしその実力が見え始めると一転して地球艦隊を含め地球勢力全てに十分な警戒をした。この躊躇ない評価改定は見事で、歴戦の武人といった雰囲気を見せる。特に第19話で兵站補給基地と第25戦闘艦隊がヤマトによって葬られると、「ヤマトかァ!」とむしろニヤリとキラリと闘志を見せた。

 本国と盛んに通信を取り、第18話にて地球大攻略作戦の勅命が下るや否や、直ちに太陽系に突入。本国の掴んだ情報や、タイタン方面へ斥候を放つなど、敵情把握に努めた。故に、地球艦隊に対する脅威評価は非常に正確で、指揮下の艦隊では砲戦では確実な勝利は難しいと判断。航空戦力により大規模攻撃を指向し、ゲルンに部隊を任せ自身は地球艦隊の布陣の中央突破を狙った。

 第20話にて計画は残念ながらヤマトによって阻止されるが、大して動揺せず。動揺した艦橋クルーを一喝し、むしろ速度を上げてタイタン基地へと進軍。作戦プロットを大幅に転換し、強襲してきたヒペリオン艦隊に対し第二艦隊を差し向けその必殺に近い兵器‟衝撃砲”発射を下令し血祭りにあげた。この心理的インパクトを囮にして、艦隊決戦は火炎直撃砲による戦闘一本に絞ることで、見事地球艦隊を密集隊形に誘導して狙い撃ちしたしたのである。

 「地球艦隊の中央を突破する、全艦隊集結せよ」との号令からの〈アンドロメダ〉転進までの流れは、「拡散波動砲発射隊形」と応じる土方総司令の反応はまさに血沸き肉躍ると言った具合で、23万8000宇宙キロの長距離での火炎直撃砲用意と射程距離到達まであと15分の段階での拡散波動砲エネルギー注入、用意の命令。個の応酬は最早、芸術品と言っていい

 

 この海原雄山非常に大胆で臨機応変な人物である。まるで戦国武将のような果断さと、勝利をつかみに行く貪欲さを見せたのである。彼は集中している時は極めて有能で比類なき名将かつ猛将となるのだ。

 だが、しかし途中で緊張の糸が緩んだのか地球艦隊を侮るこのすぐに気を緩めてしまう傾向がバルゼーの痛いところ。集中が最後まで続かないのである、それゆえにコスモタイガー隊や土星の円環の脅威評価を完全に誤った。残念ながらバルゼー総司令は集中力が切れるとただの猛将で、名将というよりも前後不覚になってしまうのだ。ここはさらばと同じく、詰めが甘い。多分、拡散波動砲対策としてのメダル―ザ=火炎直撃砲を彼は待ち望み、何なら要求していただろう。そして、その威力を確信していたのだろうが……ちょっと自信過剰だった。予想通りの威力を見せつけ、舞い上がっていたのかもしれない。それで最後は嵐に巻き込まれるって……ちょっと情けない。確かに、勝利は自分の鼻先にまで近づいたのだから油断してしまうのは判るが……ねぇ。

 さらばでも、アンドロメダの火力を侮り、艦隊を失ったが――ヤマト2では新兵器を利用することで、新兵器故の弱点がいまいち体感しないままに戦闘に投入していた節がある……。これは危険な行動としか言いようがない。仕方がない面もあるのだが、しかして実際に生じてしまうと最悪な結果をもたらしてしまう。本来はリカバリー方法を考えてから戦闘に用いるべきなのだが。その詰めを誤り、ヤマト2でも艦隊を喪失してしまった。

 個人的にはハンニバルとか信長とかあのあたりな雰囲気を感じてしまうし、物凄く史実のハルゼー提督を思い起こさせる。

 

 史実のハルゼー提督も、結構イケイケな性格で他人の好き嫌いが結構はっきりする方だったらしい。強固で足の速い戦艦=アイオワ級最新鋭戦艦を用意するように迫るなど、軍事的な見識は確かだがし、それを実現させられる人間的パワーと運を持つが……色々、かなり強引。

 また、不見識から真珠湾攻撃直前に嵐に突っ込み、フィリピン沖でコブラ台風に不注意で突っ込み、沖縄周辺でコニー台風に襲われるという――どうにも荒天に縁のある人。だからその意味ではバルゼー総司令は完璧に近いオマージュ……というか、そこまでオマージュしなくてもというほど

 ただ、彼の場合は敵艦隊に対して敗北したという事はなく――強いて言えば台風には負けた。それぐらい。

 

 バルゼー総司令は強引な戦闘の結果、地球艦隊を深追いして逆襲を喰らい、自艦隊は壊滅。残るは自らの旗艦ただ一隻となる。更にヤマト機動部隊が土方艦隊に合流直前の窮地に陥った。

