旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ストーリー考察Ⅱ イスカンダルの沈黙と自爆(新たなる旅立ち)

 

 イスカンダルの沈黙――それはヤマト史上最もファンをがっかりさせたであろう事実であり、その後のストーリー展開において些細であるが重要な齟齬を生み出してしまった。今回は暗黒星団帝国にガミラシウム採掘を許してしまった沈黙について考察したいと思う。

 

 


 沈黙したのか、否か
 これはそもそも論の部分であり、正直――沈黙しなかったと願いたい
 が、多分ほとんど暗黒星団帝国との交流ないし交信はなかったと思われる。あっても軽い抗議文程度。これは暗黒星団帝国のガミラスに対する反応から考えて、妥当だろう。つまるところ、スターシャは滅亡後のガミラス帝国にもガミラス星に対しても関心を払っていなかった事を物語る。

 だって、ガミラスを事前に知ってたら、正体不明なんて言い方はしないでしょう?

 

 恐らく、デスラー総統が艦隊を仕立てるためにマゼラン雲に舞い戻った際にその生存を知ったはず。また、ガトランティスについての情報を幾らかスターシャは仕入れたはず。じゃなかったら、総統の帰還の情報も耳に入らないぐらい楽しい夫婦生活を謳歌していたなら、お惚気も大概にせいといいたい。(さらばの場合は、総統の生存を知らなくても当然だろう。だってガミラスの再建は事実上不可能なほどに勢力が減衰していたから)

 この時のガミラスーガトランティスの同盟関係を鑑み、隣人デスラー総統は地球=古代守の故郷の敵であるという認識を固めたとして不思議はない。残念ながら、あっても高々水雷艇1隻程度のイスカンダルの戦力では何をどうしようと、ガトランティスの前には塵に同じ故、加勢するという発想はなかっただろう。実際無理。ただ、デスラー総統に対しかなり悪感情を抱いても不思議はない

 そしてそこへ総統がどうやらガトランティスに逮捕されたという――この時死亡したとスターシャは確信した。(という事にすれば整合性は取れる。スターシャがかなり非情な人になるけど)また、民族の行く末を想うあまりとはいえ……完全なる地球の敵としての評価が個々に定まったのである

 

 他方、いくら覇権国家とはいえ、それなりに丁寧な対応を期待できる暗黒星団帝国イスカンダルにとってはちょっかいを出さなければ無関係な存在であり、同時に遠方の地球にも関係ない事。つまるところ、スターシャにとっては暗黒星団帝国は庭先で工事をし始めた迷惑な隣人、程度の認識の可能性が高い。

 加えて、イスカンダルはこれまでの作品で意外と他者への干渉をしない傾向にある。地球に関しては、守にほの字だったから以上の理由は熱心さも鑑みて考えづらい。幾らガミラス星イスカンダル星と双子星とて、想い人の故郷に比べたら……。

 

 この認識でスターシャが暗黒星団帝国に対応したとあれば――暗黒星団帝国側が何かの手違いか、希望的観測でガミラス無人である事で無主の地と判断しても不思議はないだろう。当然、仮に所有者が居ても滅ぼせばいいと考えただろう

 暗黒星団帝国としては隣国イスカンダルの存在自体に重きを置いていなかったと思われる。軍事力はほぼゼロ、人口は3人。そんな国が何を言おうと関係なかっただろう、関心を払う理由など法的な根拠を整える以外に全く存在しない。逆に、どうでもいいから攻撃もしなかった。攻撃してもよかったが、不経済だし藪蛇という可能性もあったのだから攻撃しないでお互いに不干渉にもちこむのがベストな選択だったと言えるだろう。

 

 結論としては多分、スターシャはガミラス星の違法採掘に関して――意味のある抗議はしなかっただろう。どのみち、抗議しようがしまいが関係なかったと思われるが

 


 沈黙の動機――もう少し踏み込んで――
 リアリストな面のあるスターシャであれば事実上無主の土地になっているガミラス星に不明な存在が採掘を開始しても別の国である以上口出しする道理がないと判断したという見方もできなくはない。

 極めて原則論的だが、いくら安全保障上の懸念事項であっても別の国の土地の出来事であるし、暗黒星団帝国が敵かどうかは不明。ガミラスは敵とみなして構わないレベルに関係は冷え込んでいた事は間違いない。

 そこから考えてスターシャには暗黒星団帝国によるガミラシウム採掘の如何を問う事は出来ても、採掘中止を直接的に要請はできなかったのかもしれない。


 他方で、家族を守りたかったというのが第一だったという可能性もあむしろ、こちらが大きいのではないだろうか

 暗黒星団帝国は意外と交渉可能な相手ではあった。メルダーズの10分の猶予の申し出やカザン、スカルダートによる降伏勧告など無駄な戦闘は結構避けようとするタイプの勢力。であるならば、イスカンダルやひいては家族を守る為に触らぬ神に祟りなしと後ろ向きな対応になってしまったともいえる。

