旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ストーリー考察Ⅳ バーの一件、懲罰案件

 

 

 ヤマトⅢは乗組員の成長も描こうとしていたといわれる(単なる又聞き、未確認情報)。故に銀河系大戦の推移から言えば、枝葉といって差し支えないエピソードが度々差し挟まれていた。

 例えば第3話の南十字島の相原君と昌子さんとの出会いと危うくの逃避行。総統の内面的成長を表す第4話の御前会議でヒステンバーガーが命拾いするシーン。あるいはヤマトの火星圏での戦闘訓練、第5話ラジェンドラ海王星寄港から続く第6話の弔い合戦

 これらは東宝怪獣映画に挿入される人間模様・恋愛エピソードと同様で……あった方がいいかもしれないが、無きゃ無いでいいようなエピソードあんまり長くなると冗長になり、短いと脚本家の腕によっては挿入が無意味になる

 反面、効果的に短く挿入した方が重心を引き付けることが可能になるからチャレンジしたくなる気持ちもわかる。特に、ベースとして軽く見られがちな対象年齢低めな作品ほど、この手合いのエピソードに力を入れて格を上げようとする方向性が見られ――人間エピソードの投入について、シンゴジで頭を抱えたとされる庵野監督の気持ちもよくわかる。

 

 

 人間模様は作る側も、本気の製作者集団であれば頭を抱えて悩みに悩むだろう。他方、見る側もその苦悩が何となくわかるが同時に、うっとうしい。製作者側と感性が決定的にずれている場合は悲惨で……要は、人間模様は非常に考察しずらい要素である。 

 ヤマト2の考察時に第2話第3話のヤマトの改装や古代と雪の絆第7話第8話の空間騎兵隊との軋轢第14話のラストから第16話にかけての島とテレサのロマンスやテレサの決意第17話テレサのテレザートを以ての白色彗星侵攻阻止第18話のヤマト艦内の様子第23話第24話の古代と雪。そして第25話第26話のヤマトクルー周辺の描写を全くないし、ほとんど触れなかったが、それと同じ対応。

 よくよく考えれば、結構重要エピソードである第22話の都市帝国による月の砲撃と地球連邦の降伏にかけても……十分な考察とは……。

 

 という事で今回は色々すっ飛ばしてヤマトⅢ第7話、アルファ星第4惑星の一件に続いて、第8話の太陽冷却作戦とバーナード星の山上一家のストーリーもさっくり考察したい。

 

 

 

 第7話、アルファ星第4惑星

 アルファ星第4惑星はキャップの話だと白金族元素であるオスミウムが取れてちょっとした賑わいだった星らしい。オスミウムが地球の現代で指し示すところのオスミウムであるならば、これは少し話が変

 

 多分だけど、仮にアルファ星第4惑星が地球と似たような環境や成分構成や歴史をたどった惑星であるとすれば、オスミウムが単体で取れる可能性は低い。もっと言えばオスミウム自体はそこまで利用価値(利用価値と値段は必ずしも一致しない)の高いものではないのだから、コレをこれを目的に賑わうほどの大量採掘をするという事が正直合理性があるとは思えない。

 そこでオスミウムに焦点を当てると――天然ではオスミウムという金属はあの希少元素イリジウムと共にオスミリジウム、イリドスミウム、イリドスミンを形成する。しかも、その化合物はオスミウムの発見の歴史からわかる様に、プラチナと共に産した。という事実が判明する。

 つまるところ、アルファ星第4惑星がにぎわったのは本当はプラチナが第一の目的では無かったのか幾ら技術が高まったとしても、ほんの数年程度で鉱脈を全て掘りつくという可能性はゼロといっても過言ではないだろうにもかかわらず、なぜアルファ星第4惑星が廃れたのか

 

 無論、オスミウムイリジウム非常に硬い金属で波動エンジンの部品に使えるという事もあるかもしれないが、決して宇宙艦隊の縮小期ではない当時の地球においてその需要が低下するとは思えない。しかし、惑星を枯渇させてしまうほどの宇宙艦隊の建設は完成していない。これではますます廃れる理由はない

 

 

 一方で、プラチナが目的なら――実は第4惑星鉱山は、”廃れる理由”以外存在しない

 まず、工業的にプラチナは触媒として煤煙処理などに使われるが、23世紀の地球はガミラス戦役で地下生活=排気ガスが致命傷になりうる生活を経験している。恐らく、排ガス処理よりも、そもそも論的に排ガスを出さないエネルギー抽出を行っていると考えて妥当だろう。多分、あの透明なハイパーループの中を通っている車はリニアとかの電気自動車の類だろう。磁性体としても、恐らく採掘が海が干上がったことで容易になるであろう希土類に劣る。つまり、23世紀の工業においてプラチナはいらない子……

 他方で貴金属などの面――金やダイヤモンドと同じで非常に資産として価値の高いプラチナ。23世紀の物質文明の境地においては、あの白く輝き銀よりも扱いが楽な金属。これは魅力だろう。人間の贅沢に対する根本的欲求・追及からすれば、プラチナが23世紀においても価値が維持し得る余地がある、といえるのではないだろうか。

 であればこれは実は産出量の人為的低下する可能性が非常に高く確実となるのだ。

 

 先に述べた通り、金や銀やダイヤモンドなどの希少物質は資産としての価値を認めらている。この資産形成に関わる物質は、その重要性ゆえに意図的に市場の流通量を操作されているという――話があるらしい。という程度にしておいてください(怖いから逃げを打ちました)。

 つまるところ、どっからどう考えても、金や銀並みの扱いを受けるプラチナだけがバカスカ掘って市場に投入する必要性も合理性も妥当性もない。これを市場に大量投入となれば、少なくとも地金業者やジュエリー業者や投資会社が黙っていないだろう。企業同士で血を血で洗う戦争が起きていても不思議はないし、あんまりにも価格が暴落すれば地球で業界内で自殺者が激増していても不思議はない。

 

 もしアルファ星第4惑星でプラチナラッシュが発生し、市場にあふれることが確実となれば――

 全地球の業界人を挙げて阻止する他ない。阻止する以外の選択肢があるなら教えてほしいレベル。私が関連業界人だったら絶対に阻止すると、自信を持って申し上げる。

 恐らく、この惑星は宇宙開拓省の管轄だろうそうであれば、現代のように連邦の族議員が圧力をかけて宇宙開拓省なり、資源省(あるかどうかは知らない)なりを操作し同惑星のプラチナラッシュを強制終了させるとしても不思議はない。非常に危険なかほりのする話に容易に転じる。防衛軍だって様々な利用法のあるプラチナ、ある意味で軍事物資である貴重品を民間市場にドバドバと流されるのを傍から見ていて気分はよくないだろう。

 つまるところ地球上にプラチナラッシュを望む権力者は一人もいないのだ

 

 では世論はなぜ動かないのか? この手合いの談合じみた話は世論の反発を非常に強く受けるはずなのに。

 理由は想像しやすい――ガトランティスの直接攻撃や暗黒星団帝国の占領を受けてもなお、地球市民は火星やその他のスペースコロニーより地球を選ぶ。そして他の惑星については、地球の勢力圏内部の本来はくまなく知っておきたいはずの情報なのに、入手できる情報が又聞き程度の〈らしい〉程度の内容。にもかかわらず、特に疑問を抱かない。

 それじゃ世論は動かないだろう。基本的に世間というものは、問題の重要度より話題度の方に比例して盛り上がるものだし。

 さらに言えば、ヤマト2で発覚したように、地球連邦政府は結構情報操作をうまくやっている。この地球連邦政府の手にかかれば、余程気骨のある雑誌や新聞社でなければこれは暴けないだろう。

 

 

 

 さて、話はバーでの一件に移る

 一言、あれはマズイ。単純に監督不行き届きで救いようがない、更に大甘処分で――どうやらヤマト艦内は相撲協会よりはるかに風通しが悪いらしい

 

 初めに現場に遭遇した副長彼は新米クルー相手にはヤマト副長以上に航海班長だし先輩である。ガミラス戦とガトランティス戦とウラリア戦を経た歴戦の勇士としての風格を全力で見せつけてやればよかったのだ。そもそも論として、喧嘩を止めることは当然の事であり何ら問題はない。止めて当然。

 つまり、全てにおいて、新米クルーは島副長の言葉に従うべきだったのであり

 仮に、それで止まらないというのは、これはクルーの方が悪い。すべてにおいてクルーの方が悪い。露呈するかもしれない指導力の無さ以前の問題に、規律に従わない新クルーが悪いのだ。必要に応じて、戒告どころか、なんなら不名誉除隊でもしてやればいい。

 しかし、ちゃんと止めなかった事で副長にも責任というものが出てくる

 

