こいつぁすげぇエピソードTOP5(さらば/ヤマト2編)
前回はガトランティス戦役のダメな部分をTOP5として取り上げた。今回は、こいつぁすげぇやというエピソードを同じようにTOP5形式で取り上げたいと思う。
こいつぁすげぇエピソードTOP5
第5位:超巨大空母の甲板回転シーン
登場エピソード:さらば
ノミネート理由:極めて合理的な設定、極めて効果的な演出
これはさらばのみのシーン。ぱっと見、無意味に見えるが実はそうではない。むしろ無意味と説明する方が難しいぐらいの超合理的シーン。見た目のインパクトとその合理性はヤマト史上屈指で、ヤマトがちゃんとしたSFであることを如実に示すと同時に、さらばがヤマト史上屈指のエンターテインメントであったことをも示す。
たったワンシーンでガトランティスの高度に発達した人間工学と人間という存在の自己過信を思わせる非常に意義深いシーンといえる。
これが1位でもよかったのだが、ストーリーに全く関係ない為――しかし圏外では忍びない為、5位にランクイン。
第4位:潜宙艦
登場エピソード:さらば/ヤマト2・第7話
ノミネート理由:シリーズ屈指の圧倒的な高性能
宇宙最強の戦闘艦といって差し支えない。通常空間におけるステルス性は最強で、暗黒星団帝国の艦艇すら及ばない。さらに発射する魚雷もかなり強力でたった二隻で簡単にヤマトに大損害を負わせた。さらばに至っては敵艦の横っ腹という容易に迎撃されかねない位置取りからの魚雷発射である為、この魚雷も割合ステルス性があると見える。この潜宙艦と同等の攻撃力や能力を持った戦闘艦はついぞ現れず、亜空間に逃げ込む程度しか能のない極めて脆弱というか、レベルの低い戦闘艦程度しかヤマトには登場しなかった。
さらばにおいて照明弾ソナーで姿をさらしてしまうが、それでも攻撃は続行。次々に波動砲搭載艦を仕留めていった。このソナーに関して言えばかつてデスラー総統が述べたように地球人の原始的な発想の勝利といえる。急激な周囲の変化には対応できなかったのだろう。
ヤマト2にて確かにヤマトに敗れはしたが、どこかの次元潜航艇とは異なり最低でも1年は訓練を積んだ万全の宇宙戦士とタイムレーダーなんていうチートを擁するヤマトと戦ったのだ。しかもこっちの指揮官はアホで有名なコスモダート・ナスカ。挙句、自分の失敗をサーベラー→ゲーニッツ→ラーゼラー経由で叱責されているため恐らく焦っていると見て間違いないだろう。こりゃ勝てんわ。
ストーリーにもちゃんと食い込んでいるため、第4位。
第3位:コスモタイガー隊、退避拒否
登場エピソード:ヤマト2・第21話
ノミネート理由:船と船乗りの関係性を見事に表した名シーン
ヤマト2で白色彗星迎撃に臨む直前、味方巡洋艦と衝突事故を起こし機関に重大な損傷を抱えた後の、シーンである。
これは間違いなく演出マターなシーン。しかし、ヤマトとクルーという特別な関係を示す重要なシーンであることには違いない。クルーは今まで乗って来た船に特別な感情を抱くというが、それがまさに表出したシーンで涙が出る。現実にもあり得る心理展開であり、演出マターとはいえ見事。
また、コスモタイガー隊がヤマトに引っ付いているという事は可能性として舟艇も一緒に引っ付いていることを考慮すべきだろう。目の前に敵の本隊が居るのに、舟艇を護衛もなしに放置したら七面鳥撃ちにされかねない。他方で、どうしてもヤマトについていきたいコスモタイガー――となったら多分舟艇も付き合わざるを得ないだろう。舟艇も一緒にという事なら、必然的に空間騎兵隊も一緒についていかされている。
