旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

宇宙艦隊の存在する場面におけるパワードスーツ等の妥当性についての考察②

 

 パワードスーツつまり強化外骨格はSFの肉弾戦には欠かせない。
 前回、宇宙艦隊が機能している環境における地上戦において、パワードスーツは愚か地上戦について行う事について疑問を呈した。また、地上戦においてもパワードスーツの必要性が疑問であることも述べた。

 では、そもそもパワードスーツどんなものであろうか――考察したいと思う。

 

 

 パワードスーツが登場する作品といえば、日本ならばガンダムエヴァ。あるいは2202か。
 海外作品では実写やコミックでも多数登場し、アイアンマンや『宇宙の戦士』(スターシップ・トゥルーパーズといった方がピンと来るかも。3作品目でようやく登場)でバグ相手に奮戦、映画マトリックス最終作では25万のセンチネル(タコみたいな戦闘機械)をザイオンに配備されていたAPUが迎え撃った。これらのバリバリ戦闘をこなすもの他に、エイリアン2に出て来たパワーローダーのような本来運搬用の機械も登場している。

 

 というよりも、現状、運搬任務以上の役割を目的として研究を行っている国や会社はない
 ほとんどが運搬を任務とした単なる補助であり、介護用のそれと根本的な考え方は変わっていない。少々変わった所では、かつてのマクシミリアン式甲冑の様に、乗員を守るための装甲として研究している例もあるとか。意外にも思えるが、戦闘用のパワードスーツはまだ、先といえる。
 (ガーナに献身的なカンタンカ氏の話は今日はしません)

 

 要は、戦闘に用いる為のパワードスーツに関しては現状大した有効性を誰も認識していない。あるいは戦闘に用いた際の的がデカくなる、電源切れたらお荷物といった問題を克服しがたいというのが正直なところだろう。永続的な動力源があったとしても、安全性が担保出来なければ危険なだけ。単価が安くならないのなら、導入に二の足を踏んでしまい一部の部隊のみ=普通の機甲師団で十分となる。

 戦闘においてパワードスーツを用いるというのは非合理的。普通に装甲車を使った方が合理的かつ生産的。これでは話が終わってしまうので、現実・合理性を無視して考察を続行する。

 

 

 パワードスーツのメリットは何か
 一つはそのパワーにある。生身では扱えない重砲を軽々と扱うことが出来るのは魅力というほかない。当然、それだけの重量を扱えるのだから単純な運搬作業もこなせるだろう。乗員を保護できるタイプであれば、狭い空間で携行ミサイルを撃つ事も可能だ。反響も、噴射する高温ガスも関係ない。

 生身で撃った場合を想像したい方はグロ画像を検索するでも構わないし、CSIマイアミを鑑賞するもよし。

 二つ目は、生存性向上である。装甲でコックピットを覆うことが出来れば最低でも小銃や手斧や、あるいは手りゅう弾の破片を防ぐことが出来る。重装甲であれば、戦車と同様の耐久力を持つことになる。これらをそろえる事で、機甲旅団戦闘団よりも柔軟かつ迅速な展開(物理的な意味で)ができ、歩兵旅団戦闘団よりも生存性と突破力の高い戦闘が見込める。

 この2点(+ロマン)を以て、陸上戦においてパワードスーツは極めて有用な装備と結論づけられそうだ。

 


 ただし、欠点もある。
 単純に、視界不良。運転アシスト自動車のような構造であれば、全周を見渡すことが出来るが、残念ながら人間にそれだけの注意力があるかははなはだ疑問。デジタルで周囲の映像を受信する方式であれば、それこそ高濃度放射線で容易に能力が減じられてしまう。いくらでも簡単にその視界を奪うことが可能。

  また、大きさも人体と同等の大きさか、あるいは反対に巨大でなければならない。何故そう言えるかといえば、人体よりも大型であれば通常の背丈の人間用に作られた各種設備につっかえてしまう。重量もかさみ、材質によっては突入した建物の床を踏み抜く可能性もある。中途半端な大きさであれば、デメリットばかりが多くなって、単なる的になってしまいかねない。同じ的になってしまうとしても、

 巨大であれば扱える火砲は制圧に容易ではなく、残骸自体が障壁として生身の白兵戦をに寄与しうるのだが……単価が高くなって配備が容易ではない。


 全般に言える事として、一歩兵にそこまでの高性能兵器を渡す必要が有るのかという事がある。確かに、歩兵の育成はかなり金がかかるし、人的損害は士気や国内世論にも影響する。

 しかし、一兵残らずパワードスーツを支給した場合、一体いくらかかるだろうか。しかも、先ほどから述べているように、最強ではない。重量や大きさによっては格好の的になってしまう、踏破性も攻撃力も人間以上戦車未満で、うっかり電磁パルス対策をし忘れると単なるお荷物になってしまう。

