大帝星ガトランティスを探る ・国家体制――国家を覆う白いベール①
私はガトランティスの何に惚れこんでいるかといえば、そのオマージュ性と国家体制のリアリティである。
確かに、ガトランティスの国家体制は明言はほとんどない。不明なものである。
だが、しかし、描写から推測する事が可能なのだ。
国家体制やその国家としての形態が推測できる描写について、以下の通りに箇条書きする。
大帝の敬称が閣下:帝や王の敬称は通常、陛下。公爵等の貴族であれば殿下、宗教界の君主であれば猊下ないし聖下。
〈全宇宙はわが故郷〉:イデオロギーの存在
帝国支配庁の存在:近代的統治機構の存在、あるいは分業制で統治する事の示唆。
ナンバードフリートと、それ以外の艦隊の存在:高度ないし効率的にに組織化された軍事の証左。
ぱっと見は、きわめて強力な帝権を以て自国民と他国を制圧する専制国家に見える。実際、圧倒的な軍事力を背景に全てを跪かせるのが大帝星ガトランティスだ。
しかし、この閣下という敬称は帝にも王にも貴族にも相応しくない敬称なのだ。(単にオリジナル製作陣&2202スタッフの無知ってしたらつまらないでしょ?)
陛下、殿下、閣下とはそれぞれ『宮城の階下』、『殿舎の階下』、『高殿の下』を意味する。要は帝や王は陛下、それ以外の貴族は全て殿下、非貴族出身の高官役人・高位軍人は全て閣下と敬称を付ける。
教皇や総主教は聖下、仏教神道の最高位聖職者は猊下(教皇に対してもこの敬称でも格としては問題はない)、高位聖職者に対しては台下などの敬称がある。
この、最高権力者を閣下と呼ぶ点に注目すると、面白い指摘が出来る。
つまり、ガトランティスは実は共和政である可能性が浮上するのだ。
皇帝の種類
地球上の皇帝には3種類ある。秦、漢、晋、ペルシャ、オスマン。ローマ、神聖ローマ、ビザンツ。ハイチ、中央アフリカ。歴史上様々な帝国が存在し、その君主として皇帝やそれに比定できる存在が現れた。
これらは、時代によって微妙に正確や必要条件や十分条件が変わるが、しかし3つ程度に大別出来る。
天上から命を受けて地上の諸族を支配する東洋的な皇帝
SPQR(古代ローマの正式名称)に源流を持つヨーロッパ的な皇帝
国民から信任を受けたナポレオン的皇帝
東洋的皇帝は天命によるもので王の徳を凌駕する徳と力を以て、地上の全て諸王を統べる、割合に非制度的なを持つ存在である。構造としては存在しているが、伝統の積み重ねとして存在しているが、法的な根拠があるわけでは無い。法を凌駕する天の代行者として端を発するのだ。
中国周辺域的な皇帝は周王の権威を凌駕するために始皇帝が持ち出したもので、あるがペルシャの場合は自然発生に近い。東洋的と言うと中国を念頭に置く人もいるかもしれないが、オリエントだって一応東洋。
オリエント的皇帝は諸王の王と言うのが基本にある。地域にいくつも存在する王を従え、その全てを兼ねうる存在が皇帝(シャー)だ。アケメネス朝から始まるペルシャ帝国は常に連邦制に近い体制を取り、中央集権的なササン朝であっても権力構造が容易に複層化・鼎立状態に陥った。これも、征服先の王位や権力基盤がそのまま残存していたから。
ペルシャ地域だけではなく、インド地域や何ならメソアメリカ地域における皇帝もこの諸王の王を大前提とした皇帝位である。
ローマ的皇帝は、突然現れた訳でも啓示を受けた権力者が言い出したわけでもない。そもそもローマ皇帝は存在しない。今明かされる衝撃の真実。
ローマ皇帝と通称されるこの存在は概ね、軍最高司令官と最高神祇官を兼任する第一人者(元老院で最初に発言する議員の事)の名誉と護民官に由来する拒否権を保有している執政官でなければならない。これらの職をただ一人で保有・行使できる者だけが、ローマによるの世界の支配権を行使することが出来るのだ。
ローマ史に興味の無い方には、意味不明ですよね。
何でこんなまどろっこしい存在が誕生したかといえば、ローマが専制君主アレルギーだったから。初代王ロムルスは名君であったが、7代王タルクニィウス・スペルブスは暴君としてローマ市民にその支配権を否定されて追放された(実際には留守にした最中に締め出しを食った。背景には王個人の気質とは別に、割と民族問題もあったらしい)。
この時からローマは一人の個人による専制を否定し、何重にもトラップを仕掛けて独裁者の誕生を防いできた。
例えば執政官職が2人同時に存在する事。しかもその任期は1年のみ。直後の再選は緊急事態を除きあり得ない。少なくとも、2人のうちどちらかは必ず入れ替わっている。しかも前執政官職というのも存在し、執政官と同様の権限を持つ。状況によっては頭が4つになるというわけである。当然、本当にヤバい状況(戦争で負けている)においては独裁官という職を臨時に設置し、任期は結局1年。
どう頑張っても一個人の独裁体制を築けないのである。これは行政の部分。
立法府である元老院が執政官を任命するのだが、この元老院の権限はきわめて強力で執政官相手だろうが何だろうが政治家相手にはかなり圧倒的な優越的な権限を有す。
行政府も立法府も場合によっては太刀打ちできないのが国民の代弁者である護民官。護民官の有する拒否権は恐ろしいほどの効力を持ち、元老院の思惑など関係なしに一発廃案に追い込める。立法行政の二府に対する司法府としての役割を持っているのだ。
この支配構造は、独裁という劇薬の使用を徹底して禁止することが出来る。発生する可能性すら排除できる。
禁止も排除もできるが……自浄作用が発揮できなければずっと腐ったままになってしまう。世界の状況の変化も関係なしに、政治家同士や組織同士が角を付き合わせるという状況が発生してしまうのである。
それを打開したのがユリウス・カエサルであり、ブレイクスルーをもたらしたのがオクタヴィアヌスである。
ユリウス・カエサルは民意で元老院を脅して、任期の限定されている独裁官を終身制に変更させた。
ただこれはこの男特有の表面に出過ぎる上昇志向が仇となり、王制復活を画策したとされて暗殺されてしまった。実際、彼のプランの内いくつかは血統による支配もあっただろう。しかし、人気に任せて反対派を潰そうとした彼は、共和政派をあまりに侮り過ぎた。何より、8年も(8年しか、が正しい)ガリア征服で元老院を離れていたのは、彼の政治勘を鈍らせたのかもしれない。
オクタヴィアヌスはこの義父の失敗を完全に学習した。
民衆の中にも存在する君主による統治を否定するグループをちゃんと把握していたし、どろどろとした元老院の勢力図もちゃんと理解していた。だから、彼は共和政派を取り込むことに全力を尽くした。だから、あの役職の兼任というまどろっこしい方法をとったのだ。
彼の所有した複数の権限は、それ一つ一つだけではより上位の権限が存在する。
つまり――単なる名誉でしかない第一人者は、護民官の拒否権を超越できず、護民官は元老院のような政策審議であるとか行政官の選任には参加できない。
神官の長といえる最高神祇官は政治的な権限は小さく、政界に対する影響力は小さいが、古代社会において神を無視して事を進めることは不可能。
軍最高司令官に限らず軍司令官は元老院議員が立候補で国境地帯へ出動するが、ローマ本国内に帰還する前に必ず軍を解体する必要が有る。だが、治安維持には軍が必要、荘園拡大には領土が必要だが軍によって帝国を拡大しなければならない。
執政官には任期=ローマの法という最高の権力が立ちはだかる。前執政官や独裁官相手には権限を行使し様にも同格で、どれもこれも任期を覆すことはできない。
しかし、これらが一人の人間に集まれば、どうなるだろうか。役職の権限を否定できる別の権限を、同一人物が持つとうい状況が発生する。他者の妨害を受けず、自身の権限を肯定も否定も出来る唯一の存在、それが自分自身。
しかも、全部一気に獲得したわけでは無いから、元老院も気が付かない。元老院も馬鹿ではない。だがしかし、オクタヴィアヌスは内戦の勝利者であり、共和政の擁護者・信奉者として振る舞い、元老院や神々に対し謙虚な姿勢を見せるているこれ以上ない為政者。しかも中肉中背の美男子と、容貌まで加わってその完璧超人ぶりを完成させている。これら全ての要素が、反抗しずらい状況を創り出す……
元老院の中には彼がしくじるのを願ったものも居ようが、しかし彼はしくじらなかった。軍事的にも晩年を除いて、当代最強の将軍アグリッパが完璧に体制を整えていたし、オクタヴィアヌスは元老院をうまくいなし、広く浅くをモットーに税収の確保に成功した。
オクタヴィアヌスが元老院からかすめ取ったものがあるとすれば、尊厳者という称号。つまり、アウグストゥス。
実際的なローマの統治権を一つ上げるならば軍最高司令官、
理念上のローマ統治権を一つ上げるならば間違いなくアウグストゥス。
この称号は基本的に軍司令官職や最高神祇官職を兼帯する形となり、これらを掌中に収めたものは必ず執政官に当選する。だから、アウグストゥスの称号を持つものがローマの皇帝と呼ばれた。
補足すると、元老院から贈られる称号は結構世襲的側面がある。ゲルマ二クスの称号を受けた者の息子もゲルマニア遠征に参加してそれなりに戦果をあげれば甘い基準でゲルマ二クスの称号を受ける。ゲルマ二クスの称号で呼ばれる偉人を輩出した家はかなりの人数ゲルマ二クスの称号を受け取る男子が連なってくるのだ。だから、アウグストゥスも初期においては血統に結び付いて継承されていった。
これが、東洋的な皇帝に重ね合わされる形で認識され、エンパイアの日本語訳が帝国、エンペラーの日本語訳が皇帝が採用されたのだ。どちらの語も元来は統治権や支配権に端を発する意味を持つ。
何が言いたかったかというと、ローマ皇帝は役職である。また、そのどれをとっても共和政に根源を成す。役人としての側面が非常に強い専制君主、それがローマ皇帝なのだ。
もし、ガトランティスが共和政に端を発する帝政であるとするならば、大帝の地位の根源は官僚や国民に奉仕する政治家としての役職と考えられる。
民主主義と皇帝
次は、大帝の権力の根本が民主主義から発生しうるかを考察する。
王政の単純な発展形としての独裁・帝政は実は案外成立が難しい。
独裁的な帝を想定する場合、どうしても手足=官僚が必要。しかし、王政をベースにすると意外に難しい。どうしても役人が貴族になってしまうのだ、これがマズイ。
西洋にも官僚制は存在する。しかし、東洋的官僚制とは違い世襲制なのだ。大抵の場合に貴族が名を連ね、独自の権力を築くことを悪いとは思っていないのだ。君主のカリスマ性や貴族個人の性格により、君主にお仕えするタイプも居るが、それ以外も結構多い。何なら我を強くすることこそが国家への貢献だと思うタイプもいたりするから大変。オリバーレス伯なんかはこれに近い。
この原因は、王と貴族の間にある関係が主従関係や金銭の貸借関係などによって結びついているからである。要は王と貴族とは契約関係の類型。
