旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

戦闘考察Ⅸ・第二次第11番惑星戦

 

 

 第二次第11番惑星戦はテレザートより帰還途中にあったヤマトが偶発的にガトランティスの占領域に侵入した事により始まる戦闘である。

 

 

 ガトランティス側参加部隊:第11番惑星兵站補給基地、第25戦闘艦隊
 戦力:補給基地ミサイル陣地、大戦艦複数隻、駆逐艦複数隻
 指揮官:第11番惑星兵站補給基地司令、第25戦闘艦隊司令


 地球側参加部隊:ヤマト
 戦力:ヤマト、中型雷撃艇
 指揮官:古代進、斉藤始(第11番惑星探査隊隊長)

 

 戦闘経緯・経過

 第19話――第11番惑星で共に戦った部下たちをどうしても一度参りたいと隊長が古代に直談判。一方で古代は自身の職責からそれを拒否するが、同じ宇宙戦士として部下を統率する立場としてどうしても切り捨てることが出来なかった。

 隊長はこの件の憂さ晴らし的にコスモタイガー格納庫で騒動を起こすが――反対に古代はそれを収める為に探査命令という形で墓参を許可する。甘い判断。

 艦長代理の命令であるからして、隊長もこれを要求していたわけであるし、否やは言わず雷撃艇にて探査を行う。それに、これで空間騎兵隊が大人しくなってくれれば、クルーも文句はないだろう。

 

 たまたまタイムレーダーにガトランティス艦隊が映る事で事態は急転。

 隊長は佐渡先生からもらった酒で部下たちの墓参を続ける――しかし、それをガトランティス兵站補給基地の指揮官はじっと様子を見ていた。

 

 ヤマトは第11番惑星がすでにガトランティスの勢力下にある事を察し、急降下――これが兵站補給基地司令を刺激。結果応戦体制を取り、駐留していた第25戦闘艦隊と連携を取ってヤマト挟撃を試みた。

 隊長は墓参を切り上げ、独自にミサイル陣地を攻撃。ヤマトも応戦を試みるが艦下方では戦う術はなく、急上昇。ヤマトは全速力で第11番惑星の上方へ脱出、第25戦闘艦隊は追いすがって猛攻撃を浴びせた。正面切っての戦闘は不利と考えた古代は波動砲攻撃に舵を切り艦を反転、戦闘艦隊に照準を合わせる。同時に隊長の雷撃艇を収容――波動砲を以て艦隊を殲滅、同時に兵站補給基地をも殲滅した。

 

 

 描写の妥当性

 そもそも立ち寄った理由が薄弱昭和の漢の話だから許される話であるし、結果論的には立ち寄ってよかったという話であるが、現代では通用しない

 士気を担保する為の行動として何とか説明できなくもないが……この場合、古代艦長代理の艦内の統治能力がかなり低いという事になってしまう。探査命令自体は間違ったものでは無いし、指揮官が手続きを取って下した命令ならば違法ではない。が、今回のこの判断については妥当性に幾らかの問題をはらんでいる。

 

 仮に再リメイク同じエピソードを挿入するならば、時系列が点灯してしまうが、タイムレーダーに敵影が映ったから探査した、そのついでに墓参を黙認した。というストーリー展開というのが妥当性だろう。探査命令を前面に押し出したストーリーに作り替えるのである

 それでも厳密には軍律違反というか艦の私物化と言うような疑念が取り払えない。

 

 隊長のあの意固地な行動であるが――まあ、一応、隊長の言い分にも筋が通った所がある。

 つまり、端っから古代君が時間を区切って命令を発令すればそれでよかったし、別命のあった場合にはそれに従うとしておいてもよかった

 確かに、隊長を下ろしてから第11番惑星が兵站基地になっている可能性に気が付いたのではあるが、時すでに遅しではあった。だったら降下せずに通信をしてもよかったはず。もっと簡単な話としては、相原の通信の中で、古代君が探査命令を破棄してしかる後に別命として帰還命令を出せばよかっただけ。それを「あのバカ」と捨て置いたのはかなりマズイ。

 基本的には隊長は幾らでも古代に責任を擦り付けて行動を正当化する事が可能(多分しないだろうけど)。反対に古代は頑張っても自身の命令の不足や監督不行き届きで隊長に責任転嫁することは非常に難しい(多分しないだろうけど)

 隊長が軍律的にアウトで処罰を受けるべきとするなら、よりタチの悪い行動を下古代君は即時謹慎ないし失職モノ

 

 古代君がヤマトシリーズ通してやりがちな命令に出し方や報告の上げ方失敗で大惨事を招いた事例の内の一つ。要は、このエピソードはベースとして古代君のミス。

 ただ、最後は迅速な波動砲発射で挽回したといえるだろう。隊長も上へ告げ口はしないだろうし。

 

 

 意義
 空間騎兵隊とヤマトクルーの心理的な結びつきの構築、これは非常に大きい。テレザートでも構築の機会はあったが、これが完全に硬化し盤石になったのだ。

 ある意味、あのタイミングで墓参を望んだという事自体が最後の決戦までヤマトの上で戦う決意を見せていた――だからこその墓参をの要求だったともいえるだろう。この要求に応え、最後まで隊長を見捨てずに踏みとどまった古代の判断は隊長と隊長に付き従う空間騎兵隊の心を掴んだ事は想像に難くない。

 もう一点、ガトランティスが長期戦を試みる際に不可欠な兵站補給基地を粉砕した事もまた、非常に大きい。これでバルゼー艦隊はうっかり負けた場合に体制を立て直すという方策をとることが出来なくなった、銃後の備えが無くなってしまったという事である。つまるところ、バルゼー艦隊に対し行動可能な時間の制限を強制的に課すことに成功した。

 これら2点は戦争の帰趨を左右するほどの、非常に大きな意義・戦果であるといえるだろう

 

 ガトランティスというか、バルゼー総司令にとってはこれは不測の事態であり、前進して敵を粉砕する以外の行動をとることが一切できなくなったことを意味する

 つまり、何かしらの不測の事態が起きたとしても、最早作戦は動き出しており止められない。援護を受けるには白色彗星の到着を願うほかないが、任務の性質上本来はすべきではない選択肢。故に彼は敵を粉砕し、惑星を占領する他、艦隊を維持する方法が無くなってしまった。

 端的に評せば、バルゼー総司令は完全に短期決戦を強要されてしまったのである。彼は戦闘において時間軸を敵に握られてしまったのだ。これ、結構痛い……。 

 


 ガトランティス側損害:第11番惑星兵站補給基地全機能喪失、第25戦闘艦隊全艦喪失
 地球側損害:雷撃艇大破