旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガルマン・ガミラス兵器群 戦闘空母――ブラッシュアップ艦――

 

 戦闘空母はガミラス帝国でもおなじみの特殊戦闘艦である。ところが、ガルマン・ガミラス帝国においては比較的ポピュラーな戦闘艦へとその立ち位置を変化させた。

 今回はこの艦を考察したいと思う。

 

 

 

 ――データ――

 艦級名:不明
 全長:522メートル
 武装:艦橋前部三連装主砲2基、艦橋後部回転速射砲塔1基、艦後部舷側3連ミサイル発射管片舷1基
 搭載機数:不明
 搭載機種:双胴戦闘機、重爆機、雷撃機

 

 ほとんど今までの戦闘空母と同じだが、飛行甲板ブロックと艦橋ブロックの接続点がやたらにくびれている。また、艦尾フィンの数は猛烈に減少し、2枚にまで落ち込んでいるのが変更点。

 艦尾のかなり下の方にエンジンが艦体に埋め込む形で据えられ、2基であろう。ノズルコーンが2本か、或いは仕切り版があってエンジンが3基あるのかは判然としない。旧来の戦闘空母より追加で、第一主砲ブロックと艦橋エンジンブロックとの間に片舷1本ずつフィンが設置されて――印象は依然とさほど変わらないにしても、全く同じではない。
 塗装はモスグリーンで、ガミラスグリーンよりどうやら濃い。艦首先端は黒く塗られ、飛行甲板は白く塗装されている。大型エレベーターが2機並列で、右舷と左舷に並ぶ。その直後から艦首へと直線が伸び、カタパルトが埋め込まれている模様。艦橋の最前部はオレンジ色に塗られ、エンジンは青白く発光。

 海外では第一作で登場する戦闘空母に続く艦として〈Revenge II〉とクラス名が与えられている。

 

 

 武装
 大型の武装としては3連装長砲身砲塔2基とミサイル6門を擁する反面、砲戦甲板はなぜか劇中未使用。結果として、割と武装のボリュームが小さいし、意外と遠距離型

 

 回転砲塔が艦後部に1基ある為、これも戦闘に使えるが――対空戦闘が主だろう。逆にいえば、この一基ぐらいしか近接戦闘に使える武装がない。特に速射を期待できる武装がこの一基のみちょっと不安。しかも艦橋が邪魔で前方にはあまり射角が取れないのだ

 一方で対艦の遠距離戦闘では先に述べたように長砲身砲が艦首方向に2基とその他ミサイルが6門ある為、正面はかなり強い武装した艦体は艦の後ろ半分に満たない為、中型戦闘艦の長砲身砲と同等の威力が期待できるはず。

 ひょっとして大型戦闘艦より火力がデカいのでは?

 

 

 しかしながら、甲板の機能がよくわからない

 準備稿では飛行甲板が観音開きに左右に展開して砲戦甲板として飛行甲板の裏面が機能するという設定があったらしいが、劇中では未使用。設定上は小回転砲塔が片舷に2基直列、その後ろに横向きのミサイル発射管か何か、更にその後ろに大型回転砲塔を設置してする予定だったらしい。

 この方式であれば、艦の高さを稼がなくとも十分に艦載機格納スペースを艦前方に要することが可能だろう。回転機構だとデッドスペースが大きくなりがちだから、その点は合理的

 

 しかし、重力の大きく働く場面でこの機構が使用可能かは疑問。宇宙戦艦だからそこまで考える必要はないのかもしれないが、大気圏内ではあまり――使える機構ではない。

 また、エネルギー供給路の引き方が全く合理的な説明が出来なくなる。回転機構であれば、飛行甲板形態ではエネルギー伝導管なりファイバーなりが接続されておらず、回転させる事で初めて甲板側のエネルギー伝導管なりファイバーなりが艦体側のエネルギー伝導管なりファイバーなりと接続して砲戦が可能になる。という万が一の誤射に備えた安全策と同時に、エネルギー供給路が簡単に設定できる。だが、観音開きだと回転軸の部分以外に艦体と甲板が接続していないため、エネルギー伝導管を設置できるスペースがない……。この部分はちょっと整合性が取れない。

 まあ、準備されていたとしても劇中では未使用だったため、考えるだけ無駄かもしれないが

 


