旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ヤマト世界における艦載機の価値

 


 ヤマト世界において艦載機はとても特殊な存在である。

 


 “普通の”宇宙艦であれば、艦載機は有効だ。

 例えば銀英伝の戦闘艦やあるいはスタートレック宇宙艦スターウォーズのデストロイヤーなど、結局一体通常航行時にどれだけの速力を出せるのか不明だが、普通の水上艦のそれと変わらない程度の描写をされる。そんなゆっくりした宇宙艦がなぜ星々を股にかけられるかといえば、適宜遠隔地への移動の際にワープ航法を使い短時間で移動するという方法を取るから。

 他方、艦載機(コスモプレーン)は宇宙艦とはけた違いの高速と運動性能を以て、宇宙艦の手足を務めたりあるいは単体でも宇宙を股にかけたりもする。

 

 これらは、その速度差や場合によってはワープ性能の違いから、海上における戦闘艦と艦載機の関係と同じ性格の関係性を持つことが出来る。

 

 

 ではヤマト世界ではどうか。
 ヤマトは最大速力にして通常航行時に光速の99パーセントを発揮できる。

 


  速い、速すぎる。

 


  これでは艦載機は必要ないのではないか……。そこで、今回はごく一部から噴き出した≪ヤマト世界艦載機不要論≫について考察、場合によっては反論してみたいと思う(反論する気満々)。

 

 

 戦場。戦艦を、止める。
 艦載機が活躍する余地は、宇宙艦よりも足が速い場合において発生する。だから宇宙艦が足踏みをする場面がどれだけあり得るかを考察することで、艦載機の活躍する余地があるのかを見極めたい。

 

 まあ、船足を止めさせる方法は幾らでもある。
 例えば、ヤマト2であったアンドロメダのヤマト追撃戦などは判り易い例だろう。

 テレサからの通信を受け取ったヤマトは防衛司令部をガン無視して発進、他方アンドロメダはヤマトの行動を阻止、或いは撃沈する任務を帯びて転舵。途中空間においてアンドロメダはヤマト補足に成功、ここから追撃戦に移る。アンドロメダとの砲戦を避けたかったヤマトは前方に展開する小惑星帯に突入、全速力でここを突っ切ろうと試みる。アンドロメダもまた、小惑星帯に突入しヤマト追跡を試みたが、しかし未熟なクルーばかりのアンドロメダでは全く敵わず。結局小惑星帯で振り切られてしまう。結果、最新鋭艦アンドロメダはその巨体とクルーの未熟さで足を止められてしまったのである。最後には土方総司令の機転で一足先に待ち伏せする事に成功したが。
 (自動航行にすれば――という話もあるが、自動航行ならばなおさら、全速だったり急停止だったりでエンジンに過負荷がかからないようにと判断して余計に船足を遅くする判断をするだろう。そこを無視して事故を起こすのが人間……)

 つまり、最新鋭宇宙戦艦がたかが岩塊によって足を止められたのである。

 

 

 よくよく考えてみれば光速の99パーセントを常に発揮するのは恐らく不可能だし、まして戦闘中であれば爆雷だののいきなりの投下を進路上にされては避ける間もなく全部被ってしまいかねない

 電子機器の性能も関係するだろう。例えばレーダー。電磁波は光と同じスピードで伝播するが、発して帰ってきてのタイムラグとコンピューターの処理にかかるタイムラグ(仮に量子コンピューターであれば1ms=1000分の1秒の処理速度だが)で多分、99パーセントよりかは遅い速度でしか航行できないはず。大体、レーダー波と同じぐらいの速度で進んだら……レーダーに一体何の意味があるのか。

 

 

 あたご型護衛艦に当初組み込まれたイージスシステムのベースライン7.1は使用するコンピュータがAN/UYQ-70であるが、普通の32ビットコンピューター270台分性能を持つという。こんごう型護衛艦などの古い艦で採用されているベースライン4や5ではAN/UYK-43を使用し、32ビットコンピューター4台分という事だから相当な性能向上だ。件のあたご型は現在ベースライン9へと変更をしており、さらに性能が向上している事は言うまでもない。戦術データリンクシステムに関しては海上自衛隊は新鋭は名称ACDS、OYQ-二桁番台の型番のものを使用している。
 肝心なのはヤマト世界の宇宙艦がこれらが光速と同等か、あるいは上回る処理速度を有しているかという事。多分、より高性能なコンピュータを搭載しているだろうが、それにしても30万キロ離れたある地点から発射された光速の粒子砲を1秒以内に観測して脅威評価して警告を発して――あるいは自動でエンジンに反映させられるだろうか?