 さらに古代艦長が途中から現れるその際に彼は静止を躊躇ったが――判断としては、わからんでもない。後に二人が語る様に、この問題の落としどころを見付けるのは非常な困難

 島は友人だし、ここでクルーとの信頼という副長との格の差を見せてしまえば島は存在意義を失う。だが、止めるべきだった。最低でもバーの主人の安全を確保してやるべきだった。

 しかし、折衷案というものは存在しえただろう。

 島副長は航海班長を兼務したままだし古代艦長は戦闘班長を兼務したまま。つまるところ、それぞれがその班長権限において乗組員を押さえつけたってよかったし、それで体面は保てたはずだ。航海班は航海班で結束していたし、戦闘班は戦闘班で結束していた。故に、それぞれの班長が同時に静止すれば十分喧嘩の終了が見込めた

 にもかかわらず、笑ってそのまま……。だから、話がおかしくなる。頭がおかしいぞ、二人とも。そしていつの間にか始まった戦闘に彼らは飛び出していった。

 

 おい、貴様らバーへの謝罪はどうした? 割れた窓やグラスやイスは補償されたのだろうか。これは防衛司令部の責任で何とかせざるを得ない。一体いくらになるだろうか。

 少なくとも騒動を大きくした雷電やキャップは懲罰決定だろう――と思ったがそういった描写はなく、バーナード星域で活躍しているのだから不問に付されたらしい

 それはダメだってば。最悪、喧嘩が起きるまでは何とか擁護可能。しかし、それ以降のバーやかかわった人物に対する関連の描写全てがダメ。

 もやはご都合主義の範疇すら超えてしまっている

 

 

 そもそも、ヤマトに二人の副長というのがまた疑問というか演出マターだって意味がねぇもん

 副大統領とか副知事が二人というのはあるが……どっちにせよ、結局は誰が上位であるかを明確にする必要は有る。いざという時の権限の継承というものはコレ、明確にしなければならない。

 また、軍艦というものはすでに細分化された組織であると考えられる。これを再統轄する長職とその次席というのが艦長と副長である。それをどうして副長を二人も設けて役割を再分割しようとするのか、どうせ中途半端になるのが判っているのに意味の分からない――救いようのない描写だ。

 また、島君が一体今までヤマトの作戦や戦略的運航の何に貢献したというのか非常に疑問である一方、真田さんに副長を任せることによって彼に不必要な仕事まで任せてしまっているのではないのか。ヤマトの機能を充実させる観点からすれば、すでに古代君が序列をすっ飛ばして艦長に就任している以上、島君単独で副長を預かるのが合理的な展開だっただろう。

 ゆえに、二人の副長というのはまったく、効果がない上に妥当性に欠く演出。残念無念、また来週。

 

 

  

ストーリー考察Ⅲ ヤマト名物・派閥闘争

 

 

 ヤマト名物はいくつかある。例えば誘爆、時間軸のすっ飛ばし、数値の明らかなズレ。そして忘れてはならないのが、必ず起きる派閥闘争である

 ヤマトⅢ、第2話の話である。

 

 

 以前の闘争

 ガミラス戦役においては、これは反乱という形で起きてしまった。つまり、藪らイスカンダル残留派と古代ら主流派。まあ、期限までに帰還できるかわからない、帰還できても地球が再生できるかわからないのだから、人類種を残すという観点からはわからないではない行動。

 雪を拉致った、気味の悪い行動ではある――14万8000光年の長大な宇宙空間を孤独ともいえる過酷な環境を過ごしてきたのだから、多少狂った行動を取るのも仕方がない面もあるのかもしれない。もっと言えば、艦内の意思統一がうまくいっていなかった――艦長代理の威厳の問題もあるにはあった。

 

 ガトランティス戦役において各所で地獄のような闘争が繰り広げられ

 さらばの方では明らかにヤマトクルーが冷遇されていたが、長官の存在を鑑みるとこれはガミラス戦役従軍者に対する冷遇という表現が可能だろう。つまり、ヤマト派と新地球艦隊派とが結構入り組んで闘争を繰り広げていたのである。

 他方でヤマト2においては白色彗星の脅威評価やヤマト出撃にまつわる明確な意見の衝突。この派閥闘争が更に発展し、何と1個エピソードとして描かれるに至る。つまり、第18話の土方艦隊司令部派と参謀らの防衛司令部(防衛会議)派の指揮権をめぐる対立だ。忘れてはならないのは、シリーズ通して底流として存在する防衛司令部内部の長官ら艦隊派と防衛会議・連邦政府派の対立、これも見逃すわけにはいかないだろう。

 

 防衛会議関連の政治的闘争は論外として、しかし防衛司令部と艦隊司令部の対立は秩序と緊急事態における実際的な問題の対立である為、起きてしかるべし。少なくともその指導者である藤堂長官(当時は個人名なし)と土方総司令の底部では共通していても立場が違うために互いに相いれなかった。

 これはいづれ到来する危機として事前に対応策や法律の内容を調整しておくべきだったが、多分に政治的対立も背後にある為当事者同士ではどのみち調整はつかなかっただろう。ただ、政治がどれほど地球の命運を真剣に考えたかは不明だが、防衛司令部内では、あの参謀ですら戦略的観点からの発言に終始した。その意味では方針は違えど目的は一致出来ていたと言える。いわば、まともな人間同士がまともであるがゆえに起きた闘争。

 

 小さなところでは空間騎兵隊とヤマトクルーの対立が見られたが、これは親分同士の話し合いで割合簡単に片が付いたから、まだかわいい方。あと、人間教育派と技術革新派の対立もあったが、あれは土方総司令の存在のおかげでいい感じのラインに落とし込まれた。

 

 

 幸いな事にウラリア戦役では派閥闘争的な対立は――残念、ないわけでは無かった

 有人艦艇派と無人艦隊派の対立である。ガトランティス戦役当時の防衛会議の明らかに利己的で無意味な輩のかましに比べれば、無人艦隊派にも有人艦隊派にもそれぞれ大義名分があった。人間を根幹とし、そのサポートを機械が行うとすべきという有人艦隊派、人員が確保できないのだから無人に頼らざるを得ない無人艦隊派――この闘争の発生は合理的だろう。

 縄張り争いのようなことになれば大惨事だが……。

 

 

 そして今回の闘争……

 はっきり言って最も醜い類の、嫌な闘争である完全に学閥とかその類の闘争で、地球人類の未来を守るという議会に全く欠けた内容だ。どこにも正義などありはしないという救いようのない闘争

 

 地球連邦大学宇宙物理学部長サイモン教授はいち早く太陽の異常増進を観測・確信した人物である。一方でその対立相手となった黒田博士は太陽エネルギー省観測局長――つまり、地球連邦政府の内部の専門家である。テクノクラートという事だろう、日本出たと言えるならば気象庁長官に近いか。

 問題は黒田博士が政府のパワーを利用して地球連邦大学総長を味方につけてサイモン教授を追い出した事。地球連邦首相、あのおっさんやりやがったな……大学は常識で考えれば呼び方はどうあれ文科省や教育省の管轄だろう。この類の省の管轄権を利用して大学に圧力をかける、その上でサイモン教授を追い出す。しかも自分の観測データや学説といったものを援護するための行動であるのだから擁護はできない。

 

 このような緊急の事態においての学閥闘争は現実世界にはあまりないやってる場合じゃないもの。仮にあったとしても在野対アカデミー程度で大規模な闘争は見られない。普通、学閥闘争は平時に行う事で――だから緊急時に行われたサイモン教授対黒田博士の闘争は一切擁護すべきではないし、しようがない。

 

 

 現実世界の学閥闘争で有名なのは――東大対京大だろう。東大の白鳥庫吉から始まる邪馬台国九州説と京大の内藤虎次郎から始まる邪馬台国畿内説。内藤湖南による唐宋変革論も、日本国内で唐と宋で変革が起きたという点においては一致しても……後に宮崎市定ら京大系の中世から近世への転換という学説と、周藤吉之ら東大・歴研系の古代から中世への転換という時代区分論争。

 はたから見ていると馬鹿らしいが、内幕を少しでもみると――大人げないというか、人間ってこんなに醜い……という感想を持ってしまう。そう言う事が実際にあったりなかったり。 「何かがあった」こと以外は全く不確かで、実際とは離れた部分があるかもしれない、見方によっては多少受け取り方が違うかもしれない。そう言ったことに対して大きく見解が乖離し、結果的に何が妥当な見解なのかわからなくなっている。 

 

