旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

第二期地球防衛軍艦隊の特徴

 

 

 地球防衛艦隊(長いので以下、地球艦隊とする)は地球防衛の要である。

 元来地球が持つ技術と、イスカンダルよりもたらされた技術を合一して新たな技術を確立。これを以て新鋭艦艇群を建造、比類なき強力な防衛艦隊を建設した。彼らの第一義的な目的は当然防衛であり、そのために配備運用されている。

 総力は中核たる戦艦・巡洋艦が合わせて100隻強の比較的弱勢。しかし活動域は太陽系圏内であり、惑星基地を拠点とした防衛プランがあるとみられる。それを鑑みれば、極めて充実した戦力/防衛力と言えるだろう。

 しかし――

 

 

 ●地球艦の特徴

 まず、地球艦隊はガミラス戦役時から完結編――可哀想だから復活編を合わせて5期、明瞭なドクトリン変更が行われた。一口に地球艦隊と言っても、時期によってその性格は大きく変わり、以下の通りに特徴づけられる。

 

 司令船225を代表とする一群=第一期地球防衛艦隊ガミラス戦役)

 恐らく地球単独の技術で完成された宇宙艦隊。極短砲身砲と紡錘形の艦体、多くのフィンが特徴。地球と冥王星を一週間以内に結ぶことのできる快速だが、機関の出力はガミラス艦の装甲を破れるほどには砲を強化できなかった。他方、実体弾は有効らしくミサイルは見事ガミラス艦を撃沈させることが出来た。簡単に装甲を撃ち抜かれるが、しかし撃沈される理由は恐らく搭載兵器の誘爆と思われる。

 

 アンドロメダを代表とする一群=第二期地球防衛艦隊(ガトランティス戦役/ボラー戦役)

 イスカンダルの技術である波動エンジンを搭載。この強力な出力に頼った長砲身砲であるショックカノンと、決戦兵器かつ領域兵器である拡散波動砲を以て敵と対峙した。さらば、ヤマト2双方でガトランティスと正面から戦闘を敢行、旧作ヤマトにおいて唯一の勝利を得た。

 各艦種とも割合に特化型の能力で個艦としてはバランスが取れているとは言えないが、代わりに主軸とした能力は極めて高水準。これらを常に複数艦種を混交させて全体としての能力を構成、多数を以て活動を行う事で歴代最強の誉れ高い艦隊となった。

 

 無人艦隊=第三期地球防衛艦隊(暗黒星団帝国戦役)

 第二期地球艦隊の設計をベースにしたと思われる戦闘艦群で全くの無人艦。エンジン形式は巡洋艦のそれと同じで、一方で艦体の姿勢制御方法等はアンドロメダのそれに近い。特徴的なのは非直結型の波動砲口。地上でコントロールする脆弱性を有する。

 いいとこなしで壊滅。

 

 新型戦艦を中核とする白色艦隊=第四期地球防衛艦隊ディンギル戦役)

 ヤマトの能力をベースにしたと思われる新戦艦と第二期地球艦隊の巡洋艦をベースにしたと思われる新巡洋艦を中核とした新鋭艦隊。人力ないし人力制御を多用するのが特徴。駆逐艦の設計が大いに迷走し、巡洋艦の設計も特化させ過ぎて迷走。これまでの戦争で敵戦力があまりにも性格が異なっていた為、建艦方針がブレたと思われる。

 戦術教育も失敗したと見え、艦の能力を発揮する前に全滅してしまった。

 

 スーパーアンドロメダ/ドレッドノートのみで構成された一群=第五期地球防衛艦隊(アマール移民時)

 二つの設計方針=廉価な砲戦艦、波動砲キャリアの二つの傾向に特化した二つの艦級を同時に大量建造し、艦隊にとって必要な他艦種は全てこれ以前の世代の艦に任せるという大いに疑問のある方針に基づいて建設された艦隊。1球団一人残らず全員4番バッター的なイメージ。

 全部中途半端。活躍も中途半端だった。

 

 


 第二期地球防衛艦隊の特徴

 これは、防衛指針の転換期であったことだ。これは描写をつぶさに観察すれば見えてくることである。それも極短期間に2回もあったのである。


 一回目の転換点は第一期から第二期への転換。つまり、地球とイスカンダルの技術の混交であるヤマトを踏まえた新戦闘艦隊の建設である。

 このアンドロメダ以前の地球艦隊は基地航空隊や基地砲台による支援を前提とした比較的限定能力な戦闘艦を中核に据えていたといえる。完全に太陽系圏内が活動範囲であり、ガミラス残存勢力をはじめとする外敵に対し地球を死守するというのが彼らの果たすべき第一目的であろう。個別に記事を設けてこれを明らかにしたいと思う。


 しかし、アンドロメダ完成以降はまるっきり違ったドクトリン・防衛プロットが見えてくる。これが二回目の転換点

 つまり、太陽系外縁部よりも更に外側へと進出することで、絶対防衛圏を外部へと延伸して太陽系を、死守すべき限界域ではなく完全なる安全圏へと変化させる、という事だ。限られたリソースを最大限利用し、限られたリソースを最大限利用するための拡大政策と言える。戦前の拡大主義を取った各国や、現在のアメリカも本土を守る為に周辺域に対して強力な影響力を行使し、本土や首都を完全な安全圏に置いている。

