地球防衛軍 戦闘衛星
戦闘衛星はテレビシリーズのみに登場する。完全にやられメカで、しかも性能だのもろくに設定されていない。その割には第3シリーズでも顔を出すのだから、面倒。
そんな哀れなメカを考察する。今回はヤマト2で登場したタイプ。
データ
全長:不明
全幅:不明
武装:連装レーザー砲6基
所属:地球防衛軍防衛司令部防空局
8角形、3面ずつ連続してパルスレーザー砲塔を配しなぜか2面は突起のみのデザイン。中央部に突起があるが、武装ではない。背面に大変短いエンジンノズルを有する。真横からみると起き上がり小法師のよう。
12門を同時発射することで光線を一つの束として攻撃に用いることが可能。ぱっと見ヤマトの主砲がねじねじになるのと同じ感じ。中尾彬氏のネジネジばりのねじり方。多分中央の突起が干渉して光線を一つに取りまとめるのだろう。エネルギー充填に何気に時間がかかるものの、その光線の幅はヤマトの艦幅と同じ程度と極めて広い。
カラーリングは味もそっけもないグレー。エネルギー充填中や信号受信時はちかちかと光る為、その点は華やか。
幌さんのナレーションによると、ガミラスの本土進攻に備えて打ち上げられたもので、推測するに内部に燃料や電源確保の装置はない。ワイヤレス電力伝送が実現しているため、恐らくは同じ形式で地球上か同じ衛星軌道上で中継機を以て電源を入れた模様。
元来は3基一組で運用されているらしく、5セットがラーゼラーの降伏勧告使節来訪に際して迎撃態勢を取った。旗艦大戦艦に加えて8隻の駆逐艦のこの艦隊に対し全く歯が立たず、残存は2ないし3基程度。
スペックを推測
直径は40メートル程度、高さは60ないし70メートルという事になろう。仮にヤマトの全長を妥当なラインに設定し直した場合は直径80メートル高さ150メートルほどになろう。ただし、これはヤマトを迎撃した戦闘衛星に限った話。
ラーゼラー艦隊を迎撃した戦闘衛星は、ヤマトを迎撃した戦闘衛星と同じ方式で砲撃を行ったが、その軌線は極めて細かった。ガトランティスの駆逐艦はヤマトの1.7倍ぐらいの艦幅を有する。ヤマトと同じく全長設定を妥当なものに変更した場合、この艦の幅は170メートルに到達するため――それでもヤマト迎撃を行った戦闘衛星より一回りは小さい計算になろう。
設定推測
全長:40メートル(80メートル)
全幅:70メートル(150メートル)
武装:連装レーザー砲6基
英海軍のモニター艦であるロード・クライヴ級は、不要になった砲身を活用する目的とは言え、8隻中3隻が本来の砲とは別に大型砲を据え付けられる改修工事が行われた。つまり、〈ロード・クライブ〉、〈プリンス・ユージーン〉、〈ジェネラル・ウルフ〉の3隻は元来の30センチ連装砲に加えて必殺の45センチ単装砲を搭載し強力な火力支援艦へと能力を強化された。
そもそもイギリスのモニター艦は迎撃も視野に入れているが基本は味方部隊の上陸支援のための艦。元の持ち主である〈フューリアス〉もまた、元来の任務はそれだった。〈フィーリアス〉の空母改装に伴う方針のモニター艦への移植はある意味順当、何なら怪我の功名と言えたかもしれない。
なぜなら、ちゃんと戦場で活躍したから。一次大戦中、味方兵を支援すべく陸上砲撃を行い結構な命中精度と結構な破壊をもたらしたのである。大きい事はいい事だ。
何が言いたいかといえば、複数建造した場合、別にタイプに些細な差が生まれることは珍しくもなんともないという事。上記の様にかなり艦容に差異が出てしまうような改装を施されるパターンさえあるという事。
ちゃんと使用する場面を考えればどんなものでも案外使えるのだが、特に特殊な改装をされたものは気を付けて使えばそれだけ有用。
ただ、戦闘衛星が有用であるかは考察の必要が有るだろう。
有用性への疑問
例え要塞であっても、ドゥオモン要塞の様に完膚なきまでに叩かれ挙句爆発事故を起こした場合、地形ごと消滅する。