 学閥闘争に縁がない場合は、政治を思い浮かべて欲しい。

 政治家対キャリア官僚対ノンキャリ官僚、野党対与党。本気で国や国民のために闘っている人もいるが、どう考えてもそうではない人もいるし、単にやる気のないという背任行為をする人もいる

 税と予算で君臨し政治家をも圧迫する最強官庁・財務省、日本を背負う自負・外務省、日本を実際的に守る防衛省、公明ポストで日本の‟血管”を守る国交省、最大官庁・厚労省、かつての安倍政権で屋台骨を務めた経産省、最高格官庁・総務省、司法を司る・法務省、日本の未来を司る・文科省。宙ぶらりんに見えて実は独立独歩・防衛省。更に首官邸という各官庁から出向した官僚が集まる首相の手足が加わり――これらはそれぞれ物凄い闘争を、はたから見てもわかる程に激烈・熾烈・苛烈に行っている。

 無論ワイドショーで語られることが全てではないが、しかし同時に一端を見せている場合も少なくない。官僚の経歴とか、政治家の経歴とか、政策を重ね合わせてみるとこれが意外とあからさまだったりする。

 

 サイモン教授対黒田博士の闘争はこれらに類する、残念な闘争だ

 本質から全く外れた議論に終始しているのだ。挙句、二人の場合は太陽の異常増進が実際に起きているという緊急事態。本人たちは真剣だろうが、遊んでいていい状況ではない。

 

 

 政治下手のサイモン教授

 一見すると黒田博士が悪者に見えるが、実のところ最初に火をつけたのはサイモン教授といえる。黒田博士の逆鱗に触れたのには、それなりに理由がある。彼の政治下手ゆえに、逆に派閥闘争が激化してしまったのだ。

 

 サイモン教授の何が問題って、彼は自分のコネを使ってか大統領に直訴したのだこれは非常にマズイ。他の誰かに報告したのかといえば、黒田博士や大学の動きを考えれば――サイモン教授はあふれる危機感によって、一足飛びに直訴したという事が想定できるだろう

 この直訴はたとえサイモン教授が意図せずとも、「あなたの事を信用していません」というメッセージを大学側や首相あたりに送ってしまったといってよく、ダークヘルメット卿でなくとも頭越しに事態が進むのは非常に不愉快。

 

 さらに事態を悪くしたのはサイモン教授が孤立してしまっていた事である。挙句に彼が頼ったのがよりによって藤堂長官だった事。どちらも最悪の選択だ。

 まず、専門家が専門家として警鐘を鳴らすなら単独で行ってはいけない。同僚や別の同じ分野を研究する仲間に‟検算”してもらうべきだった。そして複数人からの同意を確保し、集団として警告を発する。発起人の国籍が複数にまたがれば、たとえ連邦政府であろうとも影響力を行使しずらかったはず。まず、自身の観測・研究の信頼性を確保し、仲間を確保しておくべきだった。

 次いで、頼る相手は選ぶべきという事。頼ったのが藤堂長官というのが大失敗、だって長官はいい人だけどパワーのある人ではないからだ。ここは一つメディアか、アルファ星第4惑星の様子からして恐らく業務縮小傾向にあっただろう宇宙開拓省、ここに話を持ってくべきだった。前者はセンセーショナルな話題に食いつくか隠蔽のどちらかの反応を示すだろうが、どちらにせよ最初に打ち上げる‟花火”が大きければ大きいほど、メディアの反応は燃焼促進剤にしかならないから好材料。後者は行政組織として官僚組織として当然の反応である権限行使の範囲拡大を望むだろうし、アルファケンタウリでの開拓もあまり上手く行っていないのだから――NASAが時々飛ばし記事かますのと同じように、サイモン教授の観測結果は宇宙開拓省の注目を引くという目的のため、目立つ話題の後ろ盾になるという行動に繋がる。

 その意味ではサイモン教授は闘争に勝つための手順を何一つ踏まなかった。何てピュアボーイ……。

 

 

 黒田博士の場合、大学や政治に深く結びついている人物であろうことが推測される。つまり、いわゆる御用学者。であるならば、自らにとって想定外の異常事態に対して追認する事を幾らか躊躇うのも無理はないし、メンツをつぶされかけたとして復讐のために政治的パワーを使うのも無理はない。政治的パワーは自身のパワーであり学閥闘争における原動力であると同時に予算獲得の大事な手段である、黒田博士がこれを発揮せずにいられようかと。

 残念ながら御用学者は得てして、目の前の事象を政府が望む結論の範囲内に帰結させようと助言を行う癖がある。悪気とか忖度のある無しではなく、政府の政策が妥当な範囲に収まる様にと良かれという判断なのだが……黒田博士はまさにそのタイプの学者だったと言えるだろう

 って――どうしてこんな簡単な予想をサイモン教授は出来なかったのだろうか。これでは学者バカというより、バカ学者と表現せざるを得ない……。

 言っちゃ悪いが、政治力も学者の才能の内である。これはどんな分野の学者であっても同じことで、評価を受けるには目新しい学説の他に個人的な政治力も大切なのだ。だから在野の学者の意見は大して教科書に反映されず、大して重んじられない。

 

 

 サイモン教授は致命的に政治力が無い政治的センスもない、それどころか欠片もなかった。それがゆえに、単純に政治とのつながりが深い黒田博士に完敗を喫したのである。

 サイモン教授の純粋だが致命的な政治下手と、黒田博士の御用学者らしい素直な反応でごく普通の行動の衝突。このあまりに矮小な衝突がゆえに、人類は危うく滅亡しかけた――といっても過言ではないのであるしかも、専門家同士の衝突であり、当然ながら門外漢には手も足も出ない事案なのだから闘争の危険度は歴代MAX

 いやはや最低のエピソードだ。

 何と恐ろしい事か……しかも、構造としては現実世界にも起こり得るのだから背筋がぞっとする。

 

 

 

 

 

ストーリー考察Ⅱ 銀河系大戦拡大・地球に迫る戦火

 

 ひたすら「ダゴンめやりやがったな!」という展開が続くのが第2話以降の話。ダゴンがやらなくていい事をやり、やるべき事を散々後回しにした結果、彼の部下を含めた全員が重大な迷惑をこうむる。

 あのケツ割れ、迷惑至極な奴である。

 

 

 降って湧いたように発生したのがアルファケンタウリの植民地襲撃事件である。突然、偶然に近い形でダゴンに発見された第4惑星が対した理由もなく猛攻を受けた。

 非常に残念なのが、この時の防衛司令部の対応。 

 度重なる惑星破壊ミサイルの飛来――"何か”のせいで地球が、天の川銀河がヤバい事になっている事を身を以て知っているはずなのにもかかわらず、アルファケンタウリ方面に事前に戦闘艦隊を派遣していなかったのだ

 第4惑星自体が基地としてあまり機能しがたいのは仕方がないが、当該方面は太陽系にとっては前庭のようなもの。天の川銀河における戦乱が発生した場合は確実に最初に狙われるのがこの地域だ。反対に、天の川銀河以外からの外敵の襲来に際しては一旦人類を避難させ態勢を整える為にも利用可能。

 アルファケンタウリの植民地は、人類が住み繁栄させるには非常に困難で恒久的な植民地としてはコスパが悪いだが、だからといって防波堤なのだからそう簡単に手放せるようなものではない。まして戦乱が目の前に迫っているのだからここの警戒は差し当たって厚くすべき。

 それにもかかわらず、防衛司令部はあらかじめ戦闘艦隊を派遣することを行わなかった。あの惑星では大艦隊を養うのは難しいだろうが、維持できない部分は“輸血”して何とかしても良かったはず。それをしないで、後であたふたするというのは非合理的と言わざるを得ない。

 幾ら戦闘衛星を多数配備して必要に応じて集結させた判断は良かった。太陽系圏内にある艦隊を即応体制にしていたのもポイントが高い。だが、そもそも艦隊を派遣しておいた方が被害が少なく済んだはずだろうし、不必要に当該地の民間人の命を危険にさらしたという点で非常に問題。

 ある意味では職務放棄に近いと言わざるを得ないだろう藤堂長官、アンタ一体なにしとんのや……

 

 この戦闘は、戦闘そのものには、合理的な部分が多いが、しかしながらあの劣勢。だったら端っから艦隊を派遣しておくべきだったのである。

 幸いなことにラム艦長率いるバース星守備艦隊が、地球防衛軍惑星パトロール艦隊の任務を偶然にも肩代わりしてくれたおかげで被害は致命的にならずに済んだ。

 

 

 