 ただ、立派なのはガトランティスを背負った軍司令官として、敗戦必至の状況でも決してあきらめる事はせず、せめてアンドロメダを道ずれにと砲撃戦を敢行。猛烈な砲撃戦を繰り広げたが――しかし、たった2門の固定砲台では敵うはずもなく、メダル―ザ爆沈の直前に炎渦巻く艦橋で倒れ、戦死。後を追うようにして旗艦も爆沈した。

 「死して大帝にお詫びを……」 

 最期のセリフは軍人というよりも、まるで武人といった死に様だった。

 

 


 氏名:ゲルン(Gern 英語版:Manic)
 階級ないし職責:プロキオン方面軍司令(中将推定、職責から大将に一時昇進の可能性あり。ただし別の可能性も……)

 年齢:不明(中年と推測)
 容貌:青みがかった灰色短髪だが若干サイドにボリューム、もみあげとつながった太い眉毛、中肉中背
 名の由来:不明
 ミュンヘン地下鉄の駅の一つにゲルンがある。が、関係ないと思う

 

 服装を考えれば恐らく、ゴーランドと同格の指揮官だと思われる。ただ、艦長が本来の職責という可能性もなくはない故、判断がつかない。艦長から経験を重ねて昇進し隊司令にクラスチェンジするのは当然だから、それが早まっただけという見方も可能。

 どちらにせよ、かなり真面目な航空指揮官でバルゼーの下でプロキオン方面軍を預かった。バルゼーとは違い、カリスマ性を感じない容姿だが一方で年齢が比較的高そうで、ラーゼラーよりかは信頼感というか安定性のある感じ。

 描写から、絶対堅い性格で泣き落とし以外は通用しないと言った雰囲気。イメージとしては飲み会とか、偶然聞いた家庭の話でようやく部下との信頼関係が始まる感じ。


 バルゼーからの信頼は十分あったらしく、事前の打ち合わせもそこそこレベルで、基本的にはゲルン自身が空襲のプロットを立てた模様。別に地球艦隊を侮る事も無く、またプロキオン方面軍の航空戦力だけでは地球艦隊を殲滅できないと思っていた節があり、ともかくとして合戦の露払いという確固たる意志を以て指揮に当たった

 何度も言うがかなり、真面目というか慎重な人物であると評せる

 言い方を変えれば、自分の分を弁えて居る人物ともいえる。物凄く汎用で凡庸な能力の持ち主で、苦境をひっくり返せるほどではないが、十分な作戦下地があれば能力は当然発揮できる。最も評価すべきは、劣勢でも戦場に踏みとどまろうとした点で、これを鑑みると戦意・士気は十分に高く信頼に足る。軍人というより武人に近い気概の持ち主だろう。彼我の評価も基本的には間違っていなかったし、それなりに早い段階で迎撃機を出そうと命令した点など、決して無能ではない。

 ただ、堅すぎて普通過ぎて、臨機応変とは縁遠い


 恐らく過不足ない襲撃計画を立ててタイタン基地を空襲する予定であったのだろう。実際に攻撃が行われればタイタン基地は火の海になっただろう――が、直掩機なしの隙をつかれてヤマト機動部隊の大空襲を受ける。

 これは痛い凡ミスだ。誰にでも凡ミスはあるとはいえ、本当に痛い……。なぜ故に直掩機を上げなかったのか……。或いは下がった状態を放置したのか……。しかも、密集隊形を取っていた事もあって味方護衛艦は身動き取れず、空母も身動き取れず。迎撃機を発進させようにも滑走路を破壊され打つ手はなく。事ここに至っては、普通の軍人では状況をひっくり返すことは不可能。何なら主人公パワーのチートを使っても挽回できなかったのではないだろうか。正直あの状態になってしまってはもう、敗戦必至……。
 第一波空襲以降、必死にプロキオン方面軍を指揮するが、残念ながら力及ばず。敗戦の責任を取る形で艦橋で拳銃自殺、直後に自身の旗艦も後を追うように爆沈してしまった。「バルゼー司令、私は負けた……」

 

 可能性として、彼がナグモー提督に代わり艦長からスライドした方面軍司令というパターンは割に自然な流れで存在し得る。劇中、自殺する直前のシーンでの呼びかけを重視すればの話。ガトランティスでは航海士が艦長の任を任されている可能性もあるから断言はできない。

 この場合、そもそも艦長職の中でも最も激務であろう空母の艦長と航空艦隊司令官が兼務というのが驚きだし、無理がある。業務的に。副官も明確な人物はいなかった故、プロキオン方面軍は位置が秘匿されているというアドバンテージを失えば容易に崩壊し得る危険をはじめからはらんでいたと言えよう。元々指揮する立場にない人物なのに指揮をしたとあれば、残念さのぬぐえない詰めの甘い指揮もある意味では当然この場合はゲルンばかりの責任ではなく、ガトランティスのそれまでの組織の問題もある
 ゲルンという人物は――非常に無念というか情けない面があったとはいえ……普通の指揮官。彼に難がなかったわけではないが、常識の上を行くヤマトの奇襲を受けては正直反撃はかなり苦しかっただろう。これらの事情を考え合わせれば――やはりものすごく、凡庸で真面目な指揮官であったと評すことが出来よう

