旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガトランティス兵器群 ミサイル艦―悪魔の艦―

 

 ミサイル艦:通称ゴーランド艦。メカコレのような旧世代のプラモデルではどうしても再現できないあの特殊な三次元形状――
 どう見てもアーセナルシップです。本当にありがとうございました。

 今回はこのものスゴぐアヴァンギャルドな見た目の豪快な戦闘艦について考察してみたいと思います。

 

 

 ――データ――

 艦級名:不明
 全長:240メートル(ないし275メートル、場合によって200メートル)
 全幅:126メートル(ないし142.2メートル)
 自重:68,000トン(ないし140,000トン)
 乗員:90名
 武装:艦首破滅ミサイル2基、ブリッジミサイル1基、5連装ミサイルポッド6基 、艦首上部“吸着地雷様ミサイル”2基、上甲板中央部“ロケット様ミサイル”3基、3連ミサイル砲塔4基、上甲板艦尾3連“空対空様ミサイル”発射台1基、艦底部艦首ミサイル3基、艦底部中央“空対空様ミサイル”2基、同ミサイル艦尾2基、連装ミサイル砲塔12基、艦橋基部連装小型ミサイル砲塔2基、同砲塔艦上部4基、同砲塔下部4基、同砲塔艦央部4基、中型ミサイル3連ポッド(らしきもの)2基、小型ミサイル(らしきもの)8連ポッド2基、破滅ミサイル基部ミサイル様ユニット8基。

 合計112+α30発。

 

 ガトランティス艦のデザインアウトラインである円盤を基本形とし、随所にミサイルポットを埋め込んだ超重武装艦。艦首からエンジン部までは軸の様に艦橋基部や下部フィンの基部となっており、翼部前面にはミサイルポッドに混じって蜂の巣機構が上下二列左右に1づつの計4個存在している。エンジン噴射口は駆逐艦と同形式のものが上下に二つ連結し、円形の別形式噴射口を備える。

 おなじみのプラモデル、ゴーランド艦あるいは〈ゴーランド〉の事である。残念ながら、クラス名あるいは艦名といった細かい名前は設定されているわけではないらしい。ちなみに、海外では〈Exterminator〉というクラス名を貰っている模様。また、海外だと第10話冒頭で登場した搭載のシャトルを〈Strider〉と呼んでいるらしい。海外勢は芸が細かい。

 

 

 全長の妥当性


 描写と全長は一致しない。劇中艦橋はかなり広くとられているが、メカコレでの採寸あるとか、艦体と艦橋の比率から換算すると、10メートル×7.5メートルとそこそこ程度。しかし劇中の描写を考えると、ゴーランドの背後にもかなりの空間、左右にも相当な空間、前面に至っては艦橋クルーやらで埋まっているため、広さはバスケコート1面の二回りぐらいは大きくしておきたい。高さは常識的で問題ないが、単純に面積は必要。多分、これぐらいあれば十分、描写の通り――のはず。さもなくば、大変こじんまりとした艦橋になってしまう。艦の延命も考えると、艦橋を広くとって損なことは少ないだろう。

 他方、あれだけのミサイルを発射し、小型に関しては即時再装填可能と言うのは……あの全長240メートル、全幅126メートルに入るのだろうか。もっと言えば、あれだけ詰め込んで一発当たりが小さくはならないだろうかという事。5連ミサイルポッドに搭載されたミサイルは、比率から言えば大体1メートルから隠れている部分をプラスしても2メートルほどとかなり小型になる。アメリカが開発してきた個人携行(発射艦橋記号がF)のミサイルなんかと同じぐらいの大きさだ。これらは射程が大体4キロほど。

 これと大型ミサイルが同等の射程と言うのは解せない。ご都合主義の描写であるか、小型ミサイルの射程圏まで近づきつつ大型ミサイルも発射したと考えるかのどちらかになる。が、あれほど小型のミサイルが長射程であるというのは一体如何なる推進形式であるか燃料であるか……

 

 そこで、全長を再設定したい。基準となるのは艦橋内部。これが大きくなれば当然、各種ミサイルも大型化するだろう。艦橋面積としては、バスケットコートを基準に二回り程度広い30メートル×42メートルぐらい取っておくとする。これは元来の想定面積の4倍ほどであるから、艦体全体をそのまま数値を4倍する。