利点としては、カリスマ性ではなく契約関係であるため、その関係解消が行われない限り安泰と言える。お互いにお互いの存在を脅かさない、その前提が守られる限りにおいては両者とも協力関係になる。これら各種の官職は世襲制であり、階層が固定化されるため王が見張るべき存在は限られ、統治が楽になる。ノウハウはそれぞれの家に蓄積されるため、中央がマルチタスクを発揮して教育を施す必要もない。
が、当然問題も生じる。
最大の問題は貴族の肥大化であり、王権を凌ぐ勢いの貴族誕生も珍しくはない。しかも階層が固定される為、数の多い貧乏貴族はむしろ民衆側につき、裕福な貴族は他国の貴族・王と結びつくため、どちらの貴族も君主に対する忠誠を誓う必要が経済的にはない。これはトップが帝であろうが王であろうが関係なしにありうる危険である。
メロヴィングやカロリング朝は好例。案外、高麗や李氏朝鮮も同じ状況に置かれていた。
しかも、民衆はこれらの背景を認識することなく、鍬を振り上げて王宮に突撃してくるもんだから、いくら王がまともでも、その下の貴族がろくでもなければ一発で国が騒乱の渦に巻き込まれる。で、問題の構造を理解せず破壊するだけだから同じような間違いを民衆自身が犯す。
これらを避けるには、どうしても、東洋的な官僚制度を導入しなければならない。これが無ければ、帝の独裁体制は確立できない。
東洋的官僚というものは元来世襲しないものである。試験によって登用される存在。その任命は形式上にせよ、実際にせよ帝の判断によるところである。
試験によって登用される官僚は帝の望む能力を確実に備えた優秀な人物であり、権力基盤だけいっちょ前な世襲貴族とは格が違う。しかも首を切る切らないは任命権者である帝の一存による。
この官僚が、財力やコネといった武器を所有する貴族の対抗馬として帝の周辺をがっちり固めるのだ。そして高い志や帝への恩返し、あるいは自身の安泰を原動力に彼らは帝を必死に支える。
こちらにも問題はある。つまり人数が多い事だ。
驚異的な量の行業務を、帝とその支配下にある官僚が受け持つのだ。官僚を大量に採用しなければ用をなさない。そうでなければ帝以外の権力や実力者が統治に介入してきてしまう。
裏を返せばこの官僚制度に付帯する専門性やマンパワーが帝に牙をむく可能性が常に存在する。業務にいそしむだけで組織が肥大化するの危険をはらむのだ。この肥大化した官僚機構は、時として帝の独裁を妨げる事もある。官僚が老獪で相手が幼帝だと政治は帝の手から完全に離れてしまう、官僚側が官僚自身の血縁者を集めて独自の“王朝”を築くこともある。官僚同士の反目も中々に危険。
これらの危険因子は国家統治機構の世代交代を鈍化させる。また、宗室の瓦解や最終的には国家の崩壊を招く。中国の南朝系国家がいい例だろう。
君主が国民である民主主義体制でも東洋的官僚が必要なのはご承知の通り。
国民が官僚に求める事は業務に対する専門性や業務遂行の公平性、確実性である。
業務遂行の公平性は全国民を対象に行われる登用試験を用い、純粋に業務としての手続きを通して各地に配置されることによって保たれる。つまり、東洋的官僚でなければこの要件を満たせないのだ。
当然、国民から選ばれた代表が任命権者でなければならないが、それは別の精度の問題。官僚に限って言えば、任命権者と国家の法に従う官僚であれば、それで十分。そもそも、そうでなければならない。であるなら余計、高官は重ねて二代三代がせいぜいの東洋的官僚は丁度いい存在。経済的に弱い官僚を多数輩出するこの制度はなお、丁度いい。
しかし、形式的にも実情的にも、これは皇帝の独裁を支える官僚機構と寸分たがわない体制なのである。
民主主義のバグ
この官僚の任命権者は国民から選ばれる。つまり、国民の代表。ところが、バグが生じる場合もあるのだ。
民主主義の寡頭政的性格=共和制は見事に政治を停滞させる。元々暴走を阻止するモノなのだから、何事もゆっくり進むのは仕方がない。だが選ばれた政治家の質が悪ければ、何も決められなくなる。また、政治家が能力で選ばれるかどうかは選挙民によるところで、選挙民の質が悪ければ選ばれる政治家も外面がいいだけの低レベルな人間が選ばれてしまう。
本来共和政は一定程度の質を保った人間を議会に送り出すのが理念なのだが……その一定程度の質すら担保できなくなるとそこには最早、民主主義の地獄が現れてしまう。
端的に言えば、バカや詐欺師やエゴイストが投票する側にせよ投票される側にせよ、一人でも参加してしまえば途端に機能不全に陥るのが民主主義の弱点なのだ。しかも、詐欺師ほど多数立候補し、正義漢づらする。バカほど何も考えずに投票して正義漢づらする。衆愚政治とデマゴギー。
この弱点を解消できない場合、国民は強烈な不満を政府や議会に対して抱く。ろくでもない議会の誕生は他ならぬ、私を含めた愚か者の手によるものなのにね。
この衆愚政治の担い手は次にどんな失態をしでかすかといえば――政権交代ではない。政権交代自体はまあ、交代先の質も問題だが、悪い選択ではない。成熟した議会制民主主義を用いて来たイギリスやアメリカはそれで長い間、進歩こそ大してしなかったが、日本の様に残念なすっころび方はしなかった。アメリカは最近すっ転んだが……。
衆愚政治の担い手が犯しやすい失態、それは政権交代すら失敗した場合に起きる。
最後の希望すら成し遂げられなかったとき、主義主張が右であろうが左であろうが皆が、金持ちであろうがなかろうが、同じことを頭に思い浮かべる……そう、
独裁者の希求だ。
政治が停滞するのは停滞させようとする敵がいると煽動者が吹き込み、これを解消するには最も機動性のある政治体制を構築するしかないと国民に刷り込む。
最も機動性のある政治体制とは、議会というまどろっこしい立法機関や常にブレーキをかけてくる司法機関をすっ飛ばせる最高権力者の創設でしか実行できない。今まで国をむしばんでいた反乱分子を排除できるだけの国民に対する超越的な権限を有し、全軍を指揮下に置く絶対的な指導者。
それが、カリスマである。それが、独裁者である。
最悪の結果をもたらすか、あるいは最高の結果をもたらすかわからない劇薬を、国民は熱狂の中で誕生させてしまう。これが民主主義の最大の弱点であり、悪癖なのだ。
歴史を振り返ってお分かりの通り、民主主義の方が独裁者は出やすい傾向にある。
ヒトラーは法の網の目をかいくぐりあるいは、ぎりぎりのラインで活動を繰り返し、形式的には適法の範囲で政権を奪取した。しかも民衆はこれをある程度支持し、より恐ろしい外敵に備えた。ヒトラーははっきり言って単体では無能以外の何物でも無い。彼の幕僚・閣僚にひとかどならぬ人物が多数紛れ込んでいたから、ナチスドイツはそれなりに成功を収めたのだ。
毛沢東も主義主張の偏りはあったが、蒋介石よりかはマシという事で支持を集めた。おおむね国内を治めた後は、欧米よりもマシという理由で国民の支持を集め、西側諸国と対峙した。彼は西側から見ればおかしな話かもしれないが、少なくとも中国では国民が求めたカリスマだったのである。あまり、優れた政治が出来たとは思えないが。
毛沢東の対立者である蒋介石もあれはあれで一応カリスマだし、だから台湾に逃げて国民党政権を再建することが出来たと言えよう。何でも自分でやろうとするわ、物凄く自滅傾向が強い上に、それを回りに押し付ける癖があったが。
ヒトラーや蒋介石のようなカリスマ性に頼っただけの、無能な人間ばかりが独裁者なるわけでは無い。
それなりに能力のあったナポレオン1世と3世はそれぞれ、決められない政治を体現する総裁政府、第3共和政を非難し国民投票によって皇帝位を射止めた。
同じく決して無能ではないムッソリーニもまた、中央政府の経済的失策を徹底的に非難。武装組織で勇ましくローマ進軍をし、行動する自身を国民に示すことで政権を取った。王と国民の支持を取りつけた。
ソ連崩壊後、形式として(未熟な)民主主義の中からルカシェンコはかつて、あのプーチン相手に様々な要求を突きつけ、返す刀でEUを脅した。この功績を以て国民に歓待を受けている。当然、プーチン大統領もまた、ソ連時代のような強いロシアを体現することで国民の支持を集めている。
無論、どの独裁者にも反対する者は居るが反対するものと同じ数かそれ以上の数を、同じ熱量かそれ以上の熱量で支持する者がいる。それがカリスマであり独裁者。
別に、狡猾に民主主義を破壊した者ばかりではない。民の中に徹底して潜り込むものも少なくはない。独裁には良し悪しとは関係なしに、傾向として権威主義や全体主義などと言った細分類がある。
国民の支持を受けるベルディムハメドフもまた、全体主義的な政策を推し進める独裁傾向の強い人物だ。独裁者ネタニヤフ首相の後釜だから少し寛容になるだけで物凄くマイルドに見えるだけとも言えるが、熱狂を背景にしてかすめ取ったわけでは無い。一応、統治機構的には正しいやり方で政権を取った。
権威主義系では賢王ジグミ・シンゲ・ワンチュクも独裁と言える。ブータン国民の絶対的な尊崇を受ける君主であったが、彼は極めて開明的な人物であった。が、形式的には独裁体制と呼べる。
この権威主義分類においては実は日本の歴代首相もあてはまる。
余人をもって代えがたいとか、制度上の理由になっていない理由で制度をどんどん個人の為に捻じ曲げる。一面的な見方で規制を岩盤規制と言って敵視したり、政策を乗っ取ったのにまるで自分たちで考えたように見せかけ失敗は全て前の政権のせいにする。国内問題から目をそらすために外に敵を作る。論点ずらしで議論を避ける癖に反論させろとのたまい、結局論点ずらしに終始。国会が進まないのも全て野党のせいであり、野党の存在を単なる邪魔者としか見ていない。野党も野党で、乗っ取ったら今度は与党のやり方をおおむね踏襲するのだからおそろっしい。
これ、結構悪質なパターン。誰かが踏みとどまってくれればいいのだが、与党内野党も結局この負の連鎖を補完する存在以外の何物でも無いから、どうしようもない。これがまかり通るのも結局、決まったことだから。昔からの習慣だから。他似ないから。
完全に権威主義分類の独裁、それもかなり低レベルなもの。
独裁体制とはざっくり、長期に同じ人間が同じ権力の座に居座り、都合の悪い法を法の下に自身の利用しやすい形にすり替える体制。と説明づけられる。だがケースバイケースが多く、それ以上の言い方は難しい。
別に、国民を監視するとか塗炭の苦しみにあわせるとか、そんな話は必要条件ではない。それは十分条件である。何なら、独裁者が嬉々として国民を苦しませる事例は多くはないのだ。ある意味意外だが。
独裁者としての必要条件は――法を平然と捻じ曲げ、国民が望むからとうそぶく事だろう。
長々と書き綴ったが、要点は民主主義の方が独裁が誕生しやすく、一度誕生した場合は、失態をしない限りは極めて長期にその命脈を保つという事。それを言いたかった。
ガミラス兵器群 戦艦(シュルツ艦)――重雷装戦艦――
冥王星前線基地の勇士を率いたシュルツの旗艦であり、ヤマトに肉薄した数少ないガミラス艦の一隻。その詳細を考察したい。
