ガトランティス兵器群 大戦艦―汎用・大量建造艦―
大戦艦。中型高速空母や駆逐艦とは全く違う外見でありながら、バイオミメティクス的形態の戦闘艦としてガトランティス兵器らしい戦闘艦である。
戦艦でありながら駆逐艦並みの高速と圧倒的多数で地球艦隊に迫ったこの艦を考察していきたい。
――データ――
艦級名:不明
全長:310メートルないし382メートル
全幅:87.7メートルないし108メートル
自重:63000トンないし230000トン
乗員450名
武装:主砲・10連旋回砲塔3基、舷側7連装旋回砲塔4基、艦首7連装光体砲翼2枚、艦橋基部大型連装衝撃砲1基、3連艦橋衝撃砲3基
全体として、クルマエビのような、あるいはトクビレのような極めて海洋動物っぽい見た目をしている。
特徴的なのがパゴダマストの様に段々が重ねになった円筒列の上にブーメラン型の艦橋が置かれ、背後には射撃指揮装置なのか複数の装置を背負う上部構造物群。艦首の旧世代潜水艦のような形状、ライオンのたてがみのような突起物や横に突き出た光体砲翼と、後方の巨大フィンなど、視覚的に長大な印象を与える。
珍しいというか、意外なのはあの目のような蜂の巣レーダーが無い事。これは後に登場してくる超巨大戦艦と同様の形式であり、ガトランティスの中で古い艦種であることを示すのか、あるいは反対に最新機種であることを示すのか不明だが、他の艦と大きな差を見せている。
ちなみに、艦名を貰っている艦はないとみられる。また、クラス名も特に設定されているわけではなく単に大戦艦と呼ばれているだけ。しかしてそこは海外に目を向けるとクラス名なのか艦名なのか知らんが〈Bringer Of Victory〉などと呼ばれている。つまり日本語で〈勝利をもたらす者〉とはめちゃカッコいい名前――しかして勝利をもたらしたのはヒペリオン艦隊相手の一回だけだが……
大量建造・汎用性
この艦の意外な点は、その長大な全長という配備の困難であろう要因に比して、相当数の配備がなされているという事。
さらばでは突入してくる地球艦隊を包囲殲滅しようと展開=36の戦艦と81の巡洋艦を確実に叩けるだけの圧倒的多数を保有していたとみて問題ないだろう。地球軍の惑星基地を攻撃する過程で一定数損失が出たとして、土星圏に到達する前の段階では相当数の大戦艦が第6遊動機動隊に配備されていたはずである。
ヤマト2においては、何とシリウス方面軍は80もの大戦艦を集中運用していた。ナスカの偵察遊動艦隊だけでも8隻の大戦艦を擁し、第25戦闘艦隊においても複数隻の大戦艦を編入していた為、小規模艦隊でも配属し得る艦であることは明白だ。また、ラーゼラーによる地球に対しての降伏勧告に対しては駆逐艦(これが不遇だった駆逐艦の晴れ舞台でした)を従え、大戦艦が旗艦として地球に飛来した。
この艦が大量配備されるには、当然大量建造されなければならない。
大量建造するには、当然その理由が必要である。
大量建造の有用性① 快速
大戦艦の大きな利点は、機動力が駆逐艦と同行できるほどに高い事だろう。
さらばで土星において大惨事を経験した大戦艦群だが、一応陣形の外側に位置した艦は何とか拡散波動砲の余波であるとか、僚艦の誘爆からの離脱に成功。また、迅速に白色彗星の影響圏外ないし、白色彗星のガス体内部へ迅速に退避した。
ヤマト2において、指揮力不足のナスカ配備の艦は散々だったが――兵站基地を守護する第25戦闘艦隊は気合が違った。この艦隊に配備された大戦艦は第11番惑星で上空へ退避するヤマトを、艦首を無理やり上方にもたげて超急上昇しながら追跡していったのはかなりインパクトがあった。その場回頭に近い運動を行い、更にすぐさま主砲の射程圏内にヤマトを収め続けている。またバルゼー直属の第一艦隊にせよ第二艦隊にせよ、命令一下で上下左右迅速に陣形を形成、島君が焦るほどの高速での進軍を行った。
艦体の剛性ないし弾性の高さ故か、無茶な運動も十分に行え出力を上げても焼けないエンジン。これらが快速を支えていると推測できる。
