旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

数値の怪とコンセプトの放浪 ――藍亞とス―ドロメダ、そしてタコドロメダへ――

 

 注意:ヤマト復活編や2202が大好きな方 、小林誠先生の大ファンの方は、この記事で猛烈な不快感を覚える事間違いないので、ご注意ください。

 

 

 

 何でか知らないが、小林メカの特徴として数値設定が非現実的すぎる。という事で今回は復活編から2202に繋がる一連をあぶりだしたいと思う。

 架空とは言えメカデザインのプロの癖に素人に簡単にあぶられる設計しかでいないって何とも……。なお、副題の藍亞はブルーノアの中国語訳っぽい藍色諾亞を短縮したものです。

 

  ブルーノアとスードロメダの共通点

 ある意味でブルーノアの価値を低減させてしまったのはスーパーアンドロメダ、通称スードロメダであろう。一方で両者ともに劇中において全く妥当性の無い描写をされた結果、そのコンセプトさえ疑わしくなった。一方でブルーノアが存在するのにスードロメダのような限定的な戦闘艦を擁する理由はあまりない。

 描写やヴィジュアルが最善で大前提の戦闘艦。互いの存在が互いの合理性を打ち消し合う――これが両者の共通点

 

 ス―ドロメダは艦載機発進能力のみを有する空母の補助戦力や艦隊の防空艦である。旧日本海軍にも存在し、他の国の海軍にも発想や実際の建造をみた艦種だ。

 復活編の地球防衛艦隊にはナンバードフリートがおおむね9個存在するが、そのうちのほぼ半数がこのスードロメダで構成されている。つまり、1個艦隊当たり20隻強が配備されている計算だ。560機の供給力があると推定可能。第一次移民船団の護衛に当たった第1から第3艦隊では合計で1680機と圧倒的な航空戦力。

 完全にブルーノアが埋もれている。そりゃ、ブルーノアは演出前提だものね、スペック的に立ち位置的に必要とされるかどうかは二の次な感じが満載だもの、仕方がないさ。

 この、カタログスペックから入るとやらかしがちな、実際に使おうとしたら何だが使い勝手が悪い兵器という、悪い意味でリアリティがある末路

 

 

 一方、少し癖があるのがスードロメダだ。単艦で火力等々が十分なブルーノアを建造できるだけの余力のある地球が、なぜこのような中途半端な艦を大量に建造するのか。それも、補助艦艇なしで……。合理性に欠ける

 以前から述べているように、スードロメダは戦闘カタパルト艦という類の艦艇。つまるところ、帰還させて予備弾薬の補給であるとか負傷した機体の代わりを供給するとか、そう言った空母ならできることが出来ないが、しかしカタパルトに載せた分だけは発進させられる一回限りの航空戦力供給源だ。

 広大な宇宙空間という特殊な環境であるから、回収はしやすいが――あの格納方式では戦闘中はまず収容できない。航空戦力の差し当たっての、一時的な供給源としては有益だが艦隊が戦線を支えられなければ回収する事叶わず全機喪失の恐れさえある。それも、パイロットが七面鳥撃ちにされかねない。

 空母とは何ぞやという事を、航空戦力を運用する事がどれだけ大変なのかを考えなければならないのだが、ただ欲しいからという理由で整備しようとすると、こういうモノで妥協せざるを得なくなる。デメリットのリカバリー方法を設定せずに大失敗をしてしまうのである。そしてそのまま大量建造という合理性の無さ。ブルーノアを埋没させた挙句のこれだから救いようがない

 


 集大成――タコドロメダ――

 これらは空母型アンドロメダ・通称タコドロメダにも言えること。コンセプトがブレて必要性や有用性が欠け、しかもこいつは伝統の数値設定ミスや頭でっかち化まで組み込んでいるから本当に小林メカの集大成。伝説の完成されたデザインを無理に自分色を押し付けるという点まで込みで、今までの先生の今までの功績をなぞるような、まさに小林誠先生の集大成

 

 まず、一部で声が上がった発進口の問題だが――艦載機発進口は4口一組で上段の幅は艦橋前部から飛行甲板最後部までの1/9に相当する。艦橋より前側と飛行甲板の長さの比率は2対3程度、484メートルの全長から考えて216メートルが飛行甲板部分か。そこから考えて発進口は約24メートル――だと2口分だから1口あたり12メートル。飛行甲板全体の厚さが4メートルから5メートル程度。よって、発進口の高さは恐らく……2メートル程度。

 幅は問題ないのだが、高さが足りない……


 格納か作戦中の整備は飛行甲板の平らな部分内部だろう、2段に分かれているわけでは無さそうなので、ここは高さは十分。縦横96メートルは着艦口及び整備スペースとして利用可能だろう。20メートルぐらいを滑走路部分、或いは中央をがっつり滑走路として開けるという――いくらでも考え方があるが、それ以外の面積は全部整備スペースに使える。長手に3機+横に9列か、長手4機+6列のどちらかの置き方で30機弱を整備可能。この各能力では搭載能力180機に及ばないため、やはり艦橋基部は利用せざるを得ない。というか、ここが基本だろう。

