旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガトランティス兵器群 潜宙艦―最強の戦闘艦―①

 


 私が一番ではないが、ガトランティスの凄さを説明する時に最も饒舌になるのがこの艦である。

 


 潜宙艦 さらば、ヤマト2ともに詳細が全く分からない戦闘艦艇。しかも派手な爆発描写ばかりが印象に残ってしまって、完全にやられメカとしての固定概念が形成されてしまっている。おかげで妙にアンチが多かったりする。2199の総k……とか。
 が、つぶさに検討を重ねると違った可能性が見えてくるのだ。

 ある意味、情熱不足というか情報不足からくる誤解が、その根底にある。

 


――データ(ウィキを参考に……)――

 艦級名:不明
 全長:118メートル
 全幅:45.5メートル
 自重:4,600トン
 主機関:無波動特殊推進機関(特殊無波動エンジン)
 武装:艦首宇宙魚雷発射管4門、艦尾宇宙魚雷発射管8門、固定式フェーザー砲12門、対空フェーザー砲4門

 

 意外と小さい。全幅はフィンを含めての長さであるため、実質の艦幅はその半分程度といえる。デスバテーターの全幅が41メートルというのを勘定すると、正直長距離偵察機武装を施した方が有効なのではないかと思ってしまう。しかも、対艦雷撃力がデスバテーターに比べてあまりに貧弱。この艦で確実に言えることは、意外と自衛火器が多い事。また、発射管の数が大して多くないわりに、前後に分かれている事。
 真面目に検証する場合、実は、ここが一番突かれたら痛いとこなのだ。

 ここがこの艦の情けないというか、存在意義の問われるというか、擁護しがたい部分であるのだ。武装、艦全長の二点……これは別個に記事を設けたい。

 なお、艦名及び艦級名は不明である。どんなに探しても設定があるようには思えない。また、潜宙艦と書いて‟せんくうかん”と読んだり潜宙艦と書いて‟スペース・サブ”と読んだり結構忙しい。ゲーム版でも特に名前がないようで、潜宙戦艦などを問う雨情させる割に脇が甘い。その一方、海外では〈Shadow〉と中二病全開な感じのクラス名があるらしい。また、劇中に登場しなかった母艦にも〈Transporter〉という名前があるとか。この辺りのこだわりは海外の方が凄まじいというか……
 

 
 まずは潜宙艦に対しての誤解を解きたい。

 つまり、どうやって隠蔽しているのか、

 どうして優れた戦闘艦であるのかを考察する。

 


 資料だ何だを当たっても結局、何の要因を以て隠蔽しているのかが判然としなかった。これが、表面的には重大な問題として映り、視聴者が潜宙艦を侮る原因となっている。しかし、描写からは十分推測できるだけの材料が提供されていた。

 一つ、さらばとヤマト2を分けて考えたいと思う。

 


 まず、さらば宇宙戦艦ヤマトから。
 登場したのは土星決戦。単艦種で第二次戦闘宙域を形成、対空戦闘の為に密集隊形を取っていた地球艦隊に対し猛攻を加えた。

 第一波攻撃時、地球艦隊は基本的に手も足も出なかったといえる。確かにソナーと称する発光体を発射した後には攻勢に転じることが出来た。

 が、その後のシーンをよく見て欲しい。潜宙艦が発射した魚雷ないしミサイルと同じ軌道を描いた飛翔体が巡洋艦に直撃している。


 要は、地球艦隊はあの攻撃だけでは仕留めきれず、一方で潜宙艦はとどまって攻撃を続行し続けたという事。


 特殊な点は、同作品において射撃は基本的に乱射ないし固定目標に対する射撃に近い描写がなされる。しかし、この戦闘シーンのみ予測射撃(偏差射撃)という航空機相手に使う手法での攻撃が強調されている。

 速度差がある事の強調と言われればそれまでだが、一方であまりにも隠蔽性が高い為、ソナーを使ったほんの一瞬しか居場所を探ることが出来ず、予測射撃を行ったという見方もできる。
 
 つまり、潜宙艦は地球艦隊に対して優位性を保って攻撃を続けたという事。決して残念なメカでは無かった。第二次戦闘宙域を突破されたバルゼー以下の面々が見せた明確な狼狽えが、潜宙艦への信頼や自身の表れと見る事もできる。

 

 


 恐らく評判を落としたのはヤマト2であろう。

 ウルトラマンタロウナスカ司令がミスに次ぐミスを重ねてくれたおかげで散々な目にあったからだ。挙句、南部君の余計な一言で緊迫感が徹底的にそがれてしまったのだ。
 まずはウルトラマンタロウナスカのやらかした失態をあげつらう。

