旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガミラス兵器群 三段空母――護衛的中型空母――

 

 

 有機的なデザインのガミラス艦隊の中で唯一無機質なのがこの三段空母。しかし、よく見ると結構生物っぽい部分がある。それ以上に、割合に常識的なスペックを原作の時点で与えられたヤマトシリーズでは結構珍しい部類の戦闘艦なのである。

 

 

 ――データ――

 艦級名:不明

 全長:200メートル(ないし180メートル)
 全幅:62.5メートル
 自重:48,000トン
 武装:右舷・舷側3連装フェーザー砲塔2基、左舷・舷側3連装フェーザー砲塔1基、艦底部3連装フェーザー砲塔2基、4連装対空パルスレーザー砲片舷4基、エレベーター2基
 搭載機数:60機
 機種:ドメル式DMF-3型高速戦闘機、ドメル式DMB-87型急降下爆撃機、ドメル式DMT-97型雷撃機


 ガミラスにおけるいわゆる正規空母。純粋な空母として運用され、複数のフェーザー砲を備えたそれなりに砲戦能力を有する。特徴的なのは飛行甲板が4段もある事で、しかもそれぞれが艦載機の運用に寄与する。

 見た目的には何枚か引き出した板ガム。空母らしい小さな艦橋と小さなフィン、大きなエンジンノズルが2つと小さなエンジンノズルが2つの、ガミラス艦にしては無機質なデザインで、しかも目玉もない。

 ただ、艦橋はよく見るとイグアナっぽい。物凄くイグアナっぽい。

 この艦も登場は多いのだが、劇中では全く艦名をどの艦も呼んでもらっていないという何とも表現しがたい扱い。無論、艦名なしの番号呼びの可能性は十分ある。ただ、海外だとTri-Deck Carrier〈Vengeance〉で通っているらしい。また、プレステゲームでも個々の艦名があるらしい。

 よかった、本当によかった……。

 

 

 数値の妥当性

 この艦は横幅が結構ある。それ以上に高さがある。だから、多少艦載機を減らせば十分原作設定のままでもそれなりに活躍できる空母になってしまうのだ。
 高さ15、幅60、長さ120を確保できればその時点で横5機、縦14機の合計60機と、設定値丸々が乗せられる。60機を8回ぐらい補給できる燃料も15×30×30のスペース=4万3500立米を確保できれば収容可能。
 配分としては下層が一部閉鎖式である為この部分に燃料等を格納、中層はほとんど艦載機格納として一部は立体形式を導入。上層は全て駐機場ないし、中層で留められなかった機体を置いておく一部格納庫。これならば十分原作の形状・数値で十分実現可能。

 当ブログの趣旨からすると、困っちゃったなぁ……というぐらい、やって出来ない配置とスペックではないのである。

 


 ただ、描写と異なる。ほんの一瞬の描写と異なる。
 実は、ヤマト第一シリーズ第21話において、第3空母が艦載機を収容する際に――上からのアングルを見せてくれた。それはそれで素晴らしいのだが、問題は雷撃機4機分ぐらいの幅しかないという事が判明してしまったことだ。

 幸いにも雷撃機の数値設定は存在しないのだが、雷撃機があまり小さくても大きくても横幅が木っ端みじんになってしまう。この垂直離陸機……雷撃機にせよガミラスの艦載機群はブラックタイガーとそう変わらない大きさだった。雷撃機がその任務や複座であることを鑑みると他の機体より一回りは大きくて当然だろう。

 

 だが原作設定で割合を考えると、雷撃機は幅が15メートルとかなり大型の機体となる。現代の軍用機の翼幅から考えて一回りは大きい。他方で雷撃機ブラックタイガーとそう変わらない大きさならば仮に10メートル強としても、三段空母の幅は40メートル強とだいぶ小型になってしまう。
 設定の方が描写より大きいって珍しい……。

 

 


 数値の再設定
 戦闘空母と同様に1.5倍で十分だろう。そもそも大型化しなくても大した問題はないのだから。戦闘空母の設定の際に、幅と全長をしれっと変更して60メートルの220メートルにしたため、三段空母のベースの値も250メートルの70メートル程度に変更したい。あくまでビジュアルの問題。
 となると正確には1.9倍することになる。1.9倍だと丁度いい値になるだろうという予測する


全長:380メートル
全幅:118.75メートル
満載自重:10,000トン付近
搭載機数:常用80機+補用10機
最大搭載機数:110機、エレベーター2基
機種:ドメル式DMF-3型高速戦闘機、ドメル式DMB-87型急降下爆撃機、ドメル式DMT-97型雷撃機