 多分、計算自体は出来るだろう。しかし、エンジンへの反映まではできないのではないだろうか。まして乗組員自体の処理速度のせいで、光速での戦闘はほぼ確実にどんな警告も無意味。


 戦闘中は事前に攻撃準備を察する必要があろう。例えば砲の旋回であるとか、または速度が幾らか遅いであろうミサイル攻撃と粒子砲の脅威評価であるとかの設定は極めて慎重に行わなければならない。
 こんな複雑な事を、光速で航行中という条件設定を加味して計算させることが出来るだろうか。出来たとして、高々数百メートルの戦闘艦の中にそれだけのコンピューターを詰め込めるだろうか。1つだけでは故障した場合にとんでもない事になる。複数積み込む必要が有る。
 地球の駆逐艦に詰めるだろうか? ガミラスデストロイヤーに詰めるだろうか?

 何より、人間が使いこなせるだろうか?

 人間に、光速での戦闘がこなせるだろうか?

 


 地形(障害物)とコンピューター、そして何より人間の反応速度から、戦闘中に限らず余程の事――背後からニュートリノビームが迫っているとか――がない限り光速の99パーセントだのそれ以上だののスピードを出す必要性はない。と、結論付けられる。

 むしろ、危険すぎて出せないというのが実際。

 

 


 さて、宇宙戦艦の速度が設定よりも遅い速度しか発揮できない場面が多いという想定が出来たこれで艦載機が登場する余地が出来たのである

 宇宙艦が亜光速以下の普通の速度でしか戦闘が行えないならば、宇宙艦より高速な戦闘機が存在するならば当然、活躍する余地はある。失ってもそこまで大きな損害にならない艦載機ならば危険な行動をさせるという選択肢も、無くはない。いくらでも艦載機が活躍する余地は存在するのである。

 

 

 ヤマト世界における艦載機(コスモプレーン)の役割は何か。求められる能力は何か。
 基本は普通の艦載機と同じである。だが、活動空間や性質は異なるだろう。描写から見る事が出来るかもしれない。

 

 

 絶対条件となる能力は敵戦闘艦よりも速い速度で接近あるいは退避し、一回の斉射と同じ効果の攻撃を敵戦闘艦に直撃させる。あるいは、レーダー圏外やうかつに侵入できない地点への斥候だ。

 当たり前だ。それよりも興味深いのは何か。

 

 ヤマト世界の艦載機で興味深いのは大気圏突入描写が無い事である。
 ヤマト世界において、少なくともコスモタイガーの大気圏突入はない。発進描写の無い完結編が唯一、大気圏突入の可能性を有するが……それ以外でヤマトに運ばれる形以外で惑星ないし要塞表面への攻撃を敢行したことはないのである。ブラックタイガーも同じであり薄い大気は別にして、多分大気圏突入能力はないのだろう。これは他の勢力も同じで、我らがガトランティスのデスバテーターも中型高速空母に運ばれて大気圏内に侵入した。
 微妙なラインがボラーとかいうやつの戦闘機部隊やディンギルとかいうやつの大型戦闘機。前者は描写が雑なのか狙ったのか、シャルバート上空の成層圏あたりから発進させていた。後者は大型空母の潜伏位置が不明なせいで全くわからない。空母が中間層や成層圏の最上部まで降下していれば、適切な角度での侵入を行えばそんなに問題はないのかもしれない。

 

  だだし、”その類”にまで適用範囲を拡大すると、大気圏突入をしていないというと、確かに嘘になる。
 つまり、いつもの揚陸艇の事。あれは単独で大気圏突入を何度も繰り返している。ウラリアの時なんかはえらい距離を飛行していた。が、艦載機とは性質が異なる為今回は除外する。 見るからに艦載機とは異なるの構造を有しているため、反対にこちらは大気圏突入が出来て当然かもしれない。


 また、我らがガトランティスの長距離大型偵察機(デスバテーターの偵察型)も大気圏に確実に突入していた――もしかしたら潜宙艦の背に載せられて大気圏突入したのかもしれないが――。

 

 

 何を強調したかったかといえば、ヤマト世界の艦載機は基本的には大気圏突入をしない。母艦によって運ばれ、戦闘宙域に直接出撃するのだ。
 ここれらの事情から、必要とされる能力と必要とされない能力が明確にできる。


 つまり、必要な能力は――

 1、味方快速艦よりも圧倒的な速さ
 2、敵戦闘機との格闘能力
 3、一定程度のステルス能力
 4、集団での攻撃を前提として、高めの攻撃力
 5、1から3を阻害しないことを絶対とした、高めの航続力
 6、1から4を阻害しないことを絶対とした、高めの防弾性能
 7、今更言うまでもなくデータリンクシステム