 描写として微妙なのが、第17話の月軌道艦隊集結シーンでは飛行甲板上に並べられているのだが、これがどうも……第5話で見たコスモファルコンでは艦載機発進口は平たいアレを2分割していたが、コスモタイガーⅡでは描写を見る限り1機1口使用のように見える。
 艦橋の直後のターンテーブルは直径36メートル程度だが――あそこに止まっていた機体とコスモタイガーⅡは一回り小さい程度の幅で4機が幅的に留まれる。という事は数値的には概ね一貫しているのだが、何か細部がよくわからない感じになっている。


 ちなみに、タコドロメダが載せていた機体は――コスモタイガーⅡ右舷に41、Ⅰが1機と中央に1機、ターンテーブル上に別のシコルスキーのヘリみたいな機体が2。合計で戦闘機85機+その他2機を載せた様子が見られた。空母常用機数360に加えて170のプラスして、山南艦隊の航空戦力総力は530機この航空戦力は土星での戦闘に一切参加していない何で登場させたの?

 つかさ、ああのシーンの割といい位置に輸送艦ゆき〉と同タイプの輸送艦がったよね? ああいうのが、いやらしいんだって、私物化なんだって。ああいう手前味噌を多用するから信者以外から徹底的に叩かれるんだって。

 


 さて、タコドロメダの格納力だが恐らくそれは艦橋の後方が中心となるだろう。艦の幅は実質が60メートル、艦央部が84メートル、フィン部は飛行甲板幅と同じで108メートル。艦橋後部格納庫は台形の断面らしく、高さ約39メートルの幅は24メートルで全長は91メートルを見込む。
 つまりは長手4機、短手2機、段数は高さを3メートルで計算すると大分ギチギチになってしまうため、4.5メートルとして計算し8段。つまり合計64機。多分、機械式駐車場みたいな形で機体を格納するのだろう。普通に考えれば循環式になるだろうが――一部機体を優先的にとりだしたい場合はエレベータ・スライド式を採用するのが妥当だろう。ロスは大きく16機は最低でもマイナスとなるが、運用はしやすい。確実中の確実を取るならば、32機分のスペースを犠牲にしても有機的な構造を取りたいが、この場合は格納力が完全に半減してしまう。


 一方、第5話でのみ見せたが、元来舷側固定砲だった部分に格納庫があり、上下に2段3列の合計12口を擁する。固定砲のアレにびしっと格納されているものを、射出時のみ倒れたドミノみたいにずらして展開する。大体50弱メートルぐらい、左右にそれぞれ幅が広がる計算になるだろう。意味が解らんギミックだが、厚みとしては十分格納可能。ただ、短めに見積もっても外へと展開する発進口は17メートル程度はある。左右で80メートル程度を占有してしまうため……艦内部はとんでもない事になる。まして、一機飛ばしたら次から次へと飛ばすことは物理的に、次の機体をカタパルトに載せることが出来ないので不可能。ここにおけるのは両舷で24機。
 
 タコドロメダの航空機の総格納力は――発進口の総数は後部飛行甲板24+右舷12左舷12の合計48機。飛行甲板部の発進口は長さから言ってもう一機分あらかじめ格納できそうである為、プラスで24機。更に艦橋基部には64機と、格納可能なのは合計で136機。これに飛行甲板に存置できるのは27機を加えれば合計163機――設定にあと17機足りない。いや、足りない分は元からアンドロメダ級が擁する格納力約30で補えるか。また、飛行甲板の上に平置きで80機は載せられるが、これを加えれば確かに約250機とかなり大量の艦載機を運搬可能。
 ただ、問題なのが発進口が描写ではインチキで済ましたが設定上どうにもつっかえてしまう結構大惨事。更に、舷側の格納部はケツから車庫入れしなければならない面倒な仕様でそもそも格納部としては不適格。

 

 

 さらに、最も重要で忘れられがちなのが艦載機のバックアップ燃料である、パイロットの居住区画であるこれがなければ空母とは言えない、ないのならばただの戦闘カタパルト艦だ

 

 タコドロメダは戦艦としての機能を捨てていないため、艦前半部の武装は概ねそのまま存置されている。こちらの予備弾薬も当然必要。

 ただでさえあまり容量がない戦艦に無理やり空母としての機能を持たせている。主力戦艦を改装したヤマト2の宇宙空母の場合キャパの無い艦を無理に空母とするため艦橋より後方を全て空母機能とし、しかもエンジン回りを大改装して割と厚みのある艦載機格納部とした。艦の規模が小さい為、原作設定値のままではちょっとした軽空母程度でしかないが、ヤマトを“正しい合理的な”数値へとただした場合に合わせた設定値であればこれは十分戦力となるし、燃料補給なども十分可能とみられた。