――データ――
艦級名:不明
全長:270メートル
全幅:不明(予想:50ないし60メートル)
自重:不明
武装:大型3連装エネルギー砲塔2基、艦底部中型3連装エネルギー砲塔1基、艦尾小型3連装エネルギー砲塔3基、艦首魚雷発射管12門、艦底部魚雷発射管12門、艦尾魚雷発射管8門
ずんぐりした艦体に飛び出たキノコのような艦橋、理由不明の開口部。更に艦下部と艦首が白く塗られ、反対に艦上部はガミラスグリーンに塗られているのだが、一部茶色に塗られている特殊なカラーリングを施されている。開口部に至っては赤く、ガミラスの目玉っぽいのも側面に見られ……非常に目を引く。
正直な所、シイタケの原木。あるいはなんかのトカゲ。
あれほど画面に登場し、奮闘したのだが……残念ながら艦級名も艦名もつけられていない哀れな艦という側面を持つ。海外では〈Conqueror〉という艦級名を貰っている模様。一方でゲーム版だと〈バードラII〉や〈カンプルードIII〉〈カンプルードIV〉あるいは〈シュルツIV〉が登場するという。
艦内描写
艦内描写は多数あるものの、艦橋部なのかどうなのかが不明。これ、意外に珍しい描写形式で、第一作のガミラスに特徴的。普通舷窓なりが映ってもおかしくはないし、ヤマト世界の艦内描写ではありがちなのだが――一切ない。しかも、広さはともかくとして意外と常識的な高さ。映る外の様子は全てモニター越しであって窓ではない。外観的には2階建ての艦橋なのだが、しかし全く描写らしい描写がない。
説明を付けるなら、シュルツはCICで指揮を執っているという事になるだろう。
シュルツは登場したガミラス人の中でかなり慎重なタイプと言える。大胆過ぎて詰めの甘いドメルや、基本的な事を失念するゲール、猪突猛進型の総統。卑怯・卑屈でお話にならないヒス。そして影の薄いタラン。この中ではシュルツは明らかに常識人だし、普通の指揮官。普通の指揮官がヤマトを倒せるかと言えばそれは別だが、行動原理や作戦プロットは当然最も合理的で効果的で常識的なものが期待できる。そうであるならば、艦橋で指揮を執らないのは当然。だって危ないもの。
ドメルでさえ、艦橋で指揮を執ったかと言えば――ドメラーズ3世に関して言えば艦橋とするには疑問の残る描写だった。ガルマン・ガミラスを除き、ガミラス人の中で艦橋とわかる場所で指揮を執ったのはデスラー総統その人のみ。
CICで指揮をしたとあれば、艦の全長が妥当であるかどうかを計算は事実上不可能。元から270とかなり大型の設定だから難なく配置できるだろうし、二階建ての窓を持つ艦橋も別にオーバーではないのだろう。珍しいよね、全く同じ構造の二段の窓ってさ。
だが、フランスのミストラル級強襲揚陸艦も二段の艦橋である。しかしこの艦は180メートルほどと、いずも級護衛艦よりも小さい。だから当然シュルツ艦よりも小さい。が、バランスも奇怪になるようなことがないから、大丈夫だろう。
第9話で描かれた描写から見ると、CICは中型モニターや各種計器がずらりと並び、その中型モニターには専用のヘッドセット付椅子が付いている。艦橋の窓に見える大型のモニターははやりモニターであって窓ではなさそうだが、描写が一部取っ散らかっているため断言できない。複数同様のモニターがあるのか、一つの装置をうっかり描き間違えたか……不明。
割とみんな立って仕事をしており、ガンツは何度か例のモニターの椅子に着席していたが、シュルツは一度も座っていなかった。全艦・艦隊用の通信(通話)装置があり、直接呼びかけられる模様。指揮通信能力はかなり高い。
艦橋以外の艦内設備は不明で、乗組員が二人並んで走り込めるほどの廊下を持つ。問題は、艦載機を持っているのか否か。
っぽい描写はある。
片側3段4列以上のヤマトと同様の格納庫っぽい場所が描写されている。仮に艦載機だとすれば24機を置くことが出来る。例えば、ゲールが使っていたあの機体であれば――これはBAe ホーク(全長11.86メートル、全幅9.40メートル、全高3.99メートル)と同等だろう。
だから格納庫の高さは24メートル程度、幅は一ブロックにつき14メートル程度ゆえに幅は全体で42メートル、長さは64メートル程度か。
数値の再設定
ほんの少数の艦載機ならば、ずんぐりした艦体であるから運用も難しくはない。何より、地球艦とは異なり波動エンジンと波動砲を接続する経路を考えなくていいのがありがたい。
とはいえ、十分な艦載機運用能力=描写程度の運用能力を確保するには少々足りない。故に再設定が必要となる(強弁)。
戦闘空母や三段空母の数値最適化を行った際の倍率である1.5倍程度に比率を揃える。
全長:405メートル
全幅:90メートル
自重:不明
武装:大型3連装エネルギー砲塔2基、艦底部中型3連装エネルギー砲塔1基、艦尾小型3連装エネルギー砲塔3基、艦首魚雷発射管12門、艦底部魚雷発射管12門、艦尾魚雷発射管8門、大型ビーム砲2門(目玉)
艦載機:24機
機種:不明
艦載機等の能力がかなり比較的小さい為、大して大型化する必要はない。元の値でもずんぐりした形である上に波動砲などの特殊兵装がない為、割合問題なかったのだが、大型化する事により積みこみがより容易になった。
あの目玉が大型ビーム砲であるならば、確かにかなり必殺兵器に近い性能を発揮するのかもしれない。が、劇中未使用なために不明。
艦の性格
この艦の性格は嚮導重雷装艦だろう。何といっても艦首方向へ24門も備えるこの雷撃力。砲も主砲クラスを9門を艦首方向へ向けられるし、副砲も6門指向できる。更に目玉大型ビーム砲まで備え――これはかなり強力な戦闘能力を持っているといえるだろう。
これならば、デストロイヤーと共に突撃をする事も、敵の大型戦闘艦との間に立って味方艦隊への損害を抑えつつ強力な雷撃を行う事が出来る。
個としての雷撃能力の足りないデストロイヤーとは大幅に異なり、雷撃能力が大幅に強化されており通信指揮能力の高さと艦載機運用能力から考えると、どちらかと言えば艦隊の防御を担うといえるだろう。
デストロイヤーは火力も雷撃力もそこそこで、機動力を重視した艦である。
この艦で構成された艦隊のまずいところは、敵艦載機による攻撃や、強力な戦闘艦で編成された艦隊に対しては全く敵わないという事。艦載機より機動力の劣るデストロイヤーは当然、艦載機の攻撃からは逃れられない。火力の高い戦闘艦相手では端っから味方の攻撃が通用せず、敵の攻撃に際して味方の装甲は紙。奇襲や予期しない戦力との遭遇は避けなければならない。当たり前の事だが、デストロイヤーにとっては死活問題。
そこへ、この戦艦が現れたとすれば味方は、敵に勝つことは難しくとも全滅は避けうるし速やかに撤退することが可能だ。搭載している艦載機をスクランブル発進させて防空や簡単な対艦戦闘を行い、それでも突破してくる敵艦に対しては殿として艦隊の後方で踏ん張り雷撃を以て敵を叩く。仮に勝てなかったとしても損害を与えられればそれで充分。
直接の砲戦は行っていないため不明だが、生存性はそれなりに高いだろう。仮に数隻の護衛が付いていれば、ヤバい敵に対しても負けない程度の戦いを敢行し、味方艦隊の撤退を支援できればいい。何なら高速運動して本隊とは別の動きをしても構わないだろう。通信指揮能力は高いだろうから、十分指揮は続行できるはず。
基本的にこの艦が戦闘に参加する場面は味方が劣勢。この艦により損害を最小限にとどめるというのが基本となるだろう。
劇中の活躍。
ヤマト第一作とヤマト2に登場。特に第一作では当然大いなる活躍を見せた。
第一作第8話において反射衛生砲の損壊に伴う冥王星前線基地の喪失によって所属艦隊は離脱を余儀なくされたが、その際の一隻として登場。続く第9話においてはアステロイドベルトに隠れたヤマトを必死に索敵し発見次第味方艦隊に通報、ヤマト史上に残る名演説と共に戦闘を開始した。
しかし、ヤマトの火力とアステロイドリングにより防御に阻まれ指揮下の艦隊は壊滅。シュルツの乗艦であるこの艦のみが残存、だが僚艦の犠牲の元にヤマトへの肉薄に成功。とはいえ、あと一歩のところで体当たりできず。反対に、ロケットアンカーを舷側に撃ち込まれ軌道をそらされ、砲撃のチャンスもなく小惑星に叩きつけられた。
確かに……ほとんど登場はしなかったのである。そうではあるが、しかし極めて強力な印象を残した戦闘艦だった。
他方で残念ながらヤマト2では第3話で姿を見せる程度で後は消息不明。この際に印象深い全身ガミラスグリーン塗装を見せた。ただそれだけであり、あのクルーザーと同様にほとんど完全にゲスト出演枠。
ものすごく強引で好意的な解釈をすれば、大マゼランなり小マゼランなりに足を延ばし同法の艦隊をまとめるべく長い旅路についた。という事になろう。
結果として、ガミラスが航空戦を重視しつつある中でこの艦は非常に中途半端な艦載機運用能力であった。雷撃力は非常に高いが、ガミラスの電撃戦が必ずしも有効では無くなりつつある中で、たくさんの魚雷なりミサイルなりを抱え込んだ戦闘艦としては的が大きすぎるし足が遅い。
かつてのガミラスであれば有力な戦闘艦であっただろうが、新たな勢力にもまれる過程で、どうしても力不足な面が見過ごせなくなってしまった。だから姿を消してしまった。描写はこのように纏められるだろう。
重雷装艦という特殊な戦艦であり、他のガミラス艦に比べて倍近い巨体を誇る。旗艦らしく砲撃力も指揮通信能力も非常に安定・信頼に足る。半面、運用の性格は艦隊の後方が主戦場となるだろう。
ところが、対ヤマト戦においては本来の戦闘とは全く異なる運用を強いられてしまった。これは想定外に近い事態だっただろう。しかし、この艦はヤマトに肉薄しあと一歩で直撃できた数少ない戦闘艦である。
影は薄く、以降の作品には殆ど登場せずその価値も正直不明瞭。そうではあるにせよ、シュルツの意地が後移ったような戦い方はヤマト史上に名を刻む戦いであった。
あの戦闘は、この戦艦だからできたこと、と言えるだろう。
ガミラス兵器群 三段空母――護衛的中型空母――
有機的なデザインのガミラス艦隊の中で唯一無機質なのがこの三段空母。しかし、よく見ると結構生物っぽい部分がある。それ以上に、割合に常識的なスペックを原作の時点で与えられたヤマトシリーズでは結構珍しい部類の戦闘艦なのである。
――データ――
艦級名:不明
全長:200メートル(ないし180メートル)
全幅:62.5メートル
自重:48,000トン
武装:右舷・舷側3連装フェーザー砲塔2基、左舷・舷側3連装フェーザー砲塔1基、艦底部3連装フェーザー砲塔2基、4連装対空パルスレーザー砲片舷4基、エレベーター2基
搭載機数:60機
機種:ドメル式DMF-3型高速戦闘機、ドメル式DMB-87型急降下爆撃機、ドメル式DMT-97型雷撃機
