旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガトランティス兵器群 不遇な機体たち―イーターⅡ―

 

 イーターⅡとは、さらばのみ登場した艦上戦闘機である。極めて影が薄く、極めて存在が不明瞭な機体。

 この奇妙な機体について考察を加えてみたい。

 


 ――データ――

 名称:イーターⅡ(英語版:制空戦闘機Eetaa)

 類別:艦上戦闘機
 全長: 22.7メートル(ないし19.4メートル)
 全幅:13.6メートル(ないし12.7メートル)
 最大速度:マッハ11
 搭乗員 :1名
 武装:30ミリフェーザー機関砲6門、12.7ミリ光体機関砲16門


 基本的に自衛武装はデスバテーターと同じ程度であり、劇中の描写から航続距離もまた同程度である一方で対艦雷撃力はゼロだ。形状もまたデスバテーターに類似した円盤型の機影。強いて例えるならばトビトカゲ――あの20センチぐらいの体長で、18メートル程度滑空する奇妙な爬虫類――に近い形状とも。
 細かく描写をすれば、翼から突き出た機首前方にカナードっぽい形状の先尾翼のような何とも言えないものがついている。円盤翼の後方には双尾翼が付き、これまた表現しがたい。
 

 

 任務は当然、艦攻・艦爆の護衛と味方空母の直掩だ。要するに敵機との格闘戦。
 当然のことながら艦攻たるデスバテーターより早い。マッハ数は1大きい、この手合いの機体は遅いよりも早い方が絶対良い。
 大きさはデスバテーターの半分程度であるが、現代的な戦闘機は別に全長・全幅が20メートルを突破するのは珍しくもなんともない。つまり、別に目立って無茶な設定の戦闘機を言うわけでは無いのだ。

 確かに――白いカラーリングの単座戦闘機と言う特筆性、重武装の生物的外見というガトランティスらしさのある機体だ。そういう意味では無茶なデザインというそしりは免れないが……文字に落とした際のスペックはそんなに問題はないのである。

 


 ところが、劇中の活躍と言えば多分900万キロほどの超長距離をデスバテーターと共に遠征した事ぐらい。

 なにせ、さらばでは地球艦隊は迎撃機を発進させずに密集隊形から繰り出される弾幕で全てを対処したつまり、雷撃力ゼロ爆撃力ゼロの純粋な戦闘機の出る幕では無かったのだ。強いて言えばデスバテーターが突入できるように盾になることぐらいしか、出来ることはなかった。


 あげく、ヤマト2では出番すらなかった

 新規に作画する上でデスバテーターに統一した方が当然アニメーター的には描きやすいだろうし、撮影監督としても画が上がる時期が読みやすくなるだろう。

 という大人の事情はさておき、単純に単一機体に絞れば整備が簡単になる。これはよく言われる事だし、実際問題としてあんまり多数の種類に分けて多数を収容するという空母は今時、流行らない。大体デスバテーター自体が雷装したままコスモゼロと空中戦をやってのけたりしているのだから……戦闘機の必要性って何だろうか

 

 

 さらばにおいて、存在価値に疑義の生じたイーターⅡである。

 ヤマト2において、存在自体を否定されたイーターⅡである。

 

 

 しかし、イーターⅡが完成した経緯と言うのは合理的な説明付けが出来るだろう。
 つまり、イーターⅡはデスバテーターの対になる純粋な護衛戦闘機として開発されたという推測だ。

 

 

 

 開発経緯の推測
 まず第一として、デスバテーター登場以前の機体であるところのイーターⅠの存在を仮定する。これは戦闘攻撃機ないし、戦闘爆撃機の類。マルチロール機であるとする。


 常識的な大きさの機体であれば、例えば搭載量の多いF35Bなどは8トンの爆弾をしこたま積み込むことが出来る。これは格闘能力もちゃんとある優秀な部類の戦闘機だ。(日本らしくF-2を例に出してもよかったが、戦闘機であることやアメリカが主要運用国であることを考慮)

 が、惑星表面への攻撃つまり全土にわたる攻撃を敢行するには――何千機あっても足りない可能性がある。ガトランティス中型高速空母はアメリカ海軍のエセックス級と大体同じ全長である。格納スペースはだいぶ足りないが、ざっくり同数ないし半数を収容できるとすれば、1000機用意するには12隻から20隻強が必要。1万なら100隻から200隻以上が必要だ。

 さて、一国を潰しうる破壊力はどれだけだろうか。

 アメリカは戦略爆撃機であるB-1やB-2、前者は大体2桁ほどを後者は数機をグアムのアンダーセン基地に配備し、北朝鮮などの脅威に備えている。合算すると、爆弾投下量は900トン強になろうか。
 つまり、アメリカは一国を爆破するのには主要か所に合計900トン程度の爆弾を投下する必要が有ると判断している、そう推測することが出来る。最大量なのか最小量なのかは不明だが、大体900トン投下できれば良し、としていると考えられるのだ。F35Bで換算するところの120機分弱、という事になるだろう。

 国土の広さや主要都市の強靭さを無視して単純計算すると地球の全国家190か国超を破壊するには9万8100トン以上の爆弾が必要になる計算だ。F35Bが無抵抗な都市に攻撃するのであれば、1万3200機程度を用意すると勝負になるかもしれない。

 

 という事は、イーターⅠがF35Bと同程度の能力であるとすれば、中型高速空母を160から240隻を集結させる必要が有るこいつらは攻撃中、かなり無防備になる為、相当数の駆逐艦なり直掩機用空母なりを護衛に付ける必要があろう

 

 

 出来れば……一機当たりの攻撃力を上げて、必要な艦載機の絶対数を縮小したい。

 縮小できれば、必要な空母の数も縮小できるし引いては艦体の数も縮小可能。その方が効率がいい。
 だとすれば、一機当たりのミサイル搭載量は出来るだけ増加させなければならない――打たれ強く、格闘できる攻撃機ないし戦闘機が必要だ。

