旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

宇宙艦隊の存在する場面におけるパワードスーツ等の妥当性についての考察①

 

 パワードスーツつまり強化外骨格はSFの肉弾戦には欠かせない。
 個人的にはその理由がいまいちわからないので、自分を説得するつもりでパワードスーツについて考察したいと思う


 

  まず、パワードスーツが必要になる場面を考えたい。

 恐らく、地上制圧戦が第一だろう。あるいは、宇宙空間での艦隊の防衛か。

 ただ、その地上戦を行う必要が有るかどうか――艦隊の攻撃力が制圧に至らなかった場合という事になるだろう。ただ、強力な宇宙艦隊が存在しているのならば、普通に考えれば、衛星軌道に艦隊を前進させそこから惑星表面に艦砲射撃を加えるのが当然だろう。宇宙空間においても艦載機で十分ではないだろうか。

 

 

 待て、十分かどうかは考察しなければならないだろう

 艦載機の有用性については、以前ヤマトの基本のカテゴリーで記事を投稿したので、こちらで考察できたと思う。つまり、別に人型である必要性はない

 では、艦砲射撃で地上を制圧できるか。この想定が正しいか、まずは静止衛星軌道上からの艦砲射撃について考察する

 

 


 惑星表面を狙った艦砲射撃――非常なロマンである。 


 大気層の影響を考えるとビーム兵器の威力は当然減ぜられると考えられる。しかし一方でビームのイオン化した粒子が大気と反応してパルスを生じさせる可能性も考えられるため、この場合は地表に到達しようがしまいが攻撃兵器として十分
 実体弾の場合も大気層がネックになる。物質の密度の転換点であり、そこから数万メートルもの距離を経て地上に到達せねばならない。えげつない高速により大気圏に侵入する飛翔体は前方の空気を圧縮してしまい、空気は運動エネルギーを加えられて発熱する。そして砲弾がとろかされてダメになる。
 (理科の授業の時、先生が使用直後の気体検知管に触るなって何度も注意したでしょ? 無理やりキャパオーバーな圧力を加えて、急激すぎるから他所にエネルギーが逃げれずに発熱するんだって)
 地球に攻撃する場合、最適な角度をもってしても温度はざっくり2千度近くまで耐える必要が有る。下手すりゃ1万度まで耐える必要が有るのだから大変な事である。皮膜で砲弾を覆う事である程度はこのリスクを避けられるだろうが、どこまで耐えられるかは条件に依るだろう。運動エネルギー弾として発射するならば炸薬は必要ないだろうし、炸薬を込めたならば断熱を失敗した場合は途中で発火してしまい爆発するリスクもあるだろうから……無垢の鋼材の方が現実的か。

 どっちにしろ、規模の小さい実体弾では難しいだろう

 


 ここまで読んで、多分私の事を救いようのないバカだと思われる方も大勢居られるだろう。「君、神の杖なんてものを真に受けたのかい?」とか、「衛星軌道から真下に撃ったってどうにもならんだろバカ」とかおっしゃられるだろうが――これから実体弾を投下する際の合理的な攻撃法の前提を述べるので少し黙っててください


 まずは一番簡単な問題=精度確保から
 問題の一つに命中精度がある――惑星制圧において、命中精度は多分気にしなくていいでしょう。艦隊戦で黙らない相手が相手になるのだから大抵は殲滅が目標となるだろうから地球の内戦等であれば、事情は違うかもしれないが
 反抗的な敵本星への攻撃という、無差別攻撃の最中になぜ命中精度を気にする必要が有るのか。単なる金属塊やビームを撃ちまくる程度、今更出し惜しみして艦を降下させて中途半端に攻撃を食らうより無茶苦茶に攻撃しまくった方が安上がりである。廃艦予定の戦闘艦を地上へ自由落下させても構わない。
 確かに、民間施設を攻撃対象から外す意義はあるあるが、相手の政府を崩壊させる前提で攻撃しているならば当然そんな細かい事をする必要はない。そういう攻撃をしている時点で他国からどう見られているかを心配する必要はないように思われる。まして、反乱軍相手ならば、なんなら星ごと爆破したってかまわないだろう。