大量建造の有用性② 速射巨砲キャリア
あの大型回転砲塔は一門当たりはせいぜい40から50センチ弱の口径だろう。アンドロメダと同等程度の艦砲だ。いや、40から50センチは非常に大きい艦砲である。しかも、ガトランティスの回転砲塔は2門の斉射、やろうと思えばやけくそ気味に4門同時射撃が行えるし、大戦艦は少々艦首を下げれば2基を正面に向けることが出来る。
ただし、地球の誇るアンドロメダは設定上50センチの口径を持つ主砲を3連2基を正面に指向できる。これは、単純計算では2門分投射量の少ない大戦艦の方が撃ち負けてしまう可能性が生じるだろう。
ところが、大戦艦にはあの速射性があるのだ。ヤマト2の第21話を参考にすると、大戦艦は何なら1秒程度2門ないし4門を発射できる。アンドロメダないし主力戦艦は一回か二回の斉射を行うのに3秒ないし4秒間が必要。アンドロメダと大戦艦が全力を出した場合、前者は前方に12発程度を投射する一方、後者は16から32発を正面投射できる。圧倒的投射量の違いだ。
この性能は、速射性によるところが大きい。近接戦闘において主砲が有用性を持つ描写はさすがのヤマトでもあまり類例がないが、この大戦艦は近接戦闘において、しかもコスモタイガー相手に主砲をぶっ放している。これは大戦艦の主砲が巨砲かつ速射性に優れることを如実に示しているのではないだろうか。
大戦艦は速射性を担保できるだけのエネルギーを機関が発揮できるキャリア、回転砲塔キャリアとして、そして衝撃砲キャリアとして優秀な艦であるからこそ大量建造する有用性がある。そう理由づけられるのであはないのであろうか。
汎用性
大戦艦の大量建造に至った理由は大戦艦の設計自体に存在する汎用性にあると説明づけられるだろう。
快速と巨砲キャリアという有用性が大戦艦に存在している。それは前述の通りだ。快速であるが故、敵に接近するも敵から退避するも簡単。速射性を持つ巨砲のキャリアであるが故、同等以下の敵戦闘艦に対しては撃ち負ける可能性が低い。単艦での任務は偵察などの極めて限定的になるだろうが、集団であれば快速と幾らかの戦術を用いれば同格であれば十分対抗できるだろう。
もし装甲が薄ければ、生存性は低くなる。
もし打撃力が低ければ、たとえ快速でも任務は主に非対艦戦闘になる。
もし鈍足なら、たとえ高打撃力でも取れる戦術や投入できる戦場は限られる。
もし鈍足で打撃力がなければ、話にならない。まして装甲も薄いとなれば論外。
本当は強力な装甲と高い打撃力に快速があればいいのだが、世の中そんなうまい話はない。
例えば快速戦艦として有名なアイオワ級は重装甲の40センチ砲艦であるが、砲のプラットフォームとしては細過ぎて安定性に欠ける。ヴィットリオ・ヴェネト級は走攻守全てが及第点だが、航続距離が話にならない。金剛型に至っては快速性能は非常に高いが、35センチ砲と決定力不足と装甲不足により喪失多数。
砲力と装甲重視のネルソン級は鈍足な上に運動性能が悪い。大和型も超越的戦艦にしては走攻守全て及第点だが、巨体のせいで入れるドックの規模が……。
戦場想定が中途半端なビスマルク級は艦の性能と艤装のレベルの差に問題があった。反対に、戦場想定が限定的過ぎたオーストリア=ハンガリー帝国の戦艦群は小型で全般砲力不足。リヴェンジ級は良い戦艦だったが、ゆえに改装が遅れて旧式化し、同格を想定した対艦戦闘には供せなかった。
要は、
まずい敵からは逃げられる速力
同格の敵を撃破できる攻撃力
同格の敵から身を守れる守備力
戦場を限定しないバランスの取れた設計方針
が汎用な戦艦に必要な事。当たり前だけど、難しい。ただ至上に近い事項と言えるのが、最後のバランスの取れた設計方針。これが一番難しく一番艦の価値を高めてくれる要件だ。あんまり特異な方針だと、走攻守のどれかを徹底的に減じる必要が出てくる。徹底的に減じてしまうと、状況が変化した時に全てが陳腐化してしまう。改装等でのカバーにも限度がある為、特化型の戦闘艦は非常に危険で大量配備には向かないのだ。