 確かに火力は高いが結構中途半端な武装で、第一作の戦闘空母やヤマト2のいかんなく航空戦力を発揮し、同時に戦艦としても機能を果たした戦闘空母とは性格が全く異なる。正直、使い勝手が悪い
 対艦戦闘において、長距離砲戦の場合には最低でも中型戦闘艦並みの威力を発揮するだろう。だが、接近された場合は大型戦闘艦や中型戦闘艦よりも速射できる火力が小さい為、競り負けてしまう危険がある。

 砲戦甲板があるのかないのかが大きな肝となるだろう、砲戦甲板の回転砲塔があれば近接戦闘でもかなりの火力を有するため期待大。しかし、劇中では未使用だったし結局砲戦甲板の設定は確定では無かった。

 砲戦甲板がないとなると、この艦は砲戦だけでは敵の艦隊と戦う事は難しい。まして敵の航空艦隊と戦うのは不可能に近い。挙句に劇中では航空戦力も未使用だったため、この戦闘空母が空母として及第点に達しているかどうかも不明である為、スペック的には悪くない事が予想されるが、細部が設定されていないため、高評価も低評価もいまいちしがたい

 

 

 当たり障りのない評価をすると――軽空母の航空戦力中型戦闘艦=大型巡洋艦相当の火力あわせもっているのだから、能力としては有力だろう。特に、火力は不足傾向にあるガルマン・ガミラスにおいてはかなり期待できる。航空戦力など、端っからないものなのだから、有るだけありがたい。

 ただ、これだけの武装があっても空母である以上、あんまり敵の攻撃には晒したくはないから……宝の持ち腐れ感が強い。

 まあ、遠距離戦闘に終始させれば何の問題もないのだがその意味では、第一作らに登場した“前級”のブラッシュアップとも表現できる。怖いのは敵の艦載機のみだが、これは自艦の航空隊に処理を任せればいい。だから砲熕兵器系の近接戦闘武装を縮小し、遠距離戦闘も可能なミサイルでこれに替える。つまり端っから、中・近距離戦闘を切り捨てた戦い方を想定した設計――これは半分空母半分戦艦としては合理的選択ではないだろうか

 

 

 

 全長の妥当性
 大体、全長に対し1/8強程度が艦首のあのロケットっぽい見た目の部分――大体65メートルか。3/8強程度が飛行甲板で、1/8強が艦載機発進口及び第一主砲ブロック、2/8強程の部分が艦橋及びエンジンブロック。幅は100メートル強を見込む。つまり、飛行甲板部分が約150から200メートルであろうと推測可能。高さはざっくり200ないし250メートルか。
 2連3段空母との比較からして一回り小さい程度、ヤマトと同等かわずかに大型程度と推測できる。その場合――実際は原作設定値で430メートル程度、再設定で600メートルほどだろう。

 

 

 

 艦載機運用能力
 どうして搭載している描写や運用している描写がないのか、私には理由がわからない。よってどの程度の艦載機運用能力があるのかもわからない。

 

 エレベーターがある為、雷撃機からギリギリ重爆撃機を出撃させられるかもしれない。箱絵でも重爆撃機を従えていたしね。第一主砲ブロックの発進口は2連3段空母のそれより一回り小さい為、雷撃機の出撃は不可能。当然、重爆撃機も発進不可能

 これだとエレベーターオンリーでの発着艦となる為、展開力は結構低い

 

 艦体が有る程度双胴である為、ロスが大きいが10機程を縦に並べて収容可能だろう。合計で20機程。仮に、全てを雷撃機に替えれば片舷40機程、双胴戦闘機でも40機程は収容可能なのではないだろうか。まんべんなく搭載した場合は、重爆撃機10+雷撃機20+双胴戦闘機20の合計50機。実質的な稼働はそのうちの38から40機程度だろうか。

 うん……馬鹿にならない戦力だが、軽空母程度特化したそれぞれの任務に機体だと、あんまりこの艦のスペースを有効利用できない気がする

 

 

 そこで代わりの機体としては、格闘宇宙戦闘機ゼーアドラーを上げたい

 これはコスモタイガーと同規模の機体である為、意外と大きい雷撃機が引っかかってしまう発進口からでも十分発進は可能だろう。また、爆撃任務もこなせるマルチロール機である為、この機体を載せれば爆撃機を別個に載せる必要はなくなる。
 また、ゼアドラーの場合、幅は確実に雷撃機の半分である。片舷で計算上、横2列縦10機2段=40機が見込まれる。両舷では80機ほどが搭載可能だろう

