旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

第三地球防衛艦隊 概要


 第三期地球艦隊はこけおどし以外の何物でもなかった。興味深い存在ではあるが、こけおどし……地球防衛の主力を担う艦隊がなぜ、こけおどしになってしまったのかを考察したいと思う。

 


 設立の経緯
 まず挙げられるのが人員の確保・調整だろう。

 

 ガトランティス戦役でほとんどすべての第二期地球艦隊を失った地球は、新たに出来るだけ同規模の戦力を整える必要に迫られた。あの最強ともいえる第二期地球艦隊ですら敵わなかったのだから、それ以下の戦力では敵と戦うにはお話にならない。それは簡単に予測できる。

 艦艇だけならば用意できるかもしれないが、持久戦となって負けかけたガミラス戦役に次いでのガトランティス戦役であるから、相当数ベテランや脂ののった兵員が失われただろう。歩兵ならば3カ月ないし6カ月程度の課程で軍人に必要とされる一通りの訓練を施すことが可能である。が、一通りのことを知っているからといって最前線で安心して戦闘を任せられるかといえば別。一年程度は教育課程ではない実戦的訓練を現場で施したしかる後の戦闘が好ましいだろう。

 味方が半分素人だからといって、攻め込んでくる敵が素人であるなんてうまい話はないわざわざ地球に攻め込んでくる敵はほぼ確実に精鋭部隊なのだから、これに備える必要が有る

 


 差し当たっては、生き残ってくれた貴重な残存兵力で運用可能な小規模艦隊でしばらく安定的な防衛網を回すとして、新規徴募や予備役の現役復帰のための訓練時間が欲しい。が、小規模艦隊のみに割と広大な太陽系圏内の防衛を全て任せるのは得策ではないだろう。縦深戦術なんてものを取られてしまっては100パーセントアウト。勝てるものも勝てなくなってしまうだろう。

 地球に負担をかけない効果的な防衛装備品はないだろうか……そこで、無人艦隊である

 艦隊整備の為、地球防衛のための時間と数を確保するには、人間が操る艦ではなく……人間が遠方で多数を一気に操る艦の方が効率がいいし安全。また、太陽系圏内での運用に限られる以上、通信が途絶するなどのアクシデントも惑星基地や監視衛星だのコロニーだのが豊富な太陽系圏内であれば十分その危険性をいくらでも避けられる。

 長期間連続で航海させても過労はないし、ストも起きない非常に便利な存在。コントロールする人間はシフト制にして確保すれば、ほんの数人で数百隻の艦隊を十分運用可能な存在。それが無人艦隊だ

 


 弱点の数々……
 武装の癖が凄い、凄すぎる。無駄なものを載せている割には必要なものを載せていなかったりと――以下に纏める。

 

 武装

 艦首方向への対艦戦闘は非常に強力である。何せミサイル14門やショックカノン12、小型砲18門に加えて波動砲が大型艦2、小型艦1を備えているのだから。
 が、他方で側面での攻撃となるとミサイルが例え発射されても大きな円を描きながら旋回するという余計な行程の最中、双方の砲撃によって爆発してしまう可能性が幾らかある。また、固定砲台は明らかに大した仰角が取れないであろうから砲撃に参加はできない。大型砲が大型艦6門、中型ないし小型砲が小型艦の6門に加えてそれぞれの対空機銃合計14門。何か微妙。
 艦尾方向に至っては物凄く脆弱で小型艦の2門+小口径4門と大型艦の小口径8門しかない。


 対艦戦闘に置いてひたすら艦首方向の攻撃しか有効では無いし、対空戦闘においては舷側方向の攻撃しか有効では無い。遠距離戦闘では大型艦以外に用をなさないし、中距離戦闘では小型艦しか用をなさない。

 組み合わせて利用するのだから弱点を相互補完できるのだが、これは――頭の無い無人艦隊にそんな簡単にできる戦術なのだろうか……。しかもコントロールセンターはとっても遠く、その設備も人員も貧弱。

 

 外付け波動砲
 これもインパクトはあるが、ちょっと意味わかんないっすね

 波動砲の新しい形式へのチャレンジだとすれば、本採用して多数の戦闘艦に搭載するなんて無謀。仮にこの外付け波動砲のせいで気流が乱れて大気圏内航行に支障があったとすれば、無人艦隊はわざわざ全艦に安定翼を装備しているのも理由づけになるが、そんなことするぐらいなら普通にすればいいのに。

 もっと言えば、180メートルの小型艦に巡洋艦のそれよりも小さくなった砲口の波動砲をつけて一体どれだけの効果があるのか。しかもエンジン直結ではないのに。

 かなり疑問

 

 


 自律行動不能
 弱点はずばり、無人艦隊なのに自律行動が全く出来ない事だろう

 

 確かに、全艦にそれぞれ強力な自立型の自律機構を乗せる必要性は薄いだろう。きっと単価も高くなるだろうし、100パーセントの自律行動をさせる必要はない。仮に艦隊自身に自律を期待するならば、大型艦や戦隊旗艦クラスの小型艦にこれを積みこみ、下級艦を指揮させればいい。

 だが、それすらしなかった。地上のコントロールセンターにまるっきり頼り切るという意味不明な事をしてくれたのである

 

 アナライザーや防衛軍中央病院などのアンドロイドを考えれば、なぜ彼らに準じた頭脳を艦に搭載しなかったのか疑問。これらを利用すればたとえコントロールセンターとの通信が途絶しても自前で戦闘可能になってより有機的かつ徹底抗戦に向いた艦隊となり得る。もっと言えば、コントロールセンターを複数設けてバックアップ取ればいいという話にもなる。

 ハッキングされてインターセプトされる危険性を重大視して、全体的にダウングレードさせたという説明もできなくはないが、分散自律型のシステムを導入してハッキング対策をするなど、色々な方法があるはず。敵艦隊に勝てるか微妙な装備に押しとどめたり、エネルギー反応を検知しても応戦しないというのはあまりにレベルが低すぎるだろう。ラクタを作っているようなものだ

 

 ヤマト作品という割と色々な演出が後代の技術によって何とか整合性リカバリーが出来るという――いわばご都合主義的要素の強い作品において、このような容易に考えつくシステムを導入しなかったのは非常に理解に苦しむ


 あるいは搭載しているが、島君が艦隊を信じられず自身が全てを掌握するため、自律を切ったとあれば、あの大惨事は理解できる。だが、それはやべぇだろ。この男は「俺があの艦隊に乗っていれば」などといったが、お前は戦闘班じゃねぇ。しかし、彼の様子を考えるとやりかねん。

 そもそも、運航班出身の人間に戦闘まで受け持たせる防衛司令部の判断が――


 暗黒星団帝国の艦艇がびっくりするほどステルス性が高いのはそれまでの戦闘の中で、割と監視を忘れるガミラスは別にして、ヤマトなどもいまいち補足がうまくいっていない事を考えると間違いない。だからいまいち認識に至らず、補足・攻撃を受けたとしても妥当性はある。が、攻撃を始めれば明らかに加熱するだろう、それを狙って砲撃開始するのがある程度自律的に砲撃を行う機能があれば可能なはず。それがなかったという事は……やっぱり自律機能はなかったか。
 武装を総花主義的に全部を盛り込まず、小型艦と大型艦で性格を多少なりとも振り分けたのは理解できるが、自律機能までオミットしてどうすんだよ……

 

 


 全体的な能力
 全体的に能力がかなり低い。まず、有人艦以上に小型でしかもフィンが多数というのはスラスターなりがあまりないのか、緊急的な動作をしない前提なのか。何にせよ航行能力は低めだろう。スピードに関して言えば、普通の艦艇と同等かもしれないが、速い事と動きがいい事は別


 次いで、地球のコントロールセンターに指揮通信が運航ばかりでなく戦闘まで任されており、バックアップさえない。非常に脆弱な指揮系統。戦闘科を終えた程度=決して艦隊司令ではない人間が運航にどっぷり口を挟むのは問題だが、他方で艦隊司令を一時でもした事のない運航班=島大介が艦隊の戦闘指揮を執るというのはお話にならない


 最後に全く方針の不確かな武装

 第二期地球艦隊の対空兵装も思い返してみれば貧弱だが、それでも艦首及び艦上下方向には指向可能だった。また、大中小艦艇を組み合わせてそれぞれの特質を組み合わせて概ね穴の無いといえる対空対艦能力を編成した。

 が、大小の艦艇のみで、中間の艦や特化した艦艇がなく、全体的に貧弱な武装でしかない。航空戦力による掩護があれば当然、また違った話になるが、必ずしも――そもそも人員不足から誕生したのなら、航空支援は多くは望めないはず。それで艦隊全体があんな微妙な対空能力では、的にしてくださいと言っているような物。仮にデカい砲であっても、即応力があれば対空戦闘できなくはない。反対にちょうどいい砲があっても即応力がなければ対空戦闘はできない。

 戦術によっては活躍できるだけのポテンシャルがあるのかもしれないが……困ったことにこの艦にはコントロール機構上、全く即応力がなく碌な戦術が取れない

 

 

 