それを考えると、空間騎兵隊第11番惑星派遣隊とヤマトクルーが運命共同体になったシーンの一つとも評せる。ヤマト2において確実に重要なシーンだ。
第2位:決死隊編成
登場エピソード:さらば/ヤマト2・第25話
ノミネート理由:空間騎兵隊とヤマトクルーの絆と決意の現れた名シーン
堅牢な都市帝国相手に攻めあぐね、内部より破壊を試みるため決死隊を募るいわばヤマトが組織だって攻撃を行う最後のシーンであると同時に、ヤマトクルーの胆力を見せつけたシーンでもある。
演出マターなシーン・パート2。ただ、無理やり取り繕ったシーンかといえばそうでもないだろう。都市帝国にはどっちみち空間騎兵隊が必要だし、一番の勇士である隊長の参加は不可欠。アナライザーが佐渡酒造やミーくんと共に医務室で戦死した今(ヤマト2では操艦を担当しているため手が離せない)、メカに立ち向かえるのは真田さんしかおらず参加するのはやはり既定路線。古代が参加するべきだったかは疑問といえば疑問だが、反対に参加しなかった場合、パイロット1名欠員という事になるし別に外部からでは都市帝国を攻撃できず……指揮系統を明確にすれば別に前線に出ても大した問題は無い状況だったゆえに参加しない絶対的な理由というか合理性もない。さしずめ3番手の島君に指揮権以上だろう。
これは決死隊編成から突入、炉心爆破までの一連で泣けるシーンであろう。人によってはヤマト史上屈指の泣けるシーンかもしれない。いくらでも説明が付けられるため、これ以上の説明は野暮か。
第1位:「地球艦隊の中央を突破する、全艦隊集結せよ」
登場エピソード:ヤマト2・第21話
ノミネート理由:完璧なストーリー展開と圧倒的なかっこよさ
これはバルゼー総司令の名台詞。ヤマト2の言わずと知れた名勝負にしてヤマト史上随一の頭脳戦の開幕を告げる極めて重大な命令である。
前回に置いて機動部隊であるゲルン指揮下のプロキオン方面軍を失ったバルゼー総司令、しかし直進し構わず地球艦隊本隊攻撃に驀進する。対する地球艦隊は遊撃隊としてヒペリオン艦隊を先行、先制攻撃をもってこれを混乱せしめ本隊を以て殲滅する――ためにヒペリオン艦隊を出動させたものの、衝撃砲の圧倒的攻撃により壊滅。土方総司令は拡散波動砲を以て敵を粉砕する作戦に方針転換。
前進してきた地球艦隊に対し、バルゼー総司令は艦隊に「地球艦隊の中央を突破する、全艦隊集結せよ」と下令、突撃隊形を展開した。対する土方総司令は地球艦隊に拡散波動砲発射隊形展開を下令して応戦。これによりヤマト史上のハイライトともいえる艦隊戦が繰り広げられる。
ヤマトで最も熱い戦い、地球の存亡をかけた一大決戦だった。
番外編
TOP5からは漏れたが、ガトランティス戦役において絶対に欠かせない――作品の価値であるとかストーリーの合理性を高める意味で最高のシーンをいくつかあげたいと思う。
大帝曰く「地球にはヤマト以上の戦艦アンドロメダが居る。さらに同じクラスの戦艦が続々と造られるだろう」――第7話。
アンドロメダをはじめとした地球艦隊の脅威評価を行ったシーンであり、これによりガトランティスが地球の兵装のあの時点での内容を全て知っていたと仮定できる。故にヤマトの射程をナスカが見誤ったり、バルゼーが火炎直撃砲に絶対の自信を持つことが出来た。とガトランティスの行動についてのかなりの部分の論拠になる。いわば名伏線だった。しかも、これが的中しているのだからまたすごい。
味方殺しと評判のタイプ・ズォーダーの的外れ観察眼とは違い、5世大帝は大抵の場合において正しい見識を示していた。
ひたすら黙認する長官――第4話・第18話