 

 1、戦闘宙域まで通常航行を行った事
 2、通常運転のままの戦闘開始
 3、密集隊形
 4、あまりの弱勢

 

 これ、全部潜宙艦の弱点を強調というか助長する行動だ。この手合いの無能な将軍は地球の歴史上それなりに存在する。ヴィルヌーヴ提督と同程度、ぺルサノ提督の方がまだましというレベル。 

 

 ヴィルヌーヴはフランス海軍の提督である。ネルソン提督を頂点として名将と名艦群に支えられた史上最強のイギリス海軍を相手に手も足も出ず負け続けた男だ。しかも最終決戦トラファルガー海戦で割合無様な戦いをしてしまった。スペイン海軍の名将グラビ—ナ提督がその場に居合わせたおかげで、余計に無能さが目立つ結果だ。

 彼のたどった道は――運も才能も何もかもが普通の提督に、いまいちな装備を渡して、あんまり状況を考えず戦わせるとこうなるという見本を見せた。と言えるだろう。

 

 ヴィルヌーヴに比べれば、ぺルサノ提督は明らかに頑張った方に入る。ほとんど決着がついていた普墺戦争終盤、無理やり出撃させられた。
 しかも猛将と闘将が率いるオーストリア海軍の全力を戦わねばならないのに、味方の士気は上がらず。それでも自身は海戦最後の一刻まで自慢の旗艦〈アフォンダトーレ〉で戦場を駆け巡りオーストリア艦隊に猛攻を加えた。

 頑張った。でも――命がけの用意もなしに、命がけの用意をしてきた連中には敵わなかった。

 


 さて、

 偵察遊動艦隊司令官コスモダート・ナスカはどうか。


 1、戦闘宙域まで通常航行を行った事。
 これは痛い。隠密性を高めなければならない状況で考えられない行動だ。逆に何で、大丈夫だと思ったのか。見事にヤマトのチート兵器タイムレーダーに引っかかった。とはいえ……たまにいるさ、軍司令官でもこんなあほなやつ。

 

 2、通常運転のままの戦闘開始
 さらばの描写を考えると、実は航行用の動力源とは別の戦闘用の動力源があるのではないかという想定が出来る。設定されている無波動エンジンと小型波動エンジン併用など、である。また、ヤマト2においてヤマトへの攻撃開始時も厳密な居場所は全く解明できなかった。

 もしこの想定が妥当であれば、1、と同じく頭悪すぎる。頭隠して尻隠さずというか、灯火管制中に庭で焚火をやるようなものだ。この手合いの失態はまま存在するが……。

 

 3、密集隊形
 そりゃ密集隊形で爆雷喰らったら全滅しかねんわ。そもそも、徹底した隠蔽性が最大の利点である潜宙艦が、何で密集隊形を取る必要が有るのか。分散配置や攻撃タイミングをずらして、艦の位置をかく乱した方がヤマトに限らず沈めやすいだろうに、なぜ……。

 大人の事情という言葉で片付けたくはない。1、2、と作戦ミスを重ねたナスカなら不思議ではない、と何とか説明をしてみる。

 

 4、あまりの弱勢
 これは、彼のせいでは無いかもしれない。爆雷で数隻沈んだかもしれない。ただ、画面上に出たのはたった2隻。

 偵察任務なら長距離偵察機があるのだから、そちらに任せるべきだろう。空母の護衛ならば大戦艦が複数隻と大量のデスバテーターが配備されているから、潜宙艦の出番は少ないだろう。しかも大帝や総統以外は地球を、ヤマトを侮っている。とすると確かに潜宙艦を多数配備させる必然性はない。
 配備されていないなら……仕方ないか。

 

 

 これらのナスカの失態は、潜宙艦の敗北に直接的につながった。
 隠密が破られれば通常の戦闘艦と大して変わらないどころか低速な分だけ、性能が劣る。集団で猛攻を加えればたとえ所在がばれても攻撃のしようがあるが、2隻だけではどうしようもなくまた、すぐ隣に居たら巻き添え喰らうだろう。
 ドがつくほどの無能、しかも侮りというキーワードが共通するミスをしでかす。こんな指揮官の下では多分ヤマトでさえ沈む。

 