 大人の事情による演出なのだろうが、これは擁護できん

 機械文明へのアンチテーゼは理解できるが、過剰過ぎてアンチテーゼ自体が滑稽になっている
 今の技術を踏まえてリメイクするなら、十中八九自律型無人艦隊になるだろうし原作の時点でもそうしなければ合理性がない。自律出来るならもっと武装を増やしても問題はないし、効果的に機能可能。となると、ハッキングされて反対に地球攻撃の一手となって同士討ちさせられる――と言うような展開が一番スペクタクルを保持したまま、旧作に準じた展開やアンチテーゼの確保になるだろうか。

 何にせよ頭の悪すぎるアンチテーゼな展開の為に無理やり能力を色々オミットしたご都合主義的な設計。この残念さに合理的説明をこじつけようと思えば十分できるが……正直、その気力が起きないレベル

 

 

 

第三期地球防衛艦隊 無人艦隊大型艦/無人艦隊小型艦

 

 無人艦隊大型艦アンドロメダに続く連装波動砲を備えた波動砲戦の中核を担うであろう艦である。艦隊旗艦級の戦闘艦と思われる実際に大型の戦闘艦だ。

 

 ――データ――

 艦級名:不明
 全長:300メートル
 全幅:84.5メートル
 全高:94.1メートル
 武装:艦首小口径波動砲2門(縦に並列、外部ユニット)、艦前部3連装主砲2基、艦首ミサイル発射管8門、舷側前後連結連装砲台片舷2基、連装機銃片舷4基。

 

 艦体の部位の比率からアンドロメダのような雰囲気があるが、どちらかといえば突撃駆逐艦のそれに近い部分が多い。エンジンノズルもヤマトと巡洋艦のハイブリット的コーン付きのラムジェット的ノズルであるが、なぜか扁平。外付け状態の縦連装の波動砲口と同じように非常に印象的だ。
 艦橋はカプセル的な小さい楕円と小さめのレーダーを左右に耳のように付けた非常に簡素なモノで、無人艦然としている。艦底部の同じ位置に大きなアンテナがあり、左右に増槽が付いている。前方側艦底部に大きなインテークがあり、これのサイドに安定翼がある為、どことなくアンドロメダを彷彿とさせる。他方で艦橋後方の艦体にもインテークがありこれはどこか主力戦艦風。
 全体としてメイドの低い青系グレーで、ところどころにオレンジ色の指し色が入る。

 ちなみに――海外でも,Unmannedと呼ばれるだけで、マトモな名称は与えられていない。ただ、分類はHeavy Battleshipとちょっと洒落た感じになっている。

 

 武装
 武装は前方へ集中配置されている
 艦体に比して結構大型のミサイル発射管、艦橋前についた3連装主砲塔が2基に艦首波動砲2門と、全て前方に向けられている。無論、ミサイルも撃ったあとは後方に誘導すればそれで問題ないし、主砲も260度かそれ以上左右に旋回半径を持つため、後方に十分砲撃可能。ただし、副砲がなさ過ぎて中距離戦闘が非常に脆弱。接近した敵艦への攻撃は、主砲に速射性が十分でない限り自艦では十分なそれが行えない可能性が高い。


 対空火器は総数16門を勘定し、割合に強力とも思えるのだが――困ったことにこれ多分旋回できない。つまり射角は概ね上下の合計180度のみ。舷側から突っ込んでくる敵には有効だが、艦首方向から突っ込んでくる敵には全くかすりもしない。武装配置が微妙だし、武装の構造もまた微妙で敵艦載機やそれに準する高機動兵器の襲撃に対してほとんど無力で、近接戦闘においてまともに弾幕を張ることもできない

 主砲6門も速射が可能であれば何とかなるかもしれないし、圧倒的多数で密集隊形を取ればいくらでも対空戦闘は可能なのかもしれないが――今度は対艦戦闘では団子になって粉砕されてしまう危険性がある。


 小型艦が防空任務に就くという考えもあろうが、だったら艦砲が微妙に大きく、対空兵装は純粋にダウンスケールしただけであり、ひょっとすると火力不足かもしれないない。
 

 縦型連装波動砲
 どんなタイプの波動砲かは不明。砲口からすれば第二期地球艦隊やヤマトのそれに近いが、そうであれば――通常の収束型波動砲という事になるだろう。位置も離れているため、恐らく干渉は小さいものになるだろう。という事は、単なる収束波動砲を二発いっぺんにぶっ放すという可能性が高い

 そうした理由は不明


 この艦の大型の艦体であれば十分内部に収容できるはずだが、それをしないのだから外付けにした理由を説明せねばならない。

 アンドロメダの様に接近して、だからこそ拡散タイプへと波動砲を転化できたのであれば、二門を離せば収束のまま発射できる――砲口よりもそこに掛る圧力やタキオン粒子量が問題であって、それが威力に繋がるのであれば砲口の大きさは関係ないだろう。

 あんまり高荷電状態で、しかもうねうねとエネルギー流をあちらこちらへと流すと、当然膅発事故の危険性が出てくるだろう。順序としては外部ユニットにエネルギーを供給して、そのユニット内に薬室を配して波動砲発射準備を完了するのが当然だろう。

 

 全長の妥当性

 無人艦である為、人員の為のスペースは必要ない。そのため、必ずしも大型である必要はない。特に艦載機を収容する必要も運用できる能力もない為、これを省くと艦の全長は驚くほど小さいもので済む。

 つまり、原作設定値のままで十分。残念ながらこの艦はどこからどう考えても拡大する必要性はない。

 

 劇中の活躍
 劇中は単純に派手に爆発した以外に特にない。味方艦艇と衝突した以外に特にない。自律システムがなく、カザン率いる黒色艦隊に散々に打ち破られた挙句、地上のコントロールセンターを破壊されて完全に崩壊。

 射撃練習の的になってしまった

 

 

 

 

 無人艦隊小型艦無人艦隊の数的中核を担う戦闘艦である。戦力としてレベルは高くはないが、数で敵を押し切る戦術において十分に役に立つポテンシャルを備えた艦だ。

 

 ――データ――

 艦級名:不明
 全長:180メートル
 全幅:43.5メートル
 全高:55.4メートル
 武装:艦首小口径波動砲1門(艦底部、外部ユニット)、艦橋前方3連装砲塔1基、艦底部前部3連装砲塔1基、艦尾連装固定砲1基、舷側前後連結連装砲台片舷1基、艦首3連小型固定砲片舷1基、連装機銃片舷3基、艦首ミサイル発射管6門

 

 艦容は無人艦隊大型艦のダウンスケールが否めない。若干、艦首が切り詰められ、下方にのみ外部ユニットの波動砲口が据えられている。砲台も機銃も片舷1ずつ減じられ、増槽もない。なぜか波動砲を除く艦首部が赤く塗られている。エンジンノズルは大型艦と同じ。

 ちなみに、海外ではDestroyerと分類されているが名称はUnmannedと捻りがない。大型艦と完全にかぶっている。

 

 武装

 大型艦より際立って前方集中武装
 艦首方向であれば大小合わせて16門の砲に加えて6門のミサイル発射管を指向可能他方で艦尾方向には9門の砲しか向けられない。9門に加えて艦首砲を旋回させればある程度艦尾方向にも射撃可能ではあるが、それでも艦首方向への火力集中には劣る。地味に問題なのが、側面方向には6門だけしか向けられない事であり、非常に脆弱。これは困った……

 ミサイル兵装は大型艦の半分強程度の大きさから考えて、威力も半分程度であろうことが推測される。無論、これが運用に自衛も想定した上での装備であれば恐らく有効に働く。武装大型艦よりもバランスが取れている傾向にあるのは結構意外

 

 立ち位置・運用

 立ち位置がいまいち不明で、大型艦の護衛なのだろう、或いは波動砲の総エネルギー量の確保という事だろうか。少なくとも単艦での運用はあり得ないというか、無理

 防空艦と対水雷艦の両立を兼ねた戦闘艦という立ち位置が一番説得力があるだろう。この場合、十中八九拡散波動砲であろうし、そうでなかった場合は対艦戦闘力が決定的に足りない事になる。この艦に高い対空戦闘力があるという事にしなければ……存在価値が端っから疑われることになるし
 ざっくり評価すれば――あったらあったで使える艦といえるだろう

 ただ、ローテクな制御法の無人艦隊にあっては正直、数が多すぎて指揮の邪魔になったかもしれない

 

 全長の妥当性

 無人艦である為、人員の為のスペースは必要ない。そのため、必ずしも大型である必要はない。特に艦載機を収容する必要も運用できる能力もない為、これを省くと艦の全長は驚くほど小さいもので済む。

 つまり、原作設定値のままで十分。残念ながらこの艦はどこからどう考えても拡大する必要性はない。

 

  劇中の活躍
 劇中は単純に大型艦と共に派手に爆発した以外に特にない。味方艦艇と衝突したのは印象深いが、全部やられ描写。

 自律システムがなく、カザン率いる黒色艦隊に散々に打ち破られた挙句、地上のコントロールセンターを破壊されて完全に崩壊。迎撃に都合のいい艦首方向ではなく、最も脆弱な側面からの攻撃を受けたのもかなり痛く、射撃練習の的になってしまった