 アルプス上空戦第3話の話であるが――これはこれで恐ろしい。

 突然ワープアウトしてきたダゴン艦隊所属の駆逐艦が威力偵察を強行してきた。しかも、可能であれば一部を占領しようという意図さえ見えていたのである

 この時点で100パーセント、時間の猶予など無い。そうである以上即刻撃ち落す判断をしたのはすっぱりして気持ちのいいものだし、実際的に脅威だったのだから撃ち落しても当然だった、最悪だったのが連邦政府に対して事前にせよ事後にせよ報告しようという努力をした形跡が見られないという点である。

 防衛司令部……先のアルファケンタウリでの一件も含めて、事前に連邦政府、特に大統領に知らせていたとは思えない

 だってさ、どう見ても平時な地球において、事前に取り決めが無いという事が前提になるが、所属不明の不審艦への対処は一旦政治マターとなるのが普通でしょう。政治判断の後、対処する。それが藤堂長官の判断で撃墜もとい撃沈に至った。アルファケンタウリの一件に比べれば頼もしい判断であるが、シビリアンコントロール的にはマズイ。

 更に、連邦政府のその後の動きを見れば……アルファケンタウリもアルプス上空戦もどちらも事後報告をしたとも思えない。連邦政府はボーっと大した動きを見せていないのである。つまり、他国との戦闘が発生したのにもかかわらず、完全に防衛司令部内ですべてが完結してしまっている

 これはシビリアンコントロール的に最低の状況ストーリ-展開的には非常にテンポが良かったが、振り返ってみれば……この一連の流れを当たり前のように描写したのはまずかったと思う。

 

 

 

 ラジェンドラ号の海王星寄港これはアルプス上空戦と同様に、全体としては素直なストーリー展開である。が、細部にご都合主義と言わざるを得ない展開があった。

 第一として、隣接地域であるからワープでうっかり太陽系に到達するのはある意味仕方がない。これ以前のヤマトの描写としてもそんなに齟齬はない。また、ラジェンドラ号が大損害を負っている状況では、ラム艦長としてもあれ以外の動きようがなかっただろう。更に合理的な説明を加えるならば、アルファケンタウリ周辺の植民地を持っているのは常識的に考えれば地球――であるとすれば、敵の敵は味方として友好的な態度が期待できた。だから思い切って最低限の補修を要請した。

 地球側も、ある意味でアルファ星第4惑星の援軍をはからずも買って出てくれたバース星守備艦隊の旗艦――という点まで認識していなかった節があるが、敵意のない瀕死の艦を見捨てるという非人道的で、現状存在する全ての勢力を敵に回しかねない行動よりも、せめてラジェンドラ号の所属勢力ぐらいは友好関係を築くきっかけになれば、これは幸い。

 ゆえに、このラジェンドラ号周りの行動はラム艦長も地球側も含めて不自然・不思議はない。何ならダゴンもアイツの性格から言って、いきなり海王星に攻撃をしなかった=常識的な行動が出来ただけ褒めてあげるべき。

 

 たださ、地球を守るという点において防衛司令部……不作為すぎないか?

 ラジェンドラ号の不可抗力的な太陽系突入――そう言う事があり得るという事は、太陽系に所属不明の艦が接近してきても何ら不思議はないという危険な状況という事が頻出しているという事。実際、どうやら土星でも同様のアクシデントが起きていた模様しかしながら防衛司令部はそのいづれの事例も確認できていない節がある

 だから……どうして防衛司令部は太陽系の守りを固めなかったなぜに頑なに守りを固めない挙句、警戒網すらザルだった。お前ら、惑星破壊ミサイルの進入から今日まで一体何をしていたんだよ。お前ら何のために存在している組織なんだよ

 と、そこに話が戻る。大統領権限がガトランティス戦役後やウラリア戦役後に強化され、シビリアンコントロールがシビアになったという説明もできなくはないが、だったらたった一言でも長官が対応に苦慮するセリフを、大統領が開戦を渋るセリフを挿入すべきだった。

 

 

 そして――最後の最後でなぜか我慢できなかったダゴン君さ、何で第11番惑星域で戦闘を始めてしまうかね

 古代君の直情的な性格も地球が戦争に巻き込まれる要因になった感もあるが主因としてはこのダゴンという男の存在が、地球を無理やり銀河系大戦に引きずり込んだともいえる

 ダゴンの恐ろしさは、終始一貫した目論見の甘さであるこの性質は彼我にとっての脅威であり、敵にとっては無駄な戦闘に巻き込まれ、味方にとっては敗北必至な戦闘に投入され敵にとっては意味不明な攻撃にさらされるという事

 だって明らかに十分な火力を備えていると見た目からわかる宇宙戦艦相手にどうして……しかも航空戦力を含んだ戦力なのである。戦闘の直前とはいえ、事前に近い形でヤマトの手札が見えていた――どうも、味方にとって苦しい相手という事がわかってしまったのである。

 これに対して見切り発車的に攻撃を加えるというダゴンの判断。全く合理的ではない。それに、あのアルプス上空で消息を絶った駆逐艦――あれ探さなかったのかい? ダゴンよ……。

 

 

 このダゴンという男――それにしても愚鈍だ。全部余計な事をしてくれる。

 政治家なら松岡洋右とか軍人なら牟田口廉也やカスター将軍みたいな感じか。徹頭徹尾、都合のいい行動をし、9割方やらなくていい事をやりくさって、たまに合理的な事をして逆に面食らう。運とおもねりと部下の頑張りで何でか結構高官に上り詰めるという厄介さもそこへ加わる……歴史上にも実生活上もそんなに数は多くないが、いないわけでは無い存在

 このダゴンというキャラクターの行動という前提が、各種の無理やりな戦闘のきっかけ=ご都合主義に一定程度「ダゴンだから」という希釈された合理性を担保する

 ヤマトⅢの導入部は実はダゴンを中心として回っていたと言っても過言ではない。彼が居なければヤマトⅢは始まらないし、彼が居ればこそ完全無欠のご都合主義が概ね撤廃されるのだ。

 

 ダゴンに始まりダゴンに終わる。ダゴンによって担保されるのが、ヤマトⅢの導入部である。何とも都合のいいキャラを作ってくれたよ製作陣

 

 

ストーリ-考察Ⅰ-2 太陽観光船遭難――破滅的事故――

 

 

 ヤマトⅢを構成する重要な出来事、それが太陽観光船の遭難である。

 

 

 重大事故

 23世紀初頭、地球人類は何と民間旅行で太陽の間近まで到達できるに至った。太陽観光船は宇宙港を飛び立ち、水星の近傍空間で舷窓に広がる宇宙の脅威を観察できるのである。

 

 しかし、そこへガルマン・ガミラス帝国東部方面軍第18機甲師団艦隊の放った惑星破壊プロトンミサイルが偶然にも接近。猛スピードで直進するミサイルに対し、土門の母親が気づいたものの時すでに遅し。運悪く船内が観光モードに入っていた太陽観光船は回避行動をとれなかった。

 ミサイルはそのままフィンで太陽観光船を破砕し、太陽へと突入していった。

 

 

 古代ら戦闘員を含む人員を観光船の航行ルートに投入して捜索を敢行するも――観光船は木っ端みじんになり、残骸は原型をとどめず、残念ながら遺体は見つからなかった。恐らくは水星の引力に引き付けられてしまったのだろう。

 この事件の直後から太陽は太陽の核融合は異常増進を始める。

 

 

 原因と責任

 原因は以前にも述べたようにコリジョンコース現象加えてミサイルの速度

 軍事船舶ではない太陽観光船では、最高性能のレーダーを備えているとは思えない。また、太陽観光船をひっかけたプロトンミサイルはガルマン・ガミラスが誇る戦略ないし戦術ミサイルであるため、恐らくそれなりのステルス加工はされているだろう。

 この想定が正しければ太陽観光船側は目視以外ではミサイルの接近を感知できなかった可能性が高い

 

 レーダーにミサイルが映らなかったとすれば、最早目視に頼るほかないだが、目視で何とかなるような速度であったかは――大いに疑問

 現代の普通のミサイル程度の速度だとすれば、彼我のスピードの差の大きさを鑑みれば視界を横切る軌道であれば目で追えるだろう。まあ、目で追えたとして、丸腰では何かできるわけでは無いだろうが

 ところが太陽観光船の相手は惑星間を飛翔可能な高速飛行体。訓練されていない民間人の目で追えるようなスピードとは……思えない。挙句、真正面に突っ込んできたのである。船内は観光モードでまったり状態、しかも後方からの接近であるから船長も見張り員も一瞬気づくのが遅れても当然だろう。仮にに気が付いたとして、エンジンをかけて回頭して――とやっている間に結局船尾を破砕された可能性がある。

 太陽観光船側が早くに気が付いたとして、どっちみちミサイルのフィンに引っ掛けられて爆散した可能性が高い

 