この人が態度を保留にしたおかげでヤマトは反乱を犯したのではないと言い張ることが可能だし、土方総司令の無茶な判断を政治マターでトップダウンで決定したと強行突破できる。
本当は良くない事だが、防衛司令部を見限った後は色々情報を上にあげず、諮問された際に首相や大統領に直接のレクチャー。この全力で無駄を省き、首相や大統領に信頼されているという関係性をフルに活用した猛烈な政治手腕。何もしてない様で色々と動いていた――ある意味で長官は恐ろしい男であるさすがデスラー総統。
長官の態度がのらりくらりだったおかげで、ヤマトや土方総司令はイライラしただろうし、不安な面もあっただろう。
が、長官のおかげで防衛司令部の顔も経つし現場指揮官は自由に動けたし、政治も余計な事をせずに済んだ。全方位戦略的のらりくらり戦術とでも呼ぶべきか……。風見鶏作戦とも評せるが、だからこそ懐かしの中曽根氏並みの名采配ともいえるだろう。あの人も政治の勘は凄かった。
ランクインさせたのはどれも出来るだけ簡単に合理的説明が出来たり、一つには絞れないが矛盾の無い説明が可能なものばかりを挙げた。バンデベル処刑やサーベラーが「どんな顔をしているんだろうねぇ」とキレるシーンなど、他にも色々面白いシーンはたくさんある。
また、上に上げたような名シーンや、伏線の展開などたくさんの見どころがヤマトにはある。過剰な期待は禁物だし、出来るだけハードルを下げた方が案外エンタメは楽しめるものであるからそれを肝に銘じて鑑賞してほしい。
そして、出来ればこの記事のすげぇエピソードTOP5に注目し、ストーリーの深みに思いを馳せてもらいたい。当然、賛同できる部分だけで構わないですけどね。
空間騎兵隊――陸戦のプロフェッショナル集団、その実力
空間騎兵隊は地球連邦の運用する陸戦部隊である。白兵戦のような非機械化戦闘を主戦とするが、他方で陸上兵器や防衛戦に寄与し得る兵器のほとんど全てを操ることが出来る陸上戦のプロ集団である。
登場
さらば宇宙戦艦ヤマトないしヤマト2において初登場。
地上戦を出来るだけ嫌ったガミラスではあるが、他方で対ガミラスの基地防衛戦には当然陸戦隊も必要であろう。しかし、どうやら当時の地球防衛軍のその能力は比較的小さくあまり用をなさなかった。と考え得る。そこで限られたリソースを最大有効活用するべく地球連邦は陸戦専門部隊を設立、訓練および配備を開始した。と考え得る。
空間騎兵隊は対ガミラス基地防衛戦、或いはヤマトの行った白兵戦を鑑みて、地球連邦が唯一機械力よりも人間力を重視した珍しい部隊だ。徹底した肉弾戦のプロであることが第一、第二に大型兵器の運用と言うような感があり、ウラリア戦役においても戦車を用いた会戦よりむしろゲリラ戦において大きな力を発揮している。
ウラリア戦役登場した部隊は地球連邦陸軍の可能性も当然捨てきれないが、しかし空間騎兵隊の任務地を拡大させればそれで十分だし、必要な装備は似通る為――空間騎兵隊であることが妥当として話を進める。
頭脳
物凄く荒っぽく、殴り込みや殴り込みを行ってきた敵を迎撃するのが基本。敵を目の前にして戦うため、相当性格がアレな人物が多い。が、どうもその図体と荒っぽさからすれば考えられないほど高度な頭脳を持った集団であろうことが推測可能。
コンピュータの発達した2200年代では当然、砲兵自体が超高性能な頭脳を持っている必要性は低いが、砲兵として一通りの理論ぐらいは頭に入っていてしかるべきだし、第11番惑星で見たように、相当数が砲兵として砲台を操っていた事を考えると、教育課程は全般にわたって結構高度と推測できる。