 そもそもスターシャは地球に助かるチャンスを与えたという意味では確かに救いの女神だし、試練を与えたという意味では誇り高い女性。ただ、どうも地球を助けようとした理由が、彼女の行動や身の回りの出来事からして恋人の為に行動したと説明した方がすっきりする。何度も述べているが。
 結構感情で色々動いたりする癖のある彼女であれば、他方で論理として介入する理由もない状態では、彼女が暗黒星団帝国に何の勧告も行わなかったとしても不思議はない。とも言える。

 要は触らぬ神に祟りなし

 

 理解できる面もある。そりゃあ、家族は大事だ。妻がイスカンダル星と滅びを共にすると言えば、一緒に滅びの運命を共にしようと躊躇なく言える夫、そりゃ好きでたまらないのは判ります。

 が、平和だ未来だ今まで騒いでいた彼女が、宇宙間戦争の為にガミラシウムを採掘していた暗黒星団帝国に何の反応を示さなかったのは正直、がっかり。勝手に期待を寄せたこっちが悪いのだが、がっかりである。ガミラシウムは使ってもいいけどイスカンダリウムはだめ、とかいうのであればなおさら幻滅だ。

 まあ……最後には平和を祈るイスカンダル人として、母星を破壊する決断に至ったから名誉挽回と言えば挽回かもしれないが……。

 もっと言えば、こんなに講釈を垂れなければ説明がつかないような、そのくせ全然ストーリーの鍵にならないような内容で立ち止まらざるを得ないような話を作らないでほしい

 


 イスカンダルの爆発
 イスカンダルの自爆があったから、ゴルバとの戦闘は終了したが――いきなり地球人式の自己犠牲を見せられても唐突過ぎるし、他に策はなかったのかと問い詰めたくなるのは私だけではないはず。

 ガミラスイスカンダルと双子星で恐らく、近い時期に人類が誕生したか行き来きがあって共に軍事大国として発展を遂げただろうであるならば最も友好関係を築くべきか、或いはもっとも警戒すべき相手。後者を選択したならば、強力な隠し玉で相手をけん制するのは常套手段だろう。現代の地球でいえば核兵器

 無論、イスカンダルが神権的な存在として両国家に君臨していた可能性は当然ある。カリフとスルタンの関係性に近いと言えるだろう。或いは教皇カトリック信徒の国王の関係性。つまり、実際の権力者はガミラス総統、その総統に正統性を与えるのがイスカンダル女王。そう言う関係性でも不思議はない。

 この想定の場合、自爆装置埋め込みの妥当性がなくなってしまうが――無理やりこじつけるならば、聖地イスカンダルが敵にわたるのを避けるべく自爆装置をあらかじめ仕込んで、どうしようもなくなった時に自爆する。と言うような事になる。

 ある意味破滅的、刹那的な発想だが……スターシャが守と結ばれるまでのあの独特の価値観はこの想定に一定程度妥当性を付与してくれる。

 

 装置の存在する理由だけならば簡単にでっち上げられる。が、本来は自爆装置設置の部分で一本スピンオフ作品が出来てしまうレベルであり、それを――すっ飛ばして、急に話を終わらすのはっきり言って乱暴

 他方で、これだけ危険な代物であるから、自爆装置が遠隔でないのは簡単に説明が可能。最終手段故、しかるべき立場のイスカンダル人でなければ始動できない装置――これはある意味当然の処置だろう。うっかりとかふざけ半分で星が爆散してはたまったものではない。だから生体認証が必要、という事にすれば合理性は確保できる。方法は恐らく、コアの熱を輻射して鉄を光崩壊させて爆発に追い込むのだろう。

 ただ、根本的な問題として……自爆装置が内部に組み込まれた惑星という時点で、万が一事故が起きたらどうするんだという事を考えると、非常に合理性の薄い設定と断じざるを得ない。あぶねぇもん。メンテの方法もわかんないし。

 

 

 非常にストーリー展開として必要性に欠けるシーンだったことは間違いない。何より、このシーンに至るまでの経緯やこのシーンを成立させる状況そのものがかなりご都合主義的。或いは、極めて限定的で妄想レベルの話を織り込まなければ妥当性が確保できない。

 これらの事を鑑みるに……これらのシーンは物凄くラフな、肩の力を抜いて観賞する必要が有るだろう。そうでなければ私のように憤慨というか、非常に残念な気持ちで視聴を終えることになるだろう何回も見たからもう慣れたけどね。