 必要のない能力は――
 1、大気圏突入能力
 2、ワープ等の特殊な航法
 3、攻撃的な意味での電子戦能力
 4、短距離での離陸能力


 と挙げられるだろう。
 一発受けただけで爆発したり、攻撃に出て言ったはいいものの全く爆弾が通用しなかった、などという事になれば大惨事である。艦載機が戦闘艦艇より遅かったらそれはもう、目も当てられない。都市帝国攻略戦のようなステルス性を発揮してもらわなければならない戦闘も頻繁にあるだろう。1から出来れば4までの項目は絶対に達成したい。

 一方で5から7は最悪妥協できる。航続距離が短くともそれは運用でカバーできるし、格闘能力に疑問があってもパイロットの技量である程度はカバーできる。コンピューターも脅威評価だの誘導だの全ての処理をするのではなく、編隊全体で機能させる様にするとか、パイロットにも頑張ってもらうとかでスペックだの容量だのを必要最低限に抑えられるだろう。

 

 必要のない能力は当然、達成しようとすると余計な重量がかさむ原因となる。
 艦載機は普通(細かいようだが後で指摘されると腹が立つので、艦上機というのが空母の搭載機の呼び方で艦載機は観測機などの空母以外の艦船が搭載する航空機である。という事は分かっています――と明言)空母で運ばれる。単独でワープする必要など皆無。そりゃ、出来た方が良いに決まっているが、無理してワープ用の機関を乗せる必要はないという事。宇宙空間を戦場としているコスモプレーンであるから、地上のどの戦闘機より航続距離は長いだろう、仮に惑星の反対側から大気圏に突入し艦載機を射出、2方向から目的地合流して――といった方法も十分とれるだろう。無理やり必死こいて単機で大気圏を突入せずとも手札はある。

 当然、コスモプレーンであるから宇宙空間では滑走距離はゼロと言っていい。無論、滑走したってかまわないが、必要距離としてはゼロ。さすがに地上では長大な滑走距離が必要となろうが、あくまで地上からの離陸での話だ。地表でも、射出できればそれでいい。
 攻勢側としては空中で母艦が収容できればまた同じように射出すればいいだけだし、滑走できる場所を必要とするのは迎撃側。こちらは別に短い滑走である必要性はない。

 電子戦能力も対抗して味方機と通信できる能力ならば当然必須だが、それ以上はなかったらなかったで積めないなら仕方がない。


 これらが、コスモプレーンに必要な要素といえよう。

 

 


 ではどうやって使うか。これは艦載機の性質上、いくらでも柔軟な運用ができる。
 すでに示したように――というより、運用上必要だから設計するというプロセスこそが正しいプロセス――、遠方から、自艦隊をおおむね安全地帯に置いたまま敵艦隊を攻撃するのが当たり前の運用。一回の攻撃につき、全てが誘導弾的性格を持ち戦闘艦の一回から2回分の斉射と同等以上の高い打撃力が見込める。これが奇襲的に敵にぶち当たるのだから、戦況を転がす事が可能だ。
 近接戦闘でも、艦載機は優秀な存在と言える。艦載機は攻撃兵器でありながらも迎撃任務を行える万能な兵器なのだ。敵の攻撃兵器が母艦へ接近する前に、自ら前進して迎撃を行い、母艦の自衛を大きく支持するのである。危機的譲許ではあるが。

 これらは極めて基本的な艦載機の運用。


 日本やアメリカの様に空母を集結して攻撃を行う、打撃力に頼った大規模攻撃。場合によっては奇襲的な性格を持たせてより高い効果を上げる。
 イギリスが遠洋での作戦で実行したりイタリアがやろうとしたように、空母は艦隊防空の任務を主軸としてチャンスがあれば敵へ攻撃を行う。QシップCAMシップのように1機しか載せられなくとも、1機あるだけでそれなりに意義があるしMACシップの様に4機ぐらいあればそれだけでグンと防空能力が高まる。対潜あるいは小規模な敵戦闘機隊相手の船団護衛にはもってこい。

 

 

 宇宙空間でも実際はあまり宇宙戦艦は高速を発揮できないという仮定が正しいとすれば、それは普通の大気圏内の戦闘と変わりはない。

 確かに、3次元的な戦闘となるが、実際の戦闘も水中を含めれば現在もすでに3次元の領域である。まして水中ドローンなんかもある為、これが水中における艦載機的な立場と据えることができよう。


 時代や状況が異なったとしても、小型かつ快速で高攻撃力を持つ艦載機はその価値や地位が少しも変化しない。そう仮定することが妥当なのではないだろうか。

 


 無人機が有人機にとって代わるという可能性は十分にある。
 しかし、艦載機が無用になるという仮説は、全くナンセンスといえよう