また、陸兵とはいえ必要とあらば航空戦力を一定程度操る必要に迫られない事も無いと考えると、彼らに基礎的な航空機や雷撃艇の操作を訓練していても不思議かもしれないが無駄ではないだろう。実際に舟艇を駆ってガトランティス部隊と戦闘を繰り広げた。
戦術
まだ塹壕戦を行っていたりするらしい、非常に原始的な戦闘を捨てない方針。ウラリア戦役においては本当に塹壕戦的戦闘を行い、ハイペロン爆弾周辺部に攻勢を仕掛け内部にまで突入した。
短期決戦はどうも苦手らしいが、ゲリラ戦などの長期戦は大得意の模様。
彼らは基本的に接近戦で、これが第一かつ必殺。
対戦車ロケット弾が使える距離まで平気で接近しようとする。さすがに、歩兵一個小隊でザバイバル戦車軍団のような巨大機械化部隊を相手にするのは酷だしそんな戦術も持ち合わせてはいなかったが――懐に潜り込んで履帯をぶっ壊したり、軟弱なザバイバル機甲師団の生身の兵員を襲ったりとひたすらガッツで猛攻を加えた。
ただ単に突っ込んでいったというよりは、退却や散開、或いは障害物に身を隠すなど幾らか小技を加えて接近しザバイバル戦車軍団に攻撃を加えた。また、戦車を乗っ取った後は、彼我の射程の微妙なラインで戦闘を続け、タンクデサントまでやるアグレッシブさだ。
本当に、戦車すらかなぐり捨てた肉弾戦となると――水を得た魚のように強力になる人たち。
装備
基本、携行武器のみ。対戦車ロケット弾、自動突撃小銃、に加えてコスモガンとコスモ手りゅう弾を以て敵に当たる。彼らは戦車も雷撃艇も艦載機も操れるが、配備はされていない可能性がある。
他方で地球本土においては戦車を運用している――が、これはウラリア戦役。困ったことに彼らは明らかにさらばの空間騎兵隊より戦略の質が下がっている。とはいえ、ガッツの面ではガトランティス戦役の先輩らに負けず劣らず、暗黒星団帝国の占領部隊とゲリラ戦を展開し、徹底的に殴り合った。
立ち位置、運用
惑星の防衛基地の要員が第一。また、ヤマトの場合のように余裕のある大型艦に乗り込んで白兵戦に備えたり、敵勢力の手にある惑星を制圧・維持も任務と考えられる。
立ち位置は海兵隊の能力拡大版であろう。
海兵隊は海軍の指揮下にある為、陸軍と異なり独自の艦艇は擁していないものの――戦車に加えて航空隊は思いっきり戦闘機を保有し、これを海軍の輸送艦や揚陸艦によって輸送し殴り込みを仕掛ける。海兵隊は古くは白兵戦、次いで基地防衛や上陸戦あるいは即応展開などを担当している部隊だ。
空間騎兵隊は基地に対する奇襲攻撃に際し駐留艦隊との共同作戦やあるいは単独で踏ん張って救援艦隊の到着を待つ。艦に乗り組んでは敵の白兵戦や敵拠点占領作戦において出動し、クルーに代わって肉弾戦を行う。
というのが任務だろう。
部隊の構成は普通の陸上系軍事組織と同じ。師団の下に大隊、大隊の下に中隊というのがあるのだろう。また、一通りの人間が普通科、砲兵科、機甲科、通信科、航空科、需品科の結構高度な授業を受けると考えて相違ないはず。一通りの授業を受けた後、それぞれの科に特質によって振り分けられるのか。
定員は不明だが、普通の陸軍辺りのそれと同じだろう。
困ったことに昇進の基準が判らない。テストがあるのか、あるいは実戦か。誰が指揮官であるかは、恐らくその場の最先任士官に任せられるというごく普通の体制であろうことは察しが付く。そのため、多分指揮系統が混乱するような体制ではないだろう。が、本当にどうやって誰が昇進するのかは全く想像がつかない。
劇中の活躍
空間騎兵隊はさらばにおいては長官の命令でヤマトに乗り組んだ。