 つまるところ、太陽観光船も太陽観光船を運航している会社も責任はないと言って構わないだろう

 

 

 

 太陽観光船側に非が無いとすれば、事故を防げなかった点について、これは防衛軍側に責任があるだろう

 太陽系を全周囲うアステロイドベルトに防衛線を敷いているのにもかかわらず、防げなかった。これは防衛線に大きな穴があるという明確な証拠であろう

 結構前からミサイルが突っ込んできているという事を判っていたにもかかわらずどこにも警鐘を鳴らさず、戦闘艦隊を配置することもせず、雷撃艇での迎撃という中途半端な迎撃態勢これは危険を放置したと言われても仕方がない

 

 確かに、防衛軍はガトランティス、暗黒星団帝国の連続した襲撃を受け、大損害を負っている。だが、しかし、そうだとしても、太陽系圏内の防衛戦力が明らかに手抜きといえるほどのレベルの低さ。あまりに質が低い。

 戦闘艦隊の即応体制は全く構築出来ておらず、結局アルファケンタウリでのダゴン艦隊の襲撃に対してワンテンポ遅れてしまった。アステロイドベルトに配備した防衛戦力もあれだったらブラックタイガー隊の方がまだ信頼がおける程度。警戒網も十分ではなく、惑星を基準にしたものであろう、全く太陽系内部をカバーできていない

 戦時体制ではないから、といっても太陽系圏内を危険にさらしても問題ないという事ではない

 特に地球は妙に攻撃対象に選ばれがちな惑星なのだから、それを鑑みて準戦時体制を平時とし、ガトランティス戦役時のように艦隊戦力のほとんどを結集させた状態を戦時として設定して地球圏の防衛に当たるというのが当然のように思われる。

  これはご都合主義な無尽蔵の戦力を避けたというよりも物語を展開させたいが為の結構無理をして手薄にさせた、ご都合主義的な戦力配置という表現の方が正しいかもしれない

 

 

 手薄な戦力配置を多少、擁護すれば――地球の資源状況なども考えれば多少手薄になるのも道理ではあろう。戦力の欠落を埋める為に配した無人艦隊や戦闘衛星はいづれも大した戦力にならず、敵の奇襲に対する急場しのぎがせいぜい。普通に有人戦力を投入した方が確実という判断になるのも不思議はない。

 だったら無人艦隊の性能を上げればいいだけだが、この教訓が生かされていないのは大いに問題だが、完結編の非省力化傾向の原点回帰への巨視的な結節点としては十分評価に値するだろう。

 それに、平時のシビリアンコントロール用の機構=防衛会議がまだ存在しているのならば、彼らが手続き上の障壁になって効果的な戦力配置への転換に失敗したと説明は可能。この場合、第一に責任を負うべきは防衛会議になり、ひいては最高司令官たる連邦大統領が責任を取るべきだろう。

 

 アメリカやイギリスが最盛期から時代を下って、割と非効率な戦力構成になっている、と言うような現実世界にも割とあり得る話だからこの設定や物語自体は者に構えてみれば何とも不気味なリアリティとも表現できるだろう。

 

 

 

 そもそも論として、ダゴンがちゃんと流れ弾の処理をすれば事故など起きなかった。アイツが一番悪いし、報告をさせなかったガイデルも相当に悪質。

 この事故なくたってヤマトⅢのストーリーは十分展開できたのにね。土門君が可哀想だとは思わなかったのか製作陣よ……。

 

 

 影響

 まず、土門君が大きな影響を受けた。不必要なまでにガルマン・ガミラスに対する敵愾心を抱いてしまった。時折見せる不必要な反抗的態度、発想。大きな問題には発展しなかったが、ついぞガルマン・ガミラスとの心理的和解はならなかった。また、太陽制御に対する不必要なまでに英雄的行動に出がちな心理的効果をもたらした可能性も否定できない。

 一方で地球連邦というものには大した影響が良くも悪くもなかった。事故は事故として処理され、責任の所在は劇中では語られなかった。防衛ラインの強化も行われず、ラストエピソードではベムラーゼ親衛艦隊の太陽系侵入に対して全く反抗できなかった。

 

 

 事故そのものは概ねご都合主義ではないむしろ、あまたある恒星の中でなぜ太陽だけにプロトンミサイルが突っ込んだのか。こちらの方がよっぽどご都合主義で整合性を取るのは困難というか、他の恒星で同様の事故が起きていない時点で不可能に近い

 整合性の点では、オリオン腕周辺域で多数の恒星が核融合の異常増進を始めまくっているという異常現象を調査する。ストーリーの発端とした方がよかったのではないだろうか。

 

 事故そのものはその処理も、航空事故などで見られるように、政治やら何やらのパワーが介入するとこんな感じの結末になるという点で、ある意味ではリアリティがある

 ただ、細かいところでご都合主義であったり、ご都合主義ではないが合理的ではない展開、説明不足な展開が多く見られた。また、土門個人のキャラクターを深く掘り下げる為に必要なエピソードであったのだろうが、大して効果的ではない。

 彼は古代の跡に続く存在としての位置づけを想定していたと考えられるが……その意気込みの割には本編にはうまく組み込めず。挙句に、結果的に古代と土門のキャラがただ被っただけで挙句に揚羽が土門と立ち位置が被ってストーリーが重層化したのではなく煩雑化しただけになってしまった。

 

 申し訳ないが――無きゃ無いでいいエピソードだった。そう言わざるを得ないのがこの太陽観光船の遭難事故である

 

ストーリー考察Ⅰ 地球連邦政府の隠蔽と不可解人事

 

 

 

 天の川銀河局部銀河群に属する直径10万光年、厚さ1000光年を誇る棒渦巻銀河である。地球の属する太陽系はオリオン腕の辺境域に位置し、よって地球から見える夜空はこの天の川銀河の美しい側面図である。

 我らが母星・地球。太陽系は持ちろん、地球は天の川銀河全体のハビタブルゾーンに属しているという事も考えられ、地球の位置取りは天の川銀河の奇跡ともいえるかもしれない。

 

 

 

 太陽観光船の遭難事故

 ヤマトⅢの第一話において太陽観光船の遭難事故が起きた。

 悲しいかな、この事故自体は仕方がない。海の上でも陸の上でもこの手合いの衝突事故はままある。コリジョンコース現象。誰でも被害者になり得るし、誰でも加害者になり得る。だから、かもしれない運転が大切なのである。

 それに、惑星破壊プロトンミサイルが流れ弾になって太陽めがけて飛んでくるなんて普通は思わない

 一連の事が組み合わさった結果、回避に失敗してしまった。これは避けられない事故だったと言わざるを得ない。事故そのものはあまりに不運、責められるべき第一の人間はダゴンその人だ。

 

 ただ、忘れてはいけない当事者の存在がある地球防衛軍

 太陽というエネルギー供給源に対して全く無防備というのは情けない。太陽から得られるエネルギーは太陽系の維持には欠かせない、文字通り生命線であることはガトランティス戦役で経験済みのはずにもかかわらず、太陽系圏内であるのに、防衛上の巨大空白があるとは何事か

 惑星を基準とした防衛ラインの構築であった為、警戒網に穴が出来るのはあらかじめ分かっていた事であるはず。アステロイドベルトであれば太陽系をほぼ小惑星帯である為、ほぼ確実に防げたはずだが――なぜに打ち漏らしたのか。もしアステロイドベルト基地で不十分ならば、要塞なりをおいて戦力の空白を埋めるように努めなければならないだろう。にもかかわらず、防衛軍は何もせず、その重要性を上申している節もない。自宅でボヤが出ているのに、全く関知していない。連邦政府もアルファケンタウリへの未練が捨てきれずにいる

 こいつら、救いようがないぞ……。

 

 それよりなにより隠蔽はまずいでしょう、隠蔽は事故の背景は全く隠され、連邦政府にも知らされず、防衛司令部内にその情報は止めおかれたのである

 シビリアンコントロールというか、軍に対する政治のコントロールが全く効いていない。これ、結構致命的である。

 

 軍と政府の関係性のまずさもあるが、根本として惑星破壊ミサイルの飛来をひた隠しにした防衛司令部――これは最悪の対応だ

 無論、前段階として、連邦政府と連邦大学の間のやり取りやサイモン教授と黒田博士のやり取りなど、地球を守ることが使命である地球防衛軍的に政府が信用できなくなったもの無理はない。こういう時、普通の軍なら反乱を起こす。タイ軍やかつてのトルコ軍やエジプト軍はこんな感じでよくクーデターを起こす。実際的に国民を守っているのは政治家ではなく軍人だしね。

