旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ストーリー考察Ⅵ 行方不明のヤマト(ヤマトよ永遠に)

 

 私ですら擁護しがたいご都合主義が頻出する≪ヤマトよ永遠に≫。この作品にはヤマトが行方不明でその所在を誰も知らなかったというエピソードが登場する。

 こいつはやべぇ……。考察を行い、出来れば合理的説明を付けたいと思うが――失敗したら申し訳ない。

 

 

 ヤマトは何処――旧乗組員の情報過疎

 この作品において、前作でイスカンダルから帰還した古代守は防衛司令部の高官となり、他方で古代進は有人パトロール艇の艇長として太陽系域や各惑星基地の監査であるとか保安任務に当たっていた。他方で島大介無人艦隊の運行責任者として徳川太助と共にコントロールセンター勤務となっている。また、森雪はさらばと同様に長官秘書に近い枠で防衛司令部勤務となっていた。意外なのが、相原も防衛司令部中央指令室のオペレーターとして勤務していた事。

 この時点で南部君、真田さん、山崎さんの所在は不明

 佐渡酒造あの船医用の服を常用し、どっかのアパートの一室で過ごしていた防衛司令部付きなのか、中央病院勤務なのかは不明。しかもなぜかアナライザーと同居。

 

 この人事自体、非常に疑問がある。

 だって戦闘管理者だった古代進や古代守が無人艦隊の指揮官ではないという絶望的な不適所人事だ。守はガミラス戦役の生き残りたる指揮官であるから司令部勤務なのは理解できる。だが、なぜ進にパトロール任務を行わせたのか。同様の任務であれば、前作の坂本であるとかの航空隊員や、それこそ危険に突っ込まない前提の任務なのだから相原だった十分出来る任務。パトロールに必要なのは戦闘ではなく、危機管理と危険の察知と通信任務だ。残念ながら古代進には通信の技量は別に保証されたものではないし、危機管理だって微妙なライン。まだ相原の方が適任といえよう。或いは南部君か。

 しかも、コントロールセンターに島君を置いたのも疑問。彼が実は単なる運行責任者であった――という可能性は別記事にも示したが、やはりそれが妥当だろう。そうでなければ、戦闘のプロが一人もいないという事になり、無人艦隊の管理体制は愚かにもほどがある体制だ。別に戦闘のプロが居て、これと共に3人程度が共同作業で艦隊を運航するならば、多少は合理性が出る。どうしても、どうしてもストーリー上、或いは製作陣の好みで古代君を宇宙に出し隊とすれば……その場合の戦闘責任者はさしずめ南部君か。南部君は射撃の名手だから丁度いい。

 それでも、何がしかの理由でその戦闘のプロがいない状態で無人艦隊に出撃命令を出した守も大分、失態とは言わないが――馬鹿な命令を出したものだ。

 

 さて、防衛司令部付きの人間がヤマトクルーの中に一体どれだけいるか。相原、森の両名はどっぷり中心にいる。島もコントロールセンター勤務であり、防衛司令部に比較的近い。進は守という親族が防衛司令部の中枢に勤務し、守は割と弟に甘い為――ヤマトについてうっかり漏らしても不思議はない。さらに言えば、沖田艦長の再生プロジェクトに首を突っ込める佐渡先生、彼ほど歴代艦長や長官の友人という立場で防衛司令部を私物化している人間はいない。

 そんな彼らですら、知らされていないのである

 山崎さん――彼は機関部員だ。仮にイカルス天文台を機能させる発動機が宇宙戦艦と同様のタキオンエンジンであるとか、場合によっては彼の知識範疇のエンジンであるならば、異動命令は理解可能。しかし、仮に違ったならば……彼は一体どんな理由で異動命令が出たのだろうか? もし、異動命令が出ていないとすれば、彼はヤマト改修プロジェクト中は表向きは退官という扱になるだろう。どんな理由だ……そうでなかったら失踪という事に……こいつぁやべぇ。どう転んでも説明がつかない

 

 どうしてヤマトが秘匿できたのか……旧乗組員が知らされていなかった理由は説明が不可能に近い。というか、私には無理。だって意味ないもの。

 

 

 

 ヤマトは何処――部隊配置

 ヤマトは曲がりなりにも軍艦である。所在不明になるはずはない。所在不明になっていたらそれは事故だ。地球を2度も救った……参謀の言葉を借りれば‟栄光の艦”の失踪は大事故であり大事件である

 