彼らの任務は戦列艦時代の海兵隊と同じだろう。総統が偶発的に行った白兵戦を念頭に置けば、万が一の事態に備えて空間騎兵隊を乗り組ませるのは長官としては当然だろう。また、メッセージの発信源の探査など、上陸して拠点を築く必要が有るかもしれない。その場合、クルーに陸兵のような事をやらせてヤマトの能力が仮に低減すればお話にならないのだから、専門部隊を派遣するのは当然である。
残念ながらテレザート上陸戦と都市帝国攻略戦のさなか、ヤマトに派遣された部隊は任務を全うする形で壊滅した。
ヤマト2においては第11番惑星派遣隊が登場。辺境の惑星である第11番惑星を守備する事が目的であり、その任務を遂行。後に残存部隊がヤマトに収容され、そのままテレザートや都市帝国攻略へと参加し全滅した。バンデベルの戦闘空母を撃滅するように古代に進言するなど、考え方が艦隊と決定的に違うという部分を表出させた点も特筆に値する。リアルな陸軍と海軍の敵に対する認識の差に準ずるといえるだろう。
とはいえ、地球を守る為に死力を尽くすという点においてはヤマトクルーと同じであり、デスラー艦への白兵戦や都市帝国突入には迷わず参加した、勇敢な宇宙戦士達であった。
ヤマトよ永遠ににおいては突然襲来したハイペロン爆弾の包囲に兵員輸送車で乗り付け参加。探査車を繰り出して調査を開始するも――しかし、上空からの奇襲攻撃を受けて大損害を出す。更に連装砲塔戦車を多数展開して暗黒星団帝国の掃討三脚戦車と対峙するも、本当に掃討されてしまう。敵将ザバイバルが身をもって教えてくれた戦車は歩兵に近づきすぎてはいけないという戦訓を完全に忘れてしまっているらしい。
しかし、ゲリラ戦開始後はむしろ暗黒星団帝国に対して互角ないし優位に戦闘を進めることが出来た。彼らの活躍によりアルフォン少尉の部隊の撃破に成功し、ハイペロン爆弾解体にこぎつけた。
ヤマトⅢや完結編ではヤマトは得意なはずの白兵戦で大惨事になったが、これは総数がたかだか100名程度しかいないヤマトクルーが戦闘を行ったからだろう。空間騎兵隊を乗り込ませていれば、あのような事態は確実に避けられた。しかも、乗り込ませるに足る十分な理由があったのだから、あそこに居ても不思議はなかった。
仮にあの場面で肉弾戦の準然たるプロ集団の空間騎兵隊が敵と交戦していれば、平田とか大門とか島とかは命拾いをしただろう。これは断言可能だ。
ベースとして海軍視点で描かれているのがこの宇宙戦艦ヤマトである。その作品の中で海兵隊的役割を担う存在として空間騎兵隊が登場するのは至極真っ当。この部隊の存在のおかげでさらばやヤマト2における戦闘のいくつかは合理性を保てたし、鬱陶しい面の方が大きいが一応ストーリーにも厚みを持たせることが出来た。また、さらばで登場した事で、ウラリア戦役において突然陸兵を登場させるという一種の不必要な混乱を生まずに済んだ。
ヤマト艦内での振る舞いのせいでなんだか腹立たしいというべきか、小憎らしいというか……結構ストーリー上もロジカル上も一通り役割を果たした優秀な部隊と言えるだろう。
ヤマト世界における敬礼
ヤマト世界における敬礼は複数存在し、当然文明ごとにその差は大きい。更に、ヤマト及び地球防衛軍においてもさらば並びにヤマト2の前後でその形式が異なる。
個別に記事にすると物凄く短い記事を連投することになるので、この記事に一括で考察したいと思う。
地球式敬礼(ヤマト式敬礼)
ヤマトにおける敬礼は2種類。つまり右拳の親指側を左鎖骨ないし胸骨に当てるヤマト式敬礼と、普通の挙手の敬礼である。
前者は文官の答礼に近く、また海上保安庁の潜水士が類似の敬礼をウェットスーツ着用時に行う。後者は当然よく見る軍隊の敬礼であり、ヨーロッパが発祥とされる。目を守る兜の鎧戸を挙げる仕草らしいが、他方で右手は大抵の人の利き腕であり、その腕に武器を持っていない事を示すという意味があるとも。なお、脱帽時には敬礼はしないのが普通。
