旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

暗黒星団帝国軍艦艇の特徴

 

 勢力として2度、ヤマトと戦った暗黒星団帝国。その艦艇の特徴――無論、見た目も特徴的だがその中身についても考察したいと思う。

 

 

 武装配置

 火力が正面方向に対して強力というのは特徴的。円形であるのだから艦橋の周りにぐるりと回して配置しても問題は大してないはずだが、出来るだけ前方に集中させる。
 合理的に考えれば――敵と対峙する際に奇襲ないし強襲を成功させる為、ほぼ全火力を正面に集中させた。とすることが出来るだろう
 高いステルス性を鑑みて自身が奇襲を受ける可能性は低く、仕方のない不確定要素として切り捨てる。しかし、奇襲や強襲は絶対に成功させなければならないし、反撃を受けた場合の艦隊崩壊を考えると、緒戦に全力を尽くさねばならない。だから集中的に前方に火力を集中させた。これは暗黒星団帝国の戦闘スタイルであれば仕方のない事だろう。

 

 

 防護性能

 暗黒星団帝国艦艇の最大の特徴はそのステルス性と耐久性耐久性ゼロとはいえ、護衛艦巡洋艦程度でも強力なステルス性を発揮する。一方で戦艦やゴルバ系の兵器はステルス性も高い上にその耐久性は非常に強力


 だがその源は何かは語られておらず、不明

 仮に磁界などによる通常空間との隔絶であれば、多少は敵のエネルギー攻撃を通してしまうかもしれないが、減衰はできるだろう。他方で磁力なりを防護の中心に据えているのであれば、大型艦艇でなければ出力が確保できないとしても不思議はない。

 塗装なり装甲そのものが反射ないし熱として吸収するという素材であれば、放熱さえうまくいけば十分防護とステルス性を両立できるだろう。塗装なり装甲なりが敵エネルギー兵器を吸収ないし反射であれば、これは小型でも少なくともステルス性だけは確実に確保可能だろう。特に吸収であれば。ただ、この場合も艦が小型すぎると全体が熱を持ってしまうという可能性があり、大型艦に比べれば性能にかなりのダウングレードという事があっても仕方がない。逆にキャパシティの大きい大型艦になればなるほど効率が上がり、耐久力が上がる。

 

 二つ予想を示して見たが、どれか一つに絞る必要は恐らくないだろう艦のキャパシティに合わせて片方を採用したり、両方を組み合わせているとしても別に不都合はないはず。また、三次元的なあの曲線も物理的な攻撃に対してあるいはレーダー波の反射に関して役に立つ可能性がある

 つまるところ、装甲の分厚さではなく装甲の形状や仕方などの要素がむしろ防護に大きな意味を持っているのではないかという事。


 

 他方――陸上兵器や艦載機であれば、塗装なり装甲なりで防護を行う方式は、これは相手が戦車や対空砲台等の威力のたかが知れているものを相手にすればいいのであるから、採用して不思議はないがキャパシティが少々小さいのが気がかり。

 だから艦よりも装甲が相対的に厚い傾向にあると考えて不思議はないというか、道理にかなうだろう。磁力に頼るとエンジン出力を高める必要があり、余計に大型化して使い勝手が悪くなる可能性もあるし。

 

 

 艦隊の傾向

 艦隊建設の方針は昔のソ連海軍に近いだろう。
 ロシア帝国は曲がりなりにも攻勢海軍であったし、シーレーンの重要性というのもちゃんと理解していた。だから航洋型の装甲巡洋艦を多数建造した。制海権の確保というのも当然重視しているのだから出来るだけ敵よりも優勢な戦闘艦を建造できるように心がけていた。ウシャコフ提督やマカロフ提督のような優秀な人材もあり、政治に翻弄されたとはいえその時々に最善の選択を行ってきた日露戦争後の壊滅的な打撃も、その負けた理由をちゃんと考察し、対策を練って海軍再建を試みた。

 

 他方で赤色艦隊だ。
 確かにポチョムキンの反乱を見るに、強力な軍艦を手元に置くと万が一反乱を起こされた際に非常に具合が悪い。自分がやったことだもの、その有効性=危険性は理解していただろう。また、維持には金がかかる。挙句、陸戦=パルチザン戦争の経験を活かした海軍再建を目指した主流派などの存在もあり――極めて海軍のレベルが低くなってしまった。

 つまり、完全に内海、それも沿岸のみの海軍にレベルが引き下がった。そもそも、海軍は陸軍の作戦を支援するためだけの存在と言うような認識が中心であり、艦隊整備もパルチザン好みな奇襲戦向きな潜水艦や魚雷艇などにとどまり、大型艦はその地位を大きく落とした。