 

 仮に、善良な星間覇権国家が存在したとしよう。
 この場合は精密射撃が必要となる。まあ、無理と思われるが。

 とはいえ一定程度までは調整が可能だろう。つまり、自在に姿勢制御をすることが出来る宇宙戦艦から砲弾を発射するのである。角度の調整や発射タイミングの調整は当然可能。角度を調整すれば突入時に中途半端な減速(真正面から大気にぶつかればそりゃ減速しますものね?)を避けられ、不確定要素が減れば後は発射タイミングと発射位置によってある程度は着弾地点の収束が可能だろう。攻撃を範囲として設定すれば、そこまで誘導する必要はない。
 仮にわざわざ砲弾を誘導する必要が有ったとして、現在の地球のような惑星間航行すらできていないレベルの技術でも一応、LRLAPという考え方があり、実際にロッキード・マーティン社はRAPなんてものを造った。これらはより高度な技術と組み合わされれば、敵が青ざめるような結果をもたらすだろう。


 ピンポイント攻撃はできなくとも、一定程度までの精度は担保できると考えてもそう都合のいいものではないと思われる。精度はパリ砲程度か(ということは精度が高いのか低いのか評価が分かれる)。

 

 

 次は、物理も数学も苦手な私にとって最大の鬼門、
 どうやって地上に落とすか問題。

 方法としては二つある。
 猛烈な加速を以て地上へ突撃するのが一つもう一つは速度を落とす方法がある――らしい。前者は文系の私どころかどんな人間にもわかるだろうが、後者がイマイチ理解できない。だって前者は加速すればいいだけだから。

 とはいえ前者でも困難がある。

 つまり直線で進めば、当然のごとくそれまで受けていた慣性に対抗する必要が有る。それも方向は横。直進している最中も地球は当たり前だが自転を続けているわけで、衛星と地球はあたかも止まったように見えるが、飛翔体はその関係性から離れており、自身が横へスライドし続ける以上、常に逆方向横へスライドし続けなければ直進性を維持できない。
 私の理解としてはこうなのだが、頭のよさそうな方の神の杖指摘記事を読むと、横風と表現なさっている場合が多い。飛翔体視点か、地球視点かの違いであると思いたい……。

 頑張ろう。SFなんだし、超科学なんだから気にする必要はないのかもしれないが

 まず、直線コースで直撃させるには砲弾に推進力――それもかなり強力なものを取り付ける必要が有る。
 直線コースで到達できるだけの推進力であり、当然途中で軌道修正は欠かせないだろう。あるいは、砲撃を行う戦闘艦自体が静止衛星のごとくぐるぐると自転に合わせて高速周回する必要が有る。どちらも、RAPの類や高機動な宇宙戦艦からの攻撃ならばある程度現実味を帯びられるか。
 端から精度を無視して攻撃をする場合、全く持ってこれらの想定はあてはまらず、必要な角度と距離を以て攻撃すれば問題はない。単なる弾道ミサイルの再突入体と同じ感覚で攻撃すればいい。

 

 後者は、間違っていたら誰か指摘してほしいのだが、速度を打ち消すために物凄い加速を進行方向とは逆の衛星の進む方向に働かせる必要が有るという事らしい。衛星軌道を周回させるには非常な高速で等速度運動を行い、重力の影響圏のぎりぎりのラインを飛ぶ、これを落とすには重力が打ち勝てるレベルまで減速させて地球に引付させる。その速度を出来るだけ速やかにするために、出来るだけ減速する必要が有る。らしい。

 図で描けば――いや、わかんない

 

 


 威力はどうか。これは、どの程度を求めるかによる。

 

※こっから文系の残念さが出てくるので、理系の方は適時自分なりに突っ込んでください。私と同じ文系は――一緒に悩んでください。

 