 だから、ヤマト勝てなかった。凡庸じゃ、勝てんのだわ。「合戦の露払いだ、存分に叩きのめしてこい」とか「迎撃機を発進させろ、急ぐんだ!」とか、結構かっこよかったし、頑張ったんだけどね……。

 

 

 

 氏名:ゴーランド(Goland 英語版:Torbuck)
 階級ないし職責:ミサイル艦隊司令(中将クラス推定。さらばにおいてはテレザート星守備艦隊、ヤマト2においてはミサイル艦隊と指揮下の艦隊の名称が異なる) 
 年齢:不明(中年と推測だが、さらばの方が老けて見える)
 容貌:緑色の肌、禿頭、エプロンないしオールドダッチ(髭の話)、中肉中背よりガタイがいい
 名の由来:不明
 ゴーランドないしガウランド(Gowland)は英語圏ではそう珍しい苗字ではない。ただそれだけ

 

 禿頭の髭面おっさん。コートを羽織り、恐らくラーゼラー辺りと同格。さらば、ヤマト2の双方でミサイル艦隊を率い、テレザート前面域でヤマトを迎え撃った。

 容貌に作品での違いはほとんどないが、なぜだが若干ヤマト2で若返っている。性格は若干、ヤマト2の方が気性が荒い。どちらにせよ、意外と部下には丁寧な対応だし部下もそれなりの信頼を見せている様子。多分、構成員が全員荒っぽい性格の幕僚部なのだろう。だとしたら多分ゴーランドは大分馴染んでいたと思われる。


 さらばではサーベラーの中途半端警戒情報にもかかわらず結構本気の迎撃を展開。地形を利用した戦術でヤマトを苦しめるも、ヤマトの擬死行動に引っかかり一歩及ばず。波動砲によって艦首ミサイルごと押し流されて敗北した。


 ヤマト2ではデスラー総統の下で働かされるという個人的に不愉快な状態で戦闘を強いられる。この不和を引きずり、戦闘方針はまるっきり一致せず、半ば当然の如く単独行動へ。地形を利用したり、中々に策を巡らし、別にまずい指揮を執ったわけでは無いが――さらばと同様に波動砲に破滅ミサイルごと押し流されて敗北した。配下のデスタールがあんまり使えなかったのも、痛い

 彼の周辺で特徴的なのが、ガトランティスの現場指揮官で唯一明確かつ固定の副官が居た。また、彼のミサイル艦隊は規模こそ小さいが、別動隊を編成して隷下部隊として前線に派遣するなど、登場した艦隊の中で最も複雑な運用を見せている。

 特殊戦闘部隊としての側面を強調した結果の描写なかもしれないが、登場したガトランティスの艦隊の中では一番、リアリティのある内幕を見せた。

 

 さらばにせよ、ヤマト2にせよ基本的に豪快なおっさん

 乗る艦はバカでかいミサイルをひっさげ、ヤマト2では恐竜狩りでデカい重砲をぶっ放す。腕前は見事なもので、部下を一人襲われた以外は、周囲を恐竜で囲まれたがこれを瞬殺。部下も唖然として開いた口が塞がらない様子だった。逃げようとしていた一頭も躊躇なく狩ったのは野蛮人すぎて将の器にあらず、といったところだが。もっと言えば、どうせ破滅ミサイルで惑星ごと吹っ飛ばすくせに無駄に殺す点は、やはり将の器にあらず。ともあれ――とにかく豪快で、デカいのがお好きな人きっとコスモ・テキサス州のご出身なんでしょう

 彼について残念なのが――完璧な作戦を立てただけで満足してしまう悪い癖があり、実際に戦闘に移した際の些細な問題に大してうまく対処できないなどの弱点がある。硬直するとか臨機応変でないとか、それ以前の問題普通の対艦戦闘であれば問題なかったかもしれないが、相手はヤマト。形だけ優秀な計画はむしろ致命傷となる。

 さらばでは職場環境は決して悪いものではなかったが、ヤマト2ではデスラー総統は余計な事をしてくるし、テレサはべらべらしゃべるし、イライラの種は尽きない最悪な職場環境で少将可哀想。だからといって恐竜を狩って挙句に星事粉砕する暴挙はどうかと思う。が、精神衛生は業務に大きく影響するため――演習半分のアンガーマネジメントなのだろう。