が、基本的には要塞は内部を占領されるまで存在価値はあるし、破壊されてもがれきが遮蔽物として存在するため抗戦できなくなるわけでは無い。要は、要塞はボロボロになってもあるだけで価値はあり続ける。
繰り返す。要塞は、占領さえされなければ価値はある。
他方、軍艦は様相が異なる。イギリス軍のモニター艦やタイのトンブリ級が対艦戦闘では大惨事だったように、低速では巨砲を備えていようとも相手が高速艦であれば大した意味はない。航空機相手でも、それは同じ事。
つまり、沿岸防衛艦は最終的には――端っから擱座するつもりの位置で徹底抗戦する他ないという事。しかも擱座した時点でほとんど無防備な的と化してしまう。
端的に言えば、沿岸防衛に使う巨砲は陸あれば十分。海に置くべきは小間くて速くて多機能なヤツ。
戦闘衛星は、正直これらの有用性を発揮できるとは思えない。
何といっても火力が低い。多分地上からの指示がなければ全く動けないだろう、非常時には全く用をなさない。そもそも撃たれ弱い。擱座し様がないのだから、撃たれたら後は墜ちる他ない。
軍艦相手には全く正気なし。勝てる相手は恐らく民間船やちょっとした海賊船程度だろう。
うん、軌道を飛ばす意味はあるね。一応。
劇中の活躍
正直、活躍という言いまわしが皮肉めいてしまって申し訳ない……。
第4話、防衛司令部にたてついて発進したヤマトに対し激怒した参謀長が、長官が止めるのにもかかわらず勝手に命令を出して稼働。彼にはニーチェの言葉を贈ってあげたい。自損事故をヤマトに擦り付ける形で勘弁ならないとか――話にならない。これ、バレたら参謀長もパイロットも後で懲戒もんだぞ……。挙句、大気圏内での撃沈も辞さないとか……。
初めて稼働した戦闘衛星は即座にエネルギー充填、ヤマトに照準を合わせる。
ここでビビった参謀長は長官の言葉に従い威嚇射撃に変更――まあ、防衛軍の本気を見たヤマト側は反撃に移るのは当然。ヤマトは艦首側主砲斉射を行い、戦闘衛星は破壊されてしまった。
一基しか動かさず、挙句主砲の砲戦距離に突っ込ませておいて――アホとしか言いようがなかった。防衛軍の威信などといっていたが、これは参謀の独りよがりとしか。
22話のラーゼラー艦隊の来訪に際して出動。
第3ブロックに突っ込むとみられる艦隊に対し、第1・第2ブロックの戦闘衛星も加えた集中運用を行う。全戦闘衛星が斉射を開始。合計15の火線が絶え間なくラーゼラー艦隊を襲った……が、効果なし。
基本的に高火力なガトランティス駆逐艦の砲撃を受けて一基当たり2発で爆発。全く敵わず、バカスカ撃ち落されることになる。
ラーゼラーが途中で飽きたのか、3基が撃ち漏らしとして残存。なんでやねん。
一応、怪我の功名ともいえよう。万が一このタイミングでヤマト迎撃の時に見せた、あのどえらい砲撃をラーゼラー艦隊にお見舞いしたらとんでもない事になっただろう。
もしラーゼラーの旗艦を撃ち抜いて彼が戦死すれば――ガトランティス首脳部は激怒するに違いない。いくらあまり重んじられていなかったとはいえ、降伏勧告の使節を砲撃して挙句撃沈などしたら……一発で地球砲撃を敢行しただろう。
そりゃ結局直接砲撃を受けたのだかが、結果としては大して変わらないが……受ける被害が数時間から数日分減ったといえる。
結論としては、あったらあったで使い道もあるが、しかし有用性には大きな疑問符が付く。まずもって火力不足だ。速射性や砲撃の精度が足りない。ちょっと、対艦戦闘にはお話にならないのだ。
もし積極的に使うとすれば、それはあくまで警備任務。それも対外勢力相手ではなく、法を犯した集団に対して。要は、水上警察の警備艇のようなもの。もう少しグレードアップしてスループかコルベット程度。
対艦戦闘、地球防衛の最終ラインとしてはむしろ、代替に小規模な戦闘艦隊を地球や月面に残しておいた方がよっぽど有効。なんなら月面基地に波動砲並みの砲を据え付けてもいいだろう。何となく初代マクロスっぽいが。
はっきり言って、いくらでも戦闘衛星以外の防衛手段はとり得る。
残念ながら、大きな有用性は……見つけられなかった。
ごめんね、戦闘衛星……。