 つまり――


 全長:960メートルないし1100メートル(破滅ミサイルを含む)
 全幅:504メートルないし568メートル
 全高:全幅よりわずかに縮小

 

 えげつないのが、破滅ミサイルが元々60メートルほどあるはずなのに、4倍すると240メートルとなってしまう。自分で想定していてどうかと思った。だって主力戦艦とほとんど同じ全長だもん。もっと言えば、全長に含まない想定だってあるだろう。その場合は……別個、破滅ミサイルの考察を行いたいと思う。

 各種ミサイルも4倍になる為先のミサイルも最大で8メートルが想定できる。

 2メートルの携行弾では4キロがせいぜいだが、約6メートルのトマホークは型によって最大射程3000キロ。ガトランティスが推進にどのような燃料を用いているかは不明だが、地球の技術で6メートルほどのミサイルがそれだけの射程を得られるのだから相対的に小型のミサイルでも大型化できれば、ガトランティスの技術ならばかなりの射程を稼げるだろう。

 

 という事は、4倍の数値に拡大出来ればミサイル艦の“最低射程”は3000キロから4000キロとなる。

 最大じゃないよ、最低だよ?

 

 

 

 ミサイル艦の立ち位置、運用


 ミサイル艦は全長的には巡洋艦的な立ち位置であろう。実際、英語ではミサイル巡洋艦などと呼称されている。戦艦とは別の任務をこなし、戦陣を共に組むことはないが遠大な作戦計画の中で共同戦線を張る、それが巡洋艦の一つの定義であるとするならば完全に合致しよう。

 しかし、艦の装備からしむしろアメリカでかつて計画されたアーセナルシップが一番近い性格の艦種といえよう。

 

 アーセナルシップは、500セルからなるミサイル発射機構をそなえ僚艦とデータリンクさせて攻撃を行うミサイル母艦である。個艦探査能力は皆無であることが特徴で、僚艦や早期警戒機からの情報に頼り切りである反面、電子機器を徹底的に削除して艦を安く済ますことが出来る
 しかし、それが大問題である。

 単独行動が、一切できないのである。これは致命的だ。通常艦艇と共に2隻で航行していた場合、僚艦に突発的な不具合が起きたならば途端にただの浮かぶ弾薬庫となってリスクどころかハザードとなる。通常艦艇2隻以上と共に航行すればある程度はリスクヘッジできるだろうが、艦隊にとっては空母以上に無防備な存在となって足手まといになりかねない。
 ミサイルは再装填する必要が有るが、大きさによっては弾道ミサイルの様に再装填不可能なものもある。セルがたくさんあったとしても、再装填できる予備が確保されねば継続的な攻撃は行えないそれを実現するには困ったことに補給艦(給兵艦や貨物弾薬補給艦)を前進させて随伴してもらう必要が有る。個艦戦闘能力を持たないアーセナルシップの隣に補給艦では、的が2倍になっただけであって補給中は極めて危険だ。なんなら、そこら辺の補給艦――例えば高速戦闘支援艦なんかの方がデコイだのファランクスだのなんならミサイルだって自衛用に積んでいた艦もあったくらいである。アーセナルシップの原初計画はこれら自衛能力を持つ補給艦艇以下、なのである。
 アーセナルシップみたいな面白い発想だけど実際に作ったら全体に中途半端になる艦など、誰も求めていなかった。

 


 しかし、ガトランティスのミサイル艦は違う。

 ビーム砲の類が一切ない危うい自衛能力であるが、一方で劇中に見せた艦載機ばりの極めて高い機動性は作戦行動するうえで非常な利点となる。

 また、ゴーランド艦隊はテレサのコスモウェーブをおおむねの場合において遮蔽する強力なジャミング力を備えていた。発射後はいくらミサイル自身が考えて行動するとはいえ、一定程度誘導は必要な為、一時に全弾発射を行った場合、100発からなるミサイルを管理する必要が有る。また、惑星を破壊できるほどの能力を持った破滅ミサイルの爆発余波に耐えなければならず、これを実現できるだろう。前述の機能と共に、本艦の電子戦能力が極めて高いことを如実に示しているといえる。

 (ただし、エンジン形式が有限タイプの場合、無限である波動エンジンを備えた艦艇つまりデスラー艦やヤマトの電子戦装置には電波出力や発信の継続の面で競り負ける可能性がある)


