ストーリ考察Ⅹ・ガトランティスの攻撃鈍化、その理由(さらば/ヤマト2)
特撮物でありがちな展開だが、このヤマトでも判然としない攻撃の空白が存在する。
普通なら、雰囲気としてスルーするところである。だが、それではこのブログの趣旨には合わない。スルーしてしまったままでは、リメイク作のアレな部分も指摘できなくなるため、何とかこじつけたい。
都市帝国の攻撃開始までのタイムラグは、簡単に説明が付く。
ガス体を取り払われた事により、関連の設備に対するエネルギー供給の停止は当然行わなければならない。他方でこれから始まる防衛戦への準備――つまり、白色彗星の維持機構から、回転リングへのエネルギー供給への切り替えに端を発すると説明できるだろう。
何万トン以上もあるだろうあの巨大な金属塊がそんなコンマ数秒で動き始めるわけないだろう。ガス体がヤマト一隻ごときで取り払われると思っていなかったならば、当然、あらかじめベルトを動かしておくなんてこともしなかっただろうし。
別に、直ぐに攻撃を始めなかったとしても、何ら不思議はない。
問題は、超巨大戦艦が散漫な攻撃を加えたという事。
同じ超巨大戦艦でも、ヤマト2でヤマトに攻撃を加えなかったのは簡単に説明できるが、さらばは難しい。
なので、先にヤマト2の方を理由づける。
ヤマト2・第25話及び第26話――大帝はブチ切れ気味に「裁きを受けて地球が木っ端みじんになる様」をヤマトに見せると宣言した。要は、超巨大戦艦の攻撃鈍化は一種の拷問。個人的な悪感情から来る戦術に基づかない判断・行動である。遊戯王でもジョジョでも、ままある展開だ。
この場合、ヤマトは反撃はできないが沈みもしない――瀕死のまま生き続けてくれなければならない。目の前で地球がボロボロになる様をずっと見ていてくれなければならない。だから、ヤマトに止めを刺さなかった。サディズムの頂点みたいな行為である。
もはや理屈ではない。
では、さらばはどうしてか。
大帝が地球連邦大統領に対して無条件降伏を再度勧告しているという可能性がある。つまり、大帝にとってはすでに戦闘は終わっているという認識。
どうせヤマトはもう戦えない。
砲は全て破損し、ミサイルは残弾無し。艦載機もすべて失い、波動砲も動力炉の過負荷か何かで発射不可能とすれば、もはや単に浮かんでいるだけでしかない。そんな戦艦にかまう必要性などありえようはずがない。脅威評価としては無価値という事になる。
逆に、個人的感情以上の理由でくず鉄同然の戦艦に止めを刺す必要が有るのか。
ビスマルクははっきり言って、大英帝国のプライドで沈められたような物だ。確かにあの戦艦が通商破壊や港湾に砲撃を加えたら大損害が出ることは間違いない。だが、あんな数の戦艦を投入して空母を投入して、最期の戦闘では馬鹿みたいに近い距離でバカスカ撃ちまくる。普通に魚雷を集中投下すりゃいいだけなのに、簡単に沈むのに、あれほど攻撃したのはほとんどなぶり殺しに近い。それだけの罪をビスマルクは犯したのだが、それの報いを受けただけだが。
ともかくとして、ビスマルクは大英帝国海軍のプライドの為になぶられ、沈むまで徹底的に痛めつけられた。
これと同様。
ヤマトの場合、大帝にとってはそこまで気にする相手では無かった。少なくとも戦力としてはどうでもよくなっている。
脅威ではない。眼中にない。強いて言えば、地球の希望であるヤマトを粉砕し、挙句に放置するというその行動自体が地球への牽制となり得る。であるならばますますヤマトは破壊された状態を保っていれば、それで十分。それ以上の事を大帝側がアクションする必要はない。
であるならば、放置という選択をするのも無理からぬことであろう。
正直な所、かなり不用心な判断。理詰めでこの判断だから、はっきり言って不用意。散々ガトランティスを苦しめたヤマトであるのだから、もしかしたら何かしらの秘策を持っているかもしれない。
戦争は、慎重すぎるぐらいに慎重に事を進めても罰は当たらない。戦争は最後の詰めを収めなければ、どれだけ勝ったところで何の意味もない。
大帝は、それをミスった。ただそれだけの事である。
超巨大戦艦の攻撃鈍化は、2202の全く砲撃を加えず、ただ物凄く苦虫を噛み潰したような表情でこらえるエンケラドゥス守備隊司令のような意味不明行動とは違う。イーターを消費してまで優勢を保ったにもかかわらず、全く砲撃を止めたバルゼーのような意味不明どころか背任行為とは訳が違う。
あの人たちが何をやりたかったのか、合理的な説明は極めて難しいだろう。演出を第一に考えて合理性を二の次にしてしまう2202の製作首脳部ならば、仕方がないか。
ガトランティスの攻撃鈍化は単純に、演出と言う大人の都合として切り捨てることも可能だ。だが、一応理由を付けようと思えば不可能な事ではない。
幾らか座りの悪い、こじつけ説明ではあるが。