 

 

 見た目は決して悪くない大型艦・小型艦共に愛嬌のある造形で、特に小型艦などは非常によくまとまった見た目で好印象。外付け波動砲や完全無人艦というのもかなり インパクトがあった。現代の技術を前提としたリメイクなどを行えば、非常に強力な戦闘艦隊にも、物語にメリハリをつけるキーにもなるポテンシャルを持った戦闘艦である。

 だが、色々ご都合主義がぬぐえない描写の数々のおかげでその輝きが全く持って鈍ってしまった。何となく登場させられた形になった護衛戦艦群以上に、哀れな感のある戦闘艦といえよう。自律機能が無いのはこれ、痛すぎますって……

 

 

暗黒星団帝国軍艦艇の特徴

 

 勢力として2度、ヤマトと戦った暗黒星団帝国。その艦艇の特徴――無論、見た目も特徴的だがその中身についても考察したいと思う。

 

 

 武装配置

 火力が正面方向に対して強力というのは特徴的。円形であるのだから艦橋の周りにぐるりと回して配置しても問題は大してないはずだが、出来るだけ前方に集中させる。
 合理的に考えれば――敵と対峙する際に奇襲ないし強襲を成功させる為、ほぼ全火力を正面に集中させた。とすることが出来るだろう
 高いステルス性を鑑みて自身が奇襲を受ける可能性は低く、仕方のない不確定要素として切り捨てる。しかし、奇襲や強襲は絶対に成功させなければならないし、反撃を受けた場合の艦隊崩壊を考えると、緒戦に全力を尽くさねばならない。だから集中的に前方に火力を集中させた。これは暗黒星団帝国の戦闘スタイルであれば仕方のない事だろう。

 

 

 防護性能

 暗黒星団帝国艦艇の最大の特徴はそのステルス性と耐久性耐久性ゼロとはいえ、護衛艦巡洋艦程度でも強力なステルス性を発揮する。一方で戦艦やゴルバ系の兵器はステルス性も高い上にその耐久性は非常に強力


 だがその源は何かは語られておらず、不明

 仮に磁界などによる通常空間との隔絶であれば、多少は敵のエネルギー攻撃を通してしまうかもしれないが、減衰はできるだろう。他方で磁力なりを防護の中心に据えているのであれば、大型艦艇でなければ出力が確保できないとしても不思議はない。

 塗装なり装甲そのものが反射ないし熱として吸収するという素材であれば、放熱さえうまくいけば十分防護とステルス性を両立できるだろう。塗装なり装甲なりが敵エネルギー兵器を吸収ないし反射であれば、これは小型でも少なくともステルス性だけは確実に確保可能だろう。特に吸収であれば。ただ、この場合も艦が小型すぎると全体が熱を持ってしまうという可能性があり、大型艦に比べれば性能にかなりのダウングレードという事があっても仕方がない。逆にキャパシティの大きい大型艦になればなるほど効率が上がり、耐久力が上がる。

 

 二つ予想を示して見たが、どれか一つに絞る必要は恐らくないだろう艦のキャパシティに合わせて片方を採用したり、両方を組み合わせているとしても別に不都合はないはず。また、三次元的なあの曲線も物理的な攻撃に対してあるいはレーダー波の反射に関して役に立つ可能性がある

 つまるところ、装甲の分厚さではなく装甲の形状や仕方などの要素がむしろ防護に大きな意味を持っているのではないかという事。


 

 他方――陸上兵器や艦載機であれば、塗装なり装甲なりで防護を行う方式は、これは相手が戦車や対空砲台等の威力のたかが知れているものを相手にすればいいのであるから、採用して不思議はないがキャパシティが少々小さいのが気がかり。

 だから艦よりも装甲が相対的に厚い傾向にあると考えて不思議はないというか、道理にかなうだろう。磁力に頼るとエンジン出力を高める必要があり、余計に大型化して使い勝手が悪くなる可能性もあるし。

 

 

 艦隊の傾向

 艦隊建設の方針は昔のソ連海軍に近いだろう。
 ロシア帝国は曲がりなりにも攻勢海軍であったし、シーレーンの重要性というのもちゃんと理解していた。だから航洋型の装甲巡洋艦を多数建造した。制海権の確保というのも当然重視しているのだから出来るだけ敵よりも優勢な戦闘艦を建造できるように心がけていた。ウシャコフ提督やマカロフ提督のような優秀な人材もあり、政治に翻弄されたとはいえその時々に最善の選択を行ってきた日露戦争後の壊滅的な打撃も、その負けた理由をちゃんと考察し、対策を練って海軍再建を試みた。

 

 他方で赤色艦隊だ。
 確かにポチョムキンの反乱を見るに、強力な軍艦を手元に置くと万が一反乱を起こされた際に非常に具合が悪い。自分がやったことだもの、その有効性=危険性は理解していただろう。また、維持には金がかかる。挙句、陸戦=パルチザン戦争の経験を活かした海軍再建を目指した主流派などの存在もあり――極めて海軍のレベルが低くなってしまった。

 つまり、完全に内海、それも沿岸のみの海軍にレベルが引き下がった。そもそも、海軍は陸軍の作戦を支援するためだけの存在と言うような認識が中心であり、艦隊整備もパルチザン好みな奇襲戦向きな潜水艦や魚雷艇などにとどまり、大型艦はその地位を大きく落とした。


 スターリンとかいう派手好きなおっさんのおかげで一時は大型艦が再度日の目を見ることになったが、戦争では大した活躍はできず、彼の死によって一発お蔵入り。

 フルシチョフ時代、もう完全に海軍の地位は地に落ち、陸軍の支配下に置かれたも同然だった。しかも、すでに欧米に大きく水をあけられ、その差を縮めるのは非常な困難を伴うほど海軍力自体が低下。小物=潜水艦で大物=米空母を狙うという、やって出来ない事はないがそれって大国の海軍がやる事かな?と問いたくなるような有様。
 こんなレベルでは当然同盟国を支援などできるはずもなく、キプロス紛争の前後に外洋海軍へと変貌を遂げるべく準備を開始した。金を突っ込んで、突っ込んで大量建造。それでもパルチザン時代から脱却できず、何だか潜水艦をやたらに整備――1990年代に入って財政の動揺からこのツケを海軍は払わねばならなくなる。
 結果、艦の大量退役が進み、反対に新鋭艦を造るのが困難になって旧式艦を使い続けるという指揮官としては頭が痛くなるような状況が現出してしまった。

 結局のところ、ロシアにおける海軍は大陸海軍であり沿岸がその主戦場

 


 暗黒星団帝国の艦隊もそれに近い。艦隊は軍の中では単なる大型火力支援以上の物ではないのだろう。イスカンダルや地球への侵攻理由や行動から帝国が必ずしも拡大期にあるかといえば微妙であり、だからこそ艦隊という存在するだけで領域を制圧可能な戦力よりも惑星という点でしか制圧できない陸上戦力の能力拡大に傾倒。艦隊を置かない、艦隊を置けるだけの予備戦力がないから陸上戦力を支援したり、それぞれの補給路を守る為に要塞を各地に配した。

 だからどの指揮官も艦隊戦が意外に弱く、だからやたらに要塞が大きく多く配置していたと表現できる。


 地球侵攻に際して完全に地上制圧部隊が主戦力として稼働していた。艦隊は艦隊を封じる為だけと言っていいほど活動範囲は狭かったし、ヤマトだからというのもあるがその進軍阻止には全力を尽くして動いた。これは陸上部隊にはできない事である。他方で艦隊はヤマト迎撃のために発進して陸上部隊は置いてけぼりにして――つまり、陸上部隊単独で戦闘続行可能と思われていたと説明もできよう。

 それ以前のガミラス戦においても、艦隊の活動拠点形成では無くあくまで動力源の確保が目的でガミラシウムの違法採掘に臨んだ。拠点形成であれば端っからゴルバを前進させておけばもっとスムーズに事が運んだだろう。それをしなかったという事は、自軍側惑星に駐留する軍同士の相互援助をベースとした――いわば宇宙帝国にありがちな領域支配では無く、地に足付いた領土支配がベースであろうと考えられる。


 領域でなければ、惑星そのものに防護を施せばいい。敵襲を受けた場合、移動式の要塞をいくつか設けて、緊急的に出動する艦隊を先兵として相互援助的に迎撃を行う。ある意味地上戦的な考え方だといえる。
 正直、規模としてゴルバや中間補給基地だけであの艦隊の補給が恒常的に出来るかといえば大いに疑問であり、自国とその周辺以外の地域における活動はほとんど考えていない言えるだろう。

 

 

