旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ストーリー考察Ⅴ 地球占領(ヤマトよ永遠に)

 

 物語冒頭から話が結構ぶっ飛んでいるのがこのヤマトよ永遠にである。無論、整合性のとれているものもあるが、一方で説明は可能だが政府や軍の動きとしては情けない内容のものが多い。今回はヤマトよ永遠にの冒頭部分を考察したいと思う。

 

 

 冒頭からハイペロン爆弾の迎撃戦にかけて

 戦闘内容やその具体性ついては別個の記事としてまとめる。では何を考察したいかといえば、その唐突な物語の展開である。

 

 ガトランティス戦役の翌年に襲撃を受ける、そのこと自体も疑問。最悪、これは暗黒星団帝国にとっては関係ない事情である為、襲撃する側としては妥当性は――それだって、昨年にファーストコンタクトを取ったばっかりの勢力を攻撃するというのは、情報収集を失敗すればこれはギャンブルになる。

 また、暗黒星団帝国はかなり詳細に地球の情報を事前に入手していた模様である。何といってもデザリアム星の地球偽装だ、あの超弩級の詐欺をほんの数カ月で出来る……方法はまったく思いつかない。主要部だけを一通り偽装して残りはホログラムとしてしまえば年単位のスパンであれば完成するだろう。だが、ほんの数カ月でこれは無理だろう。どう頑張っても、ガトランティス戦役の翌年にこの戦争が行われるという事自体が、タイムスケジュールがご都合主義としか言いようがない

 

 

 防衛軍の戦闘も、全部ではないが――わざと負けようとしている、程ではないがお粗末な代物

 マルチ隊形からの波動砲一斉射撃によってハイペロン爆弾を殲滅するという作戦は、ひょっとするとマインド的に取りづらかったかもしれない。しかし、である。思い出してほしい。この時の地球艦隊主力は無人艦だ。いくら沈もうが、財布は痛んでも心は痛まない

 ハイペロン爆弾の軌道が予測できた時点で無人艦隊を出動させ、波動砲一斉射撃を以て迎撃。仮にワープで逃げられてしまう可能性がこのハイペロン爆弾の性能からしてあり得る話だが、それはそれ。演出として暗黒星団帝国が地球より一枚上手という事を表現できる。うまくやれば非常に熱い演出となっただろう。

 艦隊による迎撃をしなかった。これは非常に疑問

 

 ミサイル攻撃が通用しなかった。これはご都合主義というより地球防衛軍の甘い見通しに起因すると言えるだろう。仮に大気圏内での迎撃を失敗すれば、あとは爆発しないように祈るばかり。情けないが、仕方がない。

 爆発しないならば敵に何かしらの意図があるとわかる――だから防衛司令部は調査部隊を派遣し同時にハイペロン爆弾の周囲を空間騎兵隊で囲い込んだ。これは、善後策としてはベターだろう

 

 古代が何も考えずに火星基地に着陸したのは不用意。不用意ではあるが、まあ彼なら仕方がないだろう。

 同僚を一人置いて――適切と言えば適切だし、不適切といえば不適切の微妙なラインだが……火星基地の保守を考えると放置はできないだろう。一人でも人員を置いて、封鎖してしまえば敵に基地を奪われる可能性は多少は低くなるだろう。安全性は確保できないが、危険性に対しての対処としては多分妥当。

 着陸はまずかった感があるが、その後の対処はさすが歴戦の勇士。

 

 

 降下兵の奇襲

 気づかないって馬鹿なんじゃないのかな。高性能なレーダーに全く降下兵が映らなかったとして、である。一人ぐらいもっと早く降下兵に気が付けなかったものだろうか。「星がきれい――にしても今日は星が多いなぁ」ぐらいの事を思っても不思議はないはず。実際、森君は気が付いた。

 森君がセンチメンタルな気分でぼーっと空を見ていたという状況の特殊性はあるものの気が付いた。

 一方で空間騎兵隊はいい加減まで全然気が付かなかったのである。空間騎兵隊全員がハイペロン爆弾の事ばかりに注視する必要はなかったはずだし、むしろ不用意と言える。もっと言えば、どんなに頑張ったって人間は集中力を切らすもの、上を見上げることもあるだろう。

 機銃の射程圏内に自分たちが入る前、機銃掃射を受けるよりもっと早い段階で気が付いても不思議はない。だって降下兵、あの人数だもの。気づかない、という理由がなかなか見つからない……

 

 元から機械に薄っすら弱い疑惑のある空間騎兵隊

 戦車が空間騎兵隊所属なのか判然としないが……空間騎兵隊が運用していた場合、彼らが地上戦で戦車を用いての戦闘はテレザートでの一戦のみ。

 仮に防衛軍に別個で機甲師団があった場合は少々情けない感もなくはないが――相手が高所から砲撃を加えてくる掃討三脚戦車だ。勝てるはずもない。安定感も進軍速度も上で、より遠方から攻撃を行える相手に、どうやって勝てというのか……。

 負けた事自体は問題ではない、出撃させたことも当然で問題はない。出撃時点では三脚戦車は出ていなかったし、これ相手では戦って勝てるはずもないから。シーンとしては締まりがないが、仕方がない。

 他方、怪獣映画ばりに接近しすぎだったのはまずかったと思う。市街地戦なのに、市街地戦の奇襲的強みを一時すら確保できなかったのは情けない。妥当性がない。だって地球では歴史上いくらでも市街地戦が行われているのである。それを考えて、あのストーリー展開は情けなかった。