 高さも1.9倍されるため、恐らく80機は十分に積みこめるだろう。ヤマトのそれと同じように立体駐機にすればいくらでもスペースの有機的利用は可能。また、平置きでも十分対応できる。元からまともな数値設定の範囲である為、この辺りは色々ひねる必要性はない。実際に建造するだの、艦内描写を行う時に考えればいい。
 搭載機種によって数は大幅に変わり、戦闘機であれば常用90で最大130程度はいけるだろう。反対に雷撃機では常用が60程度、最大で90機が限界だろう

 結構充実した空母になる。大きい事はいい事だ。

 

 


 ガミラスの艦載機の運用

 単一機体の運用は極めて危険だが、極めて効率がいい。
 危険な理由は一隻失えば一機種をすべて失うから。

 戦闘機を失えば、爆撃機は敵の空襲を警戒しながら空襲を行わなければならないし、雷撃機に至っては出撃できない危険が出てくる。爆撃機を失えば、雷撃のみで、攻撃のバリエーションがなくなる。そもそも雷撃の成功が必ずしも高くないとすれば、当然相対的な火力は下がる。雷撃機を失えば、決定力不足に陥り敵を撃破できない可能性が出てくる。
 
 メリットは整備がしやすい、パイロットや機体の融通をする必要がない、最大限格納庫のキャパシティを使えるという事だろう。

 複数機体を組み合わせた場合、まんべんなく乗せなければならないが、大型の雷撃機は必然的にスペースを取る。雷撃機を十分な数載せようとすると、他の機体を収容できたはずのスペースを圧迫しかねない。単座と複座では必要なパイロット数も異なる。
 だが、これを単一機種で行えば何の心配もなくなる。キャパシティを最大限生かし、他の機体を圧迫することなく、みっしりと積みこめる。パイロットも複座なり3座なりを想定してあらかじめ建造しておけば、戦闘機専門空母の所属部隊パイロットは非常に快適に過ごせるだろう。個人スぺ―スの問題で悶着も大して起こらないだろう。整備する側も、それぞれの機体に特化し、載せる兵装も特化すれば。専門性を徹底的に高めたプロフェッショナルだけで構成することが可能。
 メリットを取るか、デメリットを取るか。これは指揮官の判断だろう。

 

 

 戦闘空母の記事でも述べたが、ガミラスは艦載機の運用に関して比較的消極的であるといえる。まんべんなく配備して艦艇喪失に伴うリスクヘッジを行わないというその姿勢自体が、空母を基幹戦力ではなく補助戦力として捉えていると表現することが出来るだろう。

 ドメルは艦載機戦を行うために3隻の三段空母を呼び寄せ、さらに戦闘空母を呼び寄せた。ハイデルンの発言から察するに、ガミラスでは空母の集中運用はあまり多用されないのだろう。少なくとも、弱勢な敵相手には行わない運用と言えるのだろう。

 

 広大な宇宙において、敵を発見するのも攻撃するのも比較的多数艦船を用いて行われると考えて不思議はないだろう。つまり、敵は常に大勢で襲い掛かってくる。そのような敵に対して航空機によって打ち破ることを考えた場合。1隻当たり60機というのは十分な数とはいえず、それがたった一隻かそこら程度というのは不足というほかない。

 しかし、全機を直掩に回せれば十分防空任務を受け持つことが出来る。前進して敵機を迎撃し、艦隊は後進して直掩機から距離を取った上で対空戦闘を行う。そうすれば非常な数の相手でも対処は可能だろう。

 全機を水雷艇の様に補助戦力として考えたならば、艦隊と連携させる形で攻撃を行えば、敵艦隊に一切の休息を与えずに攻撃を行い続けることが可能。物理的に攻撃が大した事なかったとしても、心理的な攻撃をすることが可能。

 しかし、基幹戦力とした場合は圧倒的に数が不足している。

 

 我らガトランティスは端っから無駄に近いとわかった上で第6遊動機動隊の艦載機を送り出したし、本気で戦う時には66杯を以て機動部隊を編成した。

 暗黒星団帝国は中間補給基地に多数の空母を擁し、空襲を準備していた。

 ボラー連邦は艦載機の使い方がガミラスと似ている上、一隻当たりの艦載機数が恐らく大した事のない――それどころか、舟艇を発進させているため軽空母や揚陸艦の側面の方が大きい――のである。しかし、その代わりにバカみたいな数を多量に集めてドボドボ投入していた。使わなかったとしても一応揃えていた。

 