 であるならば、可能性二つ。

 一つは廃艦ないし、モスポール地球防衛軍の古い型に対する冷徹さから見て、割合あり得る話だろう。ただ、「ヤマトはあるんですか」というセリフに対して、モスポールでは整合性が取れない。だって保管してる事は分かっているのだから、あるに決まってる。繰り返しになって申し訳ないが、行方不明になっていたら大事故である。他方で前者だと、今度は国民に対して嘘をついた事になる。

 大前提として、廃艦にしたという事は売却したとすれば、その売却益があるしていないならば、その間の維持費がかかる。売却していないのに益を報告したのなら、一体どこからその資金が出たのか。維持費がかかっているならどこからその費用をねん出したのか。

 何にせよ、一年か或いはもっと短い期間であっても、防衛軍は予算の中に不透明なものを計上していた事になる。これは横領や流用の合わせ技、監査部は一体何をやっているのか……

 

 考えてみれば、ヤマトを収容するために小惑星を一つくりぬいているのだ。その費用は一体どこから出たのか……。天文台を造る為の費用と、小惑星掘削+ヤマト大改修+偽装用の天文台建設の費用が一致すれば、これは隠せる。隠すべきではないが、可能。仮に、大幅に金額が異なれば……本当に監査係は何をしているのか

 無論、架空艦の建造費を計上するという本物の〈大和)建造で使った手がある。しかし、現代にそれをしていいかといえば道義的な疑問はぬぐえない――そのベタな手が実行できるのかという点においても……非常に疑問。

 資金の流れ的に、ヤマトは隠せない。これは間違いないだろう。無理に隠したとして、多分……誰かが自己犠牲的に警察に捕まらなければならなくなる。

 

 もう一つの可能性は、事故で喪失という大本営発表ただし、これには誰かが必ず責任を表面的にとる必要がある為、キャリアを犠牲にしてもヤマトに心血を注ごうという軍人や官僚が必要となる。じゃなかったら誰もかれも責任を丸逃れ、という事になってしまい、防衛司令部がえらく腐った組織となってしまう。

 更に、事故当時のヤマトクルーが殉職している必要が有る。100人余りの宇宙戦士を一時とはいえ記録上殉職させて――戸籍の取り扱いがやべぇ事になる。どんなに頑張ってちょろまかしても、結局イカルス天文台の不透明な建設費用で躓いてしまう。

 どれだけ不法行為をすればいいのか……。

 

 

 超法規的措置、であればどの説明も一定程度は妥当性が確保できるかもしれない。と思ったが……残念ながら、どの説明も部隊配置という面でつまずく

 

 ヤマトの乗組員100名強、加えてコスモタイガー隊。前者は一時的にイカルス天文台所属という事で表面上はごまかせるかもしれない。後者もイカルス天文台を拠点なり宿舎扱いで訓練していると強弁もできよう。ところが、イカルス天文台はあくまで天文台である

 生活班、工作班や通信班はごまかせる。天文台も地球からかなり離れた位置にあるのだから、炊事班や修理のための工作班に当然通信班は必要。機関部も工作班員扱いとして内包してギリギリか……。

 だが戦闘班は無理だ。配属される必要性がない。仮に戦闘班に配属されるべき人員をイカルス天文台に配置すれば、絶対に監査担当は疑問に思うだろう、国会議員辺りに情報が流れれば、だれが首を突っ込んで問題化させるだろう。

 イカルス天文台がアステロイドベルト防衛線を形成する武装基地であるとすれば、全ての問題は突破可能。しかし、あくまでここは天文台……。

 

 

 そもそも論だが、別にヤマトの所在を隠す必要はなかったはずだ。何度も言うようだけど。

 隠す必要性は地球側には一切存在せず、強いて言えば暗黒星団帝国がヤマトを恐れていたという事を挙げられるが――しかしこれは暗黒星団帝国が攻め込んできて初めて、ヤマトを恐れているという事が発覚したのである。

 事前に隠すのは時系列的にちぐはぐ

 ヤマトが地球の希望であるという前提の元、それを強調するために暗黒星団帝国に過度におびえさせ、その希望を発掘する一種の感動を観客とクルーに与える為にヤマトを隠した。まあ、何も考えずに見れば一定程度効果は出るだろう。だが、2度目に見た時はちゃんちゃらおかしいと、ばれてしまうはず。

 

 大人の都合というか、大人の想像力の限界というか……思いついてしまったことは仕方がない。だが、ストーリー展開としてやるべきでは無かった