旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

白い闇―2202版彗星

 


 一応、2202のよくわかんない白い闇について。

 

 全く触れないのは逃げたような印象を受ける、なんてこともあろう。ガトランティス人としてはそれは看過できない。なので、お節介にも考察をする。

 (注意:書き終わってみたら批判記事だった件

 

 

 白色彗星=滅びの方舟は直径約14万キロの巨大な人工物である。

 14万キロの白い闇の中に12万キロほどの惑星の“収容所”と巨大なクラスター状の構造物が存在し、収容された星は6000から1万2000キロ程度の地球型惑星を選んでいる。ガス状帯や構造物が破壊されると、通称:鳥人間と呼ばれる形にトランスフォームするが、ビーム砲を発射することが可能。この砲は月面を抉るほどの威力と持つため、某〈ラグナロク〉号と同程度の戦闘力を持つといっても過言ではない。

 このトランスフォームは設定上、相手に恐怖を喚起する形になるとかいう話である為、今の地球人相手なら滅びの方舟はトランプに変形するかもしれない。ベジタリアンなら、生肉とか。

 イメージとしては某“メガメイド”のようなものだろう。

 

 

 この滅びの方舟は、見事地球艦隊の波動砲攻撃に耐えきった。残念ながら尺には耐えられず、トランジット波動砲の前に敗北。色々あってタイプ・ズォーダーは遊戯王のボスキャラよろしく方舟と一体化、これも色々あって地球が勝ったらしい。

 そういえばVREINSとZEALは一体化しなかったな……

 

 

 波動砲の威力とは
 まず、波動砲は大体――2.5から3.5TNT換算ゼタトンの力がある。

 2199で(←ここ重要)スターシャがよくわかんないお説教をのたまっている時の回想シーンでは、3か4隻のイスカンダル戦艦が波動砲を惑星に発射し、破壊する様子が出てくる。これを根拠にして、原作破滅ミサイルの考察の時に出した10TNT換算ゼタトン位じゃね? 説をそのまま1/3から1/4にした。

 

 波動砲の原理が拡散波動砲と収束波動砲で異ならないのであれば主力戦艦ドレッドノート級の波動砲もヤマトと同等の威力はあるだろう主力戦艦ドレッドノート級は直列薬室なんてよくわからない画期的配置で、2個薬室があるらしいから下手すりゃ倍の5から7TNT換算ゼタトン。ただ、収束波動砲では半分しか使わないらしい(情報未確認)。
 他方、アンドロメダ級の場合砲口が小さい為評価するには不確定要素が大きいが……まあ、5から7TNT換算ゼタトン程度だろう。

 

 計算しよう。まず、土星会戦に参加した山南艦隊の総数を測らねばならない。マルチ隊形では縦に並んだ5隻のアンドロメダ級を挟んで左右に縦10列、横に13隻は固いし、恐らく16隻ぐらいは……多分いる。260隻から320隻ぐらいか。

 土星に最初に到着した主力艦隊は6隻がひとまとめにワープアウトし、これが大体24セットで小計144隻有余隻。哀れな中間管理職殿バルゼーが魅せた“バルゼー最敬礼”前後に更に20数セットが到着して小計140隻有余隻の増援……総計280有余隻

 まあ、そんなに違わない数か。最初の計画だと恐らく400隻以上のドレッドノート級を白色彗星にぶつけるつもりだったのだろう。

 

 力を過信しているのはどっちだよ!

 

 つまり、マルチ隊形から発射される波動砲は60から80の惑星を一度に粉砕できる力を持つ。少々オーバーに言えば、太陽が1年間に放出するエネルギー1.2×1034 ジュールとそう変わらない。この膨大なエネルギーをほんの数キロの範囲で直撃させるとは鬼畜のような所業……触れたら全部当然の如くプラズマ化するだろうし、それだけじゃすまないと思う。しかも2発を連続で……。

 これを重力や別のエネルギー流で対抗しようというのはものすごい事である。原作設定の白色彗星でも同じ想定をしたが、やはりとてつもないエネルギーの対抗となった。

 

 

 今回は、原作とは桁が違う。計算するのが嫌になるほど桁が違う。

 もっと言えば、あの白い闇が何なのか不明。

 

 

 仮に原作通りの高速中性子の嵐であれば、これはとんでもない事である。一方、そんな描写はない。普通にヤマトはあの中に墜ちたし、地球艦隊も思いっきり飲み込まれたが、撃破されたのは破滅ミサイルの直撃であって、あの白い闇の作用ではない。

 仮に、あの白い闇が電磁波によって励起した宇宙空間物質だとすれば、軽いプラズマの発光という事になる。オーロラよりだいぶ高温で、危険と言えば危険、突っ込みたくはない。太陽圏電流シートの極小版が滅びの方舟の周囲に展開されているのであれば、見た目と言う事でいえばあの形も成立し得るか?

 

 他方、方舟本体の描写は普通にただの構造物。多分、地球と同程度の質量になるだろう――で、何が出来るかは不明。常に軽いシールドを張り続け、これによって空間物質が励起するとも考えらえるが、破滅的な威力はないだろう。

 どこに破壊力の源があるのだろうか……

 

 

 考えられるのは重力、要は事象の地平面。劇中でも重力発生源を破壊するのが一つの佳境として描かれていた。すぐ次の佳境が次の話で語られてなんだかわからなくなったが……。

 波動砲斉射に対し展開したであろう防護シールドだが、どんな原理なのかこれも不明。テレザートでみたアレを用いたのであれば、それは超曲面を用いた防御だろうし、これが一番妥当だろう。言い換えれば、ブラックホール。ここに重力が使われる。深くは聞かないで。