 

 

 このプロットの変更により、艦艇に要求される仕様も大きく変わる。
 太陽系圏内を主とした活動であれば、まず惑星基地の支援や複数基地から発進した幾つかの艦隊と合流して事に当たればいい。能力もこれらの条件を前提として、複数艦種で分担し艦隊として総合力の充実化を図ればいい。


 ところが、太陽系圏外への進出を考えた場合は少々様相が異なる


 複数艦隊を迅速に同一地点へ集結させるのは難しく、空白地帯であれば何の問題も無いが――敵勢力の中で拠点建設をもくろんだ場合は限定的な能力では困る。太陽系圏内を守りつつ、外洋への進出とあらばどうしてもリソースの少ない地球では数を確保しがたい。だから一隻一隻が万能艦じみた性能を要求される。

 こんな状況で外洋進出などすべきではないが、進出することで地球を守れると考えたのならば一理あるし、イキったとあらば政治家も軍人もみな見通しが甘かったといわざるを得ない。防衛会議を見るに、後者の可能性は十分あろう。

 


 第一期の流れをくむと言える第二期・前期艦隊はまずもって分業制。

 戦艦は波動砲のキャリア、巡洋艦は砲雷撃力担保、駆逐艦は防空力担保であり護衛艦シーレーンの完全確保。単独では作戦を行えないかもしれないが、艦隊として複数隻が集結すれば総合的に見れば強力な戦力が提供出来る。これを各惑星基地にバランスよく配備。

 確かに一個一個の艦隊はどうしても弱勢になってしまう。基地の場所とかの理由で艦隊に性格を与えれば、それだけ他の能力が限定されてしまう。ただ、活動域は太陽系圏内に限定されている。太陽系圏内であれば、複数艦隊を一か所に集結させることも難しくはない。恐らく、一個艦隊よりかは優勢な敵に直面したとしても、それより優勢な艦隊を迅速に集結させられる、その前提だからこその艦建造と配備と言える。

 このプロットでなければ、完全にゲリラ戦以外取りようがない。また、プロットを上回る最悪の状況が発生してもゲリラ戦に移行せざるを得ない。この場合、艦隊全体での能力とか言ってられない。

 この完全に割り切った分業制が第二期・前期艦隊と他勢力と大きく違う点である。
 この分業制は、極めて多数の戦闘艦を用意できる場合には攻撃的な侵略戦力の艦隊と言える。しかし、数の少ない地球ディンギルはこの分業制ではむしろ守勢的な艦隊と言えよう。

 

 一方で第二期・後期艦隊は万能艦主義。

 アンドロメダ主力戦艦よりも強力で大型で、艦載機発進口や着艦口の複数である点を鑑みて艦載機収容力を高めたかったと説明づけるのが最も合理的だろう。太陽系圏内ではほぼ確実に基地航空隊の支援を受けられるが、圏外では当然期待できない。

 太陽系圏外で活動するには、ヤマトの経験を鑑みると……一隻一隻が万能艦である必要が有るだろう。徹底した万能艦主義が第二期・後期艦隊と他勢力が大きく違う点だ。
 これは地球独特というか、地球と同じ勢力圏ジリ貧状態に置かれた惑星国家が取り得る唯一の選択肢だろう。単独でも深宇宙へと足を延ばしたり、複数隻を集めて万能な艦隊を編成するもよし。

 艦の数が少ない侵略的国家らしい特徴だ。数の少なさをカバーするために一隻一隻に万能・高性能を要求する、外洋進出的・攻撃的な艦隊である。

 

 

 地球艦隊の独自性
 今までの話は、地球艦隊の歴史においての第二期地球艦隊の独自性の話であった。今度は、他勢力に対しての独自性という意味の話である。

 

 武装配置は他勢力に比べて艦尾方向へも気にかけているといえよう。他の勢力はほとんど艦首方向に武装を集中させるが、ヤマトもアンドロメダ巡洋艦も後方への攻撃力を有する。駆逐艦護衛艦もまた、後方は無防備ではない。宇宙空母とパトロール艦はこの例に該当しないが、任務の性質上戦闘力の高い敵との接触はあまり好ましくないため、無きゃ無いで構わないだろう。
 装甲が厚いのか、隔壁による空間の分化が進んでいるのか、誘爆しにくいというもの特徴である。大人の事情とか言われても困る。
 また、艦載機や航空戦力に対する執着に近い関心というのは一つ、他勢力と違いに上げられるだろう。ボラーもガミラスも多数航空戦力を用いたが、そのアドバンテージを自ら潰しに行く等の運用の素人っぽさが目立つ。他方、地球とガトランティスは航空戦力を気合の入った数を集中させて常識的な運用を行った。特に地球はこの艦載機こそが土星決戦の勝敗を分けると判断している。

 この航空戦力への傾倒は興味深い

 

 

 

 全周への警戒と航空戦力への信頼。

 これが地球艦隊のベースと言える。

 


 第二期地球艦隊は史上最も優美で力強く、妄想を掻き立てまくるに足りる極めて興味深い描写によって考察にたる情報を提供してくれた。

 地球艦隊史上、もっとも考察しがいのある艦隊、それが彼女たちであろう――彼かもしれないけど。