確かに、ガトランティスには物量と言う恐ろしい戦法を取ることが出来る。だが、それもあまりに限定的な設計の戦艦では対処のしようがない。
装甲が薄い・近接火力不足で接近戦が出来ない艦では常に遠距離でしか戦えないが、仮に相手の方が射程が長ければそれで終わり。足が遅いと、弱勢な相手には逃げられるし強勢な相手からは逃げられず全滅。火力が高くとも能力が偏れば、補完する護衛艦を張り付ける必要が生じる上に一隻当たりの艦隊に対する損失比率がデカすぎる。
数で圧倒して補完しようにも、元が悪いと穴が大きすぎて塞げないのだ。だから、単独では少々不安な能力であってもバランスの取れた艦であれば、大量建造しても無駄ではない。廉価ならば失おうとも大した問題ではない。戦後に大量に残ったとしても、ちゃんと利用できるレベルであればどれだけ残存しても構わない。そのレベルにまで艦の能力が高まっていれば、である。そして大戦艦は大量建造に値するだけの能力を持つ。
物量作戦といえども、それなりに汎用性のあるバランスの取れた艦でなければ、成立しないのだ。
準決戦兵器―衝撃砲―
アンドロメダの拡散波動砲やヤマトの主砲に撃ち抜かれた描写=ヤラれ描写がほとんどな大戦艦は強いというイメージとは程遠いだろう。実際、装甲はそんなに強くない。さすがにガミラスのデストロイヤー艦よりかは圧倒的だが。
しかし、この艦には地球艦隊でいえば波動砲に匹敵する決戦兵器をしこたま積み込んでいる。微妙な射程距離ではあるものの、強力な兵器として大戦艦の価値を高めている。
それが衝撃砲である。
決戦兵器を積み込んでいる汎用戦艦はヤマト世界において地球艦隊以外には極めて珍しい為、特筆に値する。
衝撃砲は、実はよくわからない兵器である。
射程は巡洋艦ないし駆逐艦のショックカノンと同等程度。発砲には破滅ミサイルと同じく、現場の最高指揮官クラスの許可が必要と見られバルゼー総司令が直々に発砲を命じた。使用されたのは対ヒペリオン艦隊戦のみである。
衝撃砲は全て艦橋のあの筒から発射され、発射されると実体のない弾が直進し、対象に接近すると竜巻の様に飲み込み、艦体へし折る圧倒的な破壊力を見せる。巡洋艦はもとより、主力戦艦でも一撃で沈めるほどの恐ろしい威力を持つ。
描写としては、各同一階の発射筒から打ち出された衝撃砲は相互干渉を引き起こしてか、一本の軌道を描いて敵艦に直撃する。相互干渉するからこそ、着弾した際に渦を形成する――と考えられるか。
一体どんな原理なのか不明。
可能性としては重力変動などが考えられる。あの渦で局所的に重力変動を起こして避けられぬ損傷を艦に与えるというのである。
重力変動の方法は―― 重力子によって重力波を伝播させて、というような単純な方法が一つあるだろう。
重力は閉弦の中での理論であって、他方光子は波や弦としての性質でありモデルとして端のある弦=開弦がDブレーン上に埋まった状態として表すことが出来る――私もわからずに打ち込んでます。
ともかく、Dブレーンを艦の縦断面方向へ展開……というより引き出して弦の状態を影響させる側が管理。艦内の閉じた弦を侵食して開かせゲージ場を乱し、クォークを個々に自由状態へ持っていく、あるいは強固な結びつきを産ませて全体として艦体を弦理論的な方法でほんの数ミクロン幅を解させ、撃破する。
結局、必要な粒子は何でも構わない。
タキオン粒子など、これにうってつけという話もあるらしい。これらの粒子を対象物周辺に異常なまでの密度で展開する、あるいは数学的な演算を高エネルギーの粒子に載せて物質的に出力する方法が考えられるだろう。
衝撃砲ー技術的脆弱性
白色彗星を維持するには強力な重力が必要であろうし、都市帝国のような小型低質量の要塞では当然人工重力は高速回転による遠心力以外では生めない。