 最期に、彼が逃げる事無くヤマトに向かっていったことは……栄光あるガトランティス人としての名誉挽回といったところか。

 もう一つ、第7話で参謀が報告した通り、ナスカは軍事機密を徹底して処理したらしい。これは軍人として最低限の行動として評価できる。

 また、ヤマト2の第二話では金星のエネルギー中継基地が破壊されたが、地球艦隊はこの動きに全く気が付かなかった。全球停電どころか全星系停電発生直後、防衛司令部では原因が金星にあること以外は全くわからなかったし、その後アンドロメダを派遣して調査に当たった。
 可能性としては破壊行為が確認されたため、という事がアンドロメダ派遣の理由になるだろう。実際、ナスカは楽し気に地球のテンパりをバルゼーや大帝に報告している。

 

 これらの事から、金星基地攻撃に当たったのは偵察遊動艦隊所属の潜宙艦であると考えるのが合理的であろう。つまり、実は潜宙艦に地球は一杯食わされていたのだ。

 

 

 描写をまとめる。
 さらばにおいては待機時・攻撃時共に極めて高い隠密性を発揮し、実際はソナーによる探査後も生き残ることに成功した。
 ヤマト2においては反対に、不明確な描写として金星のエネルギー中継基地の破壊を隠密裏に成功。対艦戦闘においては艦の位置はレーダーに映らないものの反応があるという極めて微妙な描写に終わる。ただ、発射反応については隠蔽に成功した。また、あの真田さんに冷や汗をかかせたというのは特筆に値する。

 


 つまり、彼が冷や汗をかくほどに厄介な兵器という堂々たる証明である。
 あのえげつないハイパー放射ミサイル並み、少なくとも次元潜航艇よりかは強力な兵器であると断定できるのではないだろうか。

 

 

 


 でも、亜空間潜航が出来ないじゃないか――

そもそもできる必要がない

 


 ステルス性の根源を探るのは別の記事に譲るとして、

 潜宙艦はほぼ完璧に宇宙空間に欺瞞できる。であれば、緊急的に退避する先としてしか亜空間は価値がない。それだって、味方艦の援護を受ければ攻撃をそらすことが可能であり、窮地を脱することも不可能ではないだろう。つまり、全く潜航できる必要がないのだ。

 通常空間において無敵ではないにせよ、圧倒的な優位性を誇る高性能艦に、亜空間潜航など無用なのである。亜空間潜航は潜宙艦のような高い欺瞞能力を保持しえない、低スペック艦だからこそ必要なのであり、亜空間に逃げ込まなければ発見されてしまう、攻撃されてしまうという事である。

 

 潜宙艦は完璧だ。
 装甲は信用が置けないが、圧倒的なステルス性がある。目、耳、熱、電磁波の全てにおいてほぼ完璧な欺瞞を実現し、通常空間内にとどまって攻撃をすることが出来る。発射する魚雷にも近い性能が付与されていた場合、魚雷の迎撃すらも難しい。

 むしろ、亜空間から通常空間へ“浮上”する際の、時空間の変化から探知されてしまう危険性がある。ヤマト2ではヤマトは爆雷攻撃という面での攻撃に移るまで、潜宙艦の攻撃に対して完全に受け身となっていた

 反対に次元潜航艇からの攻撃は土門がいち早く異変に気が付いたし、攻撃に対しても十分に対処できていたヤマトが負けたのは単純に、スピッツさんの人でなし戦術がヤマトに対して有効であったというだけである。別に次元潜航艇が強かったわけでは無い


 つまり、潜宙艦は亜空間などというまどろっこしい空間に逃げ込むなどせず、攻撃が出来るのだ。唯一の問題は爆雷の大量投下に対して無力という事だが、これは戦術レベル=複数隻が分散して襲撃を行えば十分対処できる。

 

 馬鹿でなければ当然失態など犯さずに運用でき、

 十二分な効果を上げられる、それが潜宙艦なのだ

 

 じゃ、なんで罵られるのか。侮られるのか。
 某総監督に勝手に勘違いされてがっかりされてしまうのか。真
 価が認められないのか。

 

 多分、南部君のせいじゃないかな? 潜宙艦が侮られるの。

 「ざまあみろ」だの「姿を現せさもないと機雷の雨が降るぞ」だの、さっきまで自分たちが仕留められそうになってたくせに、急に悪態をついて……。挙句「敵は全滅だぞぉ!」って潜宙艦は2隻しかいないじゃないのさ。
 この人、何でも過剰反応しがちな人だけど、アンタねぇ……。真田さんはちゃんと、ヤバい戦いだったと認識しているのに。

 だから南部君は波動砲を撃たせてもらえないんだよ

 

潜宙艦・技術面の考察につづく――