 威力と一口に言ってもさまざまあるだろう。

 例えば、地面をえぐり、山を崩すほどの威力を求めるか。あるいは、地表の者をなぎ倒す威力を求めるか。
 人的資源の収奪が目的の場合や、それ以上に鉱物資源を求めた場合、あまり力があり過ぎても困る。無差別攻撃を加えてうっかり鉱山を穴ぼこにしようものなら、悔やんでも悔やみきれない。ならば、地上のビルをなぎ倒す程度で十分。人間に恐怖を与えれば十分である。
 艦砲射撃に移れている時点で、敵の守備艦隊は壊滅状態と考えて問題ないだろうから、この時点で相手国民は恐怖と失意の底に居る。それを、もう一押しするのである。そのためには別に強力である必要はない。惨状を創り出せればいいだけだ。

 

 と、言ったものの……どう計算していいのか正直全くわからん。単純に重力加速度を静止軌道からの距離36,000キロメートルに加味する単純計算でいいのか。あるいはより高度な終端速度を算出するべきか。あるいは、衛星速度をそのまま維持すると考えるのか。
 全然わかんない事も多いので、数値はJAXAのページをあさりまくって必要そうな数値をお借り申し上げた。
 必要な数値を上げると。


 1、静止衛星の軌道36,000キロメートル
 2、大和の46センチ九一式徹甲弾は全長1.95メートル、総重量1.4トン
 3、落下速度 a.義務教育レベルの計算で単純に2万6572メートル毎秒 b.トライデントなどの性能のいい弾道ミサイルを参考に、根拠なく秒速6000メートルと設定 c.神の杖を参考に秒速3219メートル。

 

 計算ができない私としてはこれは困ったが、ウェブで計算フォーム(https://calculator.jp/science/kinetic-energy)を見付けたので、その力を借りる。(ここら辺、正直に言わないとね)

 TNT換算は自力で4.184×10の9乗ジュール(4184000000J)を使って割る。被害計算は(https://keisan.casio.jp/exec/user/1439603753)の力を借りる。つまり――

 

 1から3を加味し、パターンa 515431964320J、123.191TNT換算トン。100メートル圏内で岩を粉砕、重構造物に損傷。500メートル圏内でコンクリート構造物を損壊。
 1から3を加味し、パターンb 26280000000J、6.281TNT換算トン。100メートル圏内でコンクリート構造物を損壊。
 1から3を加味し、パターンc 7564231530J、1.808TNT換算トン。100メートル圏内家屋倒壊。

 

 私の設定ミスがあったとしても、意外と威力がない静止軌道から加速に任せて投下すると、効果範囲500メートルでちょっとした弾道ミサイルクラス。核爆発なしでこれだから、威力は十分という見方もできるが、仮に地球人が地球人同士で使うとなると……正直、あまりコスパがいいとは思えない。精度が低いし、宇宙戦艦高そうだし。

 

 あまりにも威力がなかった為、もう一つ想定を加える。

 ヤマト世界にありがちな数値の過少設定であるこれを是正すると宇宙戦艦ヤマトの場合、どうも長さの数値を3倍ほどにした方が現実に即すのではないだろうかと思われる。当ブログではずっとこの前提で話をしてきたし。ゆえに約3倍が妥当だとすれば、砲も約3倍にする必要が有る。デザイン的にね。
 つまるところ、138センチ砲。砲弾の全長は6.05メートル、総重量は単純計算で4.2トンとなる。

 

 a.1482749486400J、354.389TNT換算トン 100メートル圏内であれば重構造物破壊。250メートル圏内で岩を粉砕、500メートル圏内ならばコンクリート構造物に損傷を与えられる。
 b.75600000000J、18.069TNT換算トン 100メートル圏内でコンクリート構造物が損壊。岩を粉砕するにはあと5kgf/cm²足りなかった。
 c. 21760118100J、5.201TNT換算トン 100メートル圏内でコンクリート構造物が損壊。

 

