旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

戦闘考察XV・ガトランティス艦隊、勝つ術や如何に(さらば/ヤマト2)

 

 如何にすれば勝てたか。これは史実だろうがアニメだろうが関係なしに、考えてしまうIFである。どうにかして勝てる方法を考えることで、反対にどうやっても勝てない部分というものも見えてくる。
 そして何より楽しい。

 

 

 戦術の修正


 考察1:コスモダート・ナスカの指揮(第6話・第7話)

 ナスカ、お前は無理だ。策は平凡、脇は甘いって指揮官向いてない。
 デスバテーター隊により先制攻撃を行い差し当たっての脅威を排除、しかる後に大戦艦群による艦砲射撃で徹底して火砲や要塞の機能を粉砕。正直この段階は、どちらが先になっても構わないが……防空体制が脆弱であろう第11番惑星ならば安心してデスバテーター隊の空襲が可能だった。そして、最終段階としての陸戦隊揚陸して完全制圧。

 仮に阻止しようとする戦力が現れたならば、安全距離の確保に努めつつこれに対処。敵わないと見れば撤退。

 

 これ以外に一体どんな戦闘をすればいいのか。作戦行程は極めて明瞭。それをボケーっと……

 思いっきりフツーにヤマトに接近されてしまった。何より、なぜ大戦艦が沈められているというのに気が付かなかったのか――あまりに愚か。大戦艦が沈んだ時点で惑星制圧を切り上げてヤマト対処に全力を尽くすか、逃げるかをするべきだった。

 

 潜宙艦による戦闘の際の不手際など、更に輪をかけて話にならない。
 唯一可哀想なのは、中型高速空母ですっ転んだ時ぐらい。あの時、すでにヤマトの主砲が改装されていた事だが――気づけよ、お前偵察担当何だろ? 何か兆しはなかったのか?

 偵察機で古代の真上飛んだぐらいのことしてるんだから、機密をハッキングしなさいよ。散開して迎撃って――相手がロングレンジかましてんだから出来るだけすべきであって、最大戦速で突撃かますように命令出しなさいや。陸上攻撃に回したデスバテーター隊を呼び戻せや。出来ることは幾らでもあっただろうが。
 やっぱり、こいつは話にならん。この脇の甘さだと何やらせても失敗する。

 

 

 考察2:デスタールの指揮
 デスタールに関しては、会敵時点であまりに接近しすぎていた
 これではミサイルの猛射によって弾幕を張り、全速力で退避する他ない。下手に砲戦距離まで詰められて、被弾して誘爆してそれが僚艦の誘爆に繋がれば地獄絵図だ。陣を展開して多方向から攻撃を加えられればいいが……破滅ミサイルの使用が見込めないのであれば、多分逃げる以外にベストな選択肢はなかっただろう。

 ただ、メーザーの進言を一顧だにしなかったのは彼自身の責任であり、敗北の直接の要因となったといえる

 あの時点で即座に迎撃態勢をとる、ゴーランドに連絡を取って挟み撃ちをする、或いは破滅ミサイルの使用許可を取る。これらの対応を取れば、少なくとも無残な敗北だけは避けられただろう。

 いくらでもやりようがあったが――この金髪、メーザーをいじめるのに終始して、生存の機会を失う。正直、自業自得な面も少なくはない。

 

 

 考察3:ゴーランドの指揮(第8話から第10話)
 ゴーランドも敗北につながるベースラインはデスタールの場合と大差ない

 ヤマトがジャミングを行っていたとすれば、ミサイルの誘導は何気に困難。欺瞞を行っている場合も、ミサイルの着弾に支障をきたす。

 これらのヤマト側の電子戦が功を奏していた場合――というか、それ以外の前提ではゴーランドが艦隊をヤマトをミサイルの直線上に置く必要性がない――はロケット的運用以外に方法がない。
 全周を包囲して攻撃することは可能だし、その方が本当は確実。ただ、どうしても側面に対する攻撃はパルスレーザー砲群によって阻止されてしまう可能性が高いし、仮に突破させるならば全艦のミサイルを集中させてミサイルによる弾幕でミサイル攻撃を成功させるという方法以外は作戦成功が難しいだろう。

 ミサイル飽和攻撃、これが彼独力で取り得る唯一の道だのにゴーランドは破滅ミサイルで決着をつけることにこだわった。だから負けた。

 ゴーランドが安全に勝つには、瞬間物質移送器を借りて自軍駆逐艦を奇襲的に転送、これに対する迎撃に忙殺されたヤマトに対しミサイル飽和攻撃を加える。恐らくこれがベスト駆逐艦には危険を強いることになるが……着弾前にワープないし、全速力でミサイルをくぐって撤退。敵味方の識別で爆発するしないの選択が出来ればベストだし、何の不安要素もないが――無理なら無理で、あの大火力で自分の撤退方向のミサイルを破壊してもらおう。

 しかし、デスラー総統への悪感情からこの判断が出来なかった。まあ、ゴーランドにその権限がないから提案しても却下されただろうが。また、ヤマトに対する中途半端なあざけりと過剰な自信というのもマイナス材料だったことは否めない

