旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

戦闘考察Ⅳ・土星決戦~白色彗星迎撃(さらば編)

 

 

 土星決戦とは読んで字のごとく、土星圏で行われたガトランティス艦隊と地球艦隊の決戦である。ガトランティス側は精鋭の第6遊動機動隊を、地球側は全地球艦隊を結集し、正面切っての戦闘を行った。

 


 ガトランティス側参加部隊:第6遊動機動隊、大帝星ガトランティス本国
 戦力:超大型空母1、大戦艦多数、潜宙艦多数(以上、第6遊動機動部隊)、白色彗星(大帝星本国)、第11番惑星前進基地(推定:バルゼー指揮下)
 指揮官:バルゼー(第6遊動機動部隊司令)、ズォーダー大帝(最高司令官・国家元首


 地球側参加部隊:地球防衛軍艦隊
 戦力:戦艦36、巡洋艦81、駆逐艦多数(地球艦隊全力)
 指揮官:アンドロメダ艦長(氏名不詳)

 


 戦闘経緯・経過
 ガトランティス本隊である白色彗星の太陽系突入を前に、先鋒としてバルゼーを指揮官とする第6遊動機動隊が占領した第11番惑星より出撃、太陽系内の惑星基地に攻撃を開始。これを受けて防衛司令部は全地球艦隊を月面基地に集結させ、敵前衛艦隊および白色彗星を迎撃すべく戦力整い次第全艦出撃させた。


 アンドロメダを旗艦とする地球艦隊は戦陣整え土星圏近傍空間まで接近、対する第6遊動機動隊もまた土星圏に侵入し戦闘を開始した

 第6遊動機動隊は第一に艦載機を全機発艦、これを以て地球艦隊の戦力を漸減すべく空襲を行った。対する地球艦隊は全艦密集隊形を形成し、艦砲射撃によりこれを迎撃。損害の軽微なまま空襲を切り抜けることに成功する。

 次いで潜宙艦による第二次戦闘宙域に戦場は移る。地球艦隊は空襲を受けた直後であり、密集隊形のままガトランティス側の次なる戦闘宙域に突入した事により苛烈な攻撃を集中して浴びてしまう。これにより護衛の駆逐艦や主力戦艦を補完する巡洋艦に多数の被撃沈艦が発生。一部主力戦艦も落語の憂き目にあった。しかし、アンドロメダのソナー発射以降は勢いを盛り返し、ショックカノンの砲撃によって潜宙艦の脅威を退けた。

 地球艦隊は損失を出しながらも第一次・第二次戦闘宙域を突破、敵本隊に迫る対するガトランティス側も最低ラインの目標であった護衛の引きはがしに成功肝心要である戦艦群への直接攻撃の機会を得た。包囲殲滅を試み、大戦艦を前進させるバルゼー。

 だが、その意図をアンドロメダ艦長にすぐに察した。そこで艦長は即座に先制攻撃を掛けるべくアンドロメダに拡散波動砲発射準備を下令、間髪入れずに砲撃しキルゾーン内にとどまっていたバルゼー艦隊の主力を殲滅した。

 

 

 バルゼーの敗戦に伴い、大帝は白色彗星の前進を決意。地球艦隊も当初の目的である白色彗星撃滅の為、その前面に展開

 マルチ隊形によって多数の砲を一門の拡散波動砲として利用、十分な距離まで接近させて砲撃しかし通用せず、白色彗星に全艦壊滅してしまった

 

 

 

 描写の妥当性

 まず、土星が決戦上になった理由を明らかに必要が有る。合理的に考えて、バルゼーが土星に誘導し、アンドロメダ艦長があえてその誘導に乗ったとするのが妥当だろう。

 

 バルゼーからすれば散発的なゲリラ戦に対応するより、敵を一挙に殲滅できれば苦労は少ない。これを実現するには、一か所に敵艦隊を集める必要が有る。すでに第11番惑星は征服し前進基地を建設済み(これ、セリフでは出ていないがパンフレットとかだと明記されている)というのは一種心理的な圧迫感を地球艦隊に与えられるだろう。

 であるならば、自艦隊を太陽系外周から進撃させて意図を明らめる形で基地を襲撃していけば、地球側はこちらの進路予測も脅威評価も容易になる。敵の手の込んだ攻撃を受ける可能性は大きくなるが、それは地球艦隊全力をこちらの任意の進軍ルート上に誘出させる事とイコールである。

 徹底した破壊、堂々たる前進を行えば、当然地球艦隊は全力を挙げてその進路を妨害するだろう。故に、地球艦隊が集結・反転攻勢を仕掛けてくる前に十分な戦闘データを集積し、敵艦隊の全力を迎え撃つ。それでこそ、戦う意味のある場面づくりが出来るのだ。

 アンドロメダ艦長からすれば、絶対に敵に負けてはならない。白色彗星撃滅が主眼であるが、その前に前衛艦隊に勝たなければ話にならないだろう。艦隊の全力を挙げるという事は、全滅の危険と隣り合わせではあるものの、各個撃破をされるよりかは勝利が担保できる。逆に敵が分散して襲撃する可能性を排除するにも、こちら側から艦隊を集結させて敵の大戦力を誘うという方策をとっても不思議はない。

