旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

ガミラス兵器群 駆逐型デストロイヤー――汎用戦闘艦――

 

 

 ガミラス艦艇の内、最も出演数の多い戦闘艦。それが駆逐型デストロイヤーである。しかしながら、その名称と言い数値設定と言い結構いい加減。

 いい加減過ぎて詳細な考察は困難だが、しなければお話にならない。

 

 

 ――データ――

 艦級名:不明
 全長:150メートル(ないし72メートルないし180メートル)
 全幅:70.2メートル
 自重:22,000トン 
 武装:大型エネルギー砲2門(目玉)、3連装無砲身フェーザー砲塔艦首2基、艦尾1基、舷側3連装砲様兵器4基、翼前部魚雷発射管片舷2門、5連装エネルギー機関砲2基(煙突)

 

 全体的にガミラスグリーンに塗られた戦闘艦で、艦首に据えられた黄色い開口部の目玉が特徴的で、これのおかげで見た目がカメレオン。殆ど翼のような太いフィンで、背面形状はかなり扁平だが、横から見れば割と普通の水上艦。艦橋の形状は後方に突起が伸びているという違いはあるが、イメージ的にはアドミラル・グラーフ・シュペーのそれに近い。 シュルツ艦より二回り以上小さい為、シュルツ艦とデストロイヤー艦の比率は設定のままと同じ程度と言えるだろう。
 興味深いのは結構艦橋が狭い事だ。普通のタンカーとかと同じような、そんなに広くはないが狭くもない空間である。艦の運航は二人で操艦を行い、それにプラスして指揮官ないし補佐官が立ったまま指揮なり補佐なりを行う。椅子にヘッドセットはない
 艦級名や個艦名などは不明あれだけ散々出てきて一隻の名前を貰っていないのだからある意味可哀想である。海外では〈Exterminator〉というクラス名があるらしい。また、ゲーム版だと〈バドールIV〉や〈グノールI〉などがあるという話。

 

 

 

 兵装・火力
 3連主砲塔4基だが、正面に向けられるのは3基9門。後方に向けられるのは2基6門だが、小さなフィンが艦尾についており確実に指向・射撃できるのは1基3門。意外と少ない。また、目玉のような大型ビーム砲は、正直これが本当に砲であるかは不明確。何といっても、ヤマト第一作の第9話か――あるいは親戚である駆逐型ミサイル艦が行ったディンギル戦の最中にそれっぽく見えるシーンがあるのみ。魚雷なりミサイルなりの発射シーンはないといってよく、砲撃によってのみ攻撃を行うに近い。
 あの仰角のほとんどとれない無砲身フェーザー砲に頼った砲撃

 これはかなり火力に問題ある設計だが、クルーザーやミサイル艦と共に多数舳先を並べて敵艦隊と当たる為、ある程度は数の力で押せると考えて問題ないだろう。少なくとも戦術と設計からしガミラス軍首脳部はそう考えているといえよう。

 

 

 目玉大型ビーム砲の処遇は――恐らく、それほど高くない出力のエンジンをオーバーロードさせないために射撃を控えているのだろう。と説明できる。

 高速機動中は当然、エンジンを全力で稼働させるが、その最中に大型のビーム砲を用いることが出来るかは、確かに不明。場合によっては無理かもしれない。あるいは、高エネルギーゆえに一発か二発ほど発射すると発射機構に損傷が発生し、射撃不可能になる為に慎重を期している。だから射撃シーンが見られないという想定が出来る。また、そのような使いにくい砲であるからイマイチ攻撃には用いられない、だから端っから射撃に利用しない。


 廃止しない理由は――すでにガミラス艦のデザインとして重きをなしているから、という事もあるだろう。少なくとも、画面に映った時にあの目玉のようなデザインは心理的圧迫を期待できる。いざという時の火砲として、眼状紋として威嚇を行う、あって損はない兵装としてそのまま留め置かれていると説明できよう。古代地中海世界のガレーが軒並み目玉を描いていたのと同じように、お守り的な意味もあるかもしれない。

 何でか知らないが、冥王星前線基地からの脱出時とヤマト2での対ヤマト戦勝利後、ヤマトⅢの回想シーンにおいては目玉が真っ赤になっていた。疲れていたのかブチ切れていたのかは不明

 

 

 全長の妥当性・再設定
 さすがに72メートルという設計はあり得ないだろう。ジャンボジェットと同じ程度の大きさであり、ヤマトとの比率的にもかなり疑問を呈さざるを得ない。シュルツ艦との比率としてもかなりおかしい。
 恐らくは三段空母のとの比較から言って150メートル前後が妥当という事になろう。


 ただ、出来れば180メートルクラスの艦艇にしたい。

 180メートルといえば重巡洋艦や日本のイージス艦クラスの全長であり、艦橋部もたっぷりスペースを取れる。描写からして大して大きくはないデストロイヤーの艦橋であるから、狭くて何の問題も無いのだが――だからといって元からカツカツの値設定にする必要はない。だから多少大きい方の値をとっても悪い事はないだろう。

 この艦もまた、三段空母並みにリアリティのある設定値というか、常識的な設定値。
 しかも、他の艦の設定値を大型化した場合は180メートルというのは、比較的すっきりと収まりの良い値となる。三段空母は380、戦闘空母は330メートルと大型化し、ているためこれらのおおむね半分以下という値は描写から言って丁度いい。