ガミラスにおけるいわゆる正規空母。純粋な空母として運用され、複数のフェーザー砲を備えたそれなりに砲戦能力を有する。特徴的なのは飛行甲板が4段もある事で、しかもそれぞれが艦載機の運用に寄与する。
見た目的には何枚か引き出した板ガム。空母らしい小さな艦橋と小さなフィン、大きなエンジンノズルが2つと小さなエンジンノズルが2つの、ガミラス艦にしては無機質なデザインで、しかも目玉もない。
ただ、艦橋はよく見るとイグアナっぽい。物凄くイグアナっぽい。
この艦も登場は多いのだが、劇中では全く艦名をどの艦も呼んでもらっていないという何とも表現しがたい扱い。無論、艦名なしの番号呼びの可能性は十分ある。ただ、海外だとTri-Deck Carrier〈Vengeance〉で通っているらしい。また、プレステゲームでも個々の艦名があるらしい。
よかった、本当によかった……。
数値の妥当性
この艦は横幅が結構ある。それ以上に高さがある。だから、多少艦載機を減らせば十分原作設定のままでもそれなりに活躍できる空母になってしまうのだ。
高さ15、幅60、長さ120を確保できればその時点で横5機、縦14機の合計60機と、設定値丸々が乗せられる。60機を8回ぐらい補給できる燃料も15×30×30のスペース=4万3500立米を確保できれば収容可能。
配分としては下層が一部閉鎖式である為この部分に燃料等を格納、中層はほとんど艦載機格納として一部は立体形式を導入。上層は全て駐機場ないし、中層で留められなかった機体を置いておく一部格納庫。これならば十分原作の形状・数値で十分実現可能。
当ブログの趣旨からすると、困っちゃったなぁ……というぐらい、やって出来ない配置とスペックではないのである。
ただ、描写と異なる。ほんの一瞬の描写と異なる。
実は、ヤマト第一シリーズ第21話において、第3空母が艦載機を収容する際に――上からのアングルを見せてくれた。それはそれで素晴らしいのだが、問題は雷撃機4機分ぐらいの幅しかないという事が判明してしまったことだ。
幸いにも雷撃機の数値設定は存在しないのだが、雷撃機があまり小さくても大きくても横幅が木っ端みじんになってしまう。この垂直離陸機……雷撃機にせよガミラスの艦載機群はブラックタイガーとそう変わらない大きさだった。雷撃機がその任務や複座であることを鑑みると他の機体より一回りは大きくて当然だろう。
だが原作設定で割合を考えると、雷撃機は幅が15メートルとかなり大型の機体となる。現代の軍用機の翼幅から考えて一回りは大きい。他方で雷撃機がブラックタイガーとそう変わらない大きさならば仮に10メートル強としても、三段空母の幅は40メートル強とだいぶ小型になってしまう。
設定の方が描写より大きいって珍しい……。
数値の再設定
戦闘空母と同様に1.5倍で十分だろう。そもそも大型化しなくても大した問題はないのだから。戦闘空母の設定の際に、幅と全長をしれっと変更して60メートルの220メートルにしたため、三段空母のベースの値も250メートルの70メートル程度に変更したい。あくまでビジュアルの問題。
となると正確には1.9倍することになる。1.9倍だと丁度いい値になるだろうという予測する。
全長:380メートル
全幅:118.75メートル
満載自重:10,000トン付近
搭載機数:常用80機+補用10機
最大搭載機数:110機、エレベーター2基
機種:ドメル式DMF-3型高速戦闘機、ドメル式DMB-87型急降下爆撃機、ドメル式DMT-97型雷撃機
高さも1.9倍されるため、恐らく80機は十分に積みこめるだろう。ヤマトのそれと同じように立体駐機にすればいくらでもスペースの有機的利用は可能。また、平置きでも十分対応できる。元からまともな数値設定の範囲である為、この辺りは色々ひねる必要性はない。実際に建造するだの、艦内描写を行う時に考えればいい。
搭載機種によって数は大幅に変わり、戦闘機であれば常用90で最大130程度はいけるだろう。反対に雷撃機では常用が60程度、最大で90機が限界だろう。
結構充実した空母になる。大きい事はいい事だ。
ガミラスの艦載機の運用
単一機体の運用は極めて危険だが、極めて効率がいい。
危険な理由は一隻失えば一機種をすべて失うから。
戦闘機を失えば、爆撃機は敵の空襲を警戒しながら空襲を行わなければならないし、雷撃機に至っては出撃できない危険が出てくる。爆撃機を失えば、雷撃のみで、攻撃のバリエーションがなくなる。そもそも雷撃の成功が必ずしも高くないとすれば、当然相対的な火力は下がる。雷撃機を失えば、決定力不足に陥り敵を撃破できない可能性が出てくる。
メリットは整備がしやすい、パイロットや機体の融通をする必要がない、最大限格納庫のキャパシティを使えるという事だろう。
複数機体を組み合わせた場合、まんべんなく乗せなければならないが、大型の雷撃機は必然的にスペースを取る。雷撃機を十分な数載せようとすると、他の機体を収容できたはずのスペースを圧迫しかねない。単座と複座では必要なパイロット数も異なる。
だが、これを単一機種で行えば何の心配もなくなる。キャパシティを最大限生かし、他の機体を圧迫することなく、みっしりと積みこめる。パイロットも複座なり3座なりを想定してあらかじめ建造しておけば、戦闘機専門空母の所属部隊パイロットは非常に快適に過ごせるだろう。個人スぺ―スの問題で悶着も大して起こらないだろう。整備する側も、それぞれの機体に特化し、載せる兵装も特化すれば。専門性を徹底的に高めたプロフェッショナルだけで構成することが可能。
メリットを取るか、デメリットを取るか。これは指揮官の判断だろう。
戦闘空母の記事でも述べたが、ガミラスは艦載機の運用に関して比較的消極的であるといえる。まんべんなく配備して艦艇喪失に伴うリスクヘッジを行わないというその姿勢自体が、空母を基幹戦力ではなく補助戦力として捉えていると表現することが出来るだろう。
ドメルは艦載機戦を行うために3隻の三段空母を呼び寄せ、さらに戦闘空母を呼び寄せた。ハイデルンの発言から察するに、ガミラスでは空母の集中運用はあまり多用されないのだろう。少なくとも、弱勢な敵相手には行わない運用と言えるのだろう。
広大な宇宙において、敵を発見するのも攻撃するのも比較的多数艦船を用いて行われると考えて不思議はないだろう。つまり、敵は常に大勢で襲い掛かってくる。そのような敵に対して航空機によって打ち破ることを考えた場合。1隻当たり60機というのは十分な数とはいえず、それがたった一隻かそこら程度というのは不足というほかない。
しかし、全機を直掩に回せれば十分防空任務を受け持つことが出来る。前進して敵機を迎撃し、艦隊は後進して直掩機から距離を取った上で対空戦闘を行う。そうすれば非常な数の相手でも対処は可能だろう。
全機を水雷艇の様に補助戦力として考えたならば、艦隊と連携させる形で攻撃を行えば、敵艦隊に一切の休息を与えずに攻撃を行い続けることが可能。物理的に攻撃が大した事なかったとしても、心理的な攻撃をすることが可能。
しかし、基幹戦力とした場合は圧倒的に数が不足している。
我らガトランティスは端っから無駄に近いとわかった上で第6遊動機動隊の艦載機を送り出したし、本気で戦う時には66杯を以て機動部隊を編成した。
暗黒星団帝国は中間補給基地に多数の空母を擁し、空襲を準備していた。
ボラー連邦は艦載機の使い方がガミラスと似ている上、一隻当たりの艦載機数が恐らく大した事のない――それどころか、舟艇を発進させているため軽空母や揚陸艦の側面の方が大きい――のである。しかし、その代わりにバカみたいな数を多量に集めてドボドボ投入していた。使わなかったとしても一応揃えていた。
それにも関わらずガミラスは3、4隻程度で集中運用扱いという事になっている。
しかも、戦闘はドメルを除いてみながバラバラと艦隊の戦力補完としての活用であるから、そもそも航空戦力を非常に軽視しているという言い方になってしまう。頑張って贔屓しても、あまりガミラスは艦載機戦が得意とは言えないだろう。
この傾向は結局ガルマン・ガミラスにおいても変わらず、艦載機はヤバい敵相手に使う飛び道具という扱いのまま。味方艦隊を安全圏に置いたまま戦うツールというより、あくまで敵を叩くためのツール――それも戦闘艦より一段劣るか、癖のある兵器。そういう扱いなのだ。
仮に空母を北部方面艦隊が擁していたならば、グスタフ中将もボラー艦隊に突入する事なかったのに……。特に戦闘空母だったらよかった。
三段空母の運用
火力の低い三段空母は、出来るだけ敵艦隊から遠ざけなければならない。どう見積もってもデストロイヤー以下、フェーザー砲であることを高く評価しても、戦艦クラスとは言い難い。そんなこの空母が砲戦距離にあっては火力にならないどころかウィークポイントにしかならない。しかも、どこに被弾しても重要区画をかすめる、砲戦に参加させるには最悪な設計であるから、一発被弾すれば即大損害。下手をすれば七色星団決戦で見たように、艦隊が誘爆して全滅しかねない。誘爆しなかったとしても。対ゴルバ戦の様に、爆発して僚艦にぶつかるという事は覚悟しなければならないだろう。
故に三段空母を含む艦隊は出来るだけ敵艦隊から逃れるような戦闘にならざるを得ないし、場合によっては三段空母を少数護衛を付けて離脱させなければならない。
艦隊防空には使えるし、どっしり構えた戦闘にはぜひ参加してほしいが、ガミラス特有の電撃戦において三段空母は若干邪魔……。
劇中の活躍。
初登場はヤマト第一作の21話。グリーンに塗られた戦闘機専用の第1空母、パープル系に塗られた爆撃機専用の第2空母、スカイブルーに塗られた雷撃機専用の第3空母の3隻がドメルの元に集った。更に戦闘空母と指揮専用の円盤旗艦を以てドメルは起死回生のラストチャンスを掛けたのである。翌第22話で見られたように、空母集中運用はガミラスでも珍しいらしく、しかしドメルの目論見通り非常に有効に機能した。しかし、ドリルミサイルの反転により艦隊は壊滅してしまった。
次の登場はヤマト2の第3話。ガミラス残存艦隊の一隻として参軍し、デスラー総統と共にテレザート前面域へと進出した。第12話ではデスラー艦の隣に陣取って陣形を形成、24話においてはタランの発案で臨時の旗艦として呼び寄せられ、総統は移乗。
新たなる旅立ちでは画面に出ずっぱりだった。ガミラス本星にてガミラシウムを勝手に採掘していた暗黒星団帝国に奇襲を仕掛ける為、デスラー戦闘空母と共に突入し砲撃戦を展開。続くイスカンダル追走の最中に受けた奇襲で一隻が飛行甲板を一機に打ち抜かれて爆沈。イスカンダル降下後も雷撃を受けて一隻爆沈。ヤマトの救援を受けて再び飛び立ったガミラス艦隊は自動惑星ゴルバに対して突撃を敢行、三段空母も艦載機を全て送り出した後に突撃を敢行するも敵わず爆沈してしまった。
最後の登場はヤマトⅢの第16話。回想シーンで総統の旗艦である戦闘空母の周囲を固めていた。これが最後の生存確認である。