 敵が直進し、誘うような様子を見せるのであれば、こちら側も大戦力を結集させて正面から迎え撃つ姿勢を見せる

 

 双方の利害・目的が一致させる事で、双方が懸念する不確定要素を排除する事が出来る

 バルゼーもアンドロメダ艦長もまた、一回の決戦で敵を殲滅したかったに違いない。そのためにはお互いに出来るだけ大戦力を結集、彼我が正面切っての戦闘を行える戦場を求める必要がある。それが、土星圏であった。そう説明できるだろう。

 

 

 射程の短いガトランティス側からすれば、波動砲は異常に厄介。それが戦艦36の巡洋艦81と鬼のような訪問数が揃っている。この戦力差を覆すには出来るだけ漸減し、正面以外の方向から攻撃を行う必要が有る

 艦載機による攻撃ならば、波動砲を撃たれても避けられる可能性は幾らか存在するだろう。対空砲火を受けても、幾らかの数が攻撃を成功させ得ればそれだけで次の戦闘を優位に進められる。この空襲の規模自体が手ぬるい事は事実だが――この攻撃だけで勝負を決めるのではなく、一連の戦闘を以て勝利を得ようとしたのであれば、これは別に落ち度のあるような指揮ではない

 

 反対に地球側は波動砲を使用して撃ち損じればそれは反撃時間のロスに繋がり、であるならば艦砲射撃で迎撃するのは当然。密集隊形を取るのも、弾幕を濃密にして撃墜しやすくするためで至極全うな判断だ。艦載機を以て迎撃しなかった理由は味方艦載機の数やその能力に関して未確認な部分が大きく、味方の対空砲火を邪魔しかねない――と判断したならば妥当な判断と言えるだろう。デスバテーターは非常に大きな機体であり、十分撃ち落とせると艦長が考えたとしても不思議はない。

 

 

 潜宙艦の攻撃は最初の艦載機攻撃の影響によって成功したのであるデスバテーター迎撃のために地球艦隊は密集隊形を取った。至極当たり前の反応であり、バルゼーもこの至極当たり前の反応を期待して潜宙艦を配置したと考えて自然密集した地球艦隊の中に魚雷をしこたま叩き込んで、護衛の戦闘艦を排除――できれば主力戦艦をも撃沈させる。バルゼーがそうもくろんでも不思議はない。

 地球艦隊はこの際の損害に関しては手の出しようがなかっただろう空襲の危険と潜宙艦の脅威の二つに挟まれての対応は非常に難しい。現実にも、密集隊形でなければ空襲には敵わないが密集してしまえば潜水艦に狙われ、潜水艦の攻撃を受けづらくすると散開せざるを得ない。地球艦隊はあの時点ではバルゼーの航空戦力が大したことないレベルと知り得ないのだから、おいそれと散開はできないだからといって潜宙艦の攻撃のなすがままというわけにもいかなかったが、艦隊として出来ることはなきに等しい

 アンドロメダ搭載の兵器であるソナーで、無理やりあぶりだして地道に排除することでしかこの戦域は突破できなかった

 

 

 バルゼーは損害が予想より大きくとも、概ね目論見通りに進んだことで気が緩んだのだろう。素直に包囲殲滅を試み大戦艦を前進した。ある意味、あの時点での地球艦隊は護衛をはがされた――いわば手足をもがれた猛獣、不用意な接近も彼の性格からすれば致し方ない面もある。ところが、ガトランティスの調査不足によりアンドロメダの搭載する波動砲が通常のものでは無く、拡散タイプであることで作戦が狂う

 地球艦隊からすればバルゼー艦隊の運動から目的は容易に推測できるだろう地球艦隊の中核戦力の殲滅が目的であれば、当然数の優位から包囲殲滅を取る。数的な優位が覆せない以上、包囲そのものを断念させる必要が有った。散開されてからでは拡散波動砲といえど、効果は薄いかもしれないならば散開しきる前にこれを砲撃するのは当然の事だ

 

 バルゼーが割合に艦隊を集結させていた理由は地球艦隊が密集していたのと同じ理由だろう。地球側艦載機の空襲を予防するために結集していたが、それが無いと判明しかつ潜宙艦の類が地球にないという事が確定した最後のタイミングで前進させた。結果、それがあまりに遅かったという事。

 全般、バルゼーは慎重な策を取り損害を低減しようと努めた漸減作戦や知略を巡らした、むしろ迎撃側的な戦闘である。反対に、アンドロメダ艦長は反対に大火力を最大限活用した戦闘を行う力で徹底的に相手を押し潰す、まるで侵攻側のような戦闘スタイル

 完全に相反する戦闘プロットが激突――軍配はより個々の力の強大な地球艦隊に上がった

 

 