これらを考え合わせると……ヤマトクルーは全員帽子をかぶっていないため、無帽状態での敬礼がヤマト式のあの敬礼で統一されたとするのが妥当だろう。よって帽子をかぶっている場合に置いては通常の挙手の敬礼を行うと。
挙手の敬礼は国際標準として浸透しているがそれ以外は実は海兵隊のそれのように結構バラバラ。であるから、どこかの国のやり方に倣うのではなく、国連なりが独自に策定した。これにより、どこかの国に優越感やあるいは劣等感を抱かせないようにとした。とすれば、ヤマト式敬礼の新規策定という行動の合理性や妥当性は十分保てる。この手合いの感情のもつれは後が怖いからね。
軍におけるお辞儀は基本脱帽状態で行う敬礼であり、無帽より脱帽にウェイトが置かれている感がある。そのため、無帽を前提とした、それでいて挙手の敬礼ではない手持無沙汰にならないちゃんとした敬礼としてヤマト式敬礼を採用したというのが――軍服をかっちょいいデザインにするというのと似たような行動原理によって策定されたとするのが一番おさまりがいいだろう。
だとすれば、第一作でのクルー乗り込み前の沖田艦長の訓示シーンも、土方総司令のヤマト機動部隊出動命令も、山南艦長と長官の通信もこれで十分説明がつく。ずっと、帽子をかぶった指揮官は挙手の敬礼だし、受ける側は無帽でヤマト式敬礼。それでも敬礼と答礼の区別がつきにくいという問題は捨て置かれてしまうが、一応説明可能。
残念ながらヤマトⅢの後半エピソードや完結編ではこれが徹底できなかった……。まあ、挙手の敬礼が最上位の敬礼という位置づけとすれば、思わず手が動いてしまったとして何とか説明がつかない事も無いが……。
何だかねぇ。
リメイク作において
2199ではこのヤマト式敬礼がなくなったが、帽子を脱いでいる状態での挙手の敬礼は正直描写として疑問だし妥当性を欠く。一応、軍なんだからさ。無帽状態のままの挙手の敬礼だと、本当は凄く素人っぽいというか妥当性が低い。
もう一つ言えば、ヤマト式敬礼が子供っぽいという人がいるが――ひとまず、海猿の皆さんに土下座しようか。
反対に、2202で急に復活した上に帽子をかぶっていてもヤマト式敬礼を平気でやってしまうのも、これもまたかなり疑問。帽子をかぶっているなら普通に挙手の敬礼で十分だし、指揮官クラスの高官ならばなおの事もっとベーシックな敬礼をして当然。敬礼の格というものもあるし、使用場面というものもある。これを混用した描写というのはまずいだろう。挙句、そんなシーンをポスターにしちゃって……。一人前の軍人がそんな単純かつ基本的な事すらわかっていないというのを見せて、平気でいるのだから……軍事モノの作品としてとして話にならない。
色々独自色を出そうと頑張ったのは分かるが、正直ご都合主義というべきか或いは演出マターな描写にとどまっている。
ガミラス式敬礼
ガミラス帝国やガルマン・ガミラス帝国において行われる形式で、右手で行われる。細かく描写すれば右肘を水平に張り、肘から先を上方に指まできれいに伸ばした形となる。ナチス式っぽいといえばナチス式っぽいが、厳密には結構異なる。どちらかといえば――選手宣誓と挙手の敬礼のハイブリッド。
跪く場合、左ひざを立てて右拳を左鎖骨に当て、左手を自然に降ろすスタイルーーかもしれないが、これはどうもガトランティスと見た方がいい。あるいは、たまたま同一のスタイルであったか。