 せっかく幕僚部が居心地よくても、その周りが最悪な職場環境では、最悪な状況がより強調されてしまい……残念な指揮になってしまうのもある程度は理解できる。

 だが、詰めが甘いのである。実際の指揮が甘いのである。破滅ミサイル発射隊形に〈戦闘隊形F-Z〉なんてカッコいい名前を付けている場合ではない。ほぼただの横陣でしかないのにさ……。

 

 散々批判してきたが、それは彼の人間的な部分の甘さが指揮に影響した場合の話だ。それが無ければ、もっと活躍できただろうし、もっと名将として名を挙げたはず。つまり――脇を締めれば、指揮官として決して落第ではない。むしろ頭が良い方なのである。だが何度も言うように――いかんせん豪快な性格過ぎてヤマトの脅威を認識するまでに時間がかかってしまった。頭でっかちなタイプにありがちな、作戦を立てるだけで満足してしまったのである。

 多分、ヤマトの本当の脅威は……さらばでは彼自身の敗北直前に気が付いただろう。ヤマト2ではテレサに気を取られ過ぎて、最期までヤマトが脅威という認識はなかった節がある。自信満々で戦闘隊形F-Zでヤマトを攻撃し、‟不意打ち”とはいえ真正面から波動砲を喰らっちゃったし。

 もう少し早くヤマトの脅威に気が付ければ、展開は変わったかもしれないそれじゃ映画として、テレビシリーズとして成立しないけどさ。

 

 


 氏名:デスタール(Destar/Major Hyrex)
 階級ないし職責:ミサイル艦隊分遣隊隊長(准将ないし少将クラスと推定)
 年齢:不明(壮年と推測)
 容貌:緑色の肌、栗色のロン毛、細い眉、鋭い目つき、細身中背
 名の由来:不明
 テスタール(Testard)はフランスにままある苗字。マレーシアの伝統的なヘッドギアであるテンコロクはDestarとも呼ばれる。ただそれだけ

 

 正直な話――ロン毛の金髪ブタ野郎と言っても過言ではない。目つきが悪いが、性格も悪い。あっちこっちに喧嘩売って、あっちこっちで言質を取られて自分で自分の首を絞めるタイプ。絶対に知り合いにすらなりたくないタイプだ。階級は判らないが、ゴーランドよりは下だろう。手袋がロングであるのが特徴的で、特殊工作班という事なのかもしれないが判らん。

 特殊工作任務に就いていたメーザーがうっかりヤマトに捕らわれたのを良しとせず、帰還を拒否した。うっかり捕まるメーザーが一番悪いのだが、だからといってテキトーな理由を付けて帰還を拒否するというのは……仮に、ガトランティスの軍法に捕虜になってはならないというのがあるのならば、メーザーも初めから諦めただろう。メーザーが洗脳されたのではとデスタールが怯えていたのなら、仕方がない。しかし、そうではない。捕虜になった軍人に関してもし、テキトーな事言っていびったのであるならば、むしろデスタールが軍法会議にかけられるべき。

 コイツのしでかした最大の失態はヤマトに関する資料・試料を得る機会を自らサルガッソにぶち込んだ事だろう

 もしコイツがメーザーの帰還を許したならばヤマトに関する大きな試料を得ることが出来た。これは非常に大きなアドバンテージを得るまたとないチャンスだったなのにもかかわらず、古代進にすら思いつく事であるのに実行しなかった。先にも述べたように無論、ヤマトクルーに洗脳されて艦内で暴れる危険もあったが、それはそれで単純に隔離しておけば良かっただけ。


 最期は接近するヤマトに対し突っ込んでゆく。残念ながら破滅ミサイルの発射許可が下りていなかったのか、策の無い状態でヤマトを迎え撃つ。しかも、ミサイル飽和攻撃を使用ともせず、散発的に攻撃を行い、接近された挙句にパルスレーザーで装備したミサイルを誘爆させられるという物凄く残念で救いようのない戦闘を見せた。戦闘の残念さはナスカよりひどい……。
 普通に考えれば思いっきり無能。無能中の無能、ナスカと同格かそれ以上のベストオブ無能だ。

 ただ――無謀を判っていながらヤマトに突っ込んだのは、メーザーに対して威勢のいいことを言っただけの事はあった。と言っておく。

 他の部下があまりにも可哀想だが

 

 

 


 氏名:ザバイバル(Zurvival 英語版:Scorch)
 階級ないし職責:機甲兵団 兵団長(中将ないし、それ以上)
 年齢:不明(中年と推測)
 容貌:緑色の肌、ベースはオールドダッチだがサイドバーン的な左右の広がりを持つ髭、大柄で筋肉質
 名の由来:不明
 どう考えても英単語のサバイバルが由来だろう。違ったら逆にびっくりだ

 

 テレザート星内部表面に展開する陸上戦闘部隊の指揮官。さらばにおいては突如戦車軍団を率いて登場、ヤマト2においては角が生えた笹かまの先端だけみたいな形の司令本部に拠して空間騎兵隊を待ち構えていた。