 戦闘に、最前線にこれを出すのは正直非常に危険で心もとない。

 

 

 運用するならば――
 現実にパワードスーツが戦闘に参加するとすれば、基幹戦力では無く単なる兵科の一つとしての参加になるのではないだろうか。
 必要に応じて他兵科と共に戦闘団を形成し、戦闘車両と生身の人間に交じって作戦を行う。これならば生身の絶望的な防弾性能と戦闘車両の市街地における鈍重さを補い、反対に生身は戦闘車両とパワードスーツの前後不覚を目となって補完できる。生身にもパワードスーツにも不足しがちな火力は当然、戦闘車両がカバーする。ゲリラ兵の攻撃や自動車爆弾は恐らくパワードスーツが機動性と防御性能で処理するだろう、前方に突出して偵察するのは生身だろう、これらの攻勢を後方から支えるのが戦闘車両だろう。
 これで高価な兵器が易々と撃破される悪夢も見なくて済む。価値としては航空戦力による上空支援の代替案

 あんまりロマンはない気もするが。

 もっとロマンの欠片もない運用だと、普通に後方支援。あるいは占領地の整備や陣地建設の主力。今現在考えられているパワードスーツの運用方法である。




 パワードスーツがどうしても必要になるのは、制圧戦よりも惑星を奪還する作戦においてかもしれない。
 反乱から体制側市民を守るであるとか、襲撃を受けた惑星が本星からの救援艦隊到着まで戦線を維持するのには恐らく極めて有効であると思われる。

 例えば、反乱軍に首都の半分程度を制圧されたとする。別に完全に外敵であっても構わない。


 守勢側は降伏するか戦う必要が有る
 戦う場合、おそらく自分たちの陣地を築くところから始めねばなるまい。敵から離れた地点でかつ、障害が多くできれば自分たちが敵よりも土地勘のある地点がいい。郊外の河川地域か丘なんかに陣地を一つ張りたい。大攻勢に抗う事は難しいが、一定程度は防御力を担保できるし敵情も多少は分かる。陣地を築いたならば、本格的に戦闘を始めねばならない。
 地味に重要なのが、自分たちが味方であるという事をちゃんと示す必要が有るという事だ。全滅したとか勘違いされてうっかり敵の巻き添えになってしまってはシャレにならない。

 同率で重要なのは抗戦する期間。終わりのない戦いは精神的な疲弊をもたらすが、反対になにがしかの目標がある場合は一定程度の士気を保つのに役立つ。目標とすべきは救援部隊の到着。救難信号を発信してから移動だけでも1日か2日はかかる。救援のための体制を整えるには数日かかるだろうから、2週間は踏ん張らねばなるまい。仮に、近隣から完全に孤立してしまったり、宇宙戦争ならば駐留艦隊が全滅した場合はより深刻でワープで短縮したとしてもやはり艦隊集結と陸戦隊収用に1週間弱はかかるとみた方が妥当だろう。まして、ヤマト世界ならばワープに伴う空間の変調がトレースされてしまうため、下手にワープなどしてしまえば迎撃態勢を取られて救援艦隊が余計な戦闘に巻き込まれる可能性もある。先んじて反乱に乗じた敵勢力が食い込んでこないとも限らない。


 陣地と目標が何となく決まったならば、次は戦闘に移る
 装甲車やパワードスーツがあれば、それ自体が簡易的な砲台として機能するし、後者は当然重量のかさむ物資の調達荷役立つ。敵の襲撃を受けた場合もパワードスーツには、何かと役に立つ装甲車と絶対に守らねばならない生身の兵士を援護するために高い機動性を発揮してもらいたい。他にも、陣地形成のための障壁運搬にも当然活躍してくれるだろう。
 仮に、予想通り救援が来た場合――来なかったらバンザイ突撃状態になってしまうが、どの場合においても敵に対し反撃を試みる必要が出てくる。何も、救援が来なかったとしても、決戦を仕掛けるならば敵の警戒網や戦力に穴が出たタイミングがベスト。うまくいけば敵の中枢にダメージを与えられる。味方艦隊による艦砲射撃はやはり周辺地域への限定的なものになるだろう。頼みは爆撃隊の突撃だ。

 ただし、これらを受動的に待っていては、救援部隊による攻撃が遅れてしまい大惨事を招く可能性もある。救援部隊へ敵の攻撃が集中してしまい、2次遭難状態にならないとも限らない。救援部隊の攻撃と同時か、若干早めに攻撃を開始する必要が有る。攻勢に出て敵の注意を惹きつけることで救援部隊の攻撃部隊出撃の余裕を創る、敵に二正面作戦を強いてどちらへの攻撃も散漫にさせる。救援側もパワードスーツを有効に利用できよう。前衛として、あるいは後衛として使い勝手がいい。
 これらの想定は机上の空論である事には変わりはないが、当たらずとも遠からず程度ではないだろうか。少なくともワルシャワ蜂起のような救援部隊が救援すべき民兵組織を見殺しにする事態はそうは起こらないだろう