 攻撃手段が限られたゴーランドだと、正直彼らだけで勝てる作戦は意外に立てづらい。というか、無理。なにせヤマトにはコスモタイガー隊があって、これがヤマトの射程圏外まで飛び出して迎撃してくるのだから。で、自分はミサイルだけ。かなり彼我の戦力差が激しい……。

 ちょっと、可哀想な指揮官かもしれない

 

 

 考察4:デスラー総統の指揮(第12話及び第23話・第24話)

 デスラー総統に関して言えば……彼の作戦自体はそうまずいものでは無い。むしろ結構うまく仕上がっていた――これはタランのおかげのような気もするが……気のせいだろう。作戦その物は結構うまくいく感じがあった。

 作戦が失敗したのは…ただ、ヤマトの方が運がよかっただけ

 つまり、サーベラーの横やりのおかげである。これは、客人らしくサーベラーにおべっかでも使って心証を良くしておくべきだったこれが作戦の修正すべき点たったこれだけでサーベラーに邪魔されることなかったし、同時にこの手段に出る他に作戦を成功させる方法はなかったといえよう

 なお、第11話のバンデベルの件に関しては、彼が雑な性格でしかもビビり屋というのに原因が求められ、作戦そのものに大きな穴はない。

 

 

 考察5:ゲルン提督の指揮(第20話)

 ゲルン提督の敗北理由は簡単、陣形と直掩機だ。だからこれらを改善すれば十分とは言えなくともかなりの確度で艦隊を保全可能となるだろう。

 直掩機は、あれだけの数の空母なのだから超大型空母だけでは無く、中型高速空母艦載機にも直掩任務を任せるべきだっただろう。これで数を確保して敵襲に警戒すべきだった。

 超大型空母の場合、1隻当たり5機から10機の緊急発進が見込まれる。艦隊全体では15から30ほどか。これは絶望的に足りない。1隻当たり75機の中型高速空母を3隻ほど直掩に回して、20×3の直掩機隊を編成し常時上空を警戒これに加えて緊急時に超大型空母から迎撃機を発進させれば90機近い機体を艦隊上空に上げられる。キャパシティとしては、3交代制を維持した上で可能だ。
 再設定値であれば中型高速空母は150機程を収容可能と想定できる故、3隻ほどで合計40×3。超大型空母は1400ないし1800機程であるから、超大型空母だけでも3隻で150機程を供出可能だろう。だから合計270機程が直掩に上がる想定。
 どの想定にせよ、艦隊の広がる面積によってもう数隻空母を直掩に回しても問題ないだろう。
 陣形は空母を中心とした輪形陣を組む。超大型空母を中心に周囲に中型高速空母、外縁部に駆逐艦を集中配置。適宜駆逐艦を間に挟むことによって、対空防衛網の強化を図る。乱雑に近い単なる密集では無く、出来るだけ整然とした配置をすれば、仮に奇襲にあっても敵から逃れる経路を確保しやすくなるだろう。迅速に散開して、撤退なり反撃なりを試みる。これがベスト。

 とはいえ――ゲルンの場合、相手がヤマト機動部隊であったというのが中々に曲者。あの強烈で好戦的な部隊を、その奇襲を受けてしまった。仮に万全な体制であっても、歴戦の勇士が名機コスモタイガーⅡに乗ってやってくるのだ、一筋縄ではいかなかっただろう。また、空母を最優先目標としているのだから、どうあがいても多少の損害は覚悟せねばならなかった。

 対抗する方法やリスクを低減する方法は幾らか存在していたが、残念ながらうまくいかなかった。完全に地球側の追跡を振り切ってフェーベ沖に展開できたというのも、反対に悪質な自信の源になってしまった。

 この、精彩を欠いた作戦展開が――命取りだったといえよう

 

 

 考察6:バルゼーの指揮(第21話)
 バルゼー艦隊がどうすればよかったかは、まずゲルンが負けなければよかった。次に円環に突入しなければよかった。この2点に尽きる

 まずゲルンが負けなければ、自分は残敵掃討程度の仕事であり危険はまったくなかった。地球艦隊はワープ直後には波動砲が撃てないのが判っているから、バルゼー艦隊にとって奇襲の危険はない

 仮に航空戦力による空襲を受けたとしても、ゲルンが勝ってくれさえすれば十分。彼が地球攻撃を続行してくれれば、大帝に勝利を捧げることが可能だった。だが、現実には空母は大損害を受け護衛は役に立たず艦隊は負けてしまった。

 次いで、バルゼー自身が円環に突入しなければよかった。が、少々これは曲者で――円環に突入しなければ今度はヤマト機動部隊の攻撃を受けてしまう。決して対抗できないわけでは無いが、前と後ろで攻撃を受けてしまい、ナスカの二の舞になってしまいかねない。どちらかを片付けてから、残りを始末する。これが最善策、だからバルゼー総司令の判断も間違いでは無かった