 これならば、500メートル圏内であれば確実に大型目標を仕留められる。中身が無垢の鋼材であったとすれば、あるいは重金属であれば更なる威力増加が見込める。ただし、戦艦による砲撃に限定(ビームないし粒子兵器を除く)される。
 理由は単純で、巡洋艦による実体弾による攻撃をした場合、九一式徹甲弾のデータを例にとると20.3センチで全長906.2ミリ、125.85キロである。46センチ砲の12分の一程度の重量しかないのだ。何故、旧帝国海軍の重巡洋艦を基準にするのかといえば、さらば宇宙戦艦ヤマトに登場した地球艦隊巡洋艦の全長が、青葉以前のそれと一致するから。たとえ3倍にしたとしても、377キロ程度しかなく36センチ砲の673.5キロに遠く及ばない。これだと直撃するより空中で爆発した方が被害が大きい可能性がある。

 想定より、安全圏からの艦砲射撃の有効性に疑問を感じた次第。
 (艦載機による地表爆撃の有効性が明示されただけのような気が……)

 

 まあ、大気をプラズマ化させてしまえば一発で敵惑星を黙らせられるだろうから――粒子兵器のバカ撃ちでも効果はあるのかもしれない。が、そんな兵器が現実には存在していないし、デモ攻撃を行ったこともないのだから、結局は分からない。

 

 


 艦砲射撃のメリットそれは圧倒的なメッセージ性を持つ軍事的示威活動である事だろう。


 母星を取り囲む強力な宇宙艦隊――降伏以外の道は考えづらい。大気圏外への攻撃方法があれば、あるいは戦闘衛星などがあれば少しは状況が異なるのだろうが、しかし反撃の為の手段が限られるというのは間違いない。実はそんなに手数がない状況でも、静止衛星軌道上ならばバレずに安全がある程度担保できる。
 一方で、デメリットではないが無意味な点もある
 大気圏でも十分有用なビームや粒子兵器を備えているならば、高高度から落とす運動エネルギー弾としての性質を捨てて普通に炸薬を充填して攻撃するならば、静止衛星軌道上である必要はない。圧倒的兵力があるならば、まどろっこしく滞空するのではなく、直接降下して攻撃した方が手っ取り早い。精密射撃が難しく、手段やその威力に疑問が生じるこの攻撃を実行した場合、本当に、徹底して軍事的示威活動となってしまう。


 示威行動をせず純粋に制圧戦を敢行する場合、大艦隊をもってすればそれだけでも惑星を制圧することは可能であろう。うまい射角を取れば別に砲弾でなくともミサイルを撃てばいい気もするが、一応砲弾=運動エネルギー弾として想定する。
 例えば、ガトランティスの様に80隻の戦艦や200有余隻の駆逐艦を用意して突入させるなどというような場合である。

 

 シリウス方面軍を例にとる。
 この場合、原作設定のままならば大戦艦は48センチ砲相当の砲を積んでいると想定可能。一方で艦橋の大きさから想定すると全長1.2キロ、150センチ程度の砲口となるだろう。もっと言えば、アンドロメダとの比率から言えばやはり450センチ砲となる可能性もある。この場合、砲弾の重量は15トンは下らない(これぐらいなくちゃ意味がないともいえる)。


 1発当たり単純計算で1.210TNT換算トン。10連回転砲塔を3基、シリウス方面軍全力では240基2400門が上空を囲み、一度の斉射で3340トンから3万6千トンが降り注ぐ。1発15トン計算で、4041TNT換算トンから43560TNT換算トン(=43.56TNT換算キロトン)。描写から1ストローク10秒程度で撃ち切るが、その間に総量3万3400トン(40.41TNT換算キロトン)から36万トン(=435.6TNT換算キロトン)を投射できる。

 1分絶え間なく砲撃を加えた場合では20万(=2424.6TNT換算キロトン)から最大216万トン(=26.136TNT換算メガトン)投射できるという事になる。同じく絶え間なく砲撃した場合は1時間では1200万(145.476TNT換算メガトン)から1億2960万トン(=1568.16TNT換算メガトンつまり1.5TNT換算ギガトン)。多分、次弾装填に倍は時間がかかると思われる為、2時間で前述のトン数を発射すると想定できる。原作通りならばこれらの数値は当然3で割る必要が有る。
 つまり、1発100TNT換算メガトンのツァーリ・ボンバが1時間で15発投下されるに等しい。アメリカ最大の出力25TNT換算メガトンを誇るB41では1分間に4発、1時間で60発が投下されるに等しい。原作通りでも1分間に1発、1時間で10発投下できる