 それをしなかっただけでも藤堂長官、結構冷静というか穏便な対応。うっかり内々に処理する点や、黙ってもおかみに従うなど、ある意味、日本的ともいえる。

 なのであるが――それはそれとして、ミサイル飛来をひた隠しにしたのはマズイ。太陽観光船の遭難事故にも関係しているのではないかと独自予想を立てているというのに、それをどこにも知らせていない模様。実際問題的にアステロイドベルト域まで惑星破壊ミサイルが到達しているのだから……政治が考えなしに首突っ込んでいい事案ではないが、防衛司令部の一部だけで情報を独占するのはいかがなものか

 ヤマト2の時も重大情報を連邦政府や防衛司令部はしれっと、ストという事で適当にごまかした過去があるが、あれと同じ。体質が変わっていない……。まあ、現実の世界でも漢級の領海侵犯や〈広開土王〉によるレーダー照射事件での日本側の動きなど、無い話ではないようではあるが……。

 

 つかさ、惑星破壊ミサイルの射程どんだけなげぇんだよ。

 

 

 

 土門・揚羽の不可解人事

 話題は打って変わってヤマトクルーの人事。揚羽はまあ、アイツは戦闘機乗りとしての才能があったから別にいいのだが、土門は別だ。バリバリに戦闘訓練を積み、しかも最新鋭の訓練を施され、成績も十分な精鋭を何故に炊事係か。炊事係がどうでもいいとかいう話ではない、高度な訓練を受けて優秀な成績を収めた訓練生を、なぜにわざわざ専門外の炊事係にするのかという合理性の話。それも、動機は古代の個人的なモノというのがどうも話の展開からして推測される。

  確かに、人事評価は艦長が口を出して当然だろう。まして土門を立派な宇宙戦士に育ててやろうという兄貴的な――育てようというその意思は素晴らしい。素晴らしいさ。でもね、卒業時の評価を前提として人事の采配を振るうのが当たり前の場面で、全く個人的な感情で配属先を決めるのはまずいって。そう言う事はやってはいけませんって、判るだろうに。

 もはやガミラス戦役、ガトランティス戦役、ウラリア戦役と歴戦の勇士様には常識は通じないのだろうか……

 

 

 異星国家間の大決戦から始まり、重大事故の発生。目くるめくオープニングから始まる設定をガラガラポンした挙句に、妙にリアリティのある隠蔽と、ご都合主義人事。

 ヤマトっぽさが悪い意味で絶妙に感じられるストーリー……という表現しかないだろう。もうちょい、何とかならんかったのか

 そりゃ、お前が修正しろなんて言われたら――降参する他ない。だって、この辺りは根本からしてストーリーの大工事をしなけれなならないから。しかも、変更したらストーリーの根幹を脅かしかねない、結構難しいところであることも間違いないから。

 正直、やって出来ない事はないと思うけど。

 

 

ストーリー考察S 銀河系大戦――物語の始まる前の話――

 

 

 考えてみればヤマトⅢは端っからおかしな話が満載だって、天の川銀河に何十年も前から大国が栄え、そして相争っていたのに全く地球は知らなかったのだ……。今まで様々な外敵と戦い、一時は拡大傾向にさえあった地球が全く外交関係を周辺国と結ぶことすらせず。

 もっと言えば、そんな巨大国家が天の川銀河に成立していたのに、情報が漏れ伝わっていて当然なのになぜ、ガミラスやガトランティスらは不用意とも思える侵攻作戦を展開したのか。

 全く整合性が取れない

  

 

 それはそうと――

 天の川銀河局部銀河群に属する直径10万光年、厚さ1000光年を誇る棒渦巻銀河である。地球の属する太陽系はオリオン腕の辺境域に位置し、よって地球から見える夜空はこの天の川銀河の美しい側面図である。

 我らが母星・地球。太陽系は持ちろん、地球は天の川銀河全体のハビタブルゾーンに属しているという事も考えられ、地球の位置取りは天の川銀河の奇跡ともいえるかもしれない。

 

 

 

 銀河系大戦――物語の前史――

 天の川銀河の面積でいえば1/3を支配するボラー連邦最高指導者にベムラーゼ首相を据えた専制独裁国家である。圧倒的物量作戦、無慈悲にも思える火力の前方投射をもって敵を蹴散らし、周辺諸国をことごとく属国として飲み込んでいった。

 ボラー連邦の領域は本国域に加え、本国との非接続域であるオリオン腕隣接地域までがその影響下にある。

 

 一方で天の川銀河中心部を起点に銀河のおおむね1/3程度を支配下におさめる新興国家、それがガルマン・ガミラス帝国である。民主主義に基づいたタイプの独裁制であり、君主制の側面さえある特殊な政治体をを擁し、根幹たる支配民族ガルマン民族の母星を中心に周辺域をことごとくボラー連邦の支配下から解放し、その勢力を日の出の勢いで拡大する帝国。新兵器や特殊兵器を多数用い、技術力で敵と戦う極めて強力な国家だ。

 支配領域は天の川銀河の中心部を完全に掌握し、さらにマゼラン雲方面の銀河辺縁部にまで拡大中、ボラー連邦との決戦を制すべく果敢に戦闘を進めていた。

 

 

 

 って――これほど天の川銀河が乱れて、地球は全く知らなかったってどういう事か

 今まで散々襲われたのだから、危機管理上あるいは地球人類の生存戦略上どう考えても銀河系大戦を察知して当然。全く関与できなかったとしても、陣営に与することをしなかったとしても、察知ぐらいはしておくべきだった。

 それにもかかわらず、全く知らなかったなんて、あまりにお粗末地球人を守る気があるのか疑問、お話にならないレベルである

 まあ、地球連邦がアルファケンタウリの植民地がに失敗していることを鑑みれば……多少は整合性が取れるか。全然好意的な評価ではないが。

 

 

 

 一方で、ボラー連邦側の描写も気になる

 どこかのパートでも述べたが、暗黒星団帝国の侵攻ルートはおとめ座から地球を結ぶため、天の川銀河のボラー連邦領域ないしガルマン・ガミラス領域を掠めている。どちらかの領域は確実に掠めているつまり、ボラー連邦は暗黒星団帝国の侵攻に関して、全くスルーしてしまったという事になるのだ

 仮に侵攻ルートが自国の領域をかすめたのであれば、黒色艦隊及びヤマトの往来を事実上の黙認してしまった。或いは、実は暗黒星団帝国と外交関係があった。

 仮に攻撃を仕掛けて返り討ちにあったのなら、余ほど脆弱な戦力しかボラー連邦は持ち合わせていないという事。或いは感知できなかったか。

 

 前者であれば、ラム艦長のガルマン帝国に対する認識と整合性が取れなくなる。暗黒星団帝国は少なくともガミラス接触があり、暗黒星団帝国とボラー連邦が接触があったとすれば、多少なりとも情報が流れても不思議はない。だが、そう言った描写は一切ない。後者であれば、天の川銀河覇権国家としてのボラー連邦という姿は誇張されたもの、実際はガルマン・ガミラスと同様に割に最近軍拡を始めた疑似的新興国家という事になるだろう。あの警戒衛星も新設されたものという事になる。

 前者でないとすれば後者の説を取るよりほかなく、後者の説であれば整合性はストーリー展開の整合性は緩やかに取れる。そう、どう転んでも整合性自体は緩やかに取れてはいるものの、どうにもリアリティに欠けてしまう

 天の川銀河の覇権をめぐる二大帝国が、ヤマトⅢのストーリー開始を見計らったように急速な拡大を遂げるだなんて……都合がよすぎる。

 

 加えて、ボラー連邦(バース星)と地球の関係性の希薄さ、この上ないご都合主義

 地球の勢力はアルファケンタウリまで進出しており、もう少し足を延ばせばバース星領域に到達する。実際、撤退のため緊急ワープしたラジェンドラ号以下のバース星守備艦隊はことごとく太陽系圏内にワープアウトした。

 こんな状況で、今までただの一隻も迷い込んだ船はなかったのかね?

