旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

空間騎兵隊――陸戦のプロフェッショナル集団、その実力

 

 空間騎兵隊は地球連邦の運用する陸戦部隊である。白兵戦のような非機械化戦闘を主戦とするが、他方で陸上兵器や防衛戦に寄与し得る兵器のほとんど全てを操ることが出来る陸上戦のプロ集団である。

 

 

 登場

 さらば宇宙戦艦ヤマトないしヤマト2において初登場。

 地上戦を出来るだけ嫌ったガミラスではあるが、他方で対ガミラスの基地防衛戦には当然陸戦隊も必要であろう。しかし、どうやら当時の地球防衛軍のその能力は比較的小さくあまり用をなさなかった。と考え得る。そこで限られたリソースを最大有効活用するべく地球連邦は陸戦専門部隊を設立、訓練および配備を開始した。と考え得る。

 空間騎兵隊はガミラス基地防衛戦、或いはヤマトの行った白兵戦を鑑みて、地球連邦が唯一機械力よりも人間力を重視した珍しい部隊だ。徹底した肉弾戦のプロであることが第一、第二に大型兵器の運用と言うような感があり、ウラリア戦役においても戦車を用いた会戦よりむしろゲリラ戦において大きな力を発揮している

  ウラリア戦役登場した部隊は地球連邦陸軍の可能性も当然捨てきれないが、しかし空間騎兵隊の任務地を拡大させればそれで十分だし、必要な装備は似通る為――空間騎兵隊であることが妥当として話を進める。

 


 頭脳
 物凄く荒っぽく、殴り込みや殴り込みを行ってきた敵を迎撃するのが基本。敵を目の前にして戦うため、相当性格がアレな人物が多いが、どうもその図体と荒っぽさからすれば考えられないほど高度な頭脳を持った集団であろうことが推測可能。


 コンピュータの発達した2200年代では当然、砲兵自体が超高性能な頭脳を持っている必要性は低いが、砲兵として一通りの理論ぐらいは頭に入っていてしかるべきだし、第11番惑星で見たように、相当数が砲兵として砲台を操っていた事を考えると、教育課程は全般にわたって結構高度と推測できる。

 また、陸兵とはいえ必要とあらば航空戦力を一定程度操る必要に迫られない事も無いと考えると、彼らに基礎的な航空機や雷撃艇の操作を訓練していても不思議かもしれないが無駄ではないだろう。実際に舟艇を駆ってガトランティス部隊と戦闘を繰り広げた。

 

 

 戦術
 まだ塹壕戦を行っていたりするらしい、非常に原始的な戦闘を捨てない方針。ウラリア戦役においては本当に塹壕戦的戦闘を行い、ハイペロン爆弾周辺部に攻勢を仕掛け内部にまで突入した。

 短期決戦はどうも苦手らしいが、ゲリラ戦などの長期戦は大得意の模様

 

 彼らは基本的に接近戦で、これが第一かつ必殺
 対戦車ロケット弾が使える距離まで平気で接近しようとする。さすがに、歩兵一個小隊でザバイバル戦車軍団のような巨大機械化部隊を相手にするのは酷だしそんな戦術も持ち合わせてはいなかったが――懐に潜り込んで履帯をぶっ壊したり、軟弱なザバイバル機甲師団の生身の兵員を襲ったりとひたすらガッツで猛攻を加えた。
 ただ単に突っ込んでいったというよりは、退却や散開、或いは障害物に身を隠すなど幾らか小技を加えて接近しザバイバル戦車軍団に攻撃を加えた。また、戦車を乗っ取った後は、彼我の射程の微妙なラインで戦闘を続け、タンクデサントまでやるアグレッシブさだ。

 本当に、戦車すらかなぐり捨てた肉弾戦となると――水を得た魚のように強力になる人たち

 

 

 装備
 基本、携行武器のみ。対戦車ロケット弾、自動突撃小銃、に加えてコスモガンとコスモ手りゅう弾を以て敵に当たる。彼らは戦車も雷撃艇も艦載機も操れるが、配備はされていない可能性がある。

 他方で地球本土においては戦車を運用している――が、これはウラリア戦役。困ったことに彼らは明らかにさらばの空間騎兵隊より戦略の質が下がっているとはいえ、ガッツの面ではガトランティス戦役の先輩らに負けず劣らず、暗黒星団帝国の占領部隊とゲリラ戦を展開し、徹底的に殴り合った

 

 

 立ち位置、運用
 惑星の防衛基地の要員が第一。また、ヤマトの場合のように余裕のある大型艦に乗り込んで白兵戦に備えたり、敵勢力の手にある惑星を制圧・維持も任務と考えられる。


 立ち位置は海兵隊の能力拡大版であろう
 海兵隊は海軍の指揮下にある為、陸軍と異なり独自の艦艇は擁していないものの――戦車に加えて航空隊は思いっきり戦闘機を保有し、これを海軍の輸送艦揚陸艦によって輸送し殴り込みを仕掛ける。海兵隊は古くは白兵戦、次いで基地防衛や上陸戦あるいは即応展開などを担当している部隊だ。