地球の挙手の敬礼と同じく、武器を持っていない事=恭順の印というのが妥当な推測だろう。優雅というか、権威主義的な装飾的敬礼でもあるし、このスタイルを採用して不思議はない。
ガトランティス式敬礼
ゾグー1世が自信の親衛隊に採用した敬礼、つまりゾグー式敬礼。指をそろえた右手を胸の前に水平に当てて手のひらを下に、肘を張ったスタイル。インドやメキシコ、或いはアルゼンチンでも同様の敬礼が見られた。
さらばでのみバルゼーが跪く際の、左ひざを立てて右拳を左鎖骨に当て、左手を自然に降ろすスタイルを披露。ガトランティス艦艇は艦内がかなり広いし、このような装飾じみた敬礼でも問題はないだろう。また、大帝への忠誠という面を見ればガトランティスが権威主義な体制であることは言うに及ばず、ゆえにこの権威主義的な敬礼も妥当といえばだろうだろう。
なお、ゾグー1世はアルバニア公国をソ連の援助で軍事的に攻略、共和国へと変えた大統領で後に憲法を改正して国王に即位したオスマン帝国の総督家の出身のややこしい人。結局ファシズムイタリアの攻撃を受けて亡命、色々あって帰れると思ったのもつかの間、ソ連によって祖国はアルバニア人民共和国へと姿を変え、帰れなくなってしまった。
哀れと自業自得の狭間な感じの人。
暗黒星団帝国式敬礼
多分、挙手の敬礼の類はナシ。全部「気をつけ」の姿勢、強いて言えば注目の敬礼。
説明を付けるならば、暗黒星団帝国の人間は大体サイボーグ――今風に言えばトランスヒューマニストであり、別に思わず声を出した場面以外では言葉を交わす必要がないという可能性が大きい。だって脳みそ同士で通信できるはずだから。少なくとも地球のトランスヒューマニストはその段階まで望んでいる。であれば、本来人間はしゃべる必要はない。
ボディランゲージは言葉を直接発するのと同等の発信力を発揮する一種の言語である。
仮に脳同士でに直接通信できるならば、これも必要はない。ならば、ボディランゲージの範疇ともいえる敬礼が衰退しても不思議はない。ただ、劇中でそのような事はなかったため言語そのものや肉体の機能を全て無駄として切り捨てる様な考え方には向かわなかったと説明できる。
これらの前提を踏まえれば、敬礼が注目の敬礼オンリーになってしまったとしてもそれは、無駄を省いたうえでの合理的選択の結果と説明できるだろう。一方で、人間らしさというモノをまるっきり省くのではなくある程度残すという、底流に存在する生身へのあこがれが拭い去り切れていないとも評せる。
それが故に、ボディを求めて地球へ……。
他方、いくら脳みそ同士で通信できても、それが軍艦の装甲板に囲まれた空間や宇宙を飛び越えての遠距離通信は難しいだろう。
これが妥当な推測であれば、護衛艦隊司令とデーダー、デーダーとメルダーズ、メルダーズとグレートエンペラーが脳みそでなく機器を用いて通信したのも当然。前に述べた通り、人間だれしも思わず声が出る場面があるだろう――そういったタイミング、特に戦闘中はべらべらしゃべっても、人間として不思議はないだろう。
ボラー連邦式敬礼
実はよくわからん。バース星に関してはラム艦長が魅せたようにガミラスとほぼ同形式の敬礼を行うし、同惑星に置いてはベムラーゼ首相も観閲式にて似たような答礼を行っていた。これがバース星のみの流儀であっても不思議はないし、ボラー連邦の本星には頭を下げる系の敬礼以外に形式がないとしてもまた不思議はない。
ボラー連邦では相手に対して手を挙げるという動作自体が共通言語を持つ人間同士では敵対行為であるとされるなら、挙手の敬礼がないのは至極当然の成り行き。
仮に手を挙げるのがボラー連邦流の敬礼であったとしても当然のことながら、非常に権威主義的な装飾的敬礼であるし、採用して不思議はない。ガミラスとはたまたま被ったという事だろう。