生めないはずだが、それが出来ている。という事は、弦理論を当然のごとく解し利用していると考えて当然。重力子やタキオン粒子に関しての技術はかなり高いものであることが当たり前の可能性として浮上するのだ。
仮に、この想定というか妄想が正しければ、地球のようなイスカンダルの技術をひょいぱくした二流国家とは比べ物にならないレベルの科学力と言える。
重力子などの基地の素粒子に限らず、タキオン粒子も単に荷電する程度の利用法ではなく、余剰次元に放り込むような力業でもなく、むしろ力を分解することで敵を粉砕する極めて恐ろしい科学力を持っている可能性は高い。であるならば、拡散波動砲の性質などを解析し対策を取れて当然だろう。拡散波動砲の性質が判れば、地球全体の技術程度も類推することは不可能ではないはず。
ならば、土星決戦までに対拡散波動砲決戦兵器ともいえる火炎直撃砲を用意できて不思議ではない。この脅威的な衝撃砲を完成させて当然と言えるだろう。
しかし、である。一方でこの衝撃砲などに見える、実は超越的とまでは言えない技術がガトランティスのアキレス腱となり得る。
つまり、ガトランティスが独占的に使える技術であるならば、地球側が対策を見付けられる可能性は低い。少なくとも、現場の奇跡的な勘に頼らざるを得ない。一方で、全く独占的ではない頭が良ければ誰でも使える技術であれば、時間がかかったとしても地球は対策は見付けることが出来る。その場合、仮に決戦兵器クラスの武装であったり、決戦直前と言うタイミングであったならば――すべてひっくり返される危険性が出てくる。優勢だったはずが劣勢になりかねない。
衝撃砲は、ほぼ確実にこの類の兵器だ。文系の私でもひょっとすると……程度の推測ができるのだから。
これらの特殊な要因がある為、衝撃砲は発砲に許可が必要であったのではないだろうか。中途半端な局面で披露して、敵に脅威を与えたがゆえに対策を立てられて肝心の時に使えなくなっては論外だ。
衝撃砲の慎重使用は、艦隊運用に科学的な性質や長期的戦略を加味したものが、ガトランティスの兵棋演習の常であることは想像に難くはない。
自分で文章を書いていて、
何を書いているのか判然としない。面目ない。
全長の再設定
最後に全長の設定について考証をする必要が有る。だって艦橋内部の描写と、全長の設定画合致しないから。
元になるのは第21話、土星決戦の後半である。
土星の輪の中に誘い込まれたシリウス方面軍は、火炎直撃砲の暴発による乱流で行動が制限され、地球艦隊から狙い打たれた。その際、前方の大戦艦が撃破され、艦首が後方の大戦艦を巻き込んでの爆発する描写があった。その際、艦橋内部についての描写がわずかながらなされた。
描写ではやはり衝撃砲の積み重なった頂上のブーメラン状部分が艦橋ないし指揮所であるとみられる描かれ方がなされていた。しかもかなり巨大な指揮所である。
高さは目測で建物の2階分の高さか。
屈曲はない為、形状からしてブーメラン状部分の上半分が使用部分か。普通の二階建て住宅は階高は2.4、床高が0.4、軒高はこれらの合算に+0.4、全体では基礎が0.5、最高高さは軒高より上から棟木までで1.4程度。
以上の類推から、艦橋は高さが7から8メートル程度となろうか。結構というか、かなり高いぞ。
メカコレ基準だと窓のような部分が幅14.3センチ、長さ2.9センチ、高さ1.5センチ程度である為、計算すると……艦橋のどこからがあのクルーが逃げようと必死に走った部分なのかが不明なのは痛い。実は、ちょうど描写に合う部分がないのである。窓様の部分のうち、1ミリ幅のラインが該当するか? 該当するとしよう(依怙贔屓)。
となると、比率を合わせて何とか計算すると――再設定値は全長1144メートル、全高223メートル、艦幅120メートルとなる。やはり、3倍程度の寸法に直った。これならば、名称にある大戦艦に相応しい、1キロ超えの巨大戦艦になったと言える。
案外、超巨大空母を数値設定しなおしたバージョンとそん色ないというか、比率的に違和感ない数値に落ち着いたと思う(自画自賛)。