 白色彗星迎撃に際してマルチ隊形を取ったのはできるだけ狭い範囲にエネルギーを集中させて貫徹力なり、エネルギーを投射したかったためと考えられる。

 他に、中心核をつけば――と言っても、仮に白色彗星が前面に重力を展開していた場合、これによって元から拡散を前提とした波動砲である為収束させるのは割合に難しいだろうというのが推測できる。劇中の描写のように拡散してしまっても無理はない。また、最大射程での拡散させる前提での収束で発射した場合は、この限りではないだろうが……問題の質としては変わっていない。

 全く白色彗星に通用しなかった理由は何度か述べているように、一斉射撃では白色彗星の制御に致命的な負荷を与えられなかったというのが一点。もう一つは、中心核を撃ち抜く前に拡散してしまい、ある意味正統な面での攻撃を白色彗星に対して敢行したためのエネルギーの非集中に求めることが出来るだろう。

 

 地味に問題なのは、なぜ180度反転させたのか……アンドロメダ艦長が動転していたのか、あるいは撤退させる方向を統一させるため一旦反転させてしかる後に離脱を命じたか。

 

 逃げるという意味では前進して横をすり抜けるという方法もあるだろう。島津の退き口的な。ただ、司令官としてそんな危険は冒せないと考えても無理はない。

 あるいは、個々の戦闘艦が自らの判断で動いている最中に中途半端に指揮官が命令した場合の危険を低減するため、あらかじめ上から命令を出したという見方もできる。スリガオ海峡のように、うっかり指揮官の命令が別々の行動をとった味方艦の安全性を犯すなどという事があってはマズイ

 元々の撤退プロットであったならば、なおの事艦長が無傷の白色彗星に対しどう反応しようと関係なしに180度以外の選択肢を取り得る可能性は低い。

 

 結局180度の反転したことがまずかったかどうかは白色彗星の能力がいまいち確定できない以上、妥当かどうかの判断は難しい。120度反転がベストであったかもしれないが、これはガス体の威力が波動砲によって減じたという可能性も指摘できる。

 一概には言えない

 

 

 マルチ隊形からの発射に関しては妥当であるかは考える必要が有るだろう。結局、弱点が判らなければ威力も何もないのがさらばの白色彗星だった。

 ヤマトが入手した弱点等の情報が艦隊に上がっていたかは極めて疑問。この連携不足の中では、確かに集中運用は危険ではあるものの――

 中途半端攻撃の後にやっぱり威力不足だから戦力を逐次投入、よりかは、リメイク作の2202とは違い、さらばの地球艦隊は後詰の戦力、予備戦力がない以上、最大火力を常に発揮することこそが安全策と言えるだろう

 

 

 ちなみに、アンドロメダ艦長の制服と土方艦長の制服が大幅に異なるが、冬服と夏服の違いなのか、指揮系統の違いなのか、階級の違いなのかは不明。ただ、第二期地球艦隊の宇宙戦士の恰好から見るに、土方艦長のあの黒いコートの方が異質。

 説明を付けるならば、ガミラス戦時の気概であるとかを忘れないために土方艦長が個人的に着用していたという事になるだろう。色では無く、服の形であるとか肩章で階級を判別するのであれば、それを妨げない限りにおいて黙認されていた。

 まあ、いくらでも説明は付けられるし、さらばにおいて土方艦長は若干――問題児的扱いであるから、強引に押し通したとしても、妥当性は多少は担保できるだろう。

 

 

 意義

 ガトランティス側はこの戦闘によって地球艦隊を全滅させて、白色彗星の到着時には地球の全てを降伏させている予定であったと説明できる。反対に、負ければ白色彗星が丸裸になる為非常に危険な展開となる。つまり、勝利して当然の戦闘

 この勝利して当然の戦闘に、うっかり負けてしまった。これはガトランティス側慎重な戦闘プロットが力業を使ってくる相手には通用しない可能性を認識させたといえる。数的な意味で多数を集めても通用しない、頭を使っても大して通用しない。

 艦隊編成であるとか、白色彗星の意味というものを再考・再認識させることになるだろう

 

 他方で地球としてはちゃんと準備した艦隊であれば多数の大型艦艇に対しても十分に対抗できることを示した波動砲に頼りきりでは勝てないし、頼り切る必要もない。それだけの艦隊を建設し、戦闘プロットも至極全うかつ合理的なものを完成させ得た。と論ずることが出来る。

 確かに白色彗星には敗北したが、間違いなく艦隊戦には勝利したのである。これは地球の方針が決して間違ったものでは無かったといえるだろう。

 

 

 だが、地球は単なるトラウマに近いものしか吸収できなかった。全滅のトラウマに囚われた結果、後代の地球艦隊の戦闘プロットや性能が非常に偏ったものになってしまったといえる。

 他方で、ガトランティスはヤマトに阻まれた。そして、その後の発展を見ることは叶わなくなった。

 

 


 ガトランティス側損害:第6遊動機動隊のほぼ全力
 地球側損害:地球艦隊全艦喪失、第11番惑星基地、木星圏基地、火星基地他惑星基地ほぼ全喪失