旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

戦闘考察Ⅵ・第一次第11番惑星戦(ヤマト2)

 

 

 第一次第11番惑星戦はヤマトにとっては偶発的な出来事であった。

 司令部の追跡を振り切り発進したヤマトは一路テレザートへ向かうが、それと同じころ――ナスカ率いる偵察陽動艦隊は任務を偵察から前進基地建設へと転換、第11番惑星へ攻撃を敢行。これに対し全力を以て対抗したのが同惑星の守備を担当する空間騎兵隊だった。

 

 

 第一次第11番惑星戦・第一会戦
 ガトランティス側参加部隊:偵察陽動艦隊
 戦力:高速中型空母1(ないし2)、大戦艦多数、駆逐艦多数、潜宙艦
 指揮官:コスモダード・ナスカ


 地球側参加部隊:第11番惑星派遣隊、ヤマト
 戦力:空間騎兵隊(推測:中隊規模)、ヤマト、コスモタイガー2部隊(推測)
 指揮官:斉藤始、古代進

 

 戦闘経緯・経過
 第6話――地球攻略の為に前線基地を築くべくナスカ指揮下偵察陽動艦隊が出動、太陽系辺縁部である第11番惑星に狙いを定めて攻撃を開始した。

 迎え撃つのは第11番惑星守備隊として駐留していた空間騎兵隊。彼らの陣取る第11番惑星は、複数の対空砲陣地や司令基地が中世の城のように相互掩護を行い縄張りを形成していた。


 ナスカはデスバテーターの大編隊を以て空間騎兵隊が立てこもる地上基地を徹底的に攻撃。対する空間騎兵隊も砲台を以て反撃したが、同機の圧倒的な雷撃力相手には敵わず。次から次へと砲台は撃破され、司令基地自体も大損害を受ける。更にナスカは接近中のヤマトを半ば放置する形で装甲歩兵戦闘車を降下――だが、これにより空間騎兵隊は得意の野戦へと戦場を移す

 ヤマトは偶然に近い形でデスバテーターを発見。どうも第11番惑星から変な通信があるなぁ~程度で、気になった結果、同惑星周辺へ急行。これによりヤマトは第11番惑星の危機を知る。他方、デスバテーター隊もヤマトを発見、これを攻撃。しかしパルスレーザー砲群による迎撃は堅く、デスバテーターもヤマトを破壊することが出来なかった。これとほぼ同時刻、ナスカはヤマト接近の報を受け、「ヤァマトだとォ? 小癪な叩けェ! 11番惑星に近づけてはならァん!」と大戦艦部隊を迎撃に差し向けた。

 が、大戦艦は改造されたヤマトのショックカノンの攻撃を受けて5隻中2隻を残して全滅。結局は、追いすがって攻撃を仕掛けて沈められたと思われる。


 ヤマトが接近しているがしかしナスカはこれを半ば無視する形で作戦を続行。第11番惑星占領戦は最終段階へと進んでいた。

 当然、ヤマトは大戦艦を撃破し接近。おかげで艦隊は木っ端みじん。野戦もヤマトへの対応にナスカが注力せざるを得なくなった隙をついて空間騎兵隊が盛り返す。さらにコスモタイガー隊の猛攻もあり、ナスカの作戦はすべて失敗した

 

 大戦艦をすべて失い、降下させた陸上部隊も全滅。ナスカは撤退せざるを得なかった、この時点でナスカは大分恥ずかしいというか情けない状況に置かれたのであるが――彼の問題行動は続く。なんと、ずっと馬鹿にしていたデスラー総統に大帝へのとりなしを要請するなど、この男は自分の所属もプライドも何もかも完全にごっちゃにしてかなぐり捨てたのだ。

 まあ……因果応報。結局、総統は「承知した」などと明らかに承知してない口調で回答、ナスカは進退窮まった。

 はっきり言って、自業自得。ヤマトに気を付ければよかっただけの話なのに。

 

 

 描写の妥当性

 ナスカのろくでもない凡ミスはひとえにヤマトに対する侮りが原因だっただろう。弱勢な冥王星基地からの発進であると認識していた節のあるセリフ(これはあの連絡将校っぽいヤツの言い方もまずかった)まわしもあり、徹底的にヤマトを侮っていたといえるだろう。

 もとはといえば、事前に取り決めておいたヤマト出撃に際してはデスラー総統へと通報すべきという事をコロッと無視したのが悪いサーベラーのように、デスラー総統をあやすおもちゃとしてヤマトを捉えていればよかったものを、自分で始末しようとするから大やけどを負ったのである