 よくわからないのが部隊名称で、さらばでは〈テレザート基地突撃格闘兵団〉としてテロップが出たが――他方で、ヤマト2においては思いっきり錯綜し統一名称がない。ただ、大帝にテレザート展開の報告を入れた際に〈ザバイバル機甲兵団〉と連絡将校が告げていた為、一応兵団という点では合致。よって、ザバイバルは複数師団を束ねる結構な高官としておくのが妥当だろう。

 

 思いっきりガタイのいいおっさんで、しかも結構豪快な戦闘展開を行った。が、性格は恐らくナスカと同様に結構ビビり屋戦闘スタイルや方針はどの作品でも一致しているが、容貌はさらばとヤマト2で微妙に異なりる。

 さらばでは戦闘服はタイツっぽくヘルメットが幾らか小さい。加えて眉毛が太く目つきがギラギラ

 他方でヤマト2では幾らか戦闘服がゆったりし、ヘルメットが多少大きくなったのか眉毛が隠れてしまっている。一番の容貌の違いは顔の傷で、ヤマト2の眉毛のない何となく頼りなさげな雰囲気を、鼻梁から左頬骨の下あたりにかけて大きな傷が払拭――出来ているというほど、目つきがりりしくないためなんとも頼りないこれじゃサーベラーに見捨てられる。

 

 さらばではヤマト迎撃にT-2を発進させたが、ヤマト2では登場ナシ。後者は空間騎兵隊の油断を誘う効果があった――そしてさらば、ヤマト2共に大平原に空間騎兵隊が到達したタイミングで大戦力を投入、これを砲撃。物量・火力で空間騎兵隊を押しつぶそうとするも、意外にも頑強に抵抗されて第一波攻撃は不発に終わった。そこで大規模な増援を投入し、比較的劣勢な空間騎兵隊を更に劣勢に追い込むことで、一時は押し戻す事に成功。

 しかし直後、ヤマト工作班の多弾頭砲が炸裂。これには敵わず、損害多数で自身の指揮戦車のみが残存。事実上の敗北を前にガトランティス人には珍しく怯えたようにして撤退、それを同じくガタイのいい青年である斉藤隊長に追撃される。

 空間騎兵隊員を幾ら排除したのかは不明だが、結構頑張って一対一の肉弾戦に移行――しかし、土壇場で落とした自分の銃で撃たれて絶命。倒れた際は顔面が地表にめり込むほどで、だいぶガタイが好い事が判る。

 

 元来はゴーランド艦隊と共同歩調をとって敵に当たるという戦術をとっていたというのが妥当な推測だろう。しかし、ゴーランド艦隊はヤマトに敗北し、ヤマト2では後詰のデスラー艦隊がサーベラーの策略で引きはがされてしまった。この時点でザバイバルは極めて劣勢な状況に押し込められたと言えるだろう。増援を送らないというのは、ゲーニッツが言っていた通り、見殺し状態。

 そうはいっても、ザバイバルは割とうまく戦闘をやってのけていた。つまり、逐次戦力投入では無く、機を見計らって大戦力をドバっと投入するセオリー通りの戦闘を行い、平野の空間騎兵隊が隠れる場所の無い地点で押しとどめた。

 驚くほど普通、セオリー通りの戦闘。セオリーになっているという事はそれだけ汎用性が高いという事であり、全然間違った判断ではない。むしろ褒めた方がいいレベル。加えて空間騎兵隊は生身での突撃で自身は大戦車軍団での戦闘。これは空間騎兵隊を圧倒できて当然だっただろうし実際――多弾頭砲さえなければ、このまま押し切る事も出来ただろう。

 

 ここまでは良かったのだが……ヤマト工作班の上陸に気が付かないという失態をしでかす基本的に戦闘計画が甘く、しかも憶病が悪い方に作用しがち。まるで陸上版ナスカだ根本的にビビり屋であるから空間騎兵が反撃に移ると途端に後方に引っ込んで身の安全を図ってしまった。そのくせ戦闘方針自体は変えなかったため、部隊を敵の攻撃にさらすばかりか突撃させる形になってしまい全滅。これ、部隊全体に安全策を取らせれば慎重な指揮官と云えたのだが、自分だけ後方に逃げたのだからビビり屋としか表現できない。

 残念ながらあまり面白いエピソードのある人物ではないし、語るほどの中身の厚いキャラクターになる要素もない。ガトランティス人なら戦って死ねとは2202のゲーニッツのセリフ。ザバイバル将軍、耳に痛かろう

 

 

 