 無人艦隊というの可能性
 全般として暗黒星団帝国は艦隊の運用が下手。下手過ぎる。毎回逐次投入で、しかも奇襲以外できない。奇襲以外成功しない。奇襲されたらむしろ弱い。まさにパルチザン的戦闘で、添え物としての艦隊。
 地球占領戦において、対艦戦闘を考えれば輸送艦を繰り出すのはあまりに早すぎるタイミングでの投入というのも恐ろしい。仮に巨大であればそれだけ的になりやすい、しかもその性質上は火薬庫と表現していいだろう。これをいくら地上戦力を制圧しつつあったとはいえ、後方に艦隊戦力が存在していることが分かった上で投入はうかつ。結局黒色艦隊の強力な火力によって地球の無人艦隊は壊滅したが、仮に島が黒色艦隊迎撃を一切せずに地球へと艦隊を向かわせた場合――せっかく降下した戦力はボロボロにされて、地上戦がいたずらに長引くことになっただろう。作戦が成功しても長引いているのだから、話にならないが。
 素人でもわかる艦隊運用の素人っぽさというのが暗黒星団帝国の特徴といえよう。 何なら艦隊というものを理解していなかった可能性だってある。陸戦で重要な縄張り、それを構築する要素という考えにしか到達していなかったという事。

 

 仮に、無人艦隊が数的中心であるとするならば無理もないかもしれないし、合理性もある程度は発生するだろう。やられたらやられたで構わない、ただの物という考え。

 暗黒星団帝国が仮に人口の減少等に苦しんでいたのであれば、選択肢として無人艦隊という選択肢は十分あり得る。
 人口減少がありながら、人員拡充が必要な戦力拡大を図る無能も世の中には存在するが、普通は省力化に舵を切る。省力化を前提とした戦力拡充を図るのが当たり前。
 無人艦隊=ドローンというのは使い勝手がいいし、高いが人間が死ぬよりかはずっと安上がりである。まして現在から200年後であり、暗黒星団帝国自体が地球より相当進んだ機械文明である事を鑑みて、現在の地球がドローンに対して抱える悩みは概ね解消されたと考えてもいいだろう。であるならば、人間が操艦する戦闘艦と同等か、場合によっては上を行く信用度と戦力を有するかもしれない。しかもいくら消費しても、人員的な減少は一切ないのだから安心して無茶な戦闘に十分使える。頭の悪い力押しの攻撃であったとしても、後から予備戦力を持ってくればいいだけ。最悪、残骸を回収したしかるのち、中間補給基地やゴルバなりの艦内設備で補修なり共食い整備なりをすれば戦力の再補充は可能だろう。
 
 艦隊を構成する主力が無人艦隊であれば、これは余計に雑な艦隊運用をしたとしても不思議はないだろう。まして、消耗品であるからなおの事雑に扱う可能性がある。防護柵の損傷に目を配り交換はしても防護柵自体が傷つかないように戦闘する必要はない、それと同じ。艦隊を元々消耗品に近いと考え、しかし出来るだけ人間を消費しないための、代替品としての無人艦隊。ならば、元々の雑に扱う考え方に拍車がかかっても不思議はなかろう。
 この簡単に消費しても痛くはない戦力およびその認識が、成功する確度が高くメリットも大きいが同時に消耗度の高い戦力運用に繋がる。

 

 

 暗黒星団帝国の艦隊戦術

 縦深攻撃はソ連を代表する戦術である。敵前面を広範囲に叩きつつ。敵前面部だけでは無く敵の後方まで攻撃し、敵の全力を味方全力で踏みつぶす。これが縦深攻撃であり、陣形としては当然縦長になる。後方戦力も攻撃するため、最終的には敵拠点に対して包囲殲滅戦へ移行するのが常である。大規模攻撃、波状攻撃、連続攻撃、同時攻撃――単純だが意外に複雑な要素のある戦術。
 反対に敵は馬鹿みたいに前方に前衛を置き、バカみたいに後方に戦略的拠点を置く嫌がらせ=攻撃の長距離かを相手に迫る事も可能だが。

 電撃戦は敵の強力な前縁部を一点突破、前縁部が迎撃や反撃に移る前に全速で前身。これによって敵の戦力を上回る攻撃速度を実現、敵側予備であるとか本丸に対して猛烈な攻撃を敢行する。面倒な敵は一旦迂回しよう、迂回できるほどの高速を以ても目的を完遂する。これが特徴。

 暗黒星団帝国は確かに電撃戦の側面もあったが、基本的には縦深攻撃と言えるだろう。
 イスカンダル上空戦においても、ガミラス艦隊にとって前衛と言えるデスラー機雷群を砲撃しつつ、ガミラス艦隊本隊への攻撃に加えてさらにスターシャ宮殿にも攻撃を加えた。規模が小さい為電撃戦と見分けがつかないが、勝利条件のみが明確であるが攻撃内容が全体に対するほぼ均一な猛打である為、縦深攻撃といっていいだろう。
 地球制圧戦においても、縦深攻撃は健在だった。地球にとって前衛である各惑星に置かれた基地に対してハイペロン爆弾によって攻撃を加えて沈黙させ、更に地球の市街地を攻撃、続いて司令部にも攻撃を加えた。これらは連続的かつ同時刻的な攻撃であり、さらに出撃してきた無人艦隊に対し、無人艦隊そのものへの攻撃と同時にコントロールセンターに対する攻撃を敢行して踏みつぶした。この一連の攻撃形態はソ連に見られた縦深攻撃といって差し支えないだろう。


 マスキロフカというのも暗黒星団帝国は取り入れている。解りやすく言えば、軍事的欺瞞であり、自軍の動きを敵に悟られないように偽装なり攻撃なりを行う事だ。
 まさに、デザリアム星の地球偽装だ。アレは視聴者も含めてびっくりだ。多分、大人の事情というか、白色彗星であれだけやったのだから、これぐらいビックリを入れ込まないと映画として成立しないだろうという事なのだろうが――ある意味、ソ連っぽさを増す結果となった。

 

 

 暗黒星団帝国は艦隊戦力を充実させているように見えて実はたいしたことなく、むしろ単なる砲火支援程度にしか考えていなかったと説明できる。
 残念な艦隊運用も、あくまで地上戦の成功のために考えられたものであり、驚異の学習という事もあろうが、初めから地上戦の可能性の低かったガミラス/イスカンダル戦と初めから地上戦を念頭に置いた地球制圧戦とで艦隊の動きが全く異なったといえよう。
 中間補給基地であるとか、浮遊要塞の配置であるとかは仮に地球に逆侵攻を受けた場合の縦深攻撃対策として40万光年の長大な距離に点々と置きうる限りの戦力を置いた、と説明できる。

 基本的に暗黒星団帝国の艦隊運用が残念であるという事に変わりはないが。

 

 

 何度でも言おう、暗黒星団帝国は艦隊運用について非常に残念。モデルがソ連であり、それが事実だとすれば、これほどまでにうまく再現できたアニメは少ないのではないだろうか。

 この残念な艦隊運用でもなんとかなるような性能を持った、かなり癖の強い――癖の強すぎる艦艇。一隻残らず癖が強いと評価する事が出来るだろう。仮に接収したとして、彼ら以外に使いこなせる勢力が居るとは思えない。地球を含めて……

 

 

暗黒星団帝国兵器群 中間補給基地――暗黒星団帝国の白い秘密兵器――

 

 ヤマトよ永遠にで登場した白色の巨大要塞、それが中間補給基地である。インパクトは強く、その輝くような白さや無人といった不気味さ、形状等、暗黒星団帝国らしさとらしくなさの混ざる大型兵器である。

 残念ながら劇中では活躍を見せられなかったが、しかしそのポテンシャルは察して余りある強力さだろう。

 

 

 ――データ――

 名称:不明(海外ではSpace Fortress:Crystal Base)
 全長:不明
 全幅:不明
 全高:不明
 武装:不明
 収容艦艇:不明

 

 UFOにシドニーのオペラハウスを融合したような姿で、鋭角的かつ直線に近い緩やかな曲線を多用したデザインである。上面中央にクリスタルの半円ドームが配置され、その後方に角のような大型構造物がそびえたつ。要塞底面、ドームの直下にも大きな膨らみがあり、生物的な印象と無機質的な印象の双方を兼ね合わせた見た目と言える。

 武装は自衛用に限られそれも対空用に限られる。つまり、多数設置されたヘッドの無いコードレスクリーナーみたいな見た目の対空砲台によって賄う。有事に際しては艦を出撃させて迎撃させるのだろうが、そのシーンは見られず。

 基本的に要塞自身の対艦性能はゼロとみていいつまり艦隊の護衛がない状態で攻撃を受ければ即死亡……。

 

 

 収容力の推測
 横幅で行って全体の1/3を占める中央ドーム内に艦艇を収容する。
 このドームは平場と格納庫の二つに格納スペースが分かれ、平場には大型艦を整備し、格納庫には中型ないし小型艦を収容。
 平場には、普通のドックのように左右に低めの壁があって、スペースを区切る。また、アームが一本備え付けられ、これが収容した艦を整備する。劇中では独特の配置で、ずらっと6隻ほどの大型空母が横並びに整備、されに手前にもう4隻、更にて前に巨大戦艦っぽいもう2隻が並ぶソリテイア風な配置計画。更にドーム奥側にも一隻が確認できた。
 格納庫は1スペースにつき2隻を格納。7列のよくわかんない構造物を挟んで左右に2段5列か6列ずつ。更にところどころ巡洋艦一隻が丁度入る整備スペース2段1列がところどころに設けられていたりする。さらにこの格納庫前面部の平場にも整備スペースが設けられており、恐らく総数12。
 描写からして格納できる数は以下の通り――