 一連の描写は、設定として非常に合理性に欠ける

 

 

 

 実は、銀河系大戦には時間軸の問題も生じている

 後に判明することだが、天の川銀河に戦乱が訪れて25年もうこの時点でおかしい。劇中、23世紀初頭というアナウンス以外に特に時間軸の話はなかったのだが、古代と雪の関係性がさほど進展していない事やクルーが家庭を持っていない事を考えれば、2203年からさほど時間は経過していないだろう。

 ガルマン・ガミラス、その前身であるガミラスは2203年前後にならなければ、ストーリー上は天の川銀河に移動しない。それ以前では天の川銀河に拠点を置く必要はない、或いは不可能な状況に置かれている

 つまり……これではヤマトⅢの時間軸として噛み合わない。これは擦り合わせ不可能。巡礼者の長老が年齢のせいか、心理的な側面からか事実を間違って認識してヤマトクルーに語ったか、ヤマトクルーにも分かりやすいようにかいつまんだ結果事実と異なる話になってしまったのか。

 長老の昔話を切り捨てなければ整合性が取れないのである。

 

 

 

 もっと言えば、21世紀の初め以来着々と侵略を続け、ようやく2199年に太陽系に到達したガミラス帝国が、ガルマン帝国になった途端、急に侵略のスピードを上げて数ねんで天の川銀河を割拠する巨大帝国建設を成功したというのもなんともご都合主義のにおいがする

 結構、ガミラスの侵攻スピードは遅いのである。彼らは拠点や前線基地を置き、順繰りに勢力を拡大していく。ガトランティスとの違いは情報戦を軽視している点だが、それ以外は無理な拡大というものはしていないのだ。ドメル艦隊の集結で見た通り、戦力の集結も実は迅速で、その範囲内でしか戦闘を行っていないと説明が可能。

 そんな彼らが、ヤマトⅢに入って急に戦力補給も通信も中途半端になるような無茶な戦争を行うのはシリーズ内の整合性が取れない

 

 確かに反ボラーの勢力を丸々吸収出来れば、そっくり領域を拡大できるし、ガトランティスの超技術を吸収したとあれば多少は拡大スピードを速められるだろうが——或いは、モンゴル帝国のように都市限定では意外と領土が小さい癖にステップの面積を加えるから詐欺的に巨大になった、あれと同じか。

 しかし、前者であればガルマン帝国の戦闘艦艇が画一で描写されている点と齟齬が出る。勢力をそっくり吸収したならば、ボラー製の戦闘艦や独自設計の戦闘艦が多数登場しても不思議はない。というより、その方が自然。

 後者であればある程度は説明も可能だが、ボラーの勢力拡大スピード(バース星併呑は10年前)と大幅な齟齬があり、ガルマン・ガミラスのあんまり強くない戦力描写と幾らかの齟齬が出る

 

 端的にいえば、ガルマン・ガミラス建国があまりに時間軸的なボリュームが無さすぎる。おかげでリアリティもなくなってしまった

 加えて、地球とボラー連邦との関係性についてもいえることだが、地球の居する天の川銀河にガルマン・ガミラスを建国するのであれば――普通はどこかのタイミングで地球に連絡を取ってしかるべきだろう。これがなかったというのが解せない。

 古代と総統、地球とガミラスの関係性から言って連絡しない方が不自然

 

 

 

 と、ヤマトⅢは確かに壮大な設定やストーリーを擁しているものの……以前のストーリーとの整合性が取れていない。ヤマトⅢの中でも整合性が不完全

 好意的に見れば、時間軸以外は何とか整合性は取れるし、放送時間に限りがあるのだから不完全になるのは仕方がない。

 とはいえ、時間軸の整合性のとれなさや、キャラクターを踏まえた登場国家の行動などの矛盾は度し難い正直、ヤマトはストーリーが本格始動する前からズッコケていたと言わざるを得ないだろう

 

 

 

 

 

地球連邦装備品 星間移民船とその計画(ヤマトⅢ)

 

 

 星間移民船はヤマト史上2度計画されて内、1度は途中まで使用。続旧作で1度実際、本格的な運用をなされた。しかし性能緒元がイマイチ示されず、その内容は不明である。今回はこの移民船をざっくり考察したいと思う。

 

 が、その前に地球の総人口の想定をしておかなければならない

 どうせ正確な事なんてわからないのでざっくりと、ね。

 

 

 総人口の推定

 以前、地球防衛軍の人員と質について考察したが、その際に地球の人口はスタートが何億人かによって、その後の変遷に影響が出るとした。

 つまり、多めに人口を見積もって80億人か、地球環境にある程度余裕を持たせて60億人。ガミラス戦役で遊星爆弾を――奇襲でなかったとしても直撃を受ければ10億人は第一波で消滅する。第二波ではさらに10億人、地下都市への非難が遅れれば遅れるだけ被害が大きくなる。

 第三波、仮に人口60億人から戦役がスタートした場合はこれが分かれ目であり、以降も襲撃を受けた場合は人口が20億人を下回る。

 

 さらに翌年、ガトランティス戦役。これはさらばにおいても、白色彗星の接近によって惑星表面があれだけ荒れたのだ――まず、スペースコロニーは大損害間違いなし。地球表面も海抜の低い地域や沿岸地域は水没してしまっただろう。しかも、白色彗星の反対側の地球表面は水面が下がっている可能性がある。つまり、ヤマトがガス帯を払った時点で反対側も大津波の被害を受ける。数億人単位で人命が失われたとしても不思議はない。

 ヤマト2の場合はさらに直接的で、超巨大戦艦が直接砲撃を行い地表を穴あきチーズにしてくれた。都市部はあまり被害に遭っていない可能性があるが、沿岸部に直撃すればそれだけで津波被害はあるだろう。内陸部であっても、直撃地点の周囲数キロから数百キロ圏内は地震が起きているに違いない。この場合も数億人単位で死者が出る。

 暗黒星団帝国の襲撃は、割合に局所的であり地球の人口比に影響をもたらすとは思えないが、それでも損害は損害。この幾らか後、ダゴンがぶっ放した惑星破壊ミサイルが太陽に直撃する。

 

 この時点の人口は一体どれだけだろうか。

 恐らく20億人前後ではないだろうか。ガミラスやガトランティスによる直接の被害だけではなく、地下都市への移動によって生じた事故であるとか、いざこざの最中の殺人など。地下都市の生活でも、特に長期化していたガミラス戦時では、各種の病気は発生していたはず。これも人口の維持には悪影響というほかない。

 つまるところ、やはり20億人をこえる数が残っているとは思えないこれを前提として、以下の考察・推察を行いたいと思う

 

 

 

 星間移民船(ヤマトⅢ)

 推定データ 
 全長:300メートル強

 全幅:70メートル程度
 乗員:100名程度
 収容人数:数万人 
 航続距離:1万5000光年

 武装:なし

 

  第2話でイメージ図として登場――ここから推測すると、船首は極めて扁平だが底部から上部にかけて通常の船のような断面傾斜がある。上面図としては非常に縦長で、上部に大型の半円状の突起がある。船尾は極めて扁平なひし形の断面と四角い上面図を有し、船尾終端に船橋がある。操舵室ないし司令室はこれもまた扁平な長方形。船首と船尾は細い連結部で結ばれ――全体が青に近い灰色、船首の先端が赤いカラーリング。

 第19話での登場で下地は黄色と判明。

 

 全長の推定・収容人数の推定

 全長は不明だが、ドックからして300メートル程度と思われる。また、300メートルを超える大型艦の建造を地球防衛軍は行ったことがない為、この辺りの数値が全長として妥当だろう。人類の切り札が人類初の超大型艦で航行テストもなしというのはヤバい。浮上できずに折れたら洒落にならん

 この船の幅は全長の約1/4程度であるから、70メートル程度と推定が可能。仮に全長をヤマトの再設定値と揃えた場合、620メートル程度となるだろう。

 明らかに推測するまでもなく収容力が小さい……。

 

 どこに何を収容するのかは全く不明であるが、船首に乗員を載せるという事になるだろう。つまり一方の船尾はエンジンと――その他物資を積みこむという事になるだろう。高さは幅の半分から半分強程度と、見られる。つまり容量はざっくり――

 70メートル×30メートル×120メートル

 8階ないし9階立てビルと同じ高さ、面積でいえばざっくり渋谷駅ぐらいか。或いは東京ドーム程度。まさか市民をすし詰めにはできないため、普通に東京ドームレベルの収容は第一層としてこれを2層、11万人程度は収容可能だろう。

 

 もう一度言うが、これは人数が少なすぎだろう

 確かに、トバ・カタストロフ理論が正しかったとして、7万年程度の極めて長い時間をかければ、ほんの数組の夫婦が生存していれば人類は70億以上にまで増えるのだ。

 だが、それは人類種の単なる生存の話。

 人類による組織的な星間移民は話が違う。人類種が生き残ればいいという話ではないのだ。仮に20億人だったとしても、約1万8182隻で一度の輸送か1000隻で18回。ヤマトに合わせても44万人がせいぜい。4546隻で一度の輸送か1000隻で4.5回の輸送。これは非常に手間だやって出来ない事ではないのだが、時間が怪しい

 

 輸送回数を低減するには、巨大すぎて元から不格好なのが際立ってしまうが――ヤマトに合わせた再設定値の倍の全長に再構成する必要があるだろう。この想定では移民船は全長1.24キロで収容人数も約176万人に及び、桁の違う輸送力を有する。