 ツァーリ・ボンバは計画よりも半分の出力、つまり50メガトンに抑えられて実験が観光されたが、その際の記録では高度4,000メートル(海抜4,200)で爆発、火球直径は2.3キロ、キノコ雲は直径40キロに広がり、高度60キロまで達した。一次放射線による殺傷範囲は半径6.6キロ、爆風による殺傷範囲は半径23キロ、熱線による殺傷範囲は半径58キロに及び、衝撃波は地球を3周した。面積でいえば2461キロ平米、不謹慎だがルクセンブルク大公国が消滅する。
 つまるところ、シリウス方面軍の大戦艦が全艦斉射を行えば1分で4922キロ平米を焦土と化し、どの国の首都も副都もともに壊滅する

 ロシアでいえばイングーシ共和国に相当し、さらに言えばトリニダード・トバゴのようなミニ国家は一発で消滅する。1時間では被害範囲が73830キロ平米に上り、これはシエラレオネ共和国の面積に相当する。別な例をとれば、ニジニ・ノヴゴロド州(露)、あるいはウエスバージニア州(米)に相当する。

 

 戦略的に行動すれば、1分間でモスクワ(2511キロ平米)とサンクトペテルブルク(1431キロ平米)、セヴァストポリ(864キロ平米)を同時攻撃してロシアをほぼ完全に封じることが出来る。セヴァストポリに代えてウラジオストックでも構わないだろう。そうすればロシアを全土的に封殺できるだろう。
 ワシントンD.C.(177キロ)、ニューヨーク(1214キロ)、ヒューストン(1558キロ)にサクラメント(252キロ)を同時攻撃しても幾らか余裕が出る。頭脳、経済、宇宙産業基幹を同時に破壊する事が可能なため、アメリカは完全に反撃する頭脳を失ってしまうだろう。

 また、駆逐艦は大戦艦の3分の1程度の大きさであり、投射できる量も恐らく3分の1を幾らか上回る程度だろう。数が約3倍であるため、総投射量は大戦艦に匹敵する。特に、最大想定値を取った場合には駆逐艦でもリトル・デーヴィッドクラスの砲を詰めるだろう。途中で融解するようなやわなものではないだろうし、仮にとろけたとしても、融解した金属が降り注ぐのだから迷惑極まりない。投射量という意味では、すべての数値が倍になる。1時間絶え間なく砲撃したらならば、ツァーリ・ボンバ30発が地表で爆発下に近いエネルギーが投下されるという事になる。

 

 合計する。
 シリウス方面軍全力の投射力は1分で9844キロ平米、1時間では147660キロ平米に上る。1分当たりの被害はレバノン王国より一回り小さい範囲であり、コネチカット州の半分強、北オセチア・アラニヤ共和国よりいくらか広い範囲に被害が及ぶ。モスクワ市は3回ほど消滅する。1時間ではバングラデシュが壊滅する。アメリカでいえばアイオワ州にあたり、ロシアではムルマンスク州に当たる。
 全地球的に展開して攻撃をした場合――
 ワシントンD,C.(177キロ)、ニューヨーク(1214キロ)、モスクワ(2511キロ)、サンクトペテルブルク(1431キロ)、ロンドン(最大範囲1569キロ)、パリ(最大17174キロ)、ベルリン(891キロ)、東京都区部(626キロ)、北京(16410キロ)、カイロ(214キロ)、キャンベラ(814キロ)、ブエノスアイレス(203キロ)、ブラジリア(5802キロ)、プレトリア(513キロ)、デリー(1438キロ)などの大国の首都を同時襲撃すれば当然、各国政府は沈黙するだろう。