 推定全長:18キロ
 大型艦艇:約13隻
 中・小型艦艇:24隻強(格納庫)+12隻(平場)
 合計:約50隻

 

 恐らく平場は直径5キロ、格納庫の奥行きを含めるとドーム全体では6キロ程度か。ドームの内、全体が格納スペースなのか……1/4は構造物が占拠しており、これが格納庫なのか管制システムなのかは不明。結局描写がはっきりしないためあまりわからない……。50隻の戦闘艦は、地球の首都や主要都市を制圧した黒色艦隊のサポートに回るのには十分な数であろうことが推測できること。

 ただ、それだと描写と微妙に齟齬が出る。


 50隻で十分なのだが、巨大空母を何隻も平置きで横並びに出来るというのが、格納スペースが広くなりすぎて……もっと載せられるのだ。
 まず、直径が5キロという事は1/4円周でも4キロぐらいは確保できる。あの7列の不明構造物に2キロ円周を取られたとしても半円で6キロぐらいは格納スペースに換算できるだろう。という事は1ブロックを護衛艦2隻ないし巡洋艦1隻を格納するスペースを300メートルと仮定すると、1/4円周で10列ぐらいは確保可能だ。つまり箱として20個、半円だけで40個。残りを重工作スペースとして格納庫ではないとして計算しても――巡洋艦20の護衛艦60隻ぐらいは格納可能という計算になる。これに加えてプラス20隻ほどの護衛艦ないし巡洋艦を平場にも格納可能である為、全体として中・小型艦は100隻となるだろう。

 

 仮に巨大戦艦の再設定値を採用した場合は3倍で1スペースは600メートル、1/4円周は12キロ、ドーム直径は15キロ――全体で18キロだろう。
 巨大空母中心なのだからまあ、その格納数は変わらない。一方で格納庫の数は15列は確実。もっと隔壁を薄くして20列を確保しても問題はないだろう。合計で半円格納個数は30から40列の60個から80個となる。護衛艦巡洋艦は3倍では横幅がつっかえてしまうが、倍程度であればそれぞれ200メートル強と400メートル強になるから、十分格納できる。故に……巡洋艦20の護衛艦80隻ないし巡洋艦40の護衛艦160隻の巨大艦隊を格納可能となる。更に30の平場置きをプラスすると130隻、或いは40隻をプラスして240隻。

 再設定値
 全長:54キロ
 大型艦艇:約13隻

 中・小型艦艇:100ないし200隻強(格納庫)+30ないし40隻(平場)
 合計:約143ないし253隻

 

  これならば方面軍を格納する名実ともに中間補給基地と言えるレベルに成長できる。仮に、失ってしまったならば大惨事だが。

 

 


 再生産機能の有無
 あるのかないのかは不明。一部、作画ミスなのか何なのか主砲をのっけた白い艦っぽいのがあったりする(一番最後の方のシーン)。あれを建造の最終段階に進んだ艦とすれば、工場機能を持っていると説明することが可能だろう。
 ドームの塔状工作物側半円を工場機能に充てる、或いは工場機能との接続部とみても格納スペースの容量が十分である為、問題はないだろう。さすがにドーム下方の基地自体の底部ドームに関しては、工場機能なんてものがあったらエンジンだの基地の能力自体が確保できなくなってしまうかもしれないため、ここはエンジンぶ等なのだろう。構造物に関しても警戒のための構造の一つなのだろう。やはり再生産能力があればドーム後半部を当てるというのが妥当だろう。
 ドームの“クリスタル”部はそれなりに防衛能力があるのだろう。何せショックカノンの砲撃を受けて粉砕はしなかったのだから。無論、全く無力ではあったが……。

 

 

 運用事情

 全長は推定18キロ、新宿を中心にすると東が亀戸、西が吉祥寺の手前。北は赤羽、青物横丁辺りが範囲に収まる。かなり巨大だ。さらに、再設定を加えた場合は54キロと非常に巨大。なんと、新宿を中心に東は習志野、西は八王子。北はさいたま市に南は浮島インターチェンジまでの範囲が収まる。


 おそらく、無人ほぼ無人であると考えていいだろう

 都市帝国のように民族存亡がかかる拠点ではないし、都市衛星ウルクの様に都市の一部が浮上したわけでもない。純粋に軍事目的から建設、係留されているのだから一般人が乗っている必要性はない。軍属もそんなに多くいる必要はない。
 もっと言えば、暗黒星団帝国の民族事情からすれば――人員を確保できていない可能性が十分ある。というより、人員確保する必要性がないだろう。機械に運航を任せればそれでいい。

 仮にヤマト側が第一波攻撃でエネルギー網ないし通信網を破壊したり、或いは強力なジャミングを行った場合は、当然運航に幾らかの支障が出よう。仮に人間の反撃が一歩遅れれば、それだけコスモタイガー隊の攻撃の被害が広がるという事。敗北の可能性としてはこの程度か。はっきり言って、それだけの事と切り捨てられるようなレベルの危険ではないがしかし後方にあって前線を支援する任務からすれば、元来中間補給基地が攻撃を受ける想定はあまりないだろう

 

 ぼろっかすにヤマトに負けてしまった理由は、地球全土を掌握したという報告の後、警戒を一段落としたという可能性に求められるだろう。気が緩んだタイミングであれば、仮に少数の人間が運航していた場合、ワンテンポ反撃が遅れても不思議はないだろう。あるいは、地球人類の体を移植するための施設ななどを新設し、そのシステムのせいで過負荷がかかって警戒システムの運用に支障が出たとも考えられる。

 苦しい説明であるのには間違いないが、あり得ない話ではない。

 

  カンタス航空72便急降下事故の様に警報システムに問題が内包され、最悪な形で発露した例。あるいはラウダ航空004便墜落事故の様に、小さな不具合が決定的かつ構造的に不可避な操縦系統の不具合を引き起こしてしまう例。スパンエアー5022便離陸失敗事故のように全部ダメダメだった例。

 システムの誤認だとか、色々残念なことが重なってエグゾゼの直撃を受けた〈シェフィールド〉、図体がデカくてだけではないが色々重なって自爆ボートを回避しそこなった〈コール〉。

 

 様々な角度で不具合やミスが生じ、それが一様に非常に危険で大きな損害をもたらすことは十分あり得る。それが言いたかった。

 

 

 劇中の活躍 

 残念ながら活躍はない。何せコスモタイガーとヤマトにタコ殴りにされただけなのだから。反撃も鈍く、結局何がしたかったのは不明。多分、逃げようとしたのだろうが、その前にヤマトの砲撃によって消滅。まさに消滅した。

 恐らく、移動基地としては申し分ない能力を発揮しただろう。単なる輸送基地ではなく、簡単な工作艦でもなく、本気の移動基地に他ならない。基地としての能力を優先させたからこその自衛能力の欠如だろう。全ての能力を満たしたそこそこ小型の移動基地など普通は建造できないだろう、自衛能力ゼロは仕方がない面もある。そもそも護衛艦隊を張り付けておけばいいだけの事。

 普通に運用すれば、前線の艦隊を最大限に能力を引き出して運用する根拠地となる。純粋に補給基地として、それも兵器デザインのアウトラインを保ったままの要塞は他に類例を見ない。この要塞は非常に強力かつ貴重な戦力だろう。それを護衛なしに宇宙空間に放り込むって――まずいだろ。

 

 

 暗黒星団帝国の兵器の中で非常に目を引くのがこの中間補給基地である。巨大なのかそうでないのか微妙なラインのゴルバとは違い、明確に巨大。しかもなぜか白色。メリハリという意味では見事。また、デザインも他の艦艇や兵器と共通したデザインが多く、さほど違和感のあるものでは無かった。

 ただ、ヤマトの強さを演出するためのやられメカ、加藤の弟を活躍させるための叩き台の様になってしまったのは非常に残念。

 

 

 

暗黒星団帝国兵器群 ゴルバ型浮遊要塞――廉価機動要塞――

 

 ゴルバ型浮遊要塞はグロータスに率いられ、7基集中投入された大型要塞である。その能力のほどは判然としないが、自動惑星ゴルバの恐怖を覚えているヤマトクルーや視聴者にとって、非常に恐ろしい存在であったことは間違いない。

 

 

 ――データ―― 
 型名:ゴルバ型
 類別:浮遊要塞

 全長:1080メートル
 直径:630メートル
 武装:空間重魚雷9門、上部速射ビーム砲多数、上部速射ミサイル多数

 

