旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガミラス兵器群 戦艦(シュルツ艦)――重雷装戦艦――

 

 

 冥王星前線基地の勇士を率いたシュルツの旗艦であり、ヤマトに肉薄した数少ないガミラス艦の一隻。その詳細を考察したい。

 

 

 ――データ――

 艦級名:不明 
 全長:270メートル
 全幅:不明(予想:50ないし60メートル)
 自重:不明
 武装:大型3連装エネルギー砲塔2基、艦底部中型3連装エネルギー砲塔1基、艦尾小型3連装エネルギー砲塔3基、艦首魚雷発射管12門、艦底部魚雷発射管12門、艦尾魚雷発射管8門


 ずんぐりした艦体に飛び出たキノコのような艦橋、理由不明の開口部。更に艦下部と艦首が白く塗られ、反対に艦上部はガミラスグリーンに塗られているのだが、一部茶色に塗られている特殊なカラーリングを施されている。開口部に至っては赤く、ガミラスの目玉っぽいのも側面に見られ……非常に目を引く。

 正直な所、シイタケの原木。あるいはなんかのトカゲ。

 あれほど画面に登場し、奮闘したのだが……残念ながら艦級名も艦名もつけられていない哀れな艦という側面を持つ。海外では〈Conqueror〉という艦級名を貰っている模様。一方でゲーム版だと〈バードラII〉や〈カンプルードIII〉〈カンプルードIV〉あるいは〈シュルツIV〉が登場するという。

 

 

 艦内描写
 艦内描写は多数あるものの、艦橋部なのかどうなのかが不明これ、意外に珍しい描写形式で、第一作のガミラスに特徴的。普通舷窓なりが映ってもおかしくはないし、ヤマト世界の艦内描写ではありがちなのだが――一切ない。しかも、広さはともかくとして意外と常識的な高さ。映る外の様子は全てモニター越しであって窓ではない。外観的には2階建ての艦橋なのだが、しかし全く描写らしい描写がない。


 説明を付けるなら、シュルツはCICで指揮を執っているという事になるだろう。

 シュルツは登場したガミラス人の中でかなり慎重なタイプと言える。大胆過ぎて詰めの甘いドメルや、基本的な事を失念するゲール、猪突猛進型の総統。卑怯・卑屈でお話にならないヒス。そして影の薄いタラン。この中ではシュルツは明らかに常識人だし、普通の指揮官。普通の指揮官がヤマトを倒せるかと言えばそれは別だが、行動原理や作戦プロットは当然最も合理的で効果的で常識的なものが期待できる。そうであるならば、艦橋で指揮を執らないのは当然だって危ないもの
 ドメルでさえ、艦橋で指揮を執ったかと言えば――ドメラーズ3世に関して言えば艦橋とするには疑問の残る描写だった。ガルマン・ガミラスを除き、ガミラス人の中で艦橋とわかる場所で指揮を執ったのはデスラー総統その人のみ。

 

 CICで指揮をしたとあれば、艦の全長が妥当であるかどうかを計算は事実上不可能。元から270とかなり大型の設定だから難なく配置できるだろうし、二階建ての窓を持つ艦橋も別にオーバーではないのだろう。珍しいよね、全く同じ構造の二段の窓ってさ。

 だが、フランスのミストラル強襲揚陸艦も二段の艦橋である。しかしこの艦は180メートルほどと、いずも級護衛艦よりも小さい。だから当然シュルツ艦よりも小さい。が、バランスも奇怪になるようなことがないから、大丈夫だろう。

 


 第9話で描かれた描写から見ると、CICは中型モニターや各種計器がずらりと並び、その中型モニターには専用のヘッドセット付椅子が付いている。艦橋の窓に見える大型のモニターははやりモニターであって窓ではなさそうだが、描写が一部取っ散らかっているため断言できない。複数同様のモニターがあるのか、一つの装置をうっかり描き間違えたか……不明。

 割とみんな立って仕事をしており、ガンツは何度か例のモニターの椅子に着席していたが、シュルツは一度も座っていなかった。全艦・艦隊用の通信(通話)装置があり、直接呼びかけられる模様。指揮通信能力はかなり高い

 

 艦橋以外の艦内設備は不明で、乗組員が二人並んで走り込めるほどの廊下を持つ。問題は、艦載機を持っているのか否か

 っぽい描写はある。

 片側3段4列以上のヤマトと同様の格納庫っぽい場所が描写されている。仮に艦載機だとすれば24機を置くことが出来る。例えば、ゲールが使っていたあの機体であれば――これはBAe ホーク(全長11.86メートル、全幅9.40メートル、全高3.99メートル)と同等だろう。
 だから格納庫の高さは24メートル程度、幅は一ブロックにつき14メートル程度ゆえに幅は全体で42メートル、長さは64メートル程度か。

 

 

 数値の再設定
 ほんの少数の艦載機ならば、ずんぐりした艦体であるから運用も難しくはない。何より、地球艦とは異なり波動エンジンと波動砲を接続する経路を考えなくていいのがありがたい。

 とはいえ、十分な艦載機運用能力=描写程度の運用能力を確保するには少々足りない。故に再設定が必要となる(強弁)。

 戦闘空母や三段空母の数値最適化を行った際の倍率である1.5倍程度に比率を揃える。

 

 全長:405メートル
 全幅:90メートル
 自重:不明
 武装:大型3連装エネルギー砲塔2基、艦底部中型3連装エネルギー砲塔1基、艦尾小型3連装エネルギー砲塔3基、艦首魚雷発射管12門、艦底部魚雷発射管12門、艦尾魚雷発射管8門、大型ビーム砲2門(目玉)
 艦載機:24機
 機種:不明

