旧作ヤマト考察協会

第一作から完結編まで、旧作宇宙戦艦ヤマトを出来る範囲で現実的に考察するブログです。

戦闘考察XIV・月軌道地球防衛戦(ヤマト2)

 

 月軌道地球防衛戦とはヤマト2における最後の戦い。ガトランティスとヤマトによる、地球の未来を賭けた最終決戦である。

 登場人物全てが死力を尽くして戦う、命がけの戦いであった。

 

 


 ガトランティス側参加部隊:都市帝国→超巨大戦艦
 指揮官:ズォーダー大帝


 地球側参加部隊:ヤマト、コスモタイガー隊全力(3個部隊)、残存第11番惑星派遣隊
 指揮官:古代進、斉藤始

 

 

 戦闘経緯・経過
 第24話ラスト――地球の降伏によって都市帝国は首都洋上へと降下。この無防備な=奇襲をかける絶好のタイミングでヤマトは、デスラー総統からもたらされた都市帝国攻略のヒント、「真上と真下」を元に攻撃を敢行する。

 人類の命運を賭けた一戦


 首都の沖合300キロの洋上にて地球の降伏を待つ都市帝国に対し、大気圏突入直後にコスモタイガーを発進させ、さらにヤマト自身は都市帝国から非常に離れた地点で着水。潜水艦行動で都市帝国下部へと接近を試みる。

 第25話冒頭より――他方で連邦政府の降伏使節は、ヤマトからの通信を受け取った。地球人類の未来のために受諾した降伏――しかし、長官はヤマトが挑む最後の賭けに乗った。彼は首相の反対を押し切り船を反転させ、危険水域から離脱。


 ほとんど同時刻、まなじりを決して戦いを挑むヤマトクルーは都市帝国に対して最後の攻撃を開始した。第一にコスモタイガー隊は高空から上部を空襲、更に呼応する形でヤマトは魚雷を以て下部を雷撃、都市帝国を挟撃したのである。

 コスモタイガー隊の空襲に対しては気流による防衛を試み、効果を上げる。しかし、下部に対して攻撃を敢行するヤマトに対しては対抗する手段が無かった。たまらず都市帝国は浮上、全機能を以てヤマトを攻撃するため大気圏を突破、迎撃態勢を整えた。

 

 全機能を以て迎撃する都市帝国。これに対してヤマトは全機能、コスモタイガー隊を繰り出して攻撃を行うも、有効打を繰り出すことが出来なかった。恐らく、デスラー総統が散々にヤマトをいたぶったのが足かせとなったのであろう

 それでもヤマトは必死に攻撃を敢行、外部からの破壊に対して見切りをつけ、内部からの破壊を敢行すべく決死隊を編成。これを以て都市帝国の機能を内部より停止させる、大博打に打って出た。

 
 残存コスモタイガー隊の全力、残存空間騎兵隊の全力を投入した決死隊。突入以前の段階で歴戦の勇士をはじめとした多数の損失を出し、突入後も多数の損失を出す。

 しかし、隊長の執念とガトランティスの最高幹部らのオウンゴールにも助けられ、都市帝国の動力炉破壊に成功。その機能を停止することに成功した。
 そしてヤマトは持てる全ての力を注いで都市帝国を破壊する。

 

 ――はずだった。


 直後、都市帝国内部から漆黒の艦体を持つ超巨大戦艦が発進。
 第26話――ヤマトを威圧する大帝は、その超巨大戦艦の多数の砲を以てヤマトを散々になぶり、完膚なきまでに叩いた。そして地球にも砲口を向け、超大型主砲の連続砲撃によって地表を散々に抉る。
 その圧倒的な火力を前にして最早ヤマトに、地球に抗う術はなかった。
 


 しかし、そこへテレサが現れる。
 宇宙の平和の為、そして愛しい島大介の故郷を守る為に、彼女自身の最期の戦い。超巨大戦艦に対して、彼女は敢然と立ち向かい、そして刺し違えた

 

 

 描写の妥当性

 戦闘の全体として、手数の無いヤマトにとってはなりふり構っていられない。であるからして、ヤマト側の行動は――指摘のしようがない。

 ただ、指揮権が途中でどっか行ったのはマズイだろう。都市帝国突入作戦の最中、誰がヤマトを指揮するのか。これが不明確なのは最悪中の最悪だ。古代が戻ってこなかったときどうするのか……。