 特に米露英中は1分間以内に方を付けたい。恐らく可能だろう。“火球的”速やかに攻撃し、組織的反撃の芽を摘み取るべし。これら大国に防衛を依存ないし大国ありきの編成をした国家の防衛力など大したことはない。仮に宇宙戦艦を保有していたとしても、である。1分以内に首都を消滅させられれば、地球の半分以上の戦力を沈黙させられたと同等となる。
 以降の地球側反撃の要はEUの残存とインドやアフリカ諸国のような体力のある国となろう。しかし、これらも10分以内には攻撃対象に設定可能だろうし、最低でも30分以内に首都を壊滅させられるだろう。その間に最初に攻撃を受けた各国の戦力が対空戦力を以て反撃に移る――

 

 ならば、各国の連携を最初に立つという手段がある。
 ブリュッセル(ベルギーの首都にしてEUの首都、EU理事会事務局・委員会。161キロ)、ルクセンブルクルクセンブルクの首都、EU司法裁判所・投資銀行。51キロ)、ストラスブールEU本部、評議会・人権裁判所・議会本会議場。78キロ)ウィーン(オーストリアの帝都、欧州安全保障協力機構の本部。414キロ)リーブルヴィルガボンの首都、中部アフリカ諸国経済共同体の本部。189キロ)、アブジャ(ナイジェリアの首都、西アフリカ諸国経済共同体の本部。713キロ)、ハボネーロ(ボツワナの首都、南部アフリカ開発共同体の本部。169キロ)、アルーシャ(東アフリカ共同体の本部。都市部域93キロ)、アディスアベバエチオピアの首都、アフリカ連合の本部。527キロ)、ヌーメア(太平洋共同体の本部。45キロ)、ラバト(アラブ・マグレブ連合の本部。117キロ)、カラカス(ベネズエラの首都、ラテンアメリカ経済機構の本部。1930キロ)、南米諸国連合主要部(エクアドルの首都キト・372キロ、コチャバンバ・348キロ、カラカス)
 結構地球の諸国ってそれぞれ徒党を組んでるんですね

 これらの組織が本部を置いている都市を攻撃することが出来れば、それだけで組織的な反抗を小規模化できる。合計でも52000キロ平米程度であり、襲撃最初の1分間で十分壊滅させられる。これに加えてワシントンD.C.やニューヨーク(国連本部)、モスクワへの攻撃も十分出来る。


 全艦隊を集結させて一か所に集中させた場合は、視覚的には極めて大きな衝撃を与えることが出来るが、物理的な破壊は限定的なものとなってしまう。

 が、艦隊を分散させて攻撃を行えば必要最低限の投射力で同時多発的に都市を壊滅させることが出来る

 各艦が無防備になるという見方もあるが、その場合はデスバテーターに護衛をさせると行くことも出来るだろう。高々数千から数万機程度では地球の対空砲火でがっつり損失が出る可能性が高く、一か所に攻撃を集中させる以外の方法は危険。一方で同時多発的に攻撃しなければ反撃を受ける可能性はより高まり、また分散して攻撃した場合はより対空砲火を突破できない可能性が高くなる。

 これらの危険を加味すると、艦砲射撃を加える場合は、現実と同じで目標を明確に定めて攻撃しなければ効果は得られないだろう。なお、この場合の効果は戦略的な意味で戦術的な意味ではない。

 


 2199でギムレーがオルタリアに対して敢行した惑星全周を囲むほどの規模の艦隊であれば、確実に反乱軍を地上から消し去れる。仮に地下に潜られたとしても、反乱軍側から救援や反撃を行うための手段は完全に消滅する。


 2202での第8艦隊の推定最大隻数250万を投入することが出来れば、その圧倒的な火力をたとえ静止衛星軌道上からでも叩き込むことが出来るだろう。何でレギオネル・カノーネなんてやろうとしたんだろ……

 

 


 しかし、小艦隊では艦砲射撃も心もとない。

 地球を例にとって考えてみる。規模から考えて――地球艦隊が行う惑星制圧戦における艦砲射撃は、任務に寄らず現実の火力支援と同様に地上攻撃部隊への支援が主な役割となるか。


 第7話においてはナンバード・フリートが存在し、多数の戦艦と巡洋艦を擁した第2・第3・第8宇宙艦隊が差し当たっての警戒の為第11番惑星まで進出するため土星圏を航行中だった。

