旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ストーリー考察Ⅴ 地球軍基地全滅


 ウラリア戦役において地球は基地全滅の憂き目にあった。
 だがそんなことがあり得るのだろうか――考察しなければならない。

 

 

 描写として、防衛司令部は次々とそれぞれの惑星基地との通信が途絶し状況が把握できなくなった。その原因は暗黒星団帝国が放ったハイペロン爆弾である。光線なりが発せられることでその状態に陥ったが、これが指向性の高いものであることは古代の乗った有人パトロール艇が無事であることから推測可能。

 これらを前提とする。

 


 全滅の要因
 1:ガンマ線バーストなどの攻撃
 2:無酸素状態の気体の吸引
 3:酸素飽和の気体の吸引
 4:極低体温

 

 1は案外あり得ない。だって物理や電磁的に装甲を施されているだろう基地司令部を突破する放射線があるとは思えない。少なくとも、基地司令部全体が崩壊するような攻撃は無理。通信設備部分が損傷を負う事はあるだろうが、何層もの分厚い装甲板と岩盤と場合によっては飲料や下水などの水の層で守られた地下は絶対大丈夫。

 ガンマ線バーストクラスであった場合は、ミューオンが水深1.5キロと岩盤800メートルまで到達するため正直意外ときつい。が、ガンマ線バーストは容易にぶっ放せるものでは無い。ガンマ線バーストとそれによって励起されたプラズマ状粒子が周辺域を漂うため、発射直後にその域を通過しようものなら、宇宙船は大変な損害を負いかねない。しかし、古代のパトロール艇が被害を被っていない事からかなり影響圏を絞れるらしい。そう考えると、放射線ガンマ線バーストの類で全球的に基地を破壊することは常識から言って不可能


 2は体内の酸素濃度を維持しようと血流を増加させ、結果無酸素血液を全身に回してしまいショックに陥る。3は反対に高濃度過ぎる酸素が神経や血管の集中する内臓を酸化的損傷を与える為に中毒状態になり最悪死に至る。という過程を通るだろう。
 基地内部の環境に影響を与えるのであればやはり放射線なりを放つことになるだろう。重粒子線でもぶっ放して酸素を活性酸素にするとか体内の分も活性酸素にするとか色々あるだろうが、結局1と同じ壁にぶち当たる。電気分解だの光による酸化だのを考えてもやはり壁は同じ。

 外部から影響を与えようとすると正直かなり難しい。直後に古代君が突入した事を考えても、あんまり基地内の環境が通常と異なっているというのは――描写と齟齬が生じる為具合が悪い。

 

 4は意外とあり得るパターンというか、いくらでも味付けも逃げる口実にもなる
 基地内の温度管理に支障が生じ、そのためゆえに低体温で要員が死亡した。酸素供給が一瞬で止まって無酸素状態になるより、一瞬で凍死する程の気温になる方があり得る。何せ装甲を隔てた外は無限に広がる宇宙空間、直射日光に当たらなければ極寒だ。迅速に全ての熱を奪う。

 2や3と共通で、ハッキングという可能性というか前提を鑑みた場合――先に述べた2や3よりも基地要員全滅の状況を作りやすい為、この極低温状態にさらされたというのが最も妥当な推測であるといえる

 

 

 ただ、考えなければならない事がある。

 

 

 アルフォン少尉の言葉をそのままうのみにすれば、暗黒星団帝国は人間の体を欲しいがために地球に襲来したはずである。無論、その他資源も欲したであろうが、暗黒星団帝国より地球が確実に優れている資源は人間の体そのもののみ。

 基地要員を全滅させて地球へと駒を進めるのは石橋を叩いて歩くようなもので、ごく自然な作戦遂行である。が、仮に地球制圧に失敗した場合、一切の地球人の体をあきらめなければならなくる。基地要員を殺して、それを放置して地球へ攻撃をしなければらならないが――もしかしたら回収できるかもしれないボディを捨てるという選択を容易にできるだろうか。地球に負ける可能性だって捨てきれないのだから。せめて、基地のボディだけでも回収したい、そう思っても不思議はないはず……

 

 極低温に置かれただけであれば必ずしも死ぬとは限らない。

 1から3まで、どれも案外即死要因であり、古代が発見して脈を取った段階では大多数が本当に死んでいると見て構わないだろう。しかし、脳への酸素供給の止まらぬうちにかつ凍らない程度に速やかな冷却が行われれば理論上仮死状態となり、必ずしも死ぬとは限らない。脳低温療法などの脳に損傷が及んだ場合に出来るだけそのダメージを侵攻させないようにするため、低体温にさせるという方法が存在する。利用の方法や程度によっては回復は可能。低体温からの星間は最長9時間の記録がある。
 暗黒星団帝国の襲撃が日没頃で、夜明けには占領が完了していた事を考えると、各基地にあの巨大輸送艦を派遣して冷え冷え地球人を回収したと考えても不思議はない。