 

 

 次期攻撃機の初期案は、当然空母に載せ得る大人しい大きさの常識的な攻撃機であったと推測して当然。しかし要求はエスカレート、やれ航続距離だやれ搭載量だやれ装甲だのと……設計チームもパイロットも無視して次々と突きつけられる無理難題。

 そんな軍の要求に嫌気の刺した開発チームが完全に居直って巨大攻撃機を作成してしまった。もはや、イーターⅠの方向性からは思いっきり逸脱してしまう。

 

 これが大搭載量の実現=機体強度アップ→

 エンジン出力アップの必要性=機体強度とプラスして格闘能力アップ→

 傑作機デスバテーター誕生


 となれば、それ以前の機体は全く陳腐化する。

 しかもマルチロール機路線は継承している。

 巨体が担保する高い雷撃・格闘能力・居住性・航続距離を有するデスバテーターは、完成以降単一機種で十分作戦を継続できる。敵う機体などあろうはずがなかった。

 しかしながら、不安要素はある。

 ミサイルを抱えたままではちょっとした銃撃でミサイルが爆発する可能性と言うのは否めない。だからと言ってせっかくのデスバテーターに中途半端な雷装をさせるのはもったいないし、全力雷装をしたデスバテーターを護衛するために中途半端雷装をしたデスバテーターを付ける、と言うのはもはや意味不明。

 もっと言えば直掩任務にも雷装は必要ない。戦うべきは艦載機であり、無雷装デスバテーターで十分。対艦護衛は潜宙艦が務めてくれればそれで問題ないどころか、鉄壁。しかしながら、即応力がどれだけあの巨大な機体にあるのかは不明だ。

 

 

 だからこそ、純粋な戦闘機が必要ではないだろうか。

 だからこそ存在する余地があるのではないだろうか
 ほんの少数だが艦隊やデスバテーター隊の直掩として積みこみ、デスバテーター隊の全力発揮を支援。一方で艦隊直掩を行い襲来する敵機を打ち払う。その専門職が必要となろう。

 ここでイーターⅠの機体をベースとして、雷撃能力を排除、格闘能力に特化した戦闘機の出現する余地が生まれる。

 

 

 必要の迫られ方、出現の仕方は――〈いずも〉の空母化に例えられるかもしれない。 

 

 日本にとって怖いのは中露北の潜水艦群だ。

 確かに海上自衛隊の対潜能力は高い。〈あさひ〉のような特化型でなくとも、他の国の平均フリゲート以上の能力を持つといえよう。しかし、数で来られた場合は……確実性に欠ける。つまり、潜水艦のような特殊な艦艇は性能どうのこうの問題ではなく、数・それ自体が危険性をはらむのだ。

 この絶対数の不足した対潜能力を補完するのが対潜ヘリである。そのキャリアとして、〈いずも〉は最高の艦と言えた。自衛能力は皆無に近いが、二桁のヘリを搭載できるその運用能力は魅力と言うほかない。また、強力なヘリ運用能力と強力な個艦先頭能力を持つ〈ひゅうが〉はまさに海自の最有力艦だ。

 

 一方で、この対潜ヘリには天敵がいる。つまり、戦闘機。当然、戦闘機の格闘能力には敵わない。この脅威を排除できない限り、安心して活動はできないのだ。

 そこで、である。

 敵側の戦闘機が発進してきた際に、味方も迅速に戦闘機を発進出来れば言うことはない。陸上の基地からスクランブルでも構わないかもしれないが、場所によっては直掩に回るまで、数時間のロスタイムが生じてしまう。この間にヘリが落とされては元も子もない。

 だから、初めから艦隊に戦闘機を編入する必要性が浮上するのだ。〈いずも〉のような大型艦にたとえごく少数でもF35を載せられれば、即座に発進させて敵戦闘機を追い払う事が出来る。そして〈いずも〉の役割は〈ひゅうが〉ないし、次期大型DDHにになってもらえばそれで十分。

 もし、自衛隊に限定的な能力であったとしても空母が導入されれば、作戦展開の幅が大幅に広がる事になるのだ。作戦遂行の安全性と確実性が確保できるのである。

 

 正直、自衛隊に必要が有るかは疑問だが……そんな事態にならないように日米同盟やインド太平洋構想なんかが存在しているのであって……。

 ともかく、護衛なしの作戦敢行は極めて危険であることには間違いない。作戦遂行中の危険性は出来るだけ排除せねばならない。そのための、護衛は保有していて損はない。むしろ当たり前。

 

 

 万が一、デスバテーターの格闘能力を上回る敵が出現したならば?

 デスバテーターを上回る格闘能力を持った護衛が必要だ。仮に勝てなくとも、縦になれるだけの存在が必要である。

 そこで、イーターⅠの格闘能力のみを抽出すること、デスバテーターが直面し得る困難な局面を打開する任務を持たせた。デスバテーターと同じ航続距離、デスバテーターと同等の武装、デスバテーターが対処できない敵を対処できる格闘能力。

 全てをデスバテーターに揃え、デスバテーターが不足した部分を補う機体。それがイーターⅡであるとすれば、この機体の存在にそれなりの合理的な説明が出来たと言えるのではないだろうか。(そう言って欲しい)

 

 

 イーターⅡにおかしな設定や数値と言う要素は比較的少ない。いくらでも開発の経緯を妄想想定し、現実性の高い設定を付け加えることが可能だ。しかも、いくらでも考察者の裁量が利く。

 が、根本である戦闘機としての価値は正直微妙

 しかし、あったらあったで使い道のある機体であることは間違いないだろう