 まあ、さらばでも同様の事が言えるが、逆に幸いなのが指揮権委譲のシーンがなかった事であり、残留クルーの中の最先任士官(さらばでいえば島君辺り、ヤマト2でいえば相原君か南部君)に自動的に委譲したとこじつけられる。というか、そうしないとまずいだろう。そして、勝手に妄想こじつけられる幅を描写は確保してくれた。描き損ねてというのが発端だから皮肉だが。

 

 ガトランティス側の残念な戦闘は、サーベラーとゲーニッツの隠蔽・お手盛り体質。この影響が非常に大きい。だって、怒られるからって理由で普通、動力炉に敵が侵入しても情報を共有しない――などという行動は常識で考えてバカなんじゃねぇか? これは頭が悪いというより、おかしい。

 超巨大戦艦の登場に関して言えば、別に大帝専用の脱出手段であっても、都市帝国の新規建設のための手段でも、いくらでも説明可能である為省く。

 

 テレサの特攻に関して言えば、さらば以上に非常に簡単に説明が可能。つまり、島さんの為。テレザートを以て阻止しようとしたあの時は、まだ島が好きだからこそ生に未練があった。しかし、島に輸血をし、命の灯火が消えようとした――だからこそ、そしてガトランティスの地球制圧が目前に迫った時、彼女は決心した。

 ジェンダーに基づいた評価・表現をする事はこのご時世憚られるだろうが……腹をくくった女は強い。例えば“巴板額”、尼将軍、則天武后、テオドラーー歴史上様々な男何ぞ目じゃないほどの強い女はたびたび登場する。それぞれがそれぞれの理由で、決意し、困難に立ち向かう。

 テレサもこれと同じといえよう。

 

 ヤマト艦内に突然現れたのは――単純に転送。ワープが出来るのだから、問題はない。外へ出ていった時は……トンネル効果による壁抜けと、転送のタイミングが微妙に重なったからとこじつけ説明しようか。

 実は質量をもったホログラムとかいうヤバい技術の可能性も捨てない。

 

 あの巨大化のこじつけ説明は、先に述べたホログラム投影。あるいは、集団幻覚ないしヒステリー。

 だって、テレザート爆発の時点でズォーダー大帝を始めとしたガトランティス首脳部はテレサを死んでいると確信していた。それが、目の前にテレザリアムが現れたのである。そりゃ、パニックになっても不思議はない。特に、勝ったと思ったタイミングで天敵が現れたのである。そりゃ、錯乱しても不思議はない。

 他方、ヤマトクルーらも、ある意味――イメージのヴィジョンとしてテレサが見えていたとしても、それはそれ。

 

 この一連の戦闘は、ご都合主義はさほどないのだが……全体的に佳境なはずなのに中だるみな感がぬぐえない。であるからこそ、些細な齟齬や不和といったものが目について猛烈に作品の評価を落としたといえる。特に古代君の最後のセリフが取ってつけた感満載だった。

 これは終わり良ければ総て良し、の反対パターンと言っても過言ではないだろう。そりゃ、不満が残るわい。

 たとえるなら、2202のラスト。我々旧作ファンや2199ファンの大多数と意見の合致しない2202ファンの大多数と唯一意見が一致したのは、あの演説から古代と雪の絡みはいらんだろう、という点。彼らでさえ、あの最終話は蛇足だったなんて話をするが、それと同じ。

 メリハリつかないなら、バッサリ止めた方がいいと思う。

 喋らずバッサリぶった切った方が、よっぽどよかったと思う。

 

 

 意義
 この段階になると、もはや意義もへったくれもない。ただひたすら全力を挙げて戦うのみ。ただひたすら全力を挙げて迎撃するのみ。

 強いて拾い上げるならば――あきらめない心が大事、どんなチャンスにも貪欲に喰らい付くことが大事という事だろう。

 


 ガトランティス側損害:超巨大戦艦=ガトランティス滅亡
 地球側損害:残存第11番惑星派遣隊全滅、ヤマト大破、地球諸都市大破、テレサ死亡