 だが、アポロノームとアンタレスはコレ……アンドロメダにただ格納庫を背負わせただけ。仮に容量を弾薬補給に割く場合、ただでさえ設定値より小さい格納機数なのにさらに圧迫せざるを得ない。

 人員の面では――444メートルから80メートル全長を伸ばしたとはいえ、ほとんどが飛行甲板。元々の人員200名にプラスして航空要員を600名を見込んでいるようだが……元々、アンドロメダは隠顕式武装やミサイル兵装が多く、スペース的にも元々の人員でも割合丁度いいぐらいの数値。それを大幅に増加させるのだ。狭い事は間違いない。全部単座だった場合は180名ですむが、複座や3座タイプがあれば内容によっては最大で540名、妥当なラインで315名程度だろう。しかしながら航空要員はパイロットばかりではない。整備する人員が必要だ。予備のパイロットやその他を含めて同数を確保しておきたい。つまり、載せるべき最大人員は1100名、最小で400名

 従来部の艦の容量自体は増えていない。増設部に丸々載せる必要が有るのだが――さて、確保できるだろうか?

 

 艦橋後部の格納庫の半分は弾薬庫となるだろう。或いは飛行甲板の内部。何度も述べるようだが、ヤマト世界の宇宙戦艦は結構いろんなものを艦内に収めているからスペースは小さい。まして2202のアンドロメダの場合は旧作より巨大になったとはいえ旧作より武装が増えており隠顕式。艦の前方には居住区を設けるのは難しいだろう。

 結果、タコドロメダは増設部に弾薬庫と航空人員を受け持ってもらうほかない。そうなると、艦載機の格納力がガクンと落ちる。

 

 艦橋後部が格納庫として期待できないため、64機は全てパー。舷側の再格納が難しい24機と、艦底部にあるだろう元来の格納機数30機のスペースを確保するため、飛行甲板内部の格納庫も常時置くことは不可能。というか、発進口以外はほとんど格納不可

 よってタコドロメダの妥当な能力は常用78機+補用24機、最大搭載機数112機、輸送可能なのは200機程度。同時の整備は平時27機、戦闘時100機程度が見込まれる。

 少なくとも常用という形で180機の数値設定は明らかに過剰というかオーバー。度々言及しているが、この限定的な空母能力は、ベースラインは鷹野型給油艦や補給艦〈速吸〉に近い艦という事になるだろう。

 


 そもそもだが、‟決定版”だとか勘違いも甚だしいデザインになった2202版アンドロメダ(個人的感想)

 こいつらですら、30機以上の艦載機を擁する。2199のヤマトと同じ方式であれば、大体艦載機は収容可能で設定より一回り少ない数であれば多分齟齬はない。補助エンジン回りとの関係性の図解によっては木っ端みじんになる設定だが

 故に、元から結構な防空力の供給源であるアンドロメダわざわざ空母に改装して、前線に出しずらい形にする妥当性が完全に消滅している。しかもたかだか倍程度しか供給できないのだ面倒な機構をやめて純粋にアンドロメダをもう数隻プラスした方が戦略的にも戦術的にも経済的にも正しいし、合理性がある

 もっと言えば250メートル程度の艦体で15機も載せたら人員機材その他を含めて艦内がとんでもない事になるであろうドレッドノートが大量に存在しているのだわざわざ別個に整備力もない上に航空戦力供給力としても中途半端なタコドロメダを建造する必要性はみじんもないのだ。

 考えてみれば地表での運用は風の影響がもろに出てうまくいかないだろうし、艦橋後部が格納庫では被弾が怖くて安心して司令部は安心して指揮できない。更に、対艦戦闘と航空運用で司令部は2つが必要(普通の空母でも航空管制と航海で艦橋を分けるプランは存在する)になるし、艦隊を率いることが前提であれば、それだけの司令部要員も必要となる。だが、タコドロメダにはそのどの要求を満たせるだけのキャパシティはないのだ。

 

 

 描写と設定が一致しない。別の艦が当該艦の存在意義を棄損する。カタログスペックは優秀だが、それを担保できるだけのキャパシティ確保に失敗。ヴィジュアル重視で合理性がない

 小林誠がただ作りたかった、それ以外にタコドロメダが発生する理由はない。どう考えても必要性の無い戦闘艦。挙句に数値があまりに現実離れしすぎて、SFの範疇ではなくファンタジーの範疇になってしまっている。まさに大先生の作品らしい。

 復活編から2202まで、一体どれだけの時間が過ぎただろうか。残念ながら大先生は全く進歩なされなかったらしい。

 

 幾ら、設計がミスしていても誰も死なないし予算に限りの無い架空のメカを設計するとはいえ……この程度でよくもまあ名乗れるなと、思った次第。