 氏名:コスモダート・ナスカ(Cosmodart Nazca 英語版:Naska)
 階級ないし職責:偵察遊動艦隊司令(ヤマト2のみ、准将ない少将) 
 年齢:不明(青年から壮年の若い方)
 容貌:緑色の肌、ほとんど青な黒髪、もみあげとつながった眉毛
 名の由来:不明 
 ナスカという語は≪ナナスカ≫つまり、「つらく過酷な」に由来がある――とネット検索でかかった立正大学地球環境科学部のPDFの冒頭にそう書いてあった。他にもそう書いているサイト多数。

 

 容貌は若年風で、しかしミルのような女性らしさは全くない。意外と襟足が長く、前髪もガトランティスの短髪の中ではちょっと長いように思われる。これが眉毛ともみあげがつながっている要因なのかは不明。威勢のよさが目つきから伝わるような感じで、意外と容貌の年齢層が高めに描かれているガトランティスのでかなり異質。

 なお、さらばでは名前が出ただけで出番なし


 一方でヤマト2においてはモブの士官と大差ない服装で登場するが、キャラは濃くヤマトやヤマトを恐れるデスラー総統を侮ってあざける。その一方で冒頭からヤマトに牽制攻撃を仕掛けたりと大活躍。金星のエネルギー中継基地を破壊し、地球全土を停電に陥れた。さらに第11番惑星守備隊に対して大攻勢をかけて一時は占領寸前まで作戦は達成度を高める。

 意外と普通な指揮を見せた

 しかし、救援に来航したヤマトに対し、最初の遭遇戦のままの認識でいたため脅威評価を誤る。「ヤマトだとぉ? 小癪な叩けェ! 11番惑星に近づけてはならぁん!」と大戦艦をヤマトに差し向けるも全て沈めらる。沈められたのにそれに気が付かないのだから情けない。自発的にデスバテーター隊が迎撃に向かったが……部下の方が有能じゃないか。更に陸上におろした装甲歩兵戦闘車も壊滅。幸いにもヤマトが砲撃をミスったおかげで旗艦の中型高速空母は無傷であったが、護衛の大戦艦を散開させて襲撃させるもこれも全滅。冷や汗タラタラで「引き揚げろぉ!」と、醜態をさらす

 挙句にシリーズ冒頭で臆病者と罵っていたデスラー総統に大帝へのとりなしを願うなど、かなり情けない姿も見せた。散々臆病だ何だと陰で罵った後だから、やっぱり情けない。

 

 この敗戦はガトランティスの恥辱とされた。そのおかげ様で本国では上司ラーゼラーがそのまた上司サーベラーにこってりと絞られ、そのあおりを食らって徹底抗戦を擦る羽目になる。しかも劇中には登場しないからさすがに可哀想――そんな中でも最後のリベンジとして潜宙艦を以て決死的奇襲攻撃を敢行。
 だが、密集隊形を取ったり通常航行のまま作戦域に向かったりと、一々凡ミスを繰り出す当然、敗死

 

 正直な所、作戦展開的にはこの男は割と普通で及第点レベル。意外な事にね。

 まずもってデスバテーターで第11番惑星を空襲。これは直接陸戦隊を下して大反撃を受けたり、基地砲台で艦隊に損害が出ないようにという、極めて当たり前の作戦展開である更に、デスバテーター隊は周辺域までを警戒空域として巡回していたようで、これは加点要素。ヤマト接近に対して、残念な警戒意識であったとはいえ一応戦闘艦を差し向けたのも、間違いではない――ヤマト相手では、戦力分散は明らかな失敗だったが

 徹底した空襲の後、大量の陸戦隊を生身ではなく装甲兵員輸送車で送り出したのもポイントが高く、そのまま機甲師団同士の野戦もできたし相手が生身なら押しつぶすことも可能だった。ここまでは、物凄く筋の通った合理的な作戦

 だが、ヤマトとコスモタイガーの接近に対する警戒意識が低く、結局は接近を許してしまった。第11番惑星相手の戦闘にもヤマト相手の戦闘にも集中できなかった。これらは仕方のない面があったとはいえ……マイナス要素。結局、将来的には有望株な指揮官だったかも知れないが第11番惑星の時点ではただの凡人。

 そりゃ、頑張ったのは認めるさ。それなりにうまくやっていたのも事実。しかし、積み重なった己のおごりと詰めの甘さの結果、全部台無しになってしまったといえよう

 

 とはいえ、やけっぱちとしても逃げ帰らなかったのはガトランティス軍人として評価できる。一度は撤退した事は変えようのない事実だし、総合的に物凄くレベルの低い評価だが

 ちなみに、ナスカにとっては過分にも一応ハゲの副官を付けてもらっているようだが全く役に立たない。途中でヤマト接近の警報を伝えたザバイバル戦車軍団との通信要員の方がよっぽど副官っぽい動きだし、副官はナスカの隣にいるだけで全然動かないため――本当に副官なのか永遠の謎。

 

 

 