 シュルツ艦との比較では困ったことにデストロイヤーが描写より一回り小さい事になってしまうが、仕方がない。全長の比較が出来るような遠近で並んだことがないのを最大限理由としてこじつけよう

 

  再設定値
  全長:180メートル
  全幅:85メートル
  自重:42,000トン
  武装:大型エネルギー砲2門(目)、3連装無砲身フェーザー砲塔艦首2基、艦尾1基、舷側3連装砲様兵器4基、翼前部魚雷発射管片舷2門、5連装エネルギー機関砲2基(煙突)

 

 驚くほど大型になってしまったガトランティス艦や地球艦に比べ、かなり小型で常識的と言えば常識的な値と言える。

 


 

 駆逐型デストロイヤー、その名称

 駆逐型デストロイヤー、というのは恐らく素直に受け取れば別の型のデストロイヤーが存在するという事だろう

 例えば防空型デストロイヤー、雷撃型デストロイヤー、砲撃型デストロイヤー、高速デストロイヤーとか。元から火力重視の戦闘艦の分類をデストロイヤーとしてまとめていたという説明が出来る。


 駆逐というからには、敵艦隊を迎撃する事が仕事になるだろう。
 砲撃が専門であり、であるからこそ雷撃もミサイル攻撃も劇中ではほとんどなく、装備としてもほとんど存在していない。結構すっきりした理由づけなのではないだろうか。


 ガミラス艦隊の中でこのデストロイヤーは、シュルツ艦よりも高機動で快速、クルーザーより高火力。であるならば、この艦がガミラス艦隊で中核をなす戦闘艦となったのも自然な流れではないだろうか。

 雷撃能力は確実にシュルツ艦の足元にも及ばないし、大型ビーム砲の数でもクルーザーには及ばないしかし、一隻に雷撃能力を重点的に付与しても、艦隊として運用する場合はそう大きな意味を持たない。足が速いだけでは艦隊戦の中核には不足

 他方でデストロイヤーはその両方について及第点を叩き出している。

 

 特に、ガミラス本星を失って以降の特殊な事情に置かれている。

 軍艦の補充が難しい――この特殊事情下においては、出来るだけ廉価で建造しやすい艦に焦点を当てて整備したいし、一隻失った時の損失を出来るだけ軽減したい。

 であるならばシュルツ艦と同系統の戦艦は兵装が偏り過ぎてて必要ないし火力しか特徴のないドメラーズ3世もまた、大きな必要性はない

 クルーザーに関してはデストロイヤーより快速という特徴がある為、編入する必要はあるが大型ビーム砲をほとんど使用しないのだから、ベースとして火力の補完であってデストロイヤーと同等の火力を期待しているわけでは無いといえるだろう

 


 この補充が出来ないという特殊事情があるからこそ、全ての能力がそこそこ高性能なデストロイヤーのヘビーユーズに繋がるのではないだろうか。

 特に、火力重視のデストロイヤーシリーズの中で、最も火力の高いあるいは使い勝手のいい駆逐型がほぼ一点買いに近い形で投入された。そう説明できるだろう。

 

 

 劇中の活躍

 ヤマト第一作の第1話から登場、以降頻繁に顔を見せた。冒頭で猛烈な高速艦隊運動を披露した後、地球防衛軍なけなしの艦隊を余裕で撃破。

 しかし、初めてヤマトと戦闘を行ったのは第9話において特攻を仕掛けた時であるが、全くと言っていいほど歯が立たなかった。次なる登場は第15話であるが、これもまた直接砲戦による打撃を与えることが出来なかった。結果として、5回ほど登場したのだがヤマトと交戦したのはほとんど2回のみ。いづれも打撃を与えることはできなかった。

 

 ヤマト2においても第3話に登場して以降、度々顔を見せる。しかし、ヤマトの前に現れたのは2回のみであり、しかもそのどちらにおいても砲撃戦を行う事はなかった。

 なお、さらばにおいてはガミラスが勢力の体を成していなかったため姿を見せず。

 

 新たなる旅立ちにおいてもガミラス艦隊を構成する主要な艦艇として登場。突撃をかますデスラー戦闘空母や三段空母と共に決死の砲撃を敢行、暗黒星団帝国の護衛艦を多数撃破。続く敵主力との交戦では対ヤマト戦で見せたように火力不足を露呈、全艦喪失の憂き目にあった。

 

 ヤマトⅢにおいても回想シーンに登場。さらに第17話のデスラー帝国危機一髪でも8隻ほどが緊急出動し、前線には立たないとしても海防艦として、その姿を見せた

 以降の消息は不明ガミラス民族、ガルマン民族を目一杯乗せてどこか別の新天地へと脱出したと願いたい。

 

 

 案外、ヤマトと戦っていない。

 しかも大抵敵に競り負けている……。

 

 

 デストロイヤーはガミラスにとって象徴に近い戦闘艦である。ガミラス帝国の戦闘艦艇の中では全ての性能をそこそこのラインに揃え、何より建造が容易なのであろう多数を揃えることが出来た。この汎用性は非常な価値がある。

 この価値一点を以てして長期間において運用されているのだろう。大部分の戦闘艦が更新されたガルマン・ガミラスにおいても、海防艦として登場。基本的にやられメカの立ち位置から抜け出せなかったものの、視聴者に多大な印象を植え付けることとなった。

 この艦は、ガミラスの意外にも常識的な設定を、ある意味で象徴しているのかもしれない。