 ゴルバ型浮遊要塞の概要

 全長から言えば自動惑星ゴルバの拡大版であるが、戦闘ヘリの搭載はナシ。あの巨大砲もナシと……事実上の廉価版そんな高速移動しない要塞で援護してくれる艦載機が無いっていったいどういう事だよ。背景の明るいイスカンダル戦と違うからであろうが、どうにも内部も暗い印象。しかも空間重魚雷の発射機構は旋回不可能な可能性がある上に、自動開閉式になっていない可能性もある。結構、武装の質が低い
 火線は自動惑星ゴルバの蛍光黄緑と異なりパープル。また、ミサイル発射帯と速射ビーム発射帯は分けて配置されている模様。前者の方が位置的に高い模様。

 

 特に再設定が必要ない事は自動惑星ゴルバの記事において述べた通りである。が、ヤマトなども再設定を加えたため、これらにビジュアルを合わせるならば、単純に倍をする必要が有る。

 つまり――

 全長:2,160メートル
 直径:1,260メートル
 武装:空間重魚雷9門、上部速射ビーム砲多数、上部速射ミサイル多数

  と、デケェんだか小せぇんだかわかんねぇ全長となる。母艦機能を保有する必要がない故、自動惑星以上に大きさは何とでもなるから話の座りが悪い。

 

 

 戦略決戦兵器:空間重魚雷
 直径50メートル、全長189メートルの超巨大な空間重魚雷がコイツの目玉。
 ガトランティスのミサイル艦の全長にミサイルを含めなかった場合の破滅ミサイルと同等の巨大さである。再設定値も、ミサイル艦の再設定最小値の破滅ミサイルの大きさと同格だ。エグイほど大きい
 容積にして約37万立米に上る。これは非常にざっくりした計算だが、物凄く空間重魚雷と似た見た目の核爆弾のB41(容積5.14立米)の全長50倍、容積的には71984倍ほどとなる。


 このB41は最大25TNT換算メガトンの出力を誇のだが――単純計算してはならないが、1250TNT換算メガトン=1.25TNT換算ギガトン容積的には1799610TNT換算メガトン=1.79TNT換算テラトンは予想の範囲内となろう。太い上、元の基準が大出力である為、破滅ミサイルの最大予想原作設定値での出力を大幅に上回る。再設定した場合の最小値の破壊力と同等であるから。恐ろしい。
 これが9本。あまりにも巨大な全長である為、恐らく、次弾装填は不可能だろう。出力総数としては11.25TNT換算ギガトン、容積的には16.11TNT換算テラトンが見込まれる。原作設定値のゴーランド主力艦隊の破壊力とほぼ同等だ。

 

 仮に再設定値を用いれば直径100メートルの378メートルの容積296万7300立米となる。この場合はB41の100倍(容積的には577295倍)ほどとなり、出力も2500TNT換算メガトン=2.5TNT換算テラトン級(容積的には14432375TNT換算メガトン=14.43TNT換算ペタトン)となろう。容積を見た場合、ゴーランド艦隊全力の7倍の出力相当となる。
 同じように9本であることを鑑みると、22.5TNT換算テラトンの容積的には129.87TNT換算ペタトンとゴーランド艦隊全力の10倍の出力を誇る

 

 劇中では7基が出撃、ヤマトを迎撃した。部隊の総出力=63本分の攻撃力を計算すると――
 約77TNT換算ギガトンないし約112TNT換算テラトン、再設定を加えると約164TNT換算テラトンないし約903TNT換算ペタトンの範囲が見込まれる。
 要は、最大でゴーランド艦隊全力の80倍ほどの爆発力を内包した要塞群がヤマトに襲い掛かったという事になる。

 

 反物質であった場合、重量は原作設定値で4万トン強の再設定値で16万トン強を見込む。要塞1基当たり16万トンないし144万トン。すべてを反物質とした場合、惑星破壊を見込める量の概ね1/25相当となる。ロータスの部隊全力であれば、総数は112万トンないし1008万トンと惑星破壊可能な重量の1/3弱と相当肉薄可能
 実際には装甲部に相当な重量を割かれるからもっと出力は低くなるだろうが、それでも惑星に打ち込めば近くはボロボロになるだろう。

 仮に反物質を主力とする爆弾であれば、1基でも惑星を制圧する圧力には十分なるまして集中運用すれば現実問題として惑星消滅の危険が目前に迫る。降伏に向けた交渉は非常に容易になろう

 

 結構問題なのは予備弾がない事。
 ゴルバにとっての空間重魚雷はモスラにとっての鱗粉と同じ。非常に強力で相手を容易に圧倒できる反面、いっぺん使うと再度の使用は事実上不可能。だから、ここぞというタイミングで使わなければ、むしろ劣勢に追い込まれてしまう。複数基が同一空間に展開している状況ならばこのデメリットは十分低減可能だが、単独では中々に使用が危険。

 

 

 極めて高い危険性
 さはさりながら、これだけの出力の魚雷を抱えている事はある意味でリスクを抱えているともいえるだろう。つまり、内部で事故が起きればそりゃ誘爆するだろう。

 こいつの場合は、1本でも暴発すれば大惨事不可避。最悪の場合、残り8本まで一気に誘爆してしまうだろう。1基が全損すれば――集中配置された他の要塞が誘爆する可能性は十分ある。

 劇中であったように7基全部が誘爆する可能性もなくはない。1基が爆発しても危険なのに、それが2基ほとんど間を置かず爆発したのだから……加えて、ゴルバを形成する装甲板があちらこちらに飛び散るのだから、それで損傷する。損傷からエネルギーが流入するという可能性もあるだろう。


 ロータスはこの危険や誘爆の可能性を理解していたのか――実は疑問

 グロータスが発射命令を下した12本のプラス盾にされた要塞に内包された9本、攻撃が成功していた場合は合計21本の空間重魚雷が――それも、要塞の動力炉まで巻き添えにして爆発していた可能性が高い。要は惑星の約1/9が吹き飛ぶようなエネルギーがあの一点に集中していたのだ。これは危険
 もしかすると、ロータスにとっては自動惑星ゴルバの経験を踏まえた控えめな攻撃という認識があったかもしれないが、全然控えめではない。しかも、ヤマトを吹き飛ばしてしまえば波動エンジン内のエネルギーが炸裂してしまいかねないのだが……あの男髪型に気を取られたのか危険性がわかっていなかったらしい。

 

 

 弱体化疑惑
 ものすごく弱い理由は――自動惑星以上に特化した対エネルギー兵器性能を持たせたため説明しておこう弱体化というより、根本的に愚かな描写のおかげでなんだかダメダメになったという方が……妥当だろう。大体、艦載機が削られている時点で要塞砲の射程外への攻撃手段が全くないのだから、あまりまともな設計ではない。自分で自分の身を守れないのだ。


 何とか整合性を持たせるならば自動惑星ゴルバとガミラスの戦闘の際、ガミラス急降下爆撃隊が決死の突撃を試みた。これはおおむね戦闘ヘリやミサイルによって防がれたが、一部機体はゴルバに直撃した――ここから暗黒星団帝国が教訓を得たとすれば可能性は二つ。

 一つは、敵ミサイル兵器の接近はゴルバの重火力で十分迎撃できる。最悪、ヘリは削ってもいいかもしれない

 もう一つは、多少ミサイルを撃ち漏らしたとしても要塞が大気圏内でも機能できるようにするための密閉構造と分厚い装甲板だけでも十分機能し得る。


 これらの教訓を得た場合、ゴルバに対エネルギー兵器の防護性能を強化させるという考え方は十分理解できるだろう多分届かない敵の実体弾攻撃より、直撃の可能性の高いエネルギー兵器をかわす=無駄の削減とリソースの効率的活用だ

 最強と思われた自動惑星もイスカンダルの爆発という巨大エネルギーには抗えなかった。また、宇宙にはデスラー砲やそれ以上の強力な兵器が存在すると知れば、これに対策を立てるのは当然。その結果、対弾性能はそこそこにして、エネルギー兵器にのみ焦点を当てた防護を行った。デザリアム星もこれと同じ事情としても、不思議はない。

 味方が攻撃に利用する極めて狭い範囲の波長のみが通過可能で、それ以外を阻害する磁界なりを利用した偏光シールド。表面の塗装が到来したエネルギーの波長のほぼすべてを反射、或いは熱に変えてこれを即座に放出。これらを兼ね備えてエネルギーなり粒子なりの波の側面を重点的に叩き潰す、という方法がゴルバの防護の基本だろう。これを浮遊要塞ではより方向性を強化した他方で実体弾はゴルバという巨大質量物体を維持するための構造ですでに十分敵に対しての強度が保てるという判断し現状維持

 要は――改修を後回しにされた〈HMS フッド〉みたいに、ゴルバ型浮遊要塞が実体弾に対する対策を後回しにして設計されたという事。

 が、波動カートリッジなどという、暗黒星団帝国にとってはとんでもない兵器が登場してしまう。これではそもそもの前提である実体弾の威力が大した事無いという部分と相反するし、暗黒星団帝国の天敵である波長のエネルギーを有するためダブルで危険。そしてその危険が現実のものになった。

 期末テストとかでたまにこういうことあるよね

 

 

 とはいえ……空間重魚雷のハッチを閉め忘れたのは非常に愚か。これはストーリー上というか尺上のご都合主義と言わざるを得ないだろう

 大きさから考えて、要塞内部で製造する他は先込め式以外考えられないからハッチが意識して閉めなければならない――であったとしてもだ。あの重要部ハッチの締め忘れは話にならない。