他方で、2連3段空母なるものも登場しており、その価値自体は損なわれていなかったとみられる。
三段空母は元から無理なスペックでは無かった。そのスペックや運用状況から、戦力としての期待値はかなり限定的である可能性も指摘である。その限定的な運用であれば、なおの事原作のスペックのままでも十分現実味がある。戦闘空母と比率を揃えて大型化すれば、一隻でもかなり防空を確固たるものにできる能力を付与することが出来た。
戦闘空母と違い、三段空母はガミラスにとっては比較的使いづらい戦闘艦なのだろう。しかし、味方が苦手な航空戦力を多用する敵勢力と何度となく交戦する羽目になったガミラスにとって、この三段空母は皮肉にも欠かせない艦艇となってしまった。
特に、ガルマン・ガミラスという新たな勢力を形作るまでの、その礎としては欠かせなかったのだろう。そして、この新しいガミラスで更なる発展を遂げることになるのである。
ガミラス兵器群 駆逐型ミサイル艦
ガミラス艦艇の中で恐らく最小。少なくとも艦としては最小であろう。しかも宇宙戦艦にしては珍しい前方への武装が限定的で指向がほぼ不可能。いびつと言えばいびつ、意味不明と言えば意味不明。
そんなミサイル艦について考察してみたい。
――データ――
艦級名:不明
全長:不明
全幅:不明
自重:不明
武装:大型エネルギー砲2門(目)、小型エネルギー砲4門(目)、艦尾不明砲塔1基、フィン部魚雷発射管・片舷1門
かなり小型で、細身の艦体。基本的なデザインはガミラス艦と共通だが、やはり主砲塔が艦後部にしかないというのが非常に独特。主砲塔は結局何が何だか不明で、支持架二本と十字発射口を備えた単装砲という、意味不明。なんなら3連装フェーザー砲に書き換えられているシーンもあるため、正直そっちの方が見る方も描く方も考える方も楽。
クルーザーよりも小型ではあるが、割合に似た形状の艦橋。ただ、こちらはドイッチュラント(後のリュッツォウ)に近い。砕けた表現をするならば、全体としては日本昔ばなしの子供がトノサマガエルに乗っかったみたいな感じ。艦橋デザインがあの子供の頭っぽいからつい……
大して活躍もしていないのだから、他の艦を差し置いて名前なぞあるはずもないとは思っていたが……やはりなかった。ここまでくると逆に、無い事に期待してしまうレベルだ。海外では〈Eradicator〉というクラス名で呼ばれているらしい。
ミサイル艦、その武装
恐ろしいのは砲撃力の無さ。艦首方向に対する砲撃は目玉の大型ビーム砲にひたすら頼るしかない。しかも、大型と言ってもこの艦の艦体に比べて、という事だ。結局小型でしかない。射撃の形式は他の艦の大型ビーム砲と同じなのだろうが……これはほとんど火力がないに等しいのではなないだろうか。
大型ビーム砲がいざという時にぶちかます下方であるとすれば、このミサイル艦は常にいざという時という事になってしまう。ちっこい目玉4つがもう少し汎用性の高い火砲であれば、もしかすれば火力として信頼できるのかもしれないが……正直よくわからない。
無論、小型の艦体に無理やり多数の砲を設ける必要はないし、無駄所の話ではない。だが、だったらパルスレーザー砲でも載せてあげればいいのに……。不明の砲塔も結局背後に背負っているため、艦首方向の戦闘には全く用をなさない。何がしたいのはちょっと意味不明。
ミサイル艦と言うが、ミサイルを発射したシーンは私の記憶には無い。
一部のゲームでハッチを開き、そこからバーッとミサイルをぶっ放したらしい。まあ、それが妥当な所だろう。ハープーンとかタータ―とか(例えが古くて申し訳ない)を堂々と載せられるよりかは、リアリティがあっていい。
小型の艦体であるからそう多数のミサイルを抱えるわけでは無いだろうし、デストロイヤーやクルーザーより高速であろう。これって単なるミサイル艇でしかないのだが、ミサイル艇は高速で奇襲的に襲撃するのが特徴。そのための大火力をミサイルに頼るのは、ごく自然。
ミサイル艦という存在自体は結構合理的でリアリティのある設定ではないだろうか。火力や配置が不安だけど。
駆逐型ミサイル艦、その名称
駆逐型ってなんだよ。普通にミサイル艦と名付けない理由がない。
まあ、無理やり理由を付けるとすれば……ミサイル艦にも種類があり――高速型ミサイル艦、砲撃型ミサイル艦、警戒型ミサイル艦、多用途型ミサイル艦、偵察型ミサイル艦、護衛型ミサイル艦、コルベット型ミサイル艦……等々の型が複数建造され、運用されていた。と説明をすることが可能だ。
だが、そんなに種類があっても意味があるとは思えない。
結局、ミサイルの量が一番多くなりそうな駆逐型がミサイル艦のベーシックとして成立したとするのが普通だろう。火力が高ければ、敵を牽制する目的でコルベットの様に使用することも可能だろう。
逆に他の型が流行る理由が見つからない。
だってほかの艦に任務を任せた方が確実で安全だもの。
全長の推定
艦の全長は結局不明。恐らく、原作設定値は72メートルぐらいだろう。これはデストロイヤーの最小設定値であると同時に、デストロイヤーの約半分の全長。あんまり並んだシーンがない故に推測することも難しいが、大体この辺りなのだろう。
数値の再設定を考えても、デストロイヤーより一回り小さい程度の値に収まればいいだけだから……1.9倍にしてしまえばいい。
全長:72メートル(原作推定)/136メートル(再設定値)
全幅:28メートル(原作推定)/40メートル(再設定値)
自重:7000トン(原作推定)/1,500トン(再設定値)
武装:大型エネルギー砲2門(目)、中型エネルギー砲4門(目)、艦尾不明砲塔1基、フィン部魚雷発射管・片舷1門
興味深いのは結構艦橋が狭い事。普通の旅客機のコックピットと同じぐらいであり、二人で操艦を行う事だが、他の艦とは違い最下級と思われる人物による。ヘルメットをずっと着用し、まるで戦闘機の操縦のよう。
やはり、原作設定値は72メートルとジャンボジェットと大差ない全長が一番しっくりくるか。
劇中の活躍
ヤマト第一作において登場。第9話にて冥王星前線基地の僚艦と共に突撃を敢行するも、ヤマトに届かず。以降、出番はなかった。
ヤマト2においても登場、第3話においてデスラー総統の元へはせ参じた。が、以降は出番がなかった。これは、正直大人の都合だろう。説明しようと思えば可能だが。
新たなる旅立ちにおいても出番はなく、ヤマトⅢにおいてもその姿は――私は確認し損ねた。このままフェードアウトするかと思われたのだが……
何と、ヤマト完結編において大活躍を見せる。
ガルマン・ガミラス滅亡の危機と友人の危機の二つの危機を抱えたデスラー総統。そして彼は一刻を争うヤマトのピンチに対して艦隊を率いて駆け付けた。
その艦隊を構成していたのはこの駆逐型ミサイル艦だったのである。今まで完全に端役以下だったこの駆逐型ミサイル艦が艦隊の中核をなし、2代目デスラー艦の周りを固めていたのである。そして、ディンギル岩石ロケット群にデスラー艦と共に突っ込んでいった。今までほとんど使ってこなかったあの大小ビーム砲を盛んにぶっ放しながら邪魔者共に突っ込んでいったのである。
結果、自身も壊滅してしまったのかは不明だが、少なくともディンギルを壊滅させたのである。最後の最後で大活躍を見せたのだ。
駆逐型ミサイル艦は立ち位置からすれば、デストロイヤーの補完艦種となるだろう。デストロイヤーより高機動で雑務をこなし、いざという時の火力補完を行う。平時でも有事でも十分活躍の場を自ら見付けられる戦闘艦と言えるだろう。
ガルマン・ガミラス建国に際しデストロイヤーは第一線からは退いたが、海防艦としてその価値は損なわれなかった。恐らくこのミサイル艦も同様に重武装コルベットとして同様の任務を辺境地で行っていたのだろう。
一見すると意味不明な武装であるが、立ち位置からすれば仕方のない面が見えてくる。一見するとなんだかいてもいなくてもいい気のする艦だが、いたらいたで利用価値はある。そんな不思議な戦闘艦。
しかも、最後に面目躍如の活躍をする。
ヤマト旧作シリーズを通してみた人間にのみ、その価値が判る戦闘艦と言えるかもしれない。
ガミラス兵器群 高速巡洋型クルーザー
デストロイヤーより細身であるが、概ね大型。ミサイル艦より数的に重武装。しかし、出番はより少ない。そんなクルーザーについて考察してみたい。
――データ――
艦級名:不明
全長:不明
全幅:不明
自重:不明
武装:大型エネルギー砲4門(目)、大型3連装無砲身フェーザー砲塔艦首1基、同砲塔艦尾1基、艦橋基部魚雷発射管様穿孔大型2門、翼部穿孔小型・片舷2門、翼部不明孔・片舷3門
基本的なイメージとしてはデストロイヤーと大差ないが、4つ目小僧。艦橋基部と翼の基部にそれぞれ片舷一基ずつ大型の発射口らしきものがあるのが更なる特徴。
大型の主砲を採用することで、デストロイヤーから艦上部で1基砲塔の削減に伴う火力減少を相殺している。艦橋の形状は突起が左右に大きく突き出ているほかは基本的にはデストロイヤーのそれと同じ。ぱっと見は何となくシャルンホルストの艦橋にも見える。
全体的にはヨツメウオがツノカエルを背負っているようにも見えなくもない。
嘘だろと思うぐらいに色々と設定がない艦であるため、やはりクラス名の設定などあるはずもなかった。ちなみに海外では〈Eliminator〉級打撃巡洋艦と呼ばれているらしい。本邦での呼び方より圧倒的にカッコいい……
クルーザー、その武装
ミサイルないし魚雷発射管とみられる武装を多数擁し、大型の砲塔を載せることで火力を徹底強化。さらに極めつけは大型ビーム砲をデストロイヤーの倍の4門と増強する事により非常に強力な戦闘艦艇としてデストロイヤーの上位互換艦となっている。
だが、自慢の大型ビーム砲は実際にはほとんど使っていない。ミサイルないし魚雷も使っていない。あの舷側に引っ付いているややこしい見た目の砲塔みたいなやつも廃止しているため、実は総合的には火力が低下していると言わざるを得ない。
ダメじゃん……
クルーザー、その立ち位置
となると、この艦の役割は――偵察や味方艦隊の救援という事になるだろう。
決戦仕様ともいえるような大型火砲を多数備え、火力自体はかなり高い。故に基本は、快速と火力によって敵艦隊を強行偵察し、敵の攻撃にさらされた場合は躊躇なく必殺の大型ビーム砲を4連発お見舞いする。
襲われて損害を負い、敵艦隊から逃れられなかった味方艦隊に対し、快速を以て接近し後方から奇襲を加えて脱出口を形成。味方本隊の救援まで掩護射撃を加え続けて離脱を支援、自身もその快速を以て離脱を開始し味方本隊により本気の攻勢を支援する。
と言うような運用。デストロイヤー艦よりも迅速で、ミサイル艦よりも強力な火力支援が期待できる。
ともあれ、あんまり艦の頭数を確保できていないガミラス艦隊では、結局は他の艦と共に舳先を並べて艦隊の総合的な火力を増強することになるだろう。
が、設計時の運用としてはこのような事になるだろう。
高速巡洋型クルーザー、その名称