 一方で、第18話で土方総司令に招集された地球艦隊は編成が異なる。第2外周艦隊はざっくり戦艦10隻を中核に巡洋艦を複数隻を編入している。第1外周艦隊はこれに防衛艦隊総旗艦アンドロメダが加わる。

 冥王星艦隊は駆逐艦巡洋艦のほぼ同数混成で画面上は合計7隻。海王星艦隊及び天王星艦隊は主力戦艦を旗艦とし画面上では6隻の巡洋艦を伴う。木星連合艦隊は複数隻の主力戦を擁し、巡洋艦駆逐艦を混成して編入している。内惑星巡航空母艦隊は5隻の空母を以て構成されている。火星の内惑星艦隊は描写がない為不明だが、空母艦隊と共同作戦を取ると考えられるので木星連合艦隊の半数程度か。土星は各衛星間での連携を重視した要塞兼泊地としての利用だろうか。

 海王星艦隊クラスの戦闘艦隊が惑星へと制圧戦を敢行したと仮定する
 艦隊総数はさらばで明確になった地球艦隊総数より推測して、戦艦1(36隻のうち、21を外周艦隊に配備。5を火・木連・土・天・海艦隊旗艦任務として配備し、残りを木星7隻と火星3隻に配備と計算)、巡洋艦10(81隻のうち、艦隊の無い水・金星を除き10隻ずつほぼ等分に配備。ただし、冥王星には多く配備)、駆逐艦15(“多数”だから適当に……)と仮定する。
 主力戦艦の主砲は全長から考えても十分ヤマト(大和)と同程度と考えられる。総投射量は12.6トンから全長3倍設定で37.8トン。巡洋艦は755キロ(舷側砲を合わせると1.887トン)から2.265トン(舷側砲を合わせると5.66トン)。駆逐艦の主砲で妥当なのは12.7センチ砲だろうか。弾丸重量は23.5キロであり総投射量は94キロ、3倍設定で282キロとなる。


 艦隊の総投射量は一回の斉射で21.56トンから96.63トン。主力戦艦は1発撃つのに30から40秒程度必要で、一分に一発程度。巡洋艦は旧軍のそれに倣った場合は毎分5発、Mk 71 8インチ砲準拠なら12発、駆逐艦は旧軍のそれに倣った場合は毎分10発、オート・メラーラ 127ミリ砲準拠ならば(砲弾重量が31キロもある)毎分40発程度。

 1分での投射量は旧軍準拠の場合に主力戦艦12.6トン、巡洋艦3.7トン=全艦27トン、駆逐艦940キロ=14.5トン。現代基準で巡洋艦7.5トン=全艦75トン、駆逐艦2.8トン=全艦42トンである。総計54.1トンないし126.6トンを1分間で投射可能である。加えて、3倍の数値設定の場合は163.3トンから379.8トンが投射可能な数値となる。4670TNT換算トンから1TNT換算メガトン、3倍設定で1.3TNT換算メガトンから3.2TNT換算メガトンのエネルギーを持つ。
 1時間絶え間なく攻撃した場合、すべての数値が60倍となる。つまるところ投射量3240トン=28TNT換算メガトンから7596トン=60TNT換算メガトンないし、9780トン=78TNT換算メガトンから2万2788トン=192TNT換算メガトンとなる。

 

 ツァーリ・ボンバ2発分より少し小さい程度の威力である。砲撃に1時間、補給等で2時間を取ったとして3時間で近畿一円と関東一円を完全に破壊せしめることが出来る。半日攻撃し続ける事でアメリカ全土を焦土と化すことが出来るはずだ。
 だが……惑星制圧として十分であるかは正直不明

 なにせ、一時間あたりに破壊できる範囲が惑星に対する攻撃としてはあまりに範囲が狭すぎる。これをカバーしようと世界中を同時攻撃した場合、当然ながらこれらの威力は分散してしまい、更に効果範囲が限定されてしまう。

 示威行動としては、ものの1時間で一つの国家が沈黙させられるという事実は申し分ない。しかし、うっかり憎悪の対象になってしまったり、いくつかの軍事拠点を破壊して惑星を無力化させるには少々心もとない。