 擁護し様がない


 波動砲やショックカノンに対する防護を徹底して、場合によっては内部にも一定程度防護塗装でも施したのかもしれないが、実体弾の直撃で簡単に粉砕されてしまった。というのは話が通るが、そもそもハッチを閉め忘れんじゃねぇよという点には全く反論できない。

 お粗末にもほどがある波動カートリッジ弾で粉砕されてしまったこと自体は、別にご都合主義でもなんでもない。だが、ハッチの締め忘れが、問題。これはご都合主義と言わざるを得ない

 

 必死こいて史実で類例を探してみれば……
 肝心なタイミングで観測員が留守してた駆逐艦コール〉とか、もっとひどいハッチの閉め忘れで沈みかけたインドの原潜〈アリハント〉、吸排気システムからの海水侵入でバッテリーを失ったアルゼンチンの潜水艦〈サンフアン〉。

 非常に単純だが重大なミスや欠陥によって喪失に至った軍艦はまま存在する。

 

 にしたってやべぇ凡ミスであることには違いない。

 正直、私もこじつけていて――スタッフのあらすじの書き方のテキトーさに閉口していた。自動惑星ゴルバが強すぎて、だからと言って極端に弱くしてどうすんだよ……。

 


 劇中の活躍
 グロータスの配下として7基が出動、カザン率いる黒色艦隊の攻撃を受け、迷い込んだ空間にてヤマトを迎撃した。

 が、砲撃がヤマトにいまいち通じず、沈黙を差せる程度のみ。決定打を欠いたグロータスはしびれを切らし、空間重魚雷を以て撃滅を図った。が、通じず。反対にうっかり閉め忘れたハッチに波動カートリッジ弾が直撃、誘爆して全滅するという非常な失態を演じた。最早醜態に近い。

 

 

 ゴルバ型浮遊要塞は、普通に考えて自動惑星ゴルバの大人の事情な弱体バージョンという表現が一番しっくりくる。敗北の仕方も情けなく、ヤマト迎撃のために出撃して、満を持して戦闘を開始した大型要塞にしては――あまりに盛り上がりに欠けた。

 合理的な説明を加えようと思わなければ、全く持って非合理的な描写頑張って説明を加えても、根本的な部分で残念極まる描写によって説明の努力がくじかれてしまう。このゴルバ型浮遊要塞の残念な扱いというのがヤマトよ永遠にという作品の全体的な満足度を押し下げる要因になった。

 と説明せざるを得ないだろう。

 

暗黒星団帝国兵器群 巨大輸送艦――優秀で不明な大型艦――

 

 巨大輸送艦はヤマトよ永遠にの冒頭付近、暗黒星団帝国の奇襲作戦時に地球連邦首都上空に姿を現した。真っ黒なカラーリングと、真っ赤な差し色。極めて不気味でな姿の不明な大型艦艇である。

 この艦の輸送力によって地球は大変な苦境に立たされることになった。

 

 

 ――データ――

 艦級名:不明
 全長:不明(1,650メートルか550メートル)
 全幅:不明(500メートルか163メートル)
 全高:不明(550メートルか158.4メートル)
 武装:不明


 ガマ口的な艦首、のっぺりした……リモコンのような外観である。

 艦底部艦後部にインテークらしきものがあるが、これが降下兵用のハッチ。高さは3メートル、幅は5メートルほどか。1ハッチにつき一人ずつ一列で合計4ハッチ。艦容は4ないし5対1の割合でさほど細くはない。

 フィンっぽい何かが艦前方の真ん中に1本、後方に2本設置されている。艦首部底面は円形の盛り上がりが両舷端にあるが、何かは不明。また、艦底央部に円形ハッチがある。上面にも突起があるらしいが、劇中では描写ナシ。

 特に名称について細かい設定はないらしい。一方海外ではPlanetary Assault Ship〈Invader〉と呼ばれている模様。惑星強襲揚陸艦ってかっこいい響きだが、クラス名は侵略者と捻りがあるのかないのか微妙なライン。

 

 

 全長の推測
 描写から推測すると、兵員降下用のハッチを考えると幅は30メートルが妥当と思われる。無論、私の目測が大惨事という可能性は非常に大きい為、余裕を持たせて倍ほどあっても問題ないだろう。が、設定値として世に言われている幅ではない。

 よって、全長も150メートルか倍の300メートルぐらいが妥当であろう。高さは20メートル弱から50メートルほどか。
 設定値の方が圧倒的に大きい、珍しいパターンだ……

 

 

 巨大輸送艦・その輸送力
 収容・輸送力は不明。
 降下兵と戦闘爆撃機とパトロール戦車を多数収容しているとみられる。数は不明。また、掃討三脚戦車も恐らく輸送しているだろうが――数は多くない模様。
 パトロール戦車は全高8メートル、掃討三脚戦車は54メートルらしい。が、描写的には多分――0.7倍ほどが妥当と思われる。ただ、掃討三脚戦車は胴体部はどう見積もっても脚部の1/3ほどしかない故に計算上は高さが14メートルほどまで圧縮可能。パトロール戦車も、どう考えても6メートル前後だろう。


 だが、描写のままではどう頑張っても〈おおすみ〉から〈ボブ・ホープ〉や〈ワトソン〉程度の範囲に収まる。これらは概ね300名の兵員を載せられ、〈おおすみ〉は戦車18とトラック38+αを、〈ボブ・ホープ〉や〈ワトソン〉は合計1000両。6層も収容甲板があり、露天だって可能。普通、車両甲板は6メートル程度だろう(写真からの推測)であるから、これらを鑑みる。

 〈おおすみ〉を基準に考えると甲板は1層がせいぜいだろう。ここにパトロール戦車を載せ、ウェルドックを掃討三脚戦車用に使い、描写に忠実な計算では――

 パトロール戦車18両
 掃討三脚戦車2両
 戦闘爆撃機1機
 兵員300名

 ぐらいとなるだろう。輸送艦としては割としっかりした能力を持つ計算。

 他方で〈ボブ・ホープ〉や〈ワトソン〉を基準にすると、層を合併して3層500両=1層150両前後へ。これを前提とすると――テキトーに計算してトロール戦車80両、掃討三脚戦車15両、戦闘爆撃機8機、兵員300名ぐらいを見込む。貨物輸送艦というより揚陸艦だろう。収容可能な物資からして、そもそも揚陸艦だが。

 


 設定値を元に計算すると――
 1層を戦闘爆撃機用に、2層目をその物資補給用に。恐らく横5列、必要かどうかは別として200列弱を見込む。高さは40メートルは確保。
 3層目を掃討三脚戦車として10列70列でこれは戦闘爆撃機収容に互換性を持たせるように高さ40メートル程度としておく。
 パトロール戦車は4層目に収容し、50列200列ほどの配置を見込む。高さは20メートルで十分だろう。
 兵員は出来るだけ多い方が有利なため、1層丸々を兵員用にして3000名ほどか。都市制圧は相手のやる気によって大幅に危険度が判るが、激戦を見込んで3倍の9000名を、同じ分だけを兵員用の装備として確保すると高さは床を除いて60メートルほど。
 床は装甲や構造を鑑みて5メートルほど、板としては10枚ぐらいか。全てをひっくるめると、250メートル。簡単な整備ないし再生産等の工作艦としての能力を持たせるとすれば、残りの容積のうち半分を供出できるだろう。大して速力であるとかが必要な運用はされていないため、これらの想定から洩れた分の容積をエンジンに回す。

 

 全長:1,650メートル
 全幅:500メートル
 全高:550メートル
 武装:なし
 収容力:戦闘爆撃機・通常1000機(最大1500機)/掃討三脚戦車・最大700両/パトロール戦車・1000両/兵員・9000人

 

 投入する輸送艦の数にもよるがはっきり言って、半分でも構わないと思う。半分でも十分降下部隊は高い戦闘力を持った部隊として機能するだろう。

 設定として流布されている中の最小値であるとすれば、これらの数値がほぼ半分か1/3弱ほどとなる。戦闘爆撃機200機/掃討三脚戦車150両/パトロール戦車250両/兵員4000人ぐらいを目安として挙げられる。

 極めて強力というか、強力すぎるほどの輸送力をもつ艦艇といえるだろう。1キロ超えの巨体のキャパシティというかポテンシャルはスゴイ

 

 

 劇中の活躍+α
 劇中に登場したのは1隻のみ。上空に滞空していただけで特に何かを能動的に行ったわけでは無い。そりゃ兵を降下させたが、艦として何か攻撃を行ったわけでは無い。出番はそれだけである。短い

 

 運用として予想されるのはまず太陽系圏内の全ての基地を沈黙させ、さらに降下地点のはるか上空より兵を下ろして艦は出来るだけ敵の攻撃圏外に置いておく。仮に首都の防衛機能をほぼ封殺出来た場合は直接降下し、より速度を速めた輸送活動を行うのだろう。