やはり高速巡洋型クルーザーというのだから、クルーザー一族の中では高速なのだろう。他にも長期巡洋型クルーザーや重雷型クルーザー、砲撃型クルーザーとか偵察型クルーザーとか……高官視察型クルーザーとかが考えられる。
我ながら絞り出したぞ……。
当然、クルーザーというのだから一族全般、デストロイヤーよりかは長期航洋に適しているのだろう。であるならば、その時点でデストロイヤーの他にこの艦を保有する意味は十分に存在する。
問題は、他の型のクルーザーの存在理由であり、恐らく高速以外のクルーザーは役割が他の艦と被ったりして不要と判断されたのだろう。
元から長期航洋なんだから、わざわざより長期航洋にする必要はない。
雷撃もシュルツ艦があるのだから、それで十分。
砲撃はデストロイヤーの領分。
偵察はクルーザー全般に出来る事だから、わざわざ専門にする必要はない。
高官視察だって、そのまま使えばいいだけ。替える必要あるのは内装だけ。
だから高速巡洋型クルーザー以外にクルーザーを建造する必要はないのだろう。そもそも汎用なデストロイヤーが居る時点でクルーザーが必要なのか自体不明。
全長の予測
全長は、結局どれだけだか不明。
艦体はデストロイヤーに比べてかなりスマートで、大型の印象はない。が、一回り大型として……200メートル程度だろう。180メートルだと少々小型すぎる可能性が大きい。200メートルもあれば、十分大型巡洋艦として活動できるだろう。もう少し大型化したとしても230メートルは下るだろう。
全長:200メートル(原作推定値)/230メートル(再設定値)
全幅:70メートル(原作推定値)/80メートル(再設定値)
自重:53000トン(原作推定値)/68000トン(再設定値)
武装:大型エネルギー砲4門(目)、大型3連装無砲身砲塔艦首1基、同砲塔艦尾1基、艦橋基部魚雷発射管様穿孔大型2門、翼部穿孔小型・片舷2門、翼部不明孔・片舷3門
原作設定値ならば、200メートルが妥当だろう。他の戦闘艦を妥当な数値に落とし込んだ場合なら230メートル程度を見込めばいい。ともかくとして、艦内描写がないといっても過言ではないのだから、推定のしようがない……。
劇中の活躍
初登場はヤマト第一作、第9話。デストロイヤーやミサイル艦、シュルツ艦と共に冥王星前線基地所属艦隊を構成する一隻として登場。しかしその砲撃はヤマトに届かなかった。
ヤマト2では第3話にて登場。が、以降の出番はなかった。多分大人の体力の都合。以降、新たなる旅立ちでもヤマトⅢでも完全に忘れられてしまった。
結局のところ、武装だけ見ればデストロイヤー艦の上位互換なのだが活躍からすればどう見ても下位互換。
残念ながらこの艦は活躍する場面が非常に限られている。
全般高機動なガミラス艦隊においてその性能を極限まで高める必要はない。しかも武装の性格を決戦仕様に限定したことで自ら汎用性を削いでしまった。これは非常に悪手で、ガミラスのあまり余裕のない軍事力からすれば無駄に近い。
的確な戦況において投入すれば当然、高い能力を発揮するだろう。しかし、その場面自体がガミラスには訪れなかった。図らずも、訪れなかった。その結果、概ねの期間において脇役以下の扱いとなってしまった。大人の都合以外に説明を付けるならばね。
非常に哀れ。目立つ戦闘艦であるだけに、何だかやりきれない気持ちになる。ガミラスが勢力として強力かつ確固たるものであれば活躍もあっただけに、やるせない……。
ガミラス兵器群 駆逐型デストロイヤー――汎用戦闘艦――
ガミラス艦艇の内、最も出演数の多い戦闘艦。それが駆逐型デストロイヤーである。しかしながら、その名称と言い数値設定と言い結構いい加減。
いい加減過ぎて詳細な考察は困難だが、しなければお話にならない。
――データ――
艦級名:不明
全長:150メートル(ないし72メートルないし180メートル)
全幅:70.2メートル
自重:22,000トン
武装:大型エネルギー砲2門(目玉)、3連装無砲身フェーザー砲塔艦首2基、艦尾1基、舷側3連装砲様兵器4基、翼前部魚雷発射管片舷2門、5連装エネルギー機関砲2基(煙突)
全体的にガミラスグリーンに塗られた戦闘艦で、艦首に据えられた黄色い開口部の目玉が特徴的で、これのおかげで見た目がカメレオン。殆ど翼のような太いフィンで、背面形状はかなり扁平だが、横から見れば割と普通の水上艦。艦橋の形状は後方に突起が伸びているという違いはあるが、イメージ的にはアドミラル・グラーフ・シュペーのそれに近い。 シュルツ艦より二回り以上小さい為、シュルツ艦とデストロイヤー艦の比率は設定のままと同じ程度と言えるだろう。
興味深いのは結構艦橋が狭い事だ。普通のタンカーとかと同じような、そんなに広くはないが狭くもない空間である。艦の運航は二人で操艦を行い、それにプラスして指揮官ないし補佐官が立ったまま指揮なり補佐なりを行う。椅子にヘッドセットはない。
艦級名や個艦名などは不明。あれだけ散々出てきて一隻の名前を貰っていないのだからある意味可哀想である。海外では〈Exterminator〉というクラス名があるらしい。また、ゲーム版だと〈バドールIV〉や〈グノールI〉などがあるという話。
兵装・火力
3連主砲塔4基だが、正面に向けられるのは3基9門。後方に向けられるのは2基6門だが、小さなフィンが艦尾についており確実に指向・射撃できるのは1基3門。意外と少ない。また、目玉のような大型ビーム砲は、正直これが本当に砲であるかは不明確。何といっても、ヤマト第一作の第9話か――あるいは親戚である駆逐型ミサイル艦が行ったディンギル戦の最中にそれっぽく見えるシーンがあるのみ。魚雷なりミサイルなりの発射シーンはないといってよく、砲撃によってのみ攻撃を行うに近い。
あの仰角のほとんどとれない無砲身フェーザー砲に頼った砲撃だ。
これはかなり火力に問題ある設計だが、クルーザーやミサイル艦と共に多数舳先を並べて敵艦隊と当たる為、ある程度は数の力で押せると考えて問題ないだろう。少なくとも戦術と設計からしてガミラス軍首脳部はそう考えているといえよう。
目玉大型ビーム砲の処遇は――恐らく、それほど高くない出力のエンジンをオーバーロードさせないために射撃を控えているのだろう。と説明できる。
高速機動中は当然、エンジンを全力で稼働させるが、その最中に大型のビーム砲を用いることが出来るかは、確かに不明。場合によっては無理かもしれない。あるいは、高エネルギーゆえに一発か二発ほど発射すると発射機構に損傷が発生し、射撃不可能になる為に慎重を期している。だから射撃シーンが見られないという想定が出来る。また、そのような使いにくい砲であるからイマイチ攻撃には用いられない、だから端っから射撃に利用しない。
廃止しない理由は――すでにガミラス艦のデザインとして重きをなしているから、という事もあるだろう。少なくとも、画面に映った時にあの目玉のようなデザインは心理的圧迫を期待できる。いざという時の火砲として、眼状紋として威嚇を行う、あって損はない兵装としてそのまま留め置かれていると説明できよう。古代地中海世界のガレーが軒並み目玉を描いていたのと同じように、お守り的な意味もあるかもしれない。
何でか知らないが、冥王星前線基地からの脱出時とヤマト2での対ヤマト戦勝利後、ヤマトⅢの回想シーンにおいては目玉が真っ赤になっていた。疲れていたのかブチ切れていたのかは不明。
全長の妥当性・再設定
さすがに72メートルという設計はあり得ないだろう。ジャンボジェットと同じ程度の大きさであり、ヤマトとの比率的にもかなり疑問を呈さざるを得ない。シュルツ艦との比率としてもかなりおかしい。
恐らくは三段空母のとの比較から言って150メートル前後が妥当という事になろう。
ただ、出来れば180メートルクラスの艦艇にしたい。
180メートルといえば重巡洋艦や日本のイージス艦クラスの全長であり、艦橋部もたっぷりスペースを取れる。描写からして大して大きくはないデストロイヤーの艦橋であるから、狭くて何の問題も無いのだが――だからといって元からカツカツの値設定にする必要はない。だから多少大きい方の値をとっても悪い事はないだろう。
この艦もまた、三段空母並みにリアリティのある設定値というか、常識的な設定値。
しかも、他の艦の設定値を大型化した場合は180メートルというのは、比較的すっきりと収まりの良い値となる。三段空母は380、戦闘空母は330メートルと大型化し、ているためこれらのおおむね半分以下という値は描写から言って丁度いい。
シュルツ艦との比較では困ったことにデストロイヤーが描写より一回り小さい事になってしまうが、仕方がない。全長の比較が出来るような遠近で並んだことがないのを最大限理由としてこじつけよう。
再設定値
全長:180メートル
全幅:85メートル
自重:42,000トン
武装:大型エネルギー砲2門(目)、3連装無砲身フェーザー砲塔艦首2基、艦尾1基、舷側3連装砲様兵器4基、翼前部魚雷発射管片舷2門、5連装エネルギー機関砲2基(煙突)
驚くほど大型になってしまったガトランティス艦や地球艦に比べ、かなり小型で常識的と言えば常識的な値と言える。
駆逐型デストロイヤー、その名称
駆逐型デストロイヤー、というのは恐らく素直に受け取れば別の型のデストロイヤーが存在するという事だろう。
例えば防空型デストロイヤー、雷撃型デストロイヤー、砲撃型デストロイヤー、高速デストロイヤーとか。元から火力重視の戦闘艦の分類をデストロイヤーとしてまとめていたという説明が出来る。
駆逐というからには、敵艦隊を迎撃する事が仕事になるだろう。
砲撃が専門であり、であるからこそ雷撃もミサイル攻撃も劇中ではほとんどなく、装備としてもほとんど存在していない。結構すっきりした理由づけなのではないだろうか。
ガミラス艦隊の中でこのデストロイヤーは、シュルツ艦よりも高機動で快速、クルーザーより高火力。であるならば、この艦がガミラス艦隊で中核をなす戦闘艦となったのも自然な流れではないだろうか。
雷撃能力は確実にシュルツ艦の足元にも及ばないし、大型ビーム砲の数でもクルーザーには及ばない。しかし、一隻に雷撃能力を重点的に付与しても、艦隊として運用する場合はそう大きな意味を持たない。足が速いだけでは艦隊戦の中核には不足。
他方でデストロイヤーはその両方について及第点を叩き出している。
特に、ガミラス本星を失って以降の特殊な事情に置かれている。
軍艦の補充が難しい――この特殊事情下においては、出来るだけ廉価で建造しやすい艦に焦点を当てて整備したいし、一隻失った時の損失を出来るだけ軽減したい。
であるならばシュルツ艦と同系統の戦艦は兵装が偏り過ぎてて必要ないし、火力しか特徴のないドメラーズ3世もまた、大きな必要性はない。
クルーザーに関してはデストロイヤーより快速という特徴がある為、編入する必要はあるが大型ビーム砲をほとんど使用しないのだから、ベースとして火力の補完であってデストロイヤーと同等の火力を期待しているわけでは無いといえるだろう。