 氏名:ミル(Miru 英語版:Morta)
 階級ないし職責:監視艦隊司令(推測困難・中将か大将格扱い) 
 年齢:不明(青年の範疇だろうが、かなり若年と推測)
 容貌:緑色の肌、黒い短髪、華奢で長いまつげに細い眉(さらば)/中肉中背で太い眉(ヤマト2)
 名の由来:不明
 ミーリ(миль)はロシアの苗字で、英語読みするとミル。デスラーを‟見る”からミル、なんつってな……。

 

 さらばとヤマト2では、立ち位置やデスラー総統との関係や容姿がまるっきり異なり、服装こそ大した変更がなかったがゲーニッツのキャラリファイン以上に別人に仕上がる。だが、ベースとしては美少年で白い軍服に身を包み、基本的に総統の気迫にボロ負けする気の弱さが共通。さらばとかプレステの方だと有能そうなんだけどね。


 さらばにおいてサーベラーの命でデスラー総統を監視するべくデスラー艦に乗り込む。作戦の基本ラインについては特に何を言うでもなく、傍観者だったが――駆逐艦を犠牲にするヤバい作戦に対してはさすがに異議を申し立てる。だが、結局退けられる。以降はほとんど発言ナシ。

 白兵戦でアンドロイド兵部隊が壊滅した後、総統の敗北を確信。顛末を大帝に報告すると退艦しようとしたところを総統に射殺される。

 違う、射殺じゃない。意外にもガッツがあり、執念でリベンジに立ち上がる、ミスって森雪を銃撃――デスラー総統怒りの連続狙撃を受けて完全に死亡する
 ちょっとかわいそう。

 軍人や行政官としての能力としては多分、高い方。作戦指揮能力は多分、高い方監視艦隊司令という立場であるから監視する相手の指揮で損害が出たとしてそれがド下手なのか乱暴なだけなのか判断せねばなるまい。非積極的な指揮だったとしてそれが臆病なのか慎重なのか判断せねばなるまい。それを判断するには自分が一通りのガトランティス流の作戦プロットを把握しておく必要があるだろう――少なくとも数理の上では多彩な戦術を頭に入れていると言って差し支えないはず。兵棋演習では高評価を納められるだろう。それが実践に生きるかは疑問だが、そもそも監視艦隊司令が実践で辣腕を振るうというのはあまりイメージが出来ない。派遣議員程の指揮権を持っていない故に。

 性格は押しが弱いのか、実は柔軟なのかは不明だが結局デスラ―砲の発射を黙認した。上から目線というよりガトランティスの代理といった風を、監視の生きた目という前提を崩していない点を鑑みると、真面目ではあるがそれなりに融通が利きそうかもしれない。貴族なのか、気位が高いのか、ただ丁寧な人間性なのかは不明だが、立ち居振る舞いはにじみ出る優雅さ。

 かなり中性的なキャラクターで、マッチョイムズの権化のような見た目のガトランティス勢の中で異彩を放つ。その為、彼をそのままのキャラクターとして深堀するととっても楽しい考察になる。例えば、ジェンダーについてのガトランティスの先進性とか能力至上主義とか、幾らでも話を構築することが可能なのだ。

 問題はその考察が出来るだけの分量が劇中からは中々ピックアップできない事……。

 


 ヤマト2においては、さらばより総統に対し幾らか強い態度に出た。男らしい美男子にリファインされたパワーか。

 だが、常に総統に気圧される。まずい事に総統とタランはミルに隠れて秘密会議を行い、結局監視任務が出来てない――あげくに総統がサーベラーの横やり通信のあおりを食らって指揮ミス、その怒りを通信装置の受話器が被弾してしまい総統が受話器は床に投げつけられた。その受話器が跳ね返ったものを……避ければいいのにうっかりおでこで受け止めてしまうものだから、見事に切ってしまう

 もう、痛々しい。ガトランティス人の血の色って赤なんだね。大体、この人が誰の支持でデスラー艦に乗り込んだのか、判然としない。しかも、デスラー総統怒りの受話器投擲以降、出番がない

 性格としては生真面目、挙句に空回り。権威に物凄く弱いのか、サーベラーを絶対的に信用しているのかはわからない。青年将校と言って思い付く感じの要素を全部ぶち込んだ感じだろう。


 個人の性格や能力や、経歴を推測できるほどの描写はない。幾らでも拡大解釈は可能だけどね。ただ、どうしても見せ場は特になく……さらば、ヤマト2共に何とも可哀想な人物である

 

 

 氏名:メーザー(Mazor)
 階級ないし職責:ミサイル艦隊所属戦闘員(特殊工作班、少尉ぐらいか)
 年齢:不明(青年の後半から壮年の前半か)

 名の由来:不明
 メーザーないしマザー(Mather)などと発音されるこの単語は、英語圏にままある苗字。こんな苗字もあるんですね。

 