 どれだけの質量相当のブラックホールを展開させるのかは不明だが……着弾面分の波動砲をうまくさばければ、周辺へばらまかれる余波は勝手に渦巻いて吸着円盤化してくれるだろうから、実際に対処しなければならないエネルギー量は幾らか縮小できるはず。案外いけるかも。

 

 

 とはいえ、若干の問題がないともいえない。つまり、ブラックホールにも限界が存在するらしいという点だ。

 

 ブラックホールは全てを飲み込む為、物質も反物質も当然飲み込む。

 理論的には高エネルギー物質には対になる負の高エネルギー物質が存在すると仮定され、その発生はどこにでも起こり得ること。であるならば、ブラックホールはこれも飲み込むことになるし、ブラックホールの周辺でも粒子の対での発生や消滅は十分起こり得る。

 吸い込むならば、問答無用だが――どうやら発生が付近で起きた場合は片方の物質を取り逃がしてしまうらしい。正物質を逃がしてしまって反物質を吸収してしまえば当然エネルギー量は減る。反物質を逃がして正物質を吸収した場合は、エネルギー量が増える。

 粒子二つを取り込むだけのエネルギーを発しておきながら一つを逃し、一つが負のエネルギーを持っていれば、せっかく発したエネルギーはまるっきり無駄になってしまうのだ。元のブラックホールが巨大であれば大したことはないが、質量の小さなブラックホールであれば、効果はてきめんとなる。結果、勝手に蒸発してしまうのだ。これがホーキング輻射とかいう奴らしい。

 

 

 仮にマイクロブラックホールが成立するとすれば、余剰次元を組み込んだ超ひも理論世界という事になる。これならば質量が小さくともとんでもない力を持ったブラックホールが誕生し得る。

 問題なのはどうやって消滅させるかで……多分反物質を叩き込んで何とかするのだろう。 

 

 

 恐らく、滅びの方舟は太陽には遠く及ばない質量と重力発生しかできないだろう。多分、強めに見積もって恒星ブラックホール程度しかできないだろうが……太陽をぶち当てるのよりも幾らか強力であろうエネルギー投射を受けて、はてさてどうなるだろうか。

 多分、猛烈な電磁波やら粒子の放射を地球艦隊も滅びの方舟も受ける事になるだろう。吸い込むような形にはならないだろう。

 

 よくよく考えてみると、2199の時に波動砲はホーキング輻射であると説明を受けた気がするから――質量の2乗に比例する重力のマイクロブラックホール、これが消滅する時に発するエネルギーを300個マトモに喰らって本当に大丈夫なんだろうか。

 返り討ちにあったら洒落にならない……

 


 あれだけのエネルギー投射を受けて、それで無事というのはご都合主義な気がする。あれならば、素直に損傷を受け、それでもあのタコかオニヒトデのようなあの方舟が普通に攻撃した方が筋が通ったと思う。

 

 まあ、ご都合主義を合理的と言いくるめ為に、他次元へエネルギーを移すという案を提示するならば――話は別だろう。が、だとしても他次元へのエネルギー流出を止めればいいだけ。少なくとも、通常の体系にあるエネルギー以外のものをぶち当てればいい。

 テレサという別次元の存在を確認し、その様子を観察できたのだから計算上は何とか理論を完成させらるだろう。

 

 

 それはそれとして、土星を吸収して再建のエネルギーに使用なんて言うヤツが果たしてテレサ一人が同行した所で……原作は「目指すは本所松坂町、狙うは御的・吉良上野介ただ一人でござる」とばかりに超巨大戦艦の第一ないし第二艦橋へ突撃すればよかったし、ツァーリ・ボンバの45倍ほどのエネルギーがたった2メートル四方以内に集中させ得るのだから多分、超巨大戦艦を撃破できるだろう。しかし、2202では彼女一人で? 次元をへし折って――あるいは転移させて別次元に放り込むなんてできるのか……。

 

 まあ、惑星一つ分の人間の思念という事ならば――感覚的にわからないでもないが、一応SF作品なんだから指標になるようなものを用意してほしかった。

 

 

  原作の白色彗星は、強力な艦隊が無価値に思えるほどの圧倒で恐怖を体現し、この白色彗星を自由に操る大帝こそ比類なき力の源と印象付けた。にもかかわらず、その白色彗星すら無意味であるかのように都市帝国、超巨大戦艦を繰り出し使命を完遂する。

 この徹底した独善、徹底した力の信奉――それでいて人間の力と言うものを全く否定しない。人間こそが宇宙の支配者、その支配者を支配するのがガトランティスの大帝である。

 白色彗星は恐怖の演出として最高峰であるといえるだろう。

 

 結局、2202におけるガトランティスはあの物量を滅びの為に繰り出す。他者には戦って死を延期させるか、即断で死ぬか以外の選択以外を認めない――タイプ・ズォーダーの壮絶な怨恨と諦めがまるでエントロピー増大傾向に意志と体を与えたともいえる。このタイプ・ズォーダーの記憶を原動力とした、この生命の根源的破滅使命にこそ今作のガトランティスの特徴があるのだ。

 その意味では、巨大さよりも破壊されないよりも――破壊されても何度も再生する方が象徴として合致したであろう。白色彗星はそれ自体にも攻撃的特性を付与し他方が合致しただろう。

 

 

 散々2199が合理的だのともてはやされた次が、これと言うのはだいぶ肩透かしだし、ちょっと手を直せば簡単に合理的に説明できるものをあと一歩のところで台無しにして見たり……製作首脳陣並みにカオスな作品。

  滅びの方舟は文字通り作品を滅びに追いやるかもしれないほどのほころびと、衝撃をもたらしたといえる。

 

 

 ヤマト作品をリメイクする上で、主役はヤマト作品であって監督では無いんだよね。

 作品を尊重できないような、監督の個性なんか……はっきり言って不必要なんだよね。