この補充が出来ないという特殊事情があるからこそ、全ての能力がそこそこ高性能なデストロイヤーのヘビーユーズに繋がるのではないだろうか。
特に、火力重視のデストロイヤーシリーズの中で、最も火力の高いあるいは使い勝手のいい駆逐型がほぼ一点買いに近い形で投入された。そう説明できるだろう。
劇中の活躍
ヤマト第一作の第1話から登場、以降頻繁に顔を見せた。冒頭で猛烈な高速艦隊運動を披露した後、地球防衛軍なけなしの艦隊を余裕で撃破。
しかし、初めてヤマトと戦闘を行ったのは第9話において特攻を仕掛けた時であるが、全くと言っていいほど歯が立たなかった。次なる登場は第15話であるが、これもまた直接砲戦による打撃を与えることが出来なかった。結果として、5回ほど登場したのだがヤマトと交戦したのはほとんど2回のみ。いづれも打撃を与えることはできなかった。
ヤマト2においても第3話に登場して以降、度々顔を見せる。しかし、ヤマトの前に現れたのは2回のみであり、しかもそのどちらにおいても砲撃戦を行う事はなかった。
なお、さらばにおいてはガミラスが勢力の体を成していなかったため姿を見せず。
新たなる旅立ちにおいてもガミラス艦隊を構成する主要な艦艇として登場。突撃をかますデスラー戦闘空母や三段空母と共に決死の砲撃を敢行、暗黒星団帝国の護衛艦を多数撃破。続く敵主力との交戦では対ヤマト戦で見せたように火力不足を露呈、全艦喪失の憂き目にあった。
ヤマトⅢにおいても回想シーンに登場。さらに第17話のデスラー帝国危機一髪でも8隻ほどが緊急出動し、前線には立たないとしても海防艦として、その姿を見せた。
以降の消息は不明。ガミラス民族、ガルマン民族を目一杯乗せてどこか別の新天地へと脱出したと願いたい。
案外、ヤマトと戦っていない。
しかも大抵敵に競り負けている……。
デストロイヤーはガミラスにとって象徴に近い戦闘艦である。ガミラス帝国の戦闘艦艇の中では全ての性能をそこそこのラインに揃え、何より建造が容易なのであろう多数を揃えることが出来た。この汎用性は非常な価値がある。
この価値一点を以てして長期間において運用されているのだろう。大部分の戦闘艦が更新されたガルマン・ガミラスにおいても、海防艦として登場。基本的にやられメカの立ち位置から抜け出せなかったものの、視聴者に多大な印象を植え付けることとなった。
この艦は、ガミラスの意外にも常識的な設定を、ある意味で象徴しているのかもしれない。
ガミラス兵器群 戦闘空母――ガミラスの傑作――
戦闘空母は砲戦能力と艦載機運用能力を兼ね備えた強力な戦闘艦である。しかも、比較的小型な艦体でそれを実現しているというのが極めて特殊。
そして、最も描写と設定と能力の関係性が乖離している艦艇。この艦艇の妥当な数値を見付けなければ、他のガミラス艦艇はほとんどすべて、妥当な数値を求めることが不可能になってしまう。ある意味最も重要な戦闘艦なのである。
――データ――
艦級名:不明
全長:200メートル
全幅:32メートル
自重:42000トン
武装・艦体部:大型3連装フェーザー光線(長砲身)砲塔4基、艦橋基部多連装ミサイルランチャー2基、舷側不明3連フェーザー砲塔4基
武装・砲戦甲板:無砲身連装フェーザー光線砲塔4基、固定式無砲身多連装フェーザー光線砲2基、多連装ミサイルランチャー2基
搭載機数:不明
機種:重爆撃機(露天係留)ドメル式DMB-87型ガミラス急降下爆撃機
真っ赤に塗られた戦闘艦で、艦前半部が飛行甲板に艦後半部が砲塔を備えた砲戦部となっているハイブリッド艦。飛行甲板部は双胴式。エンジン部は実際には3つほどのノズルが縦置きになり、再度にもエンジンノズルが付与。フィンの数は極めて少なく、艦橋もかなり小さめ。ガミラス特有の目はないが、曲線を多用しているため、有機的なデザインになっている。艦橋は三段空母のそれと同じで、イグアナ風の見た目。
この艦の最大の特徴は飛行甲板が回転して砲戦甲板が現れる事。通常は平らな飛行甲板とアングルドデッキによって効率よく発進と着艦を行い、敵艦隊との接近時においては砲戦甲板を表に出すことで大量の火砲を有した重火力艦に変貌する。
艦名は呼ばれた事がなく、いわんやクラス名も劇中呼称された事がない。何ならハイデルンは戦闘空母と呼ぶがドメルやデスラー総統は戦艦空母呼びするため、名称が何も一致して居ない。海外ではBattle Carrier〈Revenge〉で通っているらしい。
問題は、この小型の艦体で艦載機を運用できるかという事だ。
数値の再設定
比率から言って150メートル近くは飛行甲板に利用できるだろう。幅も30メートル近く確保できているから、地上でも軽飛行機や短距離離陸機ならば運用できるだろう。ただし、あくまで全部露天係留。格納できるかは――多分無理ではないだろうか。
ほぼ確実に双胴の艦体部が格納庫の基本になるだろう。艦後部の砲戦部は動力部を含むとして、格納不可能区域とするのが妥当。さらに言えば、双胴部も大して格納能力はない危険性がある。
双胴部はざっくり片舷15メートル幅。これが回転して飛行甲板と砲戦甲板を入れ替えるのだからびっくり。つまるところ、デッドスペースが高さ5メートル分発生する。戦闘空母の全高は不明だが、そんなに高くない。特に双胴部は結構低い事が比率的に推測できる。恐らく25メートルがせいぜいだろう。
甲板の装甲を4メートル程度、艦底部装甲も同程度とすると合計8メートル。格納庫の上下も装甲と構造でそれぞれ4メートル程度と仮定すると――デッドスペースと合わせて装甲と艦内構造だけで21メートル近く埋まってしまう。
あっ――無理だ。
原作設定値のままでは、無理だ。
格納庫の確保
肝心の艦載機格納スペースがない。うまくスペースをとっても――5メートル弱、程度の高さぐらいしか取れないだろう。だとすれば艦載機の運用能力に大きな疑義が呈される。
無論、現状でも整備は可能だろうが、やはり格納庫はギリギリの高さよりも余裕を持たせておきたい。ジャッキアップが難しい、或いは限度があるとなると機体底面の整備が困難になることは避けられないし、少し背の高い艦載機に更新しようものならつっかえて収容できなくなってしまう。
発進口ならば、壁をぶち抜く等の工作で幅を確保することは可能だが、高さに関してはいかんともしがたい。機体の更新が難しいというのは、空母としては致命的だ。
再設定が必要だろう。
ずっと黙っていたが――そもそも、艦の幅が描写的には三段空母と同じくらいなのにもかかわらず、半分の設定と言うのがもう、おかしい。ただ、戦闘空母の場合は幅が三段空母と同じでも正直格納スペースがない。むしろ、デッドスペースが増えるだけでスペースが無くなってしまう。
まず、格納庫は8メートル一段で我慢しよう。これを絶対的に確保したい。
初めて格納庫内部の様子を描かれた新たなる旅立ちでの様子でも、決して背の高い格納庫では無かった。元々の艦の全高に8メートルをプラスすると、余裕を持って35メートルほどになろうか。とすると、全体の数値を1.4倍する必要が有る。つまるところ幅は44ないし70メートル、全長が280ないし比率を保って310メートルと大型化。
甲板回転部の幅はざっくり飛行甲板全体の1/3程度と考えると――元々は10ないし16メートル程度、拡大すると15ぐらいから20メートル程度となる。回転に伴うスペースはその半分ぐらいだから5メートルから最大10メートルとなる。
35-10-21=4メートル……格納できなくはないが、ガミラスの艦載機が意外と小さかった場合はギリギリ行けるが――微妙。もう少し大きくしたい。
最も妥当な倍率としては1.5倍と言うのが想定できる。
1.5倍だと全長300ないし330、幅は48から75メートル。高さが艦橋部は75、前部が38メートルとなる。これなら回転部が16メートルから25メートルの範囲内であれば、伴う回転スペースは8から13メートル。最大想定の75メートルと言うのは目いっぱいの幅であるから、普通に考えて70弱から65程度が飛行甲板の幅となるだろう。数値の1/4幅より少し狭い程度で計算すると……
38-8(ないし11)-21=9メートル(ないし6メートル)。
これならあの機構を存置したままで活動が可能になる。
全長:330メートル
全幅:75メートル
飛行甲板長:200メートル
回転幅:16メートル(ないし20メートル)
このデータをもとに、艦載機収容数を仮定したい。格納部は170メートル程度とする。空母部200メートル目いっぱいと言うのは不可能だと思われるから。つまり、長手170メートル、短手20メートル、高さ6メートルが格納庫の予想規模。
搭載機の規模が不明だが、描写からして、ガミラスの戦闘機や爆撃機はブラックタイガーと同程度と思われる。となると、横に1機か頑張って2機を並べ、縦に10機程度を見込む。これは片舷の数だから2倍すると――最小20機、多少多めに見積もって40機程となろう。雷撃機だと大型である為、もう少し数が減るが、戦闘機であればさらに多くの機体が積めるだろう。
次なる問題はパイロットと燃料と武装の格納スペース。これは……。一回か2回程度の補給がギリギリになるだろう。十分な補給を考えると、格納スペースほどではないにしろ、近いだけのスペースを割く必要があるが――この戦闘空母にはそれだけのスペースはない。
戦闘空母自身の弾薬の分も必要だが、それを考えるとますます艦載機用の補給物資格納スペースは少なくなる。
また、大量に航空燃料や爆装を抱え込むというのは、戦闘空母の砲戦も辞さないという運用を考えるとあまりいい選択ではない。うっかり被弾でもしようものなら、普通の戦闘艦より倍以上の誘爆の危険性がある。
これらの想定を踏まえた、当ブログが推奨する妥当な再設定値は次の通り。
再設定値
全長:330メートル
全幅:75メートル
飛行甲板長:200メートル
回転幅:20メートル
搭載機数:雷撃機20機、急降下爆撃機40機、戦闘機50機のいづれかを選択。
機種:重爆撃機(露天係留)、主に急降下爆撃機。
戦闘空母の立ち位置・運用
戦闘空母の運用は艦隊防空と言うよりも艦隊の攻撃範囲増強の面が強い。ヤマト第一作において戦闘空母はヤマトを砲力において打ち破るために招集されたし、ヤマト2においても同じようにヤマトに止めを刺すのは火力によって行われる予定だった。
他方、ヤマト2や新たなる旅立ちにおいて戦闘空母に収容されていたのは急降下爆撃機であり、固定とか専用という事ではないだろうが、これが任務と最も合致した組み合わせではあるのだろう。
ここから考えるに、まず直掩任務は戦闘機の方が当然適任だろうから、艦隊防空の線は薄いといえる。戦闘空母の場合、雷撃機は運用できないかあるいはほんの少数となるだろう。雷撃機の方が打撃力は高いが、それを用いないのは単純に艦載機数をそれなり保有しておきたいという事の表れであろう。つまり、数的に信頼に足る打撃を戦闘空母に求めていると思われる。