 スターリンとかいう派手好きなおっさんのおかげで一時は大型艦が再度日の目を見ることになったが、戦争では大した活躍はできず、彼の死によって一発お蔵入り。

 フルシチョフ時代、もう完全に海軍の地位は地に落ち、陸軍の支配下に置かれたも同然だった。しかも、すでに欧米に大きく水をあけられ、その差を縮めるのは非常な困難を伴うほど海軍力自体が低下。小物=潜水艦で大物=米空母を狙うという、やって出来ない事はないがそれって大国の海軍がやる事かな?と問いたくなるような有様。
 こんなレベルでは当然同盟国を支援などできるはずもなく、キプロス紛争の前後に外洋海軍へと変貌を遂げるべく準備を開始した。金を突っ込んで、突っ込んで大量建造。それでもパルチザン時代から脱却できず、何だか潜水艦をやたらに整備――1990年代に入って財政の動揺からこのツケを海軍は払わねばならなくなる。
 結果、艦の大量退役が進み、反対に新鋭艦を造るのが困難になって旧式艦を使い続けるという指揮官としては頭が痛くなるような状況が現出してしまった。

 結局のところ、ロシアにおける海軍は大陸海軍であり沿岸がその主戦場

 


 暗黒星団帝国の艦隊もそれに近い。艦隊は軍の中では単なる大型火力支援以上の物ではないのだろう。イスカンダルや地球への侵攻理由や行動から帝国が必ずしも拡大期にあるかといえば微妙であり、だからこそ艦隊という存在するだけで領域を制圧可能な戦力よりも惑星という点でしか制圧できない陸上戦力の能力拡大に傾倒。艦隊を置かない、艦隊を置けるだけの予備戦力がないから陸上戦力を支援したり、それぞれの補給路を守る為に要塞を各地に配した。

 だからどの指揮官も艦隊戦が意外に弱く、だからやたらに要塞が大きく多く配置していたと表現できる。


 地球侵攻に際して完全に地上制圧部隊が主戦力として稼働していた。艦隊は艦隊を封じる為だけと言っていいほど活動範囲は狭かったし、ヤマトだからというのもあるがその進軍阻止には全力を尽くして動いた。これは陸上部隊にはできない事である。他方で艦隊はヤマト迎撃のために発進して陸上部隊は置いてけぼりにして――つまり、陸上部隊単独で戦闘続行可能と思われていたと説明もできよう。

 それ以前のガミラス戦においても、艦隊の活動拠点形成では無くあくまで動力源の確保が目的でガミラシウムの違法採掘に臨んだ。拠点形成であれば端っからゴルバを前進させておけばもっとスムーズに事が運んだだろう。それをしなかったという事は、自軍側惑星に駐留する軍同士の相互援助をベースとした――いわば宇宙帝国にありがちな領域支配では無く、地に足付いた領土支配がベースであろうと考えられる。


 領域でなければ、惑星そのものに防護を施せばいい。敵襲を受けた場合、移動式の要塞をいくつか設けて、緊急的に出動する艦隊を先兵として相互援助的に迎撃を行う。ある意味地上戦的な考え方だといえる。
 正直、規模としてゴルバや中間補給基地だけであの艦隊の補給が恒常的に出来るかといえば大いに疑問であり、自国とその周辺以外の地域における活動はほとんど考えていない言えるだろう。

 

 

 無人艦隊というの可能性
 全般として暗黒星団帝国は艦隊の運用が下手。下手過ぎる。毎回逐次投入で、しかも奇襲以外できない。奇襲以外成功しない。奇襲されたらむしろ弱い。まさにパルチザン的戦闘で、添え物としての艦隊。
 地球占領戦において、対艦戦闘を考えれば輸送艦を繰り出すのはあまりに早すぎるタイミングでの投入というのも恐ろしい。仮に巨大であればそれだけ的になりやすい、しかもその性質上は火薬庫と表現していいだろう。これをいくら地上戦力を制圧しつつあったとはいえ、後方に艦隊戦力が存在していることが分かった上で投入はうかつ。結局黒色艦隊の強力な火力によって地球の無人艦隊は壊滅したが、仮に島が黒色艦隊迎撃を一切せずに地球へと艦隊を向かわせた場合――せっかく降下した戦力はボロボロにされて、地上戦がいたずらに長引くことになっただろう。作戦が成功しても長引いているのだから、話にならないが。
 素人でもわかる艦隊運用の素人っぽさというのが暗黒星団帝国の特徴といえよう。 何なら艦隊というものを理解していなかった可能性だってある。陸戦で重要な縄張り、それを構築する要素という考えにしか到達していなかったという事。

 

 仮に、無人艦隊が数的中心であるとするならば無理もないかもしれないし、合理性もある程度は発生するだろう。やられたらやられたで構わない、ただの物という考え。

 暗黒星団帝国が仮に人口の減少等に苦しんでいたのであれば、選択肢として無人艦隊という選択肢は十分あり得る。
 人口減少がありながら、人員拡充が必要な戦力拡大を図る無能も世の中には存在するが、普通は省力化に舵を切る。省力化を前提とした戦力拡充を図るのが当たり前。
 無人艦隊=ドローンというのは使い勝手がいいし、高いが人間が死ぬよりかはずっと安上がりである。まして現在から200年後であり、暗黒星団帝国自体が地球より相当進んだ機械文明である事を鑑みて、現在の地球がドローンに対して抱える悩みは概ね解消されたと考えてもいいだろう。であるならば、人間が操艦する戦闘艦と同等か、場合によっては上を行く信用度と戦力を有するかもしれない。しかもいくら消費しても、人員的な減少は一切ないのだから安心して無茶な戦闘に十分使える。頭の悪い力押しの攻撃であったとしても、後から予備戦力を持ってくればいいだけ。最悪、残骸を回収したしかるのち、中間補給基地やゴルバなりの艦内設備で補修なり共食い整備なりをすれば戦力の再補充は可能だろう。
 