 が、ここで火炎直撃砲を使ったのはまずかった。大戦艦を先行させて衝撃砲などを用いた砲撃戦に移行すべきだっただろう。ただ、衝撃砲に熱がないかは微妙な所で、これを使っても変な気流を作ってしまいかねない。結局円環を突破するまで〈メダルーザ〉にせよ大戦艦にせよ、砲撃を中止するのが妥当なのだが――そうすると地球艦隊に反撃する余地を与えてしまうから、危険かもしれない程度では砲撃中止はできなかったのかもしれない。

 意外と、バルゼー総司令は指揮ミスはしていないというか――この人はやむを得ない判断の積み重ねで、土方総司令に敗北したといえる

 運がないというか、ざっくり打ち合わせの割に彼の計画は繊細過ぎた。

 

 

 考察7:ズォーダー5世大帝の指揮(第25話等)

 サーベラーにゲーニッツという二大巨馬鹿を最高幹部に据えたこと自体が間違いだった。しかし気づいたときには「時が時」であるから首を挿げ替えるのもままならず、大惨事を招いてしまったのである。

 ラーゼラーを引き揚げたのが年功序列的なものなのか、抜擢なのかは不明である。仮にラーゼラ―を二人のストッパーとして機能させようとしていたのであれば――見当違い半分、権限を持たせなかった大帝の失策半分という事になろう

 前線の様子を常に伺いつつの地球侵攻作戦の展開であったことは間違いない。非常に慎重で気を配る姿勢は好感が持てる。敵に関する情報を調べ上げ、それに基づいた前線へのバックアップというのも見事というほかない。大帝の軍事に対する関心はガトランティスに勝利をもたらしうるものだったと言える。

 ところが、足元に問題があった。前述の二大巨馬鹿の行動を抑制も監視もできなかったのは非常に痛い。だってさ、監視艦隊がまさかの大帝直通ルートでは無くサーベラーを差し挟むという構造だったのがマズ過ぎた

 

 有徳院殿の御庭番(公儀御庭支配)や御側御用取次はどちらも、役に立たなくなった諜報機関の伊賀者(伊賀組など)や邪魔な側用人茶坊主を退ける為に設けた事実上の直轄機関だった。

 この二つの機関は、形式上の支配は色々あるのだが、前者は将軍に対し障子を挟むなりして報告を挙げることも可能。後者は取次に値しないと思えば差戻も出来るほど強力。将軍に直接憎悪を抱かせず、しかし効率的かつ強力な統治を可能にする、将軍にとって非常にアグレッシブな統治機構の一つと言えた。

 ちなみに、実は〈暴れん坊将軍〉のあれ、大体史実通り

 

 普通、民主国家であろうがなかろうが諜報機関国家元首に強く結びつけるものだし独裁国家ならなおさらだ。そうでなければ治安部隊として、機能不全に陥りかねない。だが、ガトランティスはそうではなかった……

 多少こじ付け的だが有徳院殿とズォーダー5世大帝は政策の継続性に対して似通ったところがある。少々やる気に波のある有徳院殿はちょいちょい政策にブレがあったり、自分でどうにかできる内容では無い事に関しては部下に丸投げしてしまう傾向があったりする。が、ベースとしては慎重。

 大帝もヤマト相手にせよテレサ相手にせよ、結構波のある対応だった。また、彼にとって優先順位の大して高くないモノに関しては、やはり下に丸投げ傾向にあった。しかも、少々感情的な対応が目立つ場面もなくはなかった。

 大帝の場合、彼個人で出来ることは案外ない。何せ、彼の部下が前線なり中核なりを務めて作戦を遂行していた。

 森羅万象を司るわけでは無いのだから前線指揮官の些細なミスまで防ぐことはできない。これを大帝の直接の責任とするのは正直難しいというか、無理筋だろう。まあ、それを防ぐための構造ぐらい創れねぇのか、という話もあるが、それはそれ

 残念ながら、あまり直接指揮を執らなかった大帝であるからして――敗戦の要因その物にはなりにくい。形式的なのは別として、実際的な責任は軽微。軽微であるからこそ、改善のしようがない……

 

 

 残念ながらガトランティス軍が勝てるタイミングはいくつもあったが、相手が悪すぎて、それを活かせなかった。微妙なミスが、作戦全体を狂わせて雪だるま式に大惨事を招いたのだ。

 なにせ、相手は『負けるかもしれないが何としても勝たなければならない、地球が守れるならば全滅しても悔いは微塵もない』とまで覚悟を固めた強力な大火力艦隊だ。多少のミス程度、気力と無理な力業で挽回しにかかる恐ろしい艦隊、それが第二期地球防衛艦隊である……。

 

 些細なミスすら許さない状況では――概ね勝てる方法をとるのは案外難しいのかもしれない。当たり前だが、戦闘は相手がある事であるし。傍から見れば戦闘指揮も史実にせよフィクションにせよ簡単だと思えてしまうが、実際的な中身は傍から見るよりもよほど複雑なのだろう。