ヤマト2の第18話において、バルゼー艦隊の戦闘艦が地球艦隊よりも大型という報告があった。
確かに、原作の設定値は地球艦隊のそれよりおおむね一回り大型の数値となっている。正直、単なる感覚的な問題だが……一回り程度の差で大型であるとわざわざ報告に加える必要が有るのか疑問だった。描写のわりに最小設定値は大戦艦と呼ぶにはアンドロメダが巨大すぎて比較に不足気味だ。これが私が設定値に関しては徹底かつしつこくあらを探す原点である。
それはそれとして、これで大戦艦を地球戦艦より圧倒的な巨大戦艦に仕立て上げる事に成功した。計算上、主砲は何と150センチ程度の超巨砲へとランクアップする。あの列車砲ドーラの2倍ほど――頭が痛くなるほどの巨大さだ。ここまで巨大化すれば、並みの戦艦ならば一撃で沈め得るだろう。にもかかわらず機動力は駆逐艦並み。
何と恐ろしい戦艦であるか。
ただ一つ惜しむらくは、防御力の無さだ。大戦艦最大の弱点である。ショックカノンという最強艦砲を相手にした不運ともいえるが……
大戦艦の弱点
大戦艦は巨砲を搭載し、一撃必殺のそれも出力可変の準決戦兵器を搭載し、高い機動性を誇る――のだが、いかんせん撃たれ弱い。駆逐艦と同程度しかないのだ。
そもそも論として、地球艦隊のショックカノンが強すぎる問題がある。何といってもモブに近い主力戦艦のそれもちゃんとガトランティス艦を射抜いているのだ。
ヤマトに至っては、搭載ショックカノンが通用しなかったのはガリアデスやプレアデスなどの一部の特殊戦闘艦ぐらいだ。
地球のショックカノンは異常なまでに全て強力である。
とはいえ、だ。これを鑑みた上でも――強力な装甲かと言えば、そこそこレベルしかないと思われる。下手をすれば、巡洋戦艦レベルの能力しかない可能性も高い。
巡洋戦艦とは本来、偵察や通商破壊が主な任務であり、装甲巡洋艦の場合によっては任務をしくじってしまう、微妙な砲火を強化したもの程度。火力は高いが装甲が火力に見合わない。つまるところ、敵の戦艦と撃ち合ったりはしないし、出来ない。そういう運用はするべきではないし、してはならない。ジュットランド(ユトランド)沖海戦なんかは、ダメな事例。
(フィッシャー提督、ちゃんとそう言ったよ? ビーティーさん、あなたというひとは……)
デンマーク海峡海戦は微妙なラインだが、あれはビスマルクが悪い。ドイツが全部悪い。ともかく、巡洋戦艦はかなりもろい艦である。
どうやら、大戦艦はこのタイプに近いと言えるだろう。良く言って高速戦艦。
近いと言っても、当然違いはある。
例えば、そもそもガトランティスに巡洋艦が無い事。あるいは異常なまでの高攻撃力。駆逐艦張りの高速。以上の3点である。この違いは何とも評しがたい。巡洋艦の不在は別として、偵察に非常荷役立つ反面、確実に安全な戦法が敵に急速接近して徹底して砲撃を行う――駆逐艦のそれと同じになってしまう。
劇中において、数的には明らかに劣ったヤマトとの戦闘でも、接近されてしまえばショックカノンの餌食だし、接近できねば自艦は攻撃が出来なかった。しかもショックカノンを食らえばガミラスの戦闘空母と異なり、ほとんど一撃で爆発してしまう。戦艦クラスとの戦闘は、数的アドバンテージに胡坐をかかずに頭を使わなければならない。
他方、衝撃砲は非常に強力。大戦艦の面目躍如、簡単にヒペリオン艦隊を粉砕してしまった。 ショックカノンも練度が低いのか、大戦艦がジャミングしたのかは不明だがヒペリオン艦隊のそれは命中しなかった。これも大戦艦の活躍に寄与したと言える。
となると、巡洋戦艦よりは良く言って高速戦艦に近い。鈍足戦艦が非艦隊戦参加型の汎用護衛艦であるとするならば、高速戦艦は艦隊戦参加型の汎用戦闘艦と評せる。戦列を組んで敵艦隊と正面切って戦えるだけの装甲、敵を一撃粉砕できる打撃力、駆逐艦並みの快速。この艦さえあれば――と言うような決定打的戦艦ではないが、非常に使い勝手がよく、ある意味失っても痛くない。