 艦隊を構成する主力が無人艦隊であれば、これは余計に雑な艦隊運用をしたとしても不思議はないだろう。まして、消耗品であるからなおの事雑に扱う可能性がある。防護柵の損傷に目を配り交換はしても防護柵自体が傷つかないように戦闘する必要はない、それと同じ。艦隊を元々消耗品に近いと考え、しかし出来るだけ人間を消費しないための、代替品としての無人艦隊。ならば、元々の雑に扱う考え方に拍車がかかっても不思議はなかろう。
 この簡単に消費しても痛くはない戦力およびその認識が、成功する確度が高くメリットも大きいが同時に消耗度の高い戦力運用に繋がる。

 

 

 暗黒星団帝国の艦隊戦術

 縦深攻撃はソ連を代表する戦術である。敵前面を広範囲に叩きつつ。敵前面部だけでは無く敵の後方まで攻撃し、敵の全力を味方全力で踏みつぶす。これが縦深攻撃であり、陣形としては当然縦長になる。後方戦力も攻撃するため、最終的には敵拠点に対して包囲殲滅戦へ移行するのが常である。大規模攻撃、波状攻撃、連続攻撃、同時攻撃――単純だが意外に複雑な要素のある戦術。
 反対に敵は馬鹿みたいに前方に前衛を置き、バカみたいに後方に戦略的拠点を置く嫌がらせ=攻撃の長距離かを相手に迫る事も可能だが。

 電撃戦は敵の強力な前縁部を一点突破、前縁部が迎撃や反撃に移る前に全速で前身。これによって敵の戦力を上回る攻撃速度を実現、敵側予備であるとか本丸に対して猛烈な攻撃を敢行する。面倒な敵は一旦迂回しよう、迂回できるほどの高速を以ても目的を完遂する。これが特徴。

 暗黒星団帝国は確かに電撃戦の側面もあったが、基本的には縦深攻撃と言えるだろう。
 イスカンダル上空戦においても、ガミラス艦隊にとって前衛と言えるデスラー機雷群を砲撃しつつ、ガミラス艦隊本隊への攻撃に加えてさらにスターシャ宮殿にも攻撃を加えた。規模が小さい為電撃戦と見分けがつかないが、勝利条件のみが明確であるが攻撃内容が全体に対するほぼ均一な猛打である為、縦深攻撃といっていいだろう。
 地球制圧戦においても、縦深攻撃は健在だった。地球にとって前衛である各惑星に置かれた基地に対してハイペロン爆弾によって攻撃を加えて沈黙させ、更に地球の市街地を攻撃、続いて司令部にも攻撃を加えた。これらは連続的かつ同時刻的な攻撃であり、さらに出撃してきた無人艦隊に対し、無人艦隊そのものへの攻撃と同時にコントロールセンターに対する攻撃を敢行して踏みつぶした。この一連の攻撃形態はソ連に見られた縦深攻撃といって差し支えないだろう。


 マスキロフカというのも暗黒星団帝国は取り入れている。解りやすく言えば、軍事的欺瞞であり、自軍の動きを敵に悟られないように偽装なり攻撃なりを行う事だ。
 まさに、デザリアム星の地球偽装だ。アレは視聴者も含めてびっくりだ。多分、大人の事情というか、白色彗星であれだけやったのだから、これぐらいビックリを入れ込まないと映画として成立しないだろうという事なのだろうが――ある意味、ソ連っぽさを増す結果となった。

 

 

 暗黒星団帝国は艦隊戦力を充実させているように見えて実はたいしたことなく、むしろ単なる砲火支援程度にしか考えていなかったと説明できる。
 残念な艦隊運用も、あくまで地上戦の成功のために考えられたものであり、驚異の学習という事もあろうが、初めから地上戦の可能性の低かったガミラス/イスカンダル戦と初めから地上戦を念頭に置いた地球制圧戦とで艦隊の動きが全く異なったといえよう。
 中間補給基地であるとか、浮遊要塞の配置であるとかは仮に地球に逆侵攻を受けた場合の縦深攻撃対策として40万光年の長大な距離に点々と置きうる限りの戦力を置いた、と説明できる。

 基本的に暗黒星団帝国の艦隊運用が残念であるという事に変わりはないが。

 

 

 何度でも言おう、暗黒星団帝国は艦隊運用について非常に残念。モデルがソ連であり、それが事実だとすれば、これほどまでにうまく再現できたアニメは少ないのではないだろうか。

 この残念な艦隊運用でもなんとかなるような性能を持った、かなり癖の強い――癖の強すぎる艦艇。一隻残らず癖が強いと評価する事が出来るだろう。仮に接収したとして、彼ら以外に使いこなせる勢力が居るとは思えない。地球を含めて……