 

 艦載機等の能力がかなり比較的小さい為、大して大型化する必要はない。元の値でもずんぐりした形である上に波動砲などの特殊兵装がない為、割合問題なかったのだが、大型化する事により積みこみがより容易になった。

 あの目玉が大型ビーム砲であるならば、確かにかなり必殺兵器に近い性能を発揮するのかもしれない。が、劇中未使用なために不明。
 

 

 

 

 艦の性格

 この艦の性格は嚮導重雷装艦だろう。何といっても艦首方向へ24門も備えるこの雷撃力。砲も主砲クラスを9門を艦首方向へ向けられるし、副砲も6門指向できる。更に目玉大型ビーム砲まで備え――これはかなり強力な戦闘能力を持っているといえるだろう
 これならば、デストロイヤーと共に突撃をする事も、敵の大型戦闘艦との間に立って味方艦隊への損害を抑えつつ強力な雷撃を行う事が出来る。

 

 個としての雷撃能力の足りないデストロイヤーとは大幅に異なり、雷撃能力が大幅に強化されており通信指揮能力の高さと艦載機運用能力から考えると、どちらかと言えば艦隊の防御を担うといえるだろう。

 デストロイヤーは火力も雷撃力もそこそこで、機動力を重視した艦である。

 この艦で構成された艦隊のまずいところは、敵艦載機による攻撃や、強力な戦闘艦で編成された艦隊に対しては全く敵わないという事。艦載機より機動力の劣るデストロイヤーは当然、艦載機の攻撃からは逃れられない。火力の高い戦闘艦相手では端っから味方の攻撃が通用せず、敵の攻撃に際して味方の装甲は紙。奇襲や予期しない戦力との遭遇は避けなければならない。当たり前の事だが、デストロイヤーにとっては死活問題。


 そこへ、この戦艦が現れたとすれば味方は、敵に勝つことは難しくとも全滅は避けうるし速やかに撤退することが可能だ。搭載している艦載機をスクランブル発進させて防空や簡単な対艦戦闘を行い、それでも突破してくる敵艦に対しては殿として艦隊の後方で踏ん張り雷撃を以て敵を叩く。仮に勝てなかったとしても損害を与えられればそれで充分。

 

 直接の砲戦は行っていないため不明だが、生存性はそれなりに高いだろう。仮に数隻の護衛が付いていれば、ヤバい敵に対しても負けない程度の戦いを敢行し、味方艦隊の撤退を支援できればいい。何なら高速運動して本隊とは別の動きをしても構わないだろう。通信指揮能力は高いだろうから、十分指揮は続行できるはず。

 基本的にこの艦が戦闘に参加する場面は味方が劣勢。この艦により損害を最小限にとどめるというのが基本となるだろう。

 

 

 劇中の活躍。

 ヤマト第一作とヤマト2に登場。特に第一作では当然大いなる活躍を見せた。

 第一作第8話において反射衛生砲の損壊に伴う冥王星前線基地の喪失によって所属艦隊は離脱を余儀なくされたが、その際の一隻として登場。続く第9話においてはアステロイドベルトに隠れたヤマトを必死に索敵し発見次第味方艦隊に通報、ヤマト史上に残る名演説と共に戦闘を開始した。

 しかし、ヤマトの火力とアステロイドリングにより防御に阻まれ指揮下の艦隊は壊滅。シュルツの乗艦であるこの艦のみが残存、だが僚艦の犠牲の元にヤマトへの肉薄に成功。とはいえ、あと一歩のところで体当たりできず。反対に、ロケットアンカーを舷側に撃ち込まれ軌道をそらされ、砲撃のチャンスもなく小惑星に叩きつけられた。

 確かに……ほとんど登場はしなかったのである。そうではあるが、しかし極めて強力な印象を残した戦闘艦だった

 

 

 他方で残念ながらヤマト2では第3話で姿を見せる程度で後は消息不明。この際に印象深い全身ガミラスグリーン塗装を見せた。ただそれだけであり、あのクルーザーと同様にほとんど完全にゲスト出演枠。

 ものすごく強引で好意的な解釈をすれば、大マゼランなり小マゼランなりに足を延ばし同法の艦隊をまとめるべく長い旅路についた。という事になろう。

 

 結果としてガミラスが航空戦を重視しつつある中でこの艦は非常に中途半端な艦載機運用能力であった。雷撃力は非常に高いが、ガミラス電撃戦が必ずしも有効では無くなりつつある中で、たくさんの魚雷なりミサイルなりを抱え込んだ戦闘艦としては的が大きすぎるし足が遅い。

 かつてのガミラスであれば有力な戦闘艦であっただろうが、新たな勢力にもまれる過程で、どうしても力不足な面が見過ごせなくなってしまった。だから姿を消してしまった。描写はこのように纏められるだろう。

 

 

 

 重雷装艦という特殊な戦艦であり、他のガミラス艦に比べて倍近い巨体を誇る。旗艦らしく砲撃力も指揮通信能力も非常に安定・信頼に足る。半面、運用の性格は艦隊の後方が主戦場となるだろう。

 ところが、対ヤマト戦においては本来の戦闘とは全く異なる運用を強いられてしまった。これは想定外に近い事態だっただろう。しかし、この艦はヤマトに肉薄しあと一歩で直撃できた数少ない戦闘艦である。

 影は薄く、以降の作品には殆ど登場せずその価値も正直不明瞭。そうではあるにせよ、シュルツの意地が後移ったような戦い方はヤマト史上に名を刻む戦いであった。

 あの戦闘は、この戦艦だからできたこと、と言えるだろう。