 

 他方でナスカは第11番惑星基地そのものも完全に侮っていただろう

 空気はないし、寒い。何千年か前の遺跡があるだけの惑星で、また資源探査すら完了していないほどの太陽系内であって太陽系外の地点に位置する極めて特殊な存在。駐留している艦隊はないし、配備された空間騎兵隊の数も大したことなく、地球のレベルの低さを散々目にしたナスカからすれば――侮ってしまうのも不思議はないだろう

 

 ナスカが勝つには、先行させた大戦艦部隊の戦闘データをちゃんと受け取りヤマトと対峙する事が大前提であった。が、まるっきりそのデータが届かなかったか何かしていたらしい。

 せっかくガトランティスの十八番である妨害電波で見事に第11番惑星と地球との連絡を絶ったのに、色々優位に立てていたのに、それをことごとく……。しかもナスカは部隊を対ヤマトと対空間騎兵隊に対応する2部隊に事実上分けてしまった。ヤマトをやり過ごしつつ地上を攻撃するか、地上はあきらめてヤマト攻撃に注力するか。そのどちらもやらなかったのは非常に痛い。

 旗艦をヤマトのショックカノンがかすめたのにビビッて転げるとか、情けないにもほどがある。挙句「引き揚げだぁ!」ってアンタねぇ……。艦隊のほとんどを失ってからではもう遅い

 淀君とカスター中佐と南雲中将の悪いところだけを組み合わせたようなヤツである。このように、例えようがあるのだから全くあり得ない話ではないのだが――ここまでひどいのはそうお目にかかれない

 

 

 第11番惑星派遣隊の指揮官が斉藤隊長というのが多少、解せない感はある

 階級は劇中では不明で、さらばでは中隊長とされていた。大体大尉か、陸尉に当たる階級が妥当だろう。ヤマト2でも2個小隊を率いて野戦に打って出たが、それを考えれば整合性は何とか確保。

 

 ただ、一個惑星に一個か二個程度の中隊を置いておいたとして――精鋭だとしても不安でしかない。すわ一大事となった場合、無駄死にさせてしまう危険もあるだろう。

 割合しっかりした辺境警備なのだから、師団か旅団当たりの複数科複数連隊を束ねる部隊を派遣しておくのが妥当だろう。中隊とて現代でも200人クラスである為、不毛な第11番惑星では維持が難しいだろうが、省力化されたヤマト世界であれば、コンピュータ制御か何かで一個中隊クラスの人数で3個か4個ぐらいの戦力を運用できるとすれば……人数的な意味ではだろうかもしれない。

 ただ、それでも指揮官の格というものがあり、中隊長は十分高い地位だが複数個の部隊を統括する指揮官としてはもうワンランクかツーランクぐらい上であっても不思議はないだろう。指揮官は大佐とはいかずとも佐官クラスであってしかるべき。

 あの防衛会議であるからして、第11番惑星の守備任務を軽視して中隊を派遣した程度で満足したという事もあるかもしれないが

 

 無理やりセリフや描写とつなげるならば、辺境域における空間騎兵隊の戦力として最上部クラスの組織に派遣隊という分類があり、それに所属している戦闘隊というふうに説明できるだろう。そして、ナスカ艦隊の攻撃があまりに強力で佐官クラスの司令官が戦死、最先任士官として斉藤隊長が自分の直下部隊を中核として必死に抵抗していた――とすれば何とか整合性が取れるのではないか。

 それはそれとして、生存者が20有余人ほどしかいないのだから、仮に中隊規模であったとしても1/10にまで減ってしまったのであるから、非常な戦闘であった事が言える。数的な妥当性からすれば、何なら複数個中隊があって、それが全滅という可能性だって、あり得る。

 そりゃ、メンタルケアもせずに放っておいたらヤマト艦内で荒れもするわな。

 

 

 さて、ナスカも負けっぱなしではない。リベンジだ。

 

 

 第一次第11番惑星戦・第二会戦

 ガトランティス側参加部隊:偵察陽動艦隊(残存部隊)
 戦力:潜宙艦2(推測)
 指揮官:コスモダード・ナスカ


 地球側参加部隊:ヤマト
 戦力:ヤマト、コスモタイガー2部隊、
 指揮官:古代進

 

 戦闘内容・経過
 第7話――艦隊を喪失したナスカは窮地に立たされた。そこで残存していた潜宙艦による奇襲を敢行、乾坤一擲の戦いをヤマトに挑む。

 しかし、居場所を探し出されてしまうよな凡ミスを連発

 