 ともかくとして、車よりも機動性が高く、生身の兵士よりも耐久性の高いパワードスーツは必ずや守勢側にとって貴重な戦力として威力を発揮するだろう


 戦闘ヘリっていう選択肢もあるような……ないような……

 


 2202のテレザート上陸戦で、パワードスーツが登場する。
 が、あれは別に必要なかったと思う。

 さっさとゴーランド艦隊を仕留めてコスモタイガーを惑星に降下させた方が早かっただろうし、そうするべきであった。つまり、生身の空間騎兵を下ろして囮とし、集まって来たザバイバル戦車師団を一気に叩く。危険だが、パワードスーツを着た空間騎兵を蜂男のごとく纏って輸送するよりはマシだろう。空間騎兵隊とて、元来の兵装たる重砲を持って乗り込めば無防備ではなく、陣地構築に成功すれば十分反撃できるだろう。しかも、上陸以前では判明しなかったが、あの鈍重な上に大きすぎて死角だらけの欠陥重戦車が相手である。ずっと述べている、中途半端な大きさが一番ダメなパターンだ。生身でも至近距離に接近すれば火砲の直撃を受けず、ザバイバルの手持ちの駒では反撃の手立てなど無い。ブーストかけて蜂の様に敵の周りをブンブン飛び回るより簡単でより効果が上。

 そんなことをせずとも、戦車軍団の出現と同時に上空から攻撃すれば、無きゃ無いで構わなかったパワードスーツなどという余計で、資源を食う兵装を新しく作る必要もなかっただろう。ロマンとか、副監督マターとか言われるとアレだが。


 むしろ、第11番惑星での防衛戦にこそ使用するのが本筋だったのではないのだろうか。大体、第11番惑星に戦闘衛星なり艦隊を駐屯させればよかっただろうに。大規模な植民星で、それも地球とガミラス混住である以上、政治的にも重要な惑星であり絶対に死守しなければならなくなる。人工太陽のせいで艦隊駐留が難しい――だったら、そんな惑星へ移住を進めるべきではなかった。


 そもそも論として、艦隊駐屯に不適切な外縁部惑星に人間を住まわせること自体、防衛的にも人道的にもどうかと思う。それに、ガミラスの自国民保護はどうなっているのか。地球が善戦したとはいえ、基地戦力が壊滅したのだからこの時点で生存者や大使保護のために純正(時間断層製ではないという意味で)ガミラス艦隊を出動させてしかるべきなのに。あんだけ大使が気張っていたのだから、1万とはいかないまでも数千の艦隊が白色彗星の土星圏突入までには太陽系圏内に到達しうるはず。

 

 

 他方、旧作におけるヤマト及びコスモタイガーの未降下は理由がつけられる。
 2202には登場しなかったT2陸上攻撃機や基地からのミサイル攻撃から、空間騎兵隊が侵入した地殻破口を保護する必要が有ったからだ。うっかり降下してしまえば、空間騎兵隊と同様に閉じ込められる危険性や、ヤマトクルーは無事でも、生身の空間騎兵隊が敵の攻撃に耐えられる保証はない為、危険にぼーっと味方を晒すわけにはいかないのである。

 

 

 

 パワードスーツは――最初の方に述べたが、多分宇宙空間ならば何の問題も無いと思う。
 空気抵抗など無いわけであるし、ジェットパックとまともな武器さえあれば十分であろう。むしろ、複雑な兵器を扱える分、場合によってはコスモプレーンよりも有利かもしれない。ひっつかむ、というえげつない攻撃? 方法がとれるというのもずるい。まあ、これだって艦載機の方が整備が楽なのは十中八九確実であり、特段重視すべき特徴というか利点でもないが。
 まして、上陸戦において侵攻側が積極的に使う有効性という事の妥当性は担保出来ない……。

 

 そもそも人が乗り込む兵器が人型である必要性は大してなく、もっと言えばパワードスーツが必要になるような場面では普通にロボットでも派遣した方が効率がいい。どちらかといえば、戦闘艦が船の形をしている理由の方が――合理的説明が出来るだろう。合理性を求めればこそ、人型は……無意味だろう。

 つまり、パワードスーツはロマンの結晶。ロマンの面でその有用性を疑問視することは無粋であり、かつ妥当性の無い批判となるだろう。 

 (私、無粋だからうっかり批判してしまうが)