 酒造だって誤診するようなヤマトクルーのレベルを考えると、古代が仮死を死亡を勘違いしても不思議はない。実際、判断はかなり難しいし。

 

 しかし、温度管理を失敗すると凍って細胞がダメになり、使い物にならなくなる。もったいない。結局、極低温状態という手段も貴重な回収可能なボディを失う危険性を捨てきれない。フレッシュな状態で回収したい。

 そこで考えられる可能性が大きく二つある。


 A:実は全滅していない
 B:本当に全滅した
 C:火星基地のみ全滅

 

 Aは無傷という事ではなく、あくまで全滅はしていないというだけ。損害は負ったという事。可能性としては先に述べたように4の選択肢を中心として、基地を無力化させるための1や2ないし3の方法による攻撃。
 作戦上、別に基地を本当に全滅させる必要はない。無力化して黙っててもらえればそれでいい。故に通信を妨害できればそれでいい、組織的反抗を阻止できればこれで十分であり、それ以上の事をする必要はない。

 故にテキトーに潰しやすいところを粉砕したのみ。

 

 Bは……攻撃方法を限定しない限りあるともないともいえない。

 

 Cは火星基地を見せしめとして破壊したという可能性。それ以外の基地はデザリアム星の偽装のように、単なる見せかけで通信妨害をしただけ。連絡が取れず、基地駐留艦隊などは敵襲に備えて基地の守備を固めていたと考える。
 他方で暗黒星団帝国は火星基地を徹底的に破壊し、虐殺し、メガロポリスの住民をも虐殺することで地球連邦政府を降伏へと無理やり追い込むことが容易となる。

 


 上記の可能性を達成するための攻撃方法として考えられるのは以下の通り。
 い:放射線攻撃
 ろ:ハッキング

 

 いの選択肢は最初に上げた死亡等の要因の1に相当する。当該部分で述べた通り、色々に制約が多く多分無理。

 

 は案外現実的で、例えばメルダーズがヤマトと交信した際にファイアウォール(のような概念が製作陣等にあったのかは疑問だが)を突破したが余計な行動をせずに中を覗いた。そこで地球のIT系の技術を小手調べしたという前提が必要。ガトランティスのように、強行で膨大なデータの送受信をしても構わないが、とにかくハッキング出来る可能性は幾らでも想定可能。
 2203年頃には量子ネットワークなんてものが出来ていそうだが、ハッキングしたことがバレても構わないから通信網をインターセプトしようとした場合は、これは防衛策として不十分。しかも相手が量子コンピュータを利用していた場合、必ずしも無敵の暗号ではない。
 ともかく、ネットワークに侵入されてしまえば、その時点で予期しない攻撃を受けた事になる。最悪その時点で生命維持装置を握られたような物で、酸素供給をカットされれば窒息。温度調整の機能がやられればその時点で蒸し焼きか冷蔵。この類の攻撃を受けた場合、防衛装備はあるのだろうが、それが用をなさなかった場合、基地要員は生きるも死ぬも敵次第となってしまう。

 手動で、なにがしかの物理的なシャットダウンが出来た場合はこの限りではないだろうが、反対にこれ以外の方法では本当に戦いようがない。

 

 ハッキングは本当に怖い……。

 


 基地に大損害が出た理由は恐らく、4:急速なごく低温状態に置かれ、ろ:ハッキングにより生命維持装置に異常が発生、A:実は全滅はしておらず火星基地がたまたま古代が通りかかったことにより見せしめ的に被害が大きくさせられた。

 他の基地とは単純に通信がうまくいかず、通信がないからこそうかつに艦隊を出撃させるなりの行動がとれなかった。ヤマトよ永遠にでは――司令部が存在している時点では、その隷下組織は独断では動けず、司令部が占領されていたことが判明した頃にはすでに地球が降伏していた……。


 このままちゃんと
 と説明できる。

 

 常識から言って、全滅はないだろう。むしろ暗黒星団帝国だからこそ、地球軍の基地を全滅させる必要性がない。無論、あのまま処置をしなければ当然死んでしまうし、各基地と司令部の通信を阻害されているし実際に一定程度損傷が出ているため――うまく組織的反抗が出来ない=無力化されている。その意味では、あの時点では全滅と大差なかった。これは間違いない。

 が、実際的に全滅しているとするならばそれは、大いに疑問というか残念なご都合主義だろう。インパクト重視なのはまあ仕方がないとして――後でフォローしないとまずいだろうに……こういう、雑なところが批判されて関係ない整合性のとれた部分にまで批判が及ぶ――ヤマトよ永遠にが大きな期待を持ってみるべき作品ではない、その第一の理由がここにあるといえるだろう。