 それにも関わらずガミラスは3、4隻程度で集中運用扱いという事になっている

 しかも、戦闘はドメルを除いてみながバラバラと艦隊の戦力補完としての活用であるから、そもそも航空戦力を非常に軽視しているという言い方になってしまう。頑張って贔屓しても、あまりガミラスは艦載機戦が得意とは言えないだろう。

 この傾向は結局ガルマン・ガミラスにおいても変わらず、艦載機はヤバい敵相手に使う飛び道具という扱いのまま。味方艦隊を安全圏に置いたまま戦うツールというより、あくまで敵を叩くためのツール――それも戦闘艦より一段劣るか、癖のある兵器。そういう扱いなのだ。

 仮に空母を北部方面艦隊が擁していたならば、グスタフ中将もボラー艦隊に突入する事なかったのに……。特に戦闘空母だったらよかった。

 

 

 三段空母の運用

 火力の低い三段空母は出来るだけ敵艦隊から遠ざけなければならない。どう見積もってもデストロイヤー以下、フェーザー砲であることを高く評価しても、戦艦クラスとは言い難い。そんなこの空母が砲戦距離にあっては火力にならないどころかウィークポイントにしかならない。しかも、どこに被弾しても重要区画をかすめる、砲戦に参加させるには最悪な設計であるから、一発被弾すれば即大損害。下手をすれば七色星団決戦で見たように、艦隊が誘爆して全滅しかねない。誘爆しなかったとしても。対ゴルバ戦の様に、爆発して僚艦にぶつかるという事は覚悟しなければならないだろう。

 

 故に三段空母を含む艦隊は出来るだけ敵艦隊から逃れるような戦闘にならざるを得ないし、場合によっては三段空母を少数護衛を付けて離脱させなければならない。

 艦隊防空には使えるし、どっしり構えた戦闘にはぜひ参加してほしいが、ガミラス特有の電撃戦において三段空母は若干邪魔……

 

 

 

 劇中の活躍。

 初登場はヤマト第一作の21話。グリーンに塗られた戦闘機専用の第1空母、パープル系に塗られた爆撃機専用の第2空母、スカイブルーに塗られた雷撃機専用の第3空母の3隻がドメルの元に集った。更に戦闘空母と指揮専用の円盤旗艦を以てドメルは起死回生のラストチャンスを掛けたのである。翌第22話で見られたように、空母集中運用はガミラスでも珍しいらしく、しかしドメルの目論見通り非常に有効に機能した。しかし、ドリルミサイルの反転により艦隊は壊滅してしまった。

 次の登場はヤマト2の第3話ガミラス残存艦隊の一隻として参軍し、デスラー総統と共にテレザート前面域へと進出した。第12話ではデスラー艦の隣に陣取って陣形を形成、24話においてはタランの発案で臨時の旗艦として呼び寄せられ、総統は移乗。

 新たなる旅立ちでは画面に出ずっぱりだった。ガミラス本星にてガミラシウムを勝手に採掘していた暗黒星団帝国に奇襲を仕掛ける為、デスラー戦闘空母と共に突入し砲撃戦を展開。続くイスカンダル追走の最中に受けた奇襲で一隻が飛行甲板を一機に打ち抜かれて爆沈。イスカンダル降下後も雷撃を受けて一隻爆沈。ヤマトの救援を受けて再び飛び立ったガミラス艦隊は自動惑星ゴルバに対して突撃を敢行、三段空母も艦載機を全て送り出した後に突撃を敢行するも敵わず爆沈してしまった。

 最後の登場はヤマトⅢの第16話。回想シーンで総統の旗艦である戦闘空母の周囲を固めていた。これが最後の生存確認である。

 他方で、2連3段空母なるものも登場しており、その価値自体は損なわれていなかったとみられる。

 

 

 三段空母は元から無理なスペックでは無かった。そのスペックや運用状況から、戦力としての期待値はかなり限定的である可能性も指摘である。その限定的な運用であれば、なおの事原作のスペックのままでも十分現実味がある。戦闘空母と比率を揃えて大型化すれば、一隻でもかなり防空を確固たるものにできる能力を付与することが出来た。

 

 戦闘空母と違い、三段空母はガミラスにとっては比較的使いづらい戦闘艦なのだろう。しかし、味方が苦手な航空戦力を多用する敵勢力と何度となく交戦する羽目になったガミラスにとって、この三段空母は皮肉にも欠かせない艦艇となってしまった。

 特に、ガルマン・ガミラスという新たな勢力を形作るまでの、その礎としては欠かせなかったのだろう。そして、この新しいガミラスで更なる発展を遂げることになるのである。