 

 空間騎兵隊の砲兵隊が生身でビルに上って砲撃を加えても良かった。結局は戦闘爆撃機によって戦車も砲兵も排除されてしまうのが妥当だろうが、しかしこの分厚い戦闘シーンを入れなかったのは返す返すも残念。

 澪ちゃんのシーンを大幅にカットしてしまえば、入れ込めたのではないのだろうか。

 

 

 無人艦隊出撃

 地球の地上戦力がほぼ制圧されてしまった段階で防衛司令部は虎の子の無人艦隊を出撃させる……これは遅い遅すぎる

 しかも地球の援護が出来るとしても、相手にするのは敵の輸送艦であるとかその護衛艦だろう。そもそも、あの機動力の低い、攻撃性能の低い、自律不可な艦隊が仮に降下して敵地上戦力や航空戦力を排除しようとしても――むしろ的になるだけだろう

 だったら、ヤマト出撃の護衛に付けた方が良かった。PS版と同様の展開になるが、あの時点では全く役立たずが予想された無人艦隊を出撃させて無駄にするより、出撃させるタイミングを逸したがヤマトの太陽系離脱の為の盾にした方が、冷たい感じがするが活躍はする。

 そもそも、無人艦隊を登場させたこと自体が割と疑問。アナライザークラスの自律能力があったのであれば、合理性も出せるのだが。強力な戦闘衛星に代えた方が良かったのではないだろうか。

 艦隊戦シーンが一つ減ってしまうが、仕方がない。あるいは、上手く描けないなら無人艦隊その物をナレ死させるか。

 

 

 藤堂長官の意地とカザンの焦りクレジットは司令長官で厳密にはまだ藤堂長官じゃないけどね。

 ハイペロン爆弾の迎撃に失敗し、地上戦力はほぼ壊滅。無人艦隊さえ壊滅してしまった。大統領と首相を人質に取られ、唯一独立性を確保しているのは防衛司令部だけとなってしまった。しかし、藤堂長官はそんな苦境でもまだ希望を失っていなかった。

 ヤマト。ヤマトさえあれば地球は何度でも立ちあがれる、ヤマトさえあれば敵を撃破できる。その希望が、確信が藤堂長官を奮い立たせ、カザンを恐れさせた。

 

 そういえば非常に聞こえがいい。

 だが、何だかしっくりこない……。まず、普通に考えて大統領や首相がこの時点で降伏していないらしいのが疑問。大抵、拘束されていれば嘘でも降伏した、調印したとカザンは吹聴するだろう。その方が自然。

 ところが、カザンはこの辺りをぼやかしていた。特に、ヤマトの所在について長官は、あの割と話が分かる感のある連邦大統領に伝えていても不思議はない。にもかかわらずまだヤマトを探している、という事実から多分首脳部はまだ頑張っていると推測が可能になる。これはカザンのミスもいいとこ。長官が更に強硬に頑張ってしまう希望を与えてしまっている状態だ。彼の降伏勧告は内容が説得力と合理性に欠ける……

 

 そうは言っても、である。大統領や首相がすでに降伏、長官はレジスタンスの長として降伏を迫られて――カザンにとっては地球の全球的降伏の為のパフォーマンスという事になるだろう。理解はできる。パフォーマンス大好きな暗黒星団帝国がやりそうな手口である。

 カザンの説明が微妙に説得力がない事と、ある意味うさん臭い形で藤堂長官が前面に立たざるを得なくなった事は仕方がない。説明は可能だ。

 

 ただ、ヤマトに対する異常なまでの警戒心と古代守の自爆は疑問特に後者はいらないシーンだっただろう

 古代守の戦死自体はある意味仕方がない。どっかで爆破のあおりを受けて内出血とか、色々予想可能だ。死闘に近い戦闘なのだから、誰かが死んでも不思議はない。

 だがなぜ自爆した。いつ爆弾を入手したのか、前から持っていたとして、暗黒星団帝国は身体検査したのか。検査してすり抜けたのなら仕方がない――いや、爆発物質の検出なんざ検知器や犬で可能なのだから、より高度な技術を持っているであろう暗黒星団帝国が出来ないはずはない。という事は検査をしていなかったのだろう。していなかったのでであれば、救いようのないミス。というか、ご都合主義

 

 ヤマトに対するあの警戒心は……はっきり言って意味不明。だって波動砲は先に述べたように地球艦隊のほとんど全艦に装備されている。有人艦艇だってなくはないとするのが妥当。だったら地球艦隊全てが危険な存在としてみなさなければならないし、それが普通。なのにヤマトだけに固執するのは意味がない。それに加えて、惑星基地を全て殲滅できたか、確認が出来ているか――イカルス天文台を見過ごすような警戒レベルというのも話にならない。

 ハイペロン爆弾で惑星基地をあらかた粉砕して確実に艦隊を送り込めるよう細心の注意を払っておきながら、万が一の可能性を見過ごす――これはご都合主義無理やりヤマトは凄いぞ感を出したシーン蛇足としか言いようがない

 

 

 全体的に、結果から逆算して話を作っていったような様相を呈している。無論、ある程度筋道をつけてからストーリーを組み立てなければあらぬ方向に取っ散らかっていつまでも完成しない可能性もあるだろう。ただ、筋道以上の結果というものを明確にビジョン化し、それに固執する形で突進していった……これはマズかっただろう。