戦闘プロットの可能性としては、まず40機弱の急降下爆撃機を送り出して敵艦隊を叩き打撃を与える。しかる後にデストロイヤーやクルーザー、或いはミサイル艦が弱った敵艦隊を急襲し叩きのめす。あるいは、味方艦隊の攻撃が不足であった場合、反対にこちらが攻撃を受ける側になる――その前に艦載機を繰り出してその攻撃を防ぎ、反対に止めを刺す。緊急事態に際しては、艦隊と艦載機の攻撃を同期させて襲撃を効果的に繰り返して絶えず敵艦隊を攻撃にさらす。
この間、この戦闘空母は艦隊と共に敵艦隊に突っ込むも、後方から支援を行うも自由。指揮官の考え方にゆだねる。艦隊の火力が足りないと判断されれば、艦載機を送り出した後に敵艦隊に突っ込み、十分と判断されれば旗艦の護衛なり後方からの火力支援を行う。
戦闘空母はガミラス軍にままみられる、本隊ないし総旗艦は安全圏あるいは、戦いようによっては艦隊全部を安全圏に置いたまま敵艦隊を叩き、その後に十分に弱った敵艦隊を粉砕する。という作戦を遂行するのに非常に役に立つ。艦載機によるアウトレンジないしロングレンジ、艦自身の火力の二つが合わさった戦闘空母はどんな艦隊の不足した能力でも補う事が可能だ。
最悪でも戦闘空母が前進することで、敵艦隊から本隊が逃れるまでの時間を稼げる。戦闘空母自身が退避したとしても、艦載機は航続距離と速力が艦を上回っているのだから恐らく自力で安全圏外に離脱も可能だろう。安全圏に離脱したしかる後に収容すれば、損害は最小限で済む。
ガミラス軍にとってかなり都合のいい戦闘艦と言えよう。
他方で三段空母の場合、出来るだけ敵艦隊から遠ざけなければならない。デストロイヤー以下の火力がせいぜいのこの空母では、砲戦距離にあってはマズイ。しかも、被弾してもペイできるような場所が一切ない。どこに当たっても大損害は免れないのだ。
故に三段空母を含む艦隊は出来るだけ敵艦隊から逃れるような戦闘にならざるを得ないし、場合によっては三段空母を少数護衛を付けて離脱させなければならない。艦隊防空には使えるし、どっしり構えた戦闘にはぜひ参加してほしいが、ガミラス特有の電撃戦において三段空母は若干邪魔……。
火力としての戦闘空母は艦の大きさからして、確実にデストロイヤーと同等かそれ以上。十分砲戦に参加し得る。むしろしてほしい。しかも、飛行甲板と砲戦甲板とが回転して入れ替わる為、少々の被弾で艦載機運用能力が損なわれることはない。火砲も無砲身砲と長砲身砲とミサイルをバランスよく配しており、どう考えても火力は高い。機動力も結構ある。
ほぼ確実に強行偵察はこの艦単独で行う事が出来る。
単独で戦闘を行うとしても、弱勢の敵相手ならば勝利することは無理かもしれないが、損害を与えて作戦続行を断念させるだけの損害を与えることは可能なはず。艦隊に組み込んだまま敵艦隊を取っ組み合う事も、単独で支隊を形成して航空戦を続行することも可能だ。
やはり。いくらでも利用法がある。
纏めると、戦闘空母に求められる事は艦隊の火力増強だろう。あくまで砲戦能力が主で、艦載機運用能力は副次的なもの。火力を最大限発揮し、様々な状況に対応できるような戦力を作り上げる為のツールが、艦載機だった。だから新たちで艦載機の運用が不可能になっても、誰も戦闘続行に躊躇はないかった。ヤマト2でもう一度艦載機を出せばよかったのに、引き揚げたのも砲戦能力と言う要を失ったのをバンデベルが危惧したと説明づけられる。
仮に高性能な水雷艇がガミラスにあったならば、戦闘水雷母艦となっていただろう。
回転機構の意味
回転する意味は簡単で、砲戦する上で飛行甲板が被弾しては空母としては致命的。だからそれを避ける為に回転させてかつ、火力を増す。ガトランティスの超大型空母と同じで、考え方としては当たり前中の当たり前だろう。回転する事に何の不思議もない。
問題は実現の可能性。この甲板の回転機構がスペースを食ってしまうため、せっかく艦載機格納スペースに用いることが可能な艦首を完全に潰してしまっている。この事態について、何も考えずに原作の描写だからと言って済ましてしまうのはマズイ。合理性を確保した上で、数値を再設定するべきだ。そうでなければ、そうであるからこそご都合主義のレッテルを払しょくする事が出来るのである。
飛行甲板全体が回転するのはかなり難しいだろう。半分になって回転と言っても、非常なスペースを食ってしまうため――これは2199方式の出来るだけ回転部分を小さくしたデザインに差し替える必要が有るだろう。あの真っ二つになって回転するのは豪快過ぎて、かなり構造的にマズイ。故に実際は砲列部分のみを回転させて、接合部サイドは伸縮式にして、回転したその都度噛ませて固定するという方式になるだろう。この方式ならば、多少描写からは外れてしまうが最小限の回転スペースで済む。
デッドスペースの蘇生は可能だ。つまり、空間装甲として格納庫を守る為のスペースとしての利用。戦闘空母は空母であるから艦載機運用能力を欠くわけにはいかない。だが、砲戦をしなければならない状況に追い込まれた場合、艦載機格納庫は単なる火薬庫であり、非常に危険。出来るだけ被弾の危険性から遠ざけたい。ビーム砲ならまあ、熱で弾薬が誘爆する危険性もあることにはあるが、内部でそれ自身が爆発することはない。危険なのは実体弾だ。これは飛び込んで、下手をすればあらぬところに隠れて爆発する。不発弾であっても、いつ爆発するかわからないのだから危険だ。この危険から避ける為、デッドスペースのような空間を格納庫の上部に設けて、出来るだけ危険を避けようとした。
そういう設計だと説明は付けられる。
2199において、どういうわけか失敗艦扱いされたが――アレは解せない。無論、正規空母に比べれば圧倒的に収用機数は足りないが、にしたってあの扱いは不当。砲もそれぞれ能力を確定的に評価する基準を設定に盛り込めば別だが、あのリメイク作の場合、巡洋戦艦並みの火力と外見的には言える為……全然失敗作ではないだろう。しかも星巡る方舟ではそこそこの艦載機運用能力を見せた上にそれなりの砲戦能力を示してしまった。
こういうのをご都合主義っていわないのかな?
2202に至ってはあの明らかに建造しづらいであろう戦闘空母がバカスカ登場しているのは、それはそれでおかしな話。
アニメ制作が仕事なんだから、もっと本気で取り組んで欲しいよね。プロなんだから、プロの仕事してほしいよね。
非常に皮肉と言うか、興味深いのは、戦艦大和も同じ性格を持つという事。
大和は何と最大7機の戦闘観測機を収容するかなりの艦載機運用能力を有した“航空戦艦”である。当然大和は戦艦として、その46センチ砲を以て海上を制圧することを期待された戦艦だ。だが、その能力を補佐=落下地点観測や、敵艦の探索のために必要なのが艦載機。7機も載せるのはやりすぎだが、観測機と偵察機をそれぞれ載せていたりと、出来るだけ砲戦をスムーズに行うための方策として整備された。
戦闘空母も恐らくこのタイプ。
対照的なのが同じような形の地球側宇宙空母だ
拡散波動砲を存置しており、主砲塔も2基残しているためかなりの砲戦能力を有している。だが、艦載機を収容するために無理やりに近い形で艦尾は拡張されて大幅に艦容が変更されている。ヤマトのような格納体制であったならば、結構広いスペースを有しているし、何より艦尾を完全に艦載機の為の設備に改装している。
とにかく、艦載機を載せられる事、速やかに発進させる事、速やかに着艦させる事を目的としたと言える設計だ。弱勢な艦隊を鑑み、全体の砲戦能力を削がずに、艦載機運用能力を艦隊に付与したかった、と言うのが妥当な推測だろう。
つまり、この空母は艦載機運用能力が第一であり、それと同じぐらい火力を温存するのが設計の主目的。あの強力な火力は、使用が大前提というわけでは無いという事で――破れかぶれではないが、どうしても敵に勝てない場合に危険を冒して拡散波動砲をぶっ放す。危険を避けきれない場合の為の伝家の宝刀としての拡散波動砲という事。
故にその最善策が、半分戦艦で半分空母だったという事。
劇中の活躍
初めてヤマト作品に登場したのはヤマト第一作、第21話のドメル艦隊集結シーンである。
バラン星の中間補給基地を喪失した責任を問われたドメルに対し、総統がもう一度だけ与えたチャンス。これを生かすべくドメルはダイヤ、ルビー、サイファイヤ、オメガの各戦線より精鋭を選んで自らの指揮下に置いた。このうち、オメガ戦線から招集されたのが戦闘空母、艦長にして飛行隊長ハイデルンの指揮する真っ赤な艦である。
翌22話、七色星団決戦において必殺兵器であるドリルミサイルのキャリアである重爆撃機の母艦として、ドメル艦隊の砲力を担う中核艦として出撃。ドリルミサイルを着弾させ、ヤマトを正面に据えて主砲による砲撃を加えてこれに大損害を与えた。しかし、真田技師長とアナライザーによって脅威を取り除かれたドリルミサイルが反転。磁気嵐とコリジョンコース現象によりハイデルンがドリルミサイルを見落としたため、艦橋に激突・爆発。艦内部の予備爆装やミサイルの誘爆が艦隊全体に大損害を与える結果となった。
ヤマト2において、第3話から全身をガミラスグリーンに染め上げて登場。ガミラス残存艦隊の内の一隻として編入され、テレザート前面空間へ展開した。第11話においてシークレット空間Xに侵入したヤマトを攻撃すべく前進、翌第12話において本格的な空襲を敢行してヤマトを苦しめた。しかし、宇宙蛍の艦内進入を許してしまい砲撃が不可能に。反対にヤマトのショックカノンに追われることとなる。
結果、敗退し指揮官であるバンデベル将軍は射殺されることとなった。艦橋クルーは気にもせず直立していた為、ダジャレ男と同様に全会一致で将軍はいらない男だったのだろう。
後に新たなる旅立ちにおいて、改装とガミラスレッドへの再塗装を行われて登場。艦橋部の大型化とデスラー砲搭載を以て大火力戦闘艦へと生まれ変わった。これは別個に記事にしたいと思う。
最後の登場はヤマトⅢ。一応第10話に懐かしの≪艦隊集結≫をかき鳴らしながら登場する。総統から貸してもらった艦隊を構成する一隻であり、ガイデルが自信満々にダゴンに披露したのである――が、甲板回転はなし。しかもダゴンの甘い戦略によって惨敗。妙にくびれた接合部が特徴的。
他方、第16話において回想シーンで総統の旗艦として登場。大幅に甲板の変更が加えられ、艦首側に2基のガトランティス技術である回転砲塔を設置。しかも運用する艦載機は雷撃機。この艦はかなり活躍し、結果ガルマン・ガミラスの建国に至る。
これも別個に記事を設けたい。
戦闘空母は規模を正しく数値を設定できればちゃんと活躍し得る能力を付与できる。また、戦闘空母の役割を戦艦に絞ることで、その能力を補佐するという限定的な艦載機運用能力を付与することで全ての状況に耐えられる名艦となる。これは、断言できる。