 空間騎兵隊は基地に対する奇襲攻撃に際し駐留艦隊との共同作戦やあるいは単独で踏ん張って救援艦隊の到着を待つ。艦に乗り組んでは敵の白兵戦や敵拠点占領作戦において出動し、クルーに代わって肉弾戦を行う。

 というのが任務だろう。

 

 部隊の構成は普通の陸上系軍事組織と同じ。師団の下に大隊、大隊の下に中隊というのがあるのだろう。また、一通りの人間が普通科、砲兵科、機甲科、通信科、航空科、需品科の結構高度な授業を受けると考えて相違ないはず。一通りの授業を受けた後、それぞれの科に特質によって振り分けられるのか。

 定員は不明だが、普通の陸軍辺りのそれと同じだろう。

 困ったことに昇進の基準が判らない。テストがあるのか、あるいは実戦か。誰が指揮官であるかは、恐らくその場の最先任士官に任せられるというごく普通の体制であろうことは察しが付く。そのため、多分指揮系統が混乱するような体制ではないだろう。が、本当にどうやって誰が昇進するのかは全く想像がつかない。

 

 

 劇中の活躍

 空間騎兵隊はさらばにおいては長官の命令でヤマトに乗り組んだ。

 彼らの任務は戦列艦時代の海兵隊と同じだろう。総統が偶発的に行った白兵戦を念頭に置けば、万が一の事態に備えて空間騎兵隊を乗り組ませるのは長官としては当然だろう。また、メッセージの発信源の探査など、上陸して拠点を築く必要が有るかもしれない。その場合、クルーに陸兵のような事をやらせてヤマトの能力が仮に低減すればお話にならないのだから、専門部隊を派遣するのは当然である。

 残念ながらテレザート上陸戦と都市帝国攻略戦のさなか、ヤマトに派遣された部隊は任務を全うする形で壊滅した

 

 ヤマト2においては第11番惑星派遣隊が登場。辺境の惑星である第11番惑星を守備する事が目的であり、その任務を遂行。後に残存部隊がヤマトに収容され、そのままテレザートや都市帝国攻略へと参加し全滅した。バンデベルの戦闘空母を撃滅するように古代に進言するなど、考え方が艦隊と決定的に違うという部分を表出させた点も特筆に値する。リアルな陸軍と海軍の敵に対する認識の差に準ずるといえるだろう。

 とはいえ、地球を守る為に死力を尽くすという点においてはヤマトクルーと同じであり、デスラー艦への白兵戦や都市帝国突入には迷わず参加した、勇敢な宇宙戦士達であった。

 

 ヤマトよ永遠ににおいては突然襲来したハイペロン爆弾の包囲に兵員輸送車で乗り付け参加。探査車を繰り出して調査を開始するも――しかし、上空からの奇襲攻撃を受けて大損害を出す。更に連装砲塔戦車を多数展開して暗黒星団帝国の掃討三脚戦車と対峙するも、本当に掃討されてしまう。敵将ザバイバルが身をもって教えてくれた戦車は歩兵に近づきすぎてはいけないという戦訓を完全に忘れてしまっているらしい。

 しかし、ゲリラ戦開始後はむしろ暗黒星団帝国に対して互角ないし優位に戦闘を進めることが出来た。彼らの活躍によりアルフォン少尉の部隊の撃破に成功し、ハイペロン爆弾解体にこぎつけた

 

 ヤマトⅢや完結編ではヤマトは得意なはずの白兵戦で大惨事になったが、これは総数がたかだか100名程度しかいないヤマトクルーが戦闘を行ったからだろう。空間騎兵隊を乗り込ませていれば、あのような事態は確実に避けられた。しかも、乗り込ませるに足る十分な理由があったのだから、あそこに居ても不思議はなかった

 仮にあの場面で肉弾戦の準然たるプロ集団の空間騎兵隊が敵と交戦していれば、平田とか大門とか島とかは命拾いをしただろう。これは断言可能だ

 

 

 ベースとして海軍視点で描かれているのがこの宇宙戦艦ヤマトである。その作品の中で海兵隊的役割を担う存在として空間騎兵隊が登場するのは至極真っ当。この部隊の存在のおかげでさらばやヤマト2における戦闘のいくつかは合理性を保てたし、鬱陶しい面の方が大きいが一応ストーリーにも厚みを持たせることが出来た。また、さらばで登場した事で、ウラリア戦役において突然陸兵を登場させるという一種の不必要な混乱を生まずに済んだ。

 ヤマト艦内での振る舞いのせいでなんだか腹立たしいというべきか、小憎らしいというか……結構ストーリー上もロジカル上も一通り役割を果たした優秀な部隊と言えるだろう。