 これならば、1136隻を建造するか、200隻を建造して6回輸送すればいい。まあまあ地球の負担は減るだろう。

 

 

 航続距離の謎

 どうやらこの船は波動エンジンを主缶としては積んでいないらしい。或いは使用回数に限度があるらしい

 そうでなければ、航続距離に限界があるというのは、設定として矛盾が生じてしまう。まあ、ストーリー展開的には波動エンジンだろうが何だろうが航続距離に限界があった方が都合がいいのではあろうが……。

 

 1万5000光年という航続距離を考えれば、ワープが出来て当然であるため――このワープの為だけに波動エンジン積んでいるという事か。或いは、使用する燃料を星間物質ではなく通常の核燃料あたりを利用しているか。

 これらにどんなメリットがあるかといえば、正直メリットはないと思われる。仮に星間物質を取り込むためのインテークが必要で、それを削減して容量を確保したとあれば……端っから船体を大きくしておくべきだった。

 メリットのために波動エンジンの常時稼働を制限した、あるいはワープを制限したとするのはあまり妥当・合理的ではないだろう。小説版のようにワープには猛烈な身体的負担がかかるというのであれば別だろうが、アニメ版ではシートベルトナシは危険という程度。メリットのためでないとすれば……

 

 合理的な説明をするならば、波動エンジンの量産を行うためにダウングレードしたため使用に限界がある。だから通常航行に使用するには大きなリスクがある――そう頻繁に稼働していないため、インテークを設けるほどでもなく核燃料あたりを利用した。という事になるか。

 かなり後ろ向きな説明になってしまっているが……。

 

 

 この星間移民船はあまり具合のいいものではない

 無論、出来損ないではないし、数を集めれば十分利用可能。シンプルを極めた構造であり、明らかに建造は容易であるから、この点も利用価値は十分。

 ただもう少し船体を大型化する必要が有るだろう。このままでは船長の確保が苦しく、自身の船を見捨てさせる形で民間から徴募する必要に迫られ、不必要な不安定要素を内包してしまう。

 結局、この船は建造はされたものの――幸いというべきか、実際に出動することはなかった。

 

 

 

 星間移民計画の様相

 恐らく、はじめは1万5000光年の距離のみを前提にした運用だっただろう。理由は先に述べたように、個々のエンジン性能と量産体制の限界。

 割に狭い範囲内での移動であれば、ピストン輸送というのもある程度は可能なはず。仮に危険があったとしても、第二期の残存艦艇や新規建造艦を投入して濃密な輸送路を確保可能だろう。しかし、遠方になればなるほど往復に時間がかかってしまいそれだけ船の数が必要になる。道中の危険という不安定要素との遭遇もしやすくなる。

 出来るだけ地球に近くかつ、太陽の影響圏外。これが集団移民のベストなのは合理的といえるはず。アルファ星第4惑星やバーナード星第1惑星が不適当だったのは非常に痛かった……。

 

 移民計画の本格始動は第12話、人類滅亡まであと228日の段階。各探査艦隊が出動し、結果報告が入り始めたのが第14話人類滅亡まであと207日の時点である。更に第20話にても探査艦隊が調査続行している様子が映るが、この時点で人類滅亡まであと118日と迫る。そして最終回である第25話、地下都市の冷却装置を全力稼働させて10日、1/3まで落として1カ月がタイムリミットとされていた。

 これらのタイムスケジュールから考えて、最初の計画では100日程度を移民期間として見込んでいたとして妥当だろう。一方で組織立てて太陽の影響圏から脱出するのに最短で10日弱。

 だから順調に移民を成功させ、最後のグループを仮に1千隻=4億人(100隻なら4000万人)――別に数字は何でも構わないのだが、これを脱出させるのに必要な期間が10日弱という事になろうか。スケジュールとしては3日以内に移住先から地球に帰還し、2日以内に人類の乗り組みを完了させ、1日以内に太陽の影響圏を離脱して3日程度で移住先へ到着。

 これが期限、移民のラストチャンスであろう。劇中の描写と整合性は十分にとれる

 

 これらの想定が妥当であれば、移民船は最大で1日5000光年程度の速力という事になるだろう。移民計画の当初の予定からして――仮に10回に分けて移民を行うならば、乗り組みに20日、往路に30日、復路に30日で合計80日のある程度の猶予が10日とこれもまた整合性が取れる

 よって、描写から推測した収容力11万人想定だと2000隻、44万人想定だと500隻、最大の176万人想定ならば120隻もあれば十分という事になる。惑星発見まで時間がかかればそれだけ移民船の数を増やす必要に迫られ、早期発見が出来れば数は少なくても構わない

 どのみち、差し当たって火星か土星海王星当たりの惑星基地に退避する必要はあるだろうが。

 

 一方で、後期では明らかに計画の前提が変更される

 シャルバート星への通路(門)は惑星ファンタムやスカラゲック海峡星団からそうは離れていないはず。亜空間という不確定要素を含んだ上での話だが――あのヤマトでさえ、シャルバート星から太陽系まで46日かかる。そもそも、天の川銀河は直径10万光年であり、ガルマン・ガミラスとボラー連邦の境界ラインに位置していた惑星ファンタムは、明らかに地球から5万光年を超える距離にある

 これは移民船の航続距離をはるかに超える為、仮に踏破できたとしても帰還できる見込みは薄い為、船は使い捨てにせざるを得ないしかも、地球滅亡まであと118日と迫った上にいまだに惑星探査を全艦隊が続けていた

 いやいや、水曜どうでしょう班並みにスケジュールが破綻してる――事前の計画のままでは……

 

 の極めてタイトなスケジュールをこなすには、ほぼ確実にガルマン・ガミラスの協力が不可欠だろう

 連邦政府の動きを想定するならば、太陽異常増進の根本的原因を作ったダゴン将軍=ガルマン・ガミラスに責任を取らせ、一時的にせよ地球人を難民としてキャパシティのある惑星に避難させる。或いは、地球の移民船だけでは賄えない部分をガルマン・ガミラスの大型艦艇に収容させて猛烈なピストン輸送を行う。この計画を総統に承認してもらった――と言うような事前の取り決めなりをしなければ、移民は不可能だ。

 協力的な総統は当然として、多分波動砲の威力を知ればキーリングあたりも地球に与するのを承認するだろう。

 そうなれば、護衛はガルマン・ガミラス艦隊に任せて地球の全艦艇を輸送船として使用可能だし、ガルマン・ガミラスの影響圏周辺域ならばどれでも好きな惑星を選べた。実際、惑星ファンタムを推薦したのは総統だし。

 意外と、"ガルマン・ガミラスにおんぶにだっこ作戦”は未来が明るい

 

 つまるところ後半はヤマト・古代と総統の関係性と、一種の腐れ縁である地球とガミラスという関係性に大きく依存した計画に変遷したと説明できるだろう

 

 地球側としても当然、対症療法でしかないとしても――差し当たっては人類を地球から火星へと、火星基地のキャパシティの限界まで地球人を輸送しただろうし、点在するであろうスペースコロニーにも一時避難をさせただろう。これで出来るだけ地球から直接輸送しなければならない人数を減らしかつ、人類滅亡まで数日から数カ月の猶予を持たせることが可能。最低限この程度はやっておくべきだろう

 その間にヤマトが吉報をもたらしてくれれば幸いだし、本当に総統が地球人を難民認定してくれれば安全にガルマン・ガミラスの領内に一時滞在可能になる

 この難民キャンプを軸に数カ月から数年は人類は根無し草とはいえ十分生存できるようになるし、探査を続行して何ならアンドロメダ銀河さんかく座星雲大小マゼラン雲に足を延ばしたってかまわない。

 一応、人類の命脈をつなぐことだけは可能

 

 

  猛烈に危険な綱渡りになった移民計画。最初こそ、順当なタイムスケジュールではあったものの、移住先が見つからないという事態によってどんどんタイムスケジュールに遅れが発生し、地球単独では致命的な状態に至ってしまった。善後策を打ちようがなかった感もあるが、藤堂長官の若干の指導力の不足を感じる。実際、会議でも吊し上げをくらい、ヤマトに希望を託すほかなかった。

 

 幸いにもお人好しな総統の好意で、ガルマン・ガミラスの支援という一種の移住へのめどがついたものの、それでも人類延命策でしかなかった。ここまでくると、少々脆弱な能力の移民船についてはもはや語るべくもない。

 ルダ王女=マザーシャルバートの懐柔に成功し、ハイドロコスモジェン砲入手という僥倖が地球にもたらされた。これによって何とか首の皮一枚繋がったと言える。正直、移民計画は失敗だったと言わざるを得ない。