 うん、輸送艦ではなく揚陸艦。機能からし揚陸艦としての任務を良く遂行できるような構造になっており、これは結構関心する。他方で、自衛能力の如何に関しては描写にないのだから、測りようがない。多分、低い方だろう。

 

 1隻だけの登場ではあるが、艦隊に編入されているのが1隻だけとは考え難い――どうなんでしょうか。相当高空から降下兵が首都上空にものすごい数降りているため、多分結構な数が地球に来航していると思われる。

 1個都市に対し、直接降下が1隻、上空待機が2隻ほど、地球連邦主要都市の50ほどを攻撃しようと思えば――150ほどが見込まれるか。仮に、大型の数値を採用した場合は……1都市1隻で十分だろう。

 しかし、描写が少なすぎて投入する定数がいまいち推測できない。無念。

 

 

 

 描写に従うと、驚くほど微妙な能力であるが――原作設定値はかなり大型を採用されているため十分な能力を確保可能。むしろ、描写が足かせになるから珍しい輸送艦とうたっておきながら揚陸艦としての側面が強いが、この手合いの艦はヤマトにおいては珍しくない。しかし、ガトランティス輸送艦より一段高まった有機的な運用が可能な揚陸艦に仕上がっているといえるだろう。

 艦艇として結構ポテンシャルもあり、詳しく描写してくれれば暗黒星団帝国軍という組織自体を深く考察する上で好材料になったはずだ。だが、残念ながらほとんど描写がなく、ワンカットのみの登場となってしまった。非常に惜しい

 

暗黒星団帝国兵器群 巨大空母――悲運の大型空母――

 

 

 巨大空母は劇中ほんの少しだけ登場した艦艇である。

 活躍しないまま撃沈されてしまった哀れな戦闘艦なのだが、これが意外にもそこそこ詳しい設定があったりして作品中の立ち位置として興味深い。ある意味、幅や全高の端数の値まで設定されながらこの扱いというのは哀れともいえる。

 そんな艦艇を今回は考察したい。

 

 

 ――データ――

 艦級名:不明
 全長:480メートル
 全幅:429.8メートル
 全高:163.3メートル
 武装:3連装主砲4基(右舷並列2基、左舷並列2基)
 搭載機 :戦闘爆撃機

 搭載機数:不明

 

 おおむね巨大戦艦に近いが、艦体のど真ん中を滑走路としており、そのため左舷側に艦橋を配置している。艦底部には第3艦橋的なものが付いているが、利用法は不明。滑走路を挟んで両舷艦体には自衛用の火器が据えられ、これは巡洋艦と同等の火力を有するものと思われる。

 艦名やクラス名などは特に設定されておらず、そもそも大して画面に登場して居ない。一方で海外では〈Harvester〉つまり収穫機とか刈取り機などという空母に使うにはあまりに不気味な名前を貰っているらしい

 

 

 搭載機数の推測
 困ったことにナスカと同じデザイン。つまり、格納部分がおおむね両サイドしかないという事。しかも搭載する戦闘爆撃機は全長60メートル、高さ10メートル、幅53メートルの超大型機。あのデスバテーターよりデカい


 滑走路は恐らく幅は120メートル以上。故に両サイドは合計360メートルであるから、片舷180メートル。高さが微妙なラインで50メートル程度か。
 これらから計算するに、片舷につき格納庫内は横に最大3列の3段に縦に最大7列が予想される。つまり63機、合計126機である。ただこれは方形であった場合の話であり、片舷につき12機分のスペースは欠損するし、更に12機分のスペースが実際に使用できるかどうか怪しい。故に通常は78機、最大102機となる。

 

 全長:480メートル
 全幅:429.8メートル
 全高:163.3メートル
 武装:3連装主砲4基(右舷並列2基、左舷並列2基)
 搭載機数:常用60機+補用10機
 搭載機種:戦闘爆撃機


 積みこむ機体が大型である為必然的に機数が少なくなるが、しかしかなり大型であるし、割合に常識的な機数の空母といえよう。

 燃料等の搭載スペースは元来積みこめるであろうプラス30機分の格納可能スペースを利用することで、数回の燃料なり武装なりの補給が可能になるだろう。また、中間補給や輸送艦が近い範囲に存在しているため、艦自体は爆撃機発進の安全かつ快適なプラットホームを提供できれば、それで十分とも考えられる。
 思ったより積めた。

 

 別に必要ないのだが、巨大戦艦とヴィジュアルを揃える為に3倍すると――
 全長:1440メートル
 全幅:1289.4メートル
 全高:489.9メートル
 武装:3連装主砲4基(右舷並列2基、左舷並列2基)
 搭載機数:常用180機+補用30機
 搭載機種:戦闘爆撃機

 と、非常に強力な戦闘力を有することになる。

 

 

 

 艦の運用

 運用方法は巨大戦艦とは違い、敵火器の射程圏外での活動を前提とし、集中運用による航空戦力として比較的攻撃的な運用になるだろう。敵艦隊への攻撃や敵拠点への攻撃、或いは大機動部隊に対抗する防空ないし奇襲的航空戦力。


 防空をこれだけの大型艦を集中出来れば完璧に近いだろう。自衛は周囲に配する護衛艦に任せ、本艦は速やかな戦闘爆撃機の発進に努める。

 攻撃側に回るには画面に映ったのが3隻、全体では概算で……10隻かそこらだろう。全部送り出す可能性は低いだろうから、仮に地球側の航空戦力・艦隊戦力が強力であった場合消耗戦になってしまいかねない。しかも民族の未来をかけた戦いとも言えるため、出来るだけ確かな勝利を目指したいだろう――だとすれば、やはり奇襲以外に方法はないだろう。結局航空戦力による奇襲は行われなかったが

 奇襲だったら5隻でも十分すぎる戦力であり、敵を粉砕することは可能だろう。かのプロキオン方面軍であっても、この巨大空母が集結し防空を担う艦隊相手であれば、撃滅するのは容易ならない。奇襲をかけられた場合、ヤマト2のような展開にならないとも限らないだろう。

 それを、暗黒星団帝国側が奇襲側として引き起こすのである

 

 と、色々と述べたが……まあ、おそらく、敵拠点への制圧的攻撃というのが一番妥当
 戦闘艦によってあらかたの大戦力を粉砕し、しかる後にプレアデスやガリアデス、輸送艦搭載機にって行われる空襲――で決定的効果が薄かった場合、後から前進して大量の艦載機を以て当該地を殲滅する。という運用。

 護衛艦艇の能力不足や、この艦をあまり数が用意されていない点も鑑みると、艦隊決戦ではあまり能力を発揮できないというか、自衛火力の無さを考えると非常に不安である。反撃できないレベルに敵を粉砕し、しかる後地上を殲滅する。というのが一番安全な運用だろう。特に対地球戦闘においては地上戦を非常に重視した暗黒星団帝国であれば、地上占領を支援する存在というのは当然必要になるだろう。


 ソ連なんか地上戦に全てを賭けて、海空全ての戦力は全てその支援に回るというプロットがあったし、アメリ海兵隊も海軍に強力な火力支援の出来る戦闘艦を求めたりと地上戦に対する強力な火力支援・爆撃支援は非常に重要なものであることは間違いない。
 この巨大空母はそれを提供することが第一の目的となるだろう。

 

 

 武装の脆弱さ

 困ったことに、この艦には12門の巡洋艦クラスの火砲しか自衛火器がない。

 絶望的とまではいわないが、大型艦艇の接近に対しては無力。仮に戦線を突破され、艦載機隊が破れた場合は護衛艦が捨て身の援護をしつつ退却する他ない。

 また、極めて珍しい事に、この艦は横方向に対する攻撃に非常にもろい変な配置をするから、円盤の強みを活かせていない。おかげで横方向へは3門、うまくいって6門しか向けられない。数パーセントとはいえ、横を向くと的が大きくなってしまい、わずかに被弾の可能性が高くなる。反対に正面方向へは12門を全て向けることが可能で、自軍の巡洋艦2隻程度の火力を確保可能。ガミラスのような小型艦艇が主力の勢力愛でに対し、正面で戦えば――多少のアドバンテージが確保できよう。

 が、これ以外の武装が全くないらしい。非常に問題。どうやって接近する小型艦艇や艦載機を撃ち落すつもりだったのか……やはり護衛艦に犠牲になってもらうほかないのであろうか……。

 まあ、後方での前線の下支えなら、そんなに敵と遭遇する機会もないのだから、自衛火器も無きゃ無いでいいのかもしれない危ないけどね

 

 

 劇中の活躍

 劇中の活躍はない。派手に誘爆し、姉妹艦共々炎の塊になったのみ。本当にコメントのしようがないほど、活躍がない。描写もなかった。無念

 

 

 幸か不幸か、これらに対抗し得る地球の巨大航空戦力はガトランティス戦役ですべて失われてしまっていた為、初めから出撃する機会があり得ようはずも無かった。暗黒星団帝国が比較的慎重で巧妙な戦略を立てて敵と対峙するというその性格付けには非常に役に立った。

 ただ、それは二次創作であるとか考察して専門家ぶりたい人間にのみ有用であり、劇中においてはまったくのかませ役であった。