我ながらひいき過ぎな気がするが、やはり高速を最大の武器とした汎用戦艦と言うのがこの艦の性格ではないだろうか。
大戦艦の運用法
相当数の大戦艦を集結させての物量攻撃。これが基本と言えるだろう。
単艦の通常兵器攻撃は決して決定的な打撃力を持つモノではない。衝撃砲を使用した場合においても二桁隻数の敵艦を単独で相手しようとすれば、非常に分が悪い、射程も主砲より長い程度で安全圏に自身を置くことが出来ないのだ。
しかし、たとえ一桁隻でも一括して運用できれば話は変わってくる。つまり主砲は隻数×2砲塔×2ないし4門を敵に投射できる打撃力の補完だ。投入隻数が5隻であれば20ないし40門が一斉に火を噴き10秒では200ないし400発の主砲弾を投射できる。ヤマトのような特殊な戦闘艦でなければ、高速接近しつつ集中砲火を浴びせれば十分撃破できるだろう。発射命令さえあれば大型衝撃砲1セット、衝撃砲3セットが艦隊合計20セットが順次敵艦を捉える。
接近できるかが最大の問題だが、接近できれば十分勝てる。それだけの火力を有するのだ。
接近できるかどうかは、数に掛っていると言えよう。あるいは、指揮官の方針とどれだけ気を引き締められるか。
変化球の運用法として、敵勢力の偵察と言うのがあるかもしれない。ナスカ艦隊がその役割を受け持つだろう。つまり、マジのガチのやられ役だ。
大戦艦はガトランティス艦の中でも十分高い速力を持つ。砲撃力も強力で、基準と言える。艦の全長は原作の設定値310ないし380メートルと大戦艦は、暗黒星団帝国のプレアデスやディンギル帝国のカリグラ級らと同格の中型ないし大型戦艦だ。
この大戦艦を複数隻集中運用するという事で、その物量から見える勢力の巨大さを敵に推測させ、それでも攻撃するのか、あるいは進んで降伏するのかの判断を敵自身にさせるのである。
モンゴル帝国みたいな手法だ。
もし、攻撃してきた場合はどうするか。結構強力な勢力であった場合はどうするのか。
ガトランティス繁栄の為の礎となる。
仮に、お話にならないぐらいに敵が強ければ腰を据えての攻撃となるだろう。その準備を本国はしなければならない。装甲がダメダメだったのか、火力がチョロ火過ぎたのか、脚が遅かったのか。戦闘経過を詳細に検討することで問題点を発見できるだろう。それに、本国は前衛から非常に離れた位置にいる。少々対策に時間がかかったとしても、危険はないだろう。この人身御供的偵察運用を視野に入れれば当然、衝撃砲の使用はその特殊な性質に加えて使用が制限される理由になるだろう。
そして実際、ナスカの犠牲で次のような事が実戦で判った。
ショックカノンに対しては避けようにも速射性がある為、回避は大した意味がない。他方、回転砲塔は地球艦の装甲に対して十分有効。射程は長距離砲に類する長大なもの。
これらの情報が判明して以降、第25戦闘艦隊やバルゼー直隷の第二艦隊は無駄な動きはせず、ただひたすら直進してヤマトやヒペリオン艦隊を射程に捉えるべく前進した。ビスマルクに対して最適な砲戦距離を取ろうとした〈フッド〉の運動に近い。
(ご都合主義演出だって簡単に理由が付けられるぞ?)
また、ヒペリオン艦隊はその出撃タイミングや位置から役割は簡単に推測できるが、であるならば野放しにする危険は明らかである。だからこそバルゼーは、より確実に地球戦艦を仕留められるであろう衝撃砲を使用した。このように説明が付けられるだろう。
ものすごく人でなしな運用方法ではあるが……
大戦艦は描写が全て明確だが、対峙する相手がヤマトとアンドロメダという当時最強レベルの戦闘艦であったがために丸っきりやられメカイメージがついてしまった。しかし、真面目にしつこく描写や元の設定を考察することで、意外にすごい戦艦であることが判る。
デザイン的にも非常に複雑で目を奪われる。ガトランティスの勢力としての性格であるとか、技術のアウトラインを明示してくれる戦艦と言えるだろう。