 前述の通り、確かに自衛用の実体弾砲もビーム砲もない。しかし、機動性と電子線能力がより効果的で範囲の広い防衛手段として力を発揮するだろう。機動性は物理的に敵のミサイルや砲弾、ビーム兵器から逃れるためには不可欠だが、それが艦載機レベルまで到達していればこれらはもはや恐るるに足らず。反対に敵側は、この高速戦闘艦の迎撃方法を検討せねばならず攻撃を一定程度抑制ないし考えなしの弾幕張りに終始する事になる。
 ミサイルは再装填可能で、艦内に多数予後が保管されている模様。また、破滅ミサイルすら再度装填可能であるが、これが艦内に置かれていたものなのかあるいは、潜宙艦と同様の強力なステルス機能を有した給兵艦が控えていたのかは不明。場合によっては再装填できず、未発射の艦艇が前面に立って第二次攻撃の準備をしていた可能性もある。

 ミサイルの内容も形状がかなり違うため、本来は様々な目的によってミサイルを打ち分けると思われる。また、炸薬も種類が異なると考えて構わないだろう。ブリッジミサイルのような偶発的な起爆を避けたい部分には反応しずらい炸薬を込めている事は間違いないだろう。だって、ダイナマイトと違って勝手に燃えるかもしれない火薬が詰まったでっかい筒が足元にあったら落ち着いて指揮なんてできないもん、普通。


 一番興味深いのは、ヤマトのような光速を突破できる戦闘艦で30日ほどかかる距離をほんの数日程度で到達させられるテレサのコスモウェーブを遮断できる電子線能力である。

 自身が放ったミサイルの管理と、敵ミサイルやその他攻撃手段への迎撃を一時に行う必要が有り、その処理能力は想像を絶するほど高い。100発放ってその軌道を管理しながら、敵側のミサイルも同数程度を補足し攻撃を加える、としなたなば――同時数百目標補足、同時数百目標対処となる。イージスシステムの比ではない。テレサのコスモウェーブを阻止できるほどのジャミング能力も保有一方で第10話で見たようにデスラー艦にがっつりと妨害電波を打ち消されているため、能力には限度があるいる。これならば積極的に電子戦を敢行して、敵の誘導兵器の能力をかなり減じる事が出来るはずだ。

 

 つまり、ミサイル艦は誘導兵器特化の超攻撃型のアウトレンジ戦艦。

 そして破滅ミサイルキャリアであると言える。

 

 破滅ミサイルはその内容は別の記事に纏めたい。

 破滅ミサイルとは外見上、艦首に二本とってつけた巨大ミサイル。インパクト抜群であるし20隻ほどが全弾を発射した場合は文字通り惑星を一つ破滅させることが出来る。ヤマト2の描写では第9話に見られる通り、発射許可は支隊の隊長程度では自分では下せないらしい。それほど管理の行き届いた、危険な兵器であるとだけは言えるだろう。

 


 運用は次のような想定が出来よう。
 1、圧倒的投射量を誇るミサイルにて先制攻撃をかけて敵前衛に突破口を形成。味方艦隊の突入を支援。敵戦力によってはこの時点で殲滅。

 2、駆逐艦隊の襲撃と同時にミサイル投擲を行い、駆逐艦自身はワープで爆発から退避するという危険な奇策。

 守勢的な方策としては、敵の襲撃に対してミサイルで弾幕を展開して味方艦の反撃体制構築までの時間稼ぎも出来る。複数隻の集中運用であれば、たとえビーム砲の類が無くともミサイル自身の爆散によって敵のビームだのの波長を狂わせたり、粒子ビームの収束を阻害したり。これらによって十分防衛は出来るだろう。

 

  普通に征服(破壊)をするために惑星前面に展開して破滅ミサイルを撃ち込むという平凡な作戦を行うことが出来るのは当然。被征服地で彗星帝国本国の後背地や前進地で反乱がおきた場合は、安全に惑星ごと消滅させることがこの艦ならば可能である。

 ただ、敵艦隊の前面に立って突入するのはさすがにガソリンをかぶって火の輪くぐりをするようなものである以上、遠慮したい。

 

 