 まず、ヤマトのあまりにも強力な兵装であるタイムレーダーを用いての索敵に対し、散々ボケーっとしていたナスカは艦隊の姿をさらす。タイムレーダーを知らなかったとしても戦闘宙域まで通常航行するバカっぷりを披露幸いにも、ヤマトクルーは中途半端な警戒の為、攻撃それ自体は成功した

 だが、なぜかナスカは密集隊形での攻撃開始をしたのである。

 残念ながらというか、当然というか猛烈な爆雷攻撃と続くコスモタイガー隊の攻撃に、潜宙艦の足では逃げることは叶わず団子になって攻撃を食らい――結局は敗死してしまった。

 

 

 描写の妥当性

 タイムレーダーは正直チート。説明を付けるなら、当該地点を通った光を遠方までその波形を観測し、これを解析することで過去の出来事を観測する装置という事になるか。ガチに造った場合は恐らく、かなりざっくりした映像投影に留まる機能かもしれないが……何にせよ、都合がいい兵器である事には違いない

 特に、実際に被害に遭った我々ガトランティスにとっては非常に迷惑。

 

 ナスカの愚かな戦闘は恐らく、コイツの習性なのだろうこの戦闘のすべてはナスかだからやらかしたミスと、言えなくもない

 せっかく完璧に近いステルス性能を有する潜宙艦、しかもこいつがぶっ放す黒い魚雷もどうもステルスっぽい。そんな最高の戦闘艦を通常航行で作戦域にまで連れて行くってもうアホ。しかも密集隊形で行動というのだから更にアホ。 

 例外や風紀のゆるみというものがあったとしても、指揮官の命令が軍隊においては絶対。この指揮官が戦闘配置の命令を出し損なったり中途半端であった場合、やべぇとわかっていても実行しなければならないパターンがある。これも非常に迷惑。

 ナスカがダメ司令である以上、部下はそれに従うほかない。

 いやぁ……潜宙艦のクルーが非常に哀れである

 

 

 正直、一連の戦闘に関しては必ずしも妥当性を確保出来たとは思っていない

 ナスカが愚かなのはどうしようもない事だが、指揮官が愚かで肝心のタイミングでやらかすことは歴史上ままある事なのだが――

 いくら誤報が原因とはいえ寺内とかいう人が「元帥は命令する」とか何とか言ってレイテ島決戦を強行したり、ビビり過ぎてラングーンを誰にも内緒で放棄した木村とかいう人とか、何がしたかったのかまるっきり不明瞭な富永とか、無茶口とかまあ、ヤバい指揮官は枚挙にいとまがなかったりする。

 これらに比べれば逃亡はしなかったナスカはむしろというか、逆に勇敢とさえいえる。無能さは同格だが。とはいえ、ナスカのわきの甘さに依拠して一連の無能な戦闘指揮に戦闘の妥当性を持たせようとするのはご都合主義に近い。

 歴史を紐解いてみれば決して類例のない事例ではないが……これ、まいっちゃったな全部理由がナスカの個人的資質に帰結してまうご都合主義というより、コイツ限定の話なのだが――傍から見ればご都合主義ですよね……これ。

 

 戦闘全体の意義
 たまたまとは言え、ガトランティスの侵攻の出鼻をくじいたのは大きいだろう。これで地球侵攻作戦に後れを生じさせた。また、辺縁部においても艦隊を配置しておくことの重要性の認識をした事は大きい。事実、同惑星近辺に艦隊を派遣が決定する。艦隊が引き揚げられた直後、再度ガトランティスは侵攻し、第11番惑星に編短補給基地を築く。この星は艦隊駐留が必須だろうという事が判明した

 更に、戦争全体としては、ガトランティスの前線基地建設を阻止したことで戦争の長期化・緒戦での味方劣勢を未然に阻止。味方戦力が警戒のために割かれたのは多少痛いが、それでも四六時中張り付けておかなければならないわけでは無い為、地球側の損失は非常に限定的と言える。


 ガトランティスにとっては、今まで行ってきた順当な戦闘計画が完全に後ろ倒しになってしまった。安全策、合理的計画に破綻が生じ、しかもヤマトがテレザートに向かって邁進しているというのも非常にマズイ。地球艦隊、特にヤマトがただならぬ戦艦であるという事が確定、それなりに手を打たなければならなくなった。

 何気に手痛い敗北であったといわざるを得ない。

 


 ガトランティス側損害:空母を除く偵察陽動艦隊全艦喪失、デスバテーター複数喪失
 地球側損害:第11番惑星派遣隊多数人、コスモタイガー隊複数機