 航空部隊としてのバランスを考えるならば、ゼーアドラー40機+雷撃機20機の合計60機か。どちらにせよ、ゼーアドラーを採用しなかった場合よりかは搭載機数が増える。400メートル越えの正規空母にしてはかなり搭載機数が少ないが、半分は戦艦であるこの艦にしては、従来の三段空母と同格の搭載機数を確保できるのは十分魅力だろう

 アングルドデッキを廃止しているため、着艦と発艦は厳密に分けなければならないだろう。まあ、3段空母のあの形式をいまだに平気で使いこなしているのだから、多分問題はない。


 搭載機再設定(再設定値ヤマトと比較した場合は、これらの数を約3倍する)
 搭載機数:ゼーアドラー35+補用5、雷撃機15+補用5、合計50+補用10(ゼーアドラー単独搭載で常用70+補用5を見込む)
 搭載機種:ゼーアドラーⅢ、雷撃機

  

 

 運用・立ち位置
 小規模艦隊の防空艦。護衛艦艇の数をあまり割けない弱勢な戦闘艦隊の戦力増強。といったところだろうか。当然、辺境域での活動は視野に入る。

 

 小規模艦隊であれば、ベースとして戦力を大量投入してくるボラー艦隊相手であるから場合によっては全員サッカー状態になりかねない。空母も火力を有していれば、敵艦隊に接近されても多少は踏ん張れる。実際、新たなる旅立ちで三段空母が見事先頭集団で砲撃戦に参加していた。

 反対に、戦艦ばかりでも多少艦載機があれば敵空襲にある程度抗せる。どちらにウェイトをおいても、この戦闘空母は能力を発揮可能。

 また、この艦を特殊任務に用いるとしても、旗艦であるからといっても護衛艦を割く必要は大してない。この艦であれば、艦隊の直接的対艦戦力を圧迫しない形で、航空戦力を編入する事が可能となる。

 

 

 この自分で自分を護衛できる能力は、ボラー艦隊より巨大艦隊を常に提供できるわけでは無いガルマン・ガミラスにとって、魅力的な設計だろう

 だって砲戦に参加できるレベルの空母だもの、護衛艦艇の数を大幅に圧縮可能になる。ぜひ艦隊に参加してほしい、特に中・小規模艦隊に。

 

 

 思い出してほしいのは――ガルマン・ガミラスはボラーに数で勝てない、一度たりとも上回る数を派遣できたことがないという事。つまりところ……別にガルマン・ガミラスは艦隊戦力が数的に充実しているわけでは無いのである

 そんな中で、護衛艦が少数ですむ空母。ベストな選択だろう。多少艦載機運用能力が低くても、そもそも航空戦力をいまだにあまり重視していないガルマン・ガミラスにとっては大きな問題ではない。攻撃と迎撃の幅が増えればいいだけなのだ。仮に航空戦力を重点的に補充したいなら、2連3段空母を編入すればいいだけ。

 もっといえば、ボラー側も惑星制圧戦以外にはあまり航空戦力を使わないため、ガルマン・ガミラスにとって艦隊戦における航空戦力は保険程度といっても過言ではない。ダゴンの発言からもそう推測は可能。

 だとすれば、そこそこの搭載機数と結構な火力を有している戦闘空母は、まさにおあつらえ向きの戦闘艦これらの想定から、ガルマン・ガミラスの事情からし戦闘空母の地位が第一作やヤマト2以上に大きく向上したのは当然の流れだと説明が可能。

 カッコいいとかいう大人の事情とか関係なしにね。

 

 

 劇中の活躍
 第10話にて初登場、僚艦3隻集中運用を以て第17空母艦隊の火力及び航空戦力の補完役を担った。これらはヤマトを追い詰めたものの、翌第11話でショックカノンに質面疔内にされて戦没。

 第16話の建国記念セレモニーでデスラーパレス上空を飛行し、堂々再登場を果たした。しかしながら、その後の行方は知れず。

 

 

 基本的にマズイ戦闘艦ではないむしろ、ガルマン・ガミラスにとっては有用艦。ちょっと中途半端な感じは否めないが、それはガルマン・ガミラスの方針によるところと説明が可能――ダゴン艦隊の大惨事を見て駄作艦とするのはあまりに過小評価過ぎるというものだろう。