 艦のデメリットは何か。前述の通り、存在が自体が危険であるという事。これは間違いない。

 艦への被弾ならまだしも、ミサイルへの被弾は即誘爆事案だ。これはヤマト世界でなくとも現実にもあり得る話だ。仮に、艦に貫通打が出てしまった場合はこれもまた艦内のミサイルが誘爆してしまう可能性がある。多分誘爆する、絶対誘爆する

 かつて期待されながらもアンラッキーショットによって海の藻屑となった数多の戦闘艦の二の舞を宇宙で演じてしまう事になるのだ。〈インヴィンシブル〉、〈インディファティガブル〉、〈クイーン・メリー〉、〈フッド〉……

 一隻が誘爆事故を起こせば、密集隊形を取っていれば完全に艦隊全体が吹っ飛ぶ。散開していたとしても、周辺の一隻二隻は被害を被るだろう。ヤマト名物誘爆の人気店になってしまう。

 

 誘爆の危険を考えれば単独艦種での運用は避けたいし、集中運用も避けたい。

 一方で、単艦での作戦遂行力は皆無に等しい。

 これはかなり痛い。というか、運用できる場面が限られてしまう。艦載機の襲撃を受けている最中は全く対艦攻撃が出来ず、敵はぎりぎりの射程から砲撃戦を行えばいい。何気に人でなしな戦術だが、単独ないし少数・単独艦種での艦隊行動中ならば多分これ有効。単独ならば多分手も足も出ない。艦隊内の配置も、出来るだけ内部に置くか護衛艦艇を張り付けておく必要が有るだろう。敵艦隊が死に物狂いでミサイル艦に照準を合わせて突っ込んでくれば――惑星一個を破壊できるエネルギーの1/40近くが艦隊内部で解放されてしまうのだ。

 多分、奇襲的にワープをして破滅ミサイルだのを敵母星や敵主力艦隊にぶち込み、さっさと逃げる。あるいは、優勢が確定した時点での投入によるダメ押しの一手や、被征服地の警備ぐらいしか使い道はないだろう。

 そして、被征服地の警備と言う役割の可能性については、さらばではそのものずばりの運用であり、これは合理的な展開と担保できる。ヤマト2でも、テレザート警戒が基本任務であってデスラー総統が気兼ねなくヤマトと戦えるようにするのがその役割だった。この点も、実はかなり合理的――な一方結構警戒の薄い対応であると言えよう。

 


 艦自体の運用面メリットだってある

 単一兵装であれば整備や補給は簡単になる。砲弾との併用で搭載量が減ることもないし、粒子砲発射機構にエネルギーが取られることもない。何なら電源喪失時、あらかじめ人力で発射できる方法を取っておけば、どんな場合だってミサイル攻撃ができる。有線誘導なりをしないと事実上ロケットになるかもしれないけど。

 仮に、種類の違うミサイルであるならば、迎撃用や対艦用であるとか対惑星用であるとかの使い分けが出来る。全弾発射して手数を増やして敵の迎撃手段を減じつつ、さっさと逃げる事もできるだろう。単独では若干不安だが、2隻以上を以て行動すればサッチウィーブよろしく、一隻が注意を惹きつけもう一隻が敵艦砲の死角から大量のミサイルを発射すれば、全て丸く収まる。


 空母と組み合わせれば艦隊は圧倒的なロングレンジないしアウトレンジ力を持つ。

 駆逐艦と組み合わせれば戦闘距離を自在に選べ、攻撃力が上昇。

 戦艦と組み合わせれば対地攻撃力を圧倒的に補完可能。

 潜宙艦と組み合わせれば能力の相互補完による一方的な打撃が可能。

 ミサイル艦と組み合わせれば圧倒的な投射力と機動力を担保できる。


 

 このように、ミサイル艦は癖が極めて強い。

 単独での運用を考えた場合は全く話にならない。集団でも頭を使わなければ即座に敗北どころか全滅してしまう危険もある。しかしながら、危険性を承知した上での運用ならば、むしろ敵艦隊に対しての決め手にもなり得る玄人好みの戦闘艦、それがミサイル艦なのである。

 現実的な意味では、アーセナルシップの低価格化を無理せず行った場合の事例、実際に採用した場合の運用、その思考実験のような艦だと評すことが出来る。

 

 

 割と合理的な説明も加えられたと思うし、出来るだけ擁護したが――

 正直乗りたくない