 反乱鎮圧では、出来れば首謀者を見せしめにしたい。まして、半数は一応体制側についているとなれば、無差別な攻撃はできない。あるいは何かしらの軍事機密やその他希少なもの(日本ならば当然、三種の神器である。ハンガーなら聖イシュトヴァーンの王冠だろう)を奪還しようとすれば――反対に威力が高すぎる

 

 

 地球艦隊クラスの戦力だと、残念ながら反乱軍を威圧できるほどの威圧感を醸し出せない。拠点を攻撃するには十分だが、全球を制圧するには足りない。ちょっとした砲撃を行うには反対に全力を投入すると破壊が大きすぎる。

 拡散波動砲をぶっ放せば制圧は出来るが、今度は全球を破壊しかねず――帯に短したすきに長しな感が否めない

 

 地球クラスの戦力であればこそ、地上戦というものの価値が現れてくる。要は、部隊を陸揚げして陸上への直接攻撃が不可欠となる。
 ただし、パワードスーツを身に着けた歩兵を投入する必要が有るかは……疑問

 

 


 まず、艦載機を殺到させるのが当然である。
 早いし、数が多いし、爆弾投下量が陸上戦力とは比べ物にならないのだ。そしてまた、艦載機による爆撃は、静止軌道からの艦砲射撃とは比べ物にならないほどの精密な攻撃である。パイロットの技量にもよるが、高度なピンポイント爆撃が可能なのだ。完ぺきではないにせよ、不必要な巻き添え被害を低減させることが可能だ。
 自軍の損失を最小限にとどめるための攻撃ならば、正直艦砲射撃でも十分だろうが、より強力な攻撃を繰り出したい場合は、艦載機による敵拠点への徹底した攻撃が必要となる。それでもダメ、という事は考えずらいが――作戦の性質が異なればその後、必要によって歩兵を繰り出すこともあろう。しかし、前提として艦載機による敵地の“下ごしらえ”は欠かしたくはない。航空優位の無い状況での攻撃など、誰も繰り出したくはないのだ。
 作戦工程としては次の通り。

 

 1、精度を重視した散発的な艦砲射撃で大規模な対空陣地や宇宙港を事前に攻撃。これらの迎撃能力を減じさせて、そこへ爆撃隊を投入する。
 2、爆撃隊は艦砲射撃で叩ききれなかった施設や、爆撃隊到着までの間に復旧された施設を攻撃する。任務によって、対象地域を徹底攻撃する場合と、対象地域を孤立化させるために周辺地域を粉砕する場合がある。
 3、奪還任務あるいは奪取任務であれば、ここで歩兵の投入。散発的な攻撃の中で、出来るだけ身軽な特殊部隊を対象地域に潜入させて任務を遂行させるという事が出来る。あまり、目立っては欲しくないだろう。
 一方で対象地域が惑星防衛の要の施設を有している場合、止めを刺すために空挺隊による全面攻撃という選択肢もあるかもしれない。

 

 つまり任務の性質上、慎重さが必要となる場合は艦砲射撃は危険性をはらんでしまうため、爆撃機による攻撃に重きを置く必要が有る。しかし、それだけでは成果確認も、場合によってはそもそも目的が達成できない可能性もある為、陸戦隊を繰り出しての敵地攻撃が不可欠となる。


 

 うーん、歩兵の必要性は担保できるのだが、パワードスーツが必要になるかはどうしても疑問だ。

 確かに、地上制圧戦は戦略や戦術によって発生し得る。航空戦力でもどうにもならない場合が十分に考えられる。だが――潜入であれば、パワードスーツといっても体にフィットしたような物、身動きしやすい物が中心になるだろう。大規模なものであれば、装甲車や工作車によって十分代替えできる。野戦においては彼我の歩兵以外の兵装を用いての戦闘を行った場合……アドバンテージは大して確保できない。まして電力サージなんてものを起こされてしまえば、無力化どころか足手まといになるだろう。人型の複雑な機構の場合、脱出も簡単では無いだろう。

 正直、パワードスーツや人型兵器の合理性には疑問を禁じ得ない。