 ヤマト2にのみ登場する戦闘員。特殊工作を行うために同僚と共にデスバテーターを用いて活動していたが、ヤマトに捕捉されて加藤機の攻撃を受ける。場合によってはヤマトに対する工作であったかもしれないが、詳細は不明。

 立場がどれほどなのかも不明で、推測のしようがほとんどない。デスタールに直接口を利く勇気を考えると、さすがに隔絶した階級差ではないのだろうが……不明。階級に圧倒的な差が有ったら、それはメーザーが物凄いガトランティスに対する忠誠心の表れとして表現できる。


 色々あって同僚は死亡、当人だけが生き残る
 その後、佐渡酒造の検査を受けて生体データを収集される。一連の検査終了後、今度はファンからの通称:拷問の山田君の苛烈な尋問を受ける。あくまでヤマト側の認識は苛烈な尋問。結果、口を割らず。
 しかし佐渡酒造と酒盛りをする事で多少打ち明けるも――脱出を図った。ヤマトクルーを出し抜き、見事成功して所属部隊帰還を目指した。しかし、隊長であるデスタールに拒否され断念他方で、古代がガトランティスから地球へと鞍替えを説得する。 だがデスタールは反転、祖国の繁栄を叫んでヤマトに激突した。

 

 だが、彼は艦橋ではなくく舷側に突っ込んだ。艦橋を狙えたしそれが一番ヤマトを損傷させ得るのだが……彼はあえて舷側へ突っ込んだ。自分を武人として迎え入れようと語った古代の説得と、仕えて来たガトランティスへの忠誠のはざま――登場人物の中で最も哀しい運命をたどった人物である
 2199のノヤっさんオルタとほとんど同じ構成のストーリーであり、総監督のファンサ精神からすれば恐らく……あの話の原型と言えるだろう。

 

 

 忘れられた人

 なお、恐らく南雲忠一中将がモデルであろうナグモー提督もいた。元来はプロキオン方面軍を預かる航空部隊の指揮官であるはず。が、第一話でゲーニッツの口から語られただけ。あとは知らない

 設定だけならばパラノイア隊を率いる予定だったダンマク将軍というのもいたという話。知ったこっちゃない。お前は弾幕を張られる側だろうが。

 

 その他――

 人ではないが……バルゼーが出動させた偵察艇の名称。あれが〈ビードル〉が正しいとすれば、音感的にはアメリカチック。ジェームズ・ビドル(James Biddle)という1845年~1848年にかけて東インド艦隊を預かり、日本に来航したアメリカ海軍司令がいるのだ。ウィキに見られるように〈ビーダス〉が正しいとすれば、根底からこの解説は覆る。

 

 以上が氏名と階級など情報が判明しているガトランティス人である。他にも――ザバイバル師団から出向したらしいゴーランド艦隊の連絡将校とみられる軍人(第3話)役に立たんナスカのハゲ副官とヤマト接近を伝えた威勢のいい連絡員(共に第6話)不敵な笑みを見せた金髪天パなゴーランドの副官(第8話)、なんか全体的にもっさりした兵站補給基地司令(第19話)ゲルン旗艦の艦橋クルー(第20話)等々、印象的な人物は多数存在する第14話に登場した警備兵たちも彼ら自身は特に目立つ言動はなかったが。正規兵たちと施設の警備についての縄張りで想像を膨らませる事が可能。

 別に物語的には大した意味はないのだが、しかし仮にウォーシミュレーション的・架空の戦争を描いた作品としては欠くことのできない人物である。

 

 

 印象としては基本的にアメリカ人的な雰囲気を受ける。

 名前の語感、性格の傲慢さとヒロイズム――日本人が想像するアメリカ人の典型例に近い。また、下手をすれば日本人以上に所属する集団への帰属意識・貢献欲求(ケネディズムとでも呼ぼうか)を非常によく表した事例も多数ある。これがガトランティスのキャラクターのそこかしこに見られる。例えばデスタールとかメーザーとか。 実際の国家を一定程度トレースしたからであろうか、中々に複層的な人物の設定や描写が行われたと評せるだろう。

 もっと言えば、対日戦争勝利後、ベトナムなどでは苦杯をなめさせられる傾向が多い……それはひとえに、勝ったパターンを踏襲しあまり用心をしなくなったからと言えるのではないだろうか。あと一歩警戒が足りず、あと一歩見通しが甘い。ガトランティスも長い歴史の中で勝ち星を重ねに重ね、重ねまくった結果勝ちに驕っていたのかもしれない。だから本来は有能であったり負ける様な指揮をしないと思われる人物が、結果として負け戦に臨んでしまった。例えばバルゼーとかゲルン。

 極めて濃厚にアメリカ――或いはアメリカに少し遠慮して覇権国家超大国一般に見られる、幾らか驕り根拠のない自身にあふれ、ナチュラルに相手を虐げてしまう国民や軍人らしいキャラクターを描いたと言えるのではないだろうか。