結果、描写が少なくよくわからない。
ディンギル帝国
かなり独特のスタイルで、拳を固めた右腕を前に出してあばらの下端に水平に、拳を固めた左腕は同様に水平に伸ばすが背中側に回す形式。基本教練の中の休めの姿勢に近い。
右腕を見せて武器がないと恭順の意を示す一方で、左腕は何をしているかは敬礼を受けている側にはわからないし、答礼してもらっている側もわからない。
つまるところ、左腕にコスモガンでも隠し持っていきなり銃撃もできるというわけである。反対に、仮に襲撃が刃物であれば右腕を犠牲にしても胴体を守ることが出来る。と、物凄く好戦的な説明が可能な敬礼。全然敬っていないし、礼を尽くしていない。
自分の幸せの為なら他人を踏みつけにしてもいいという考え方が中心的なディンギル人らしい、敬礼といえるだろう。
このように、敬礼の方法にはこのように各勢力の特質が現れている。と、説明可能。ヴィジュアル重視での採用であれば、ある意味その勢力のイメージに合わせて作り上げた敬礼であるから、相応しくて当然なのだろう。
こじつけっちゃ、こじ付けだけど。
それはやべぇだろエピソードTOP5(さらば/ヤマト2編)
宇宙戦艦ヤマトには「そんなのアリかよ」とか「それはねぇだろ」と言うようなエピソードが多数ある。大半は説明が可能だが、さすがに呆れてモノが言えないエピソードもいくつかある。これに触れないのはご都合主義にもほどがある為、避けて通らないようにしたい。
そこで、今回はガトランティス戦役に焦点を絞って紹介したいと思う。
やべぇだろエピソードTOP5
第5位:多弾頭砲
登場エピソード:さらば/ヤマト2・第14話
ノミネート理由:戦闘終結は同じ尺でいくらでも別の方法があった。ストーリー展開・戦闘描写が雑で妥当性が乏しい。
極めて残念。何せ、格闘兵団と空間騎兵隊の正面切った熱い戦闘をぶった切って無理やり終結させてしまったのだ。あんな唐突な……“作品”として完成させる気が合ったのか、製作陣のやる気について非常に疑問を感じるシーンである。このあまりにもテキトーな展開をさせるよりも、端っから上陸戦を全カットした方がよかった。多弾頭砲で無理やり戦闘を終わらせたことによって、作品の価値というものは大きく棄損されたといっていいだろう。
尺がなかった――だったら古代と雪のシーンをぶった切ってでも整合性を取れよ。意味なくなげぇし、中身がない。アレを削除してちゃんと戦闘を描いた方がずっと作品の価値が上がっただろう。
つーか、あるんだったら最初持ってこいや!
第4位:地球防衛軍における戦艦ヤマトの扱い
登場エピソード:さらば/ヤマト2・第2話(参謀の発言等)
ノミネート理由:無理やり反乱を起こさせようという雑なストーリー展開
いくら何でも、完成の翌年に廃艦どうのこうのの話が出るのはおかしいだろう。損傷が激しいのはある程度分かるが、だからと言って廃艦というのはあまりに過激な判断。
ヤマト帰還までに主力戦艦の建造が開始されていたとしても、ヤマトが貴重な戦力であることには違いない。これを改修も補修もろくにせずに何となくな感じて運用していたヤマト2、最悪である。さらばに至っては“懲罰廃艦”までされかかるのだ。
確かに史実にも〈フッド〉の事例やハンガリーの海軍に対する理解不足、西太后の海軍予算流用など、不当ともいえる戦闘艦や艦隊の扱いがあるにはある。
が、ヤマト廃艦というこの展開が物語として必要が有ったかは不明というか、疑問。もっと言えば、沖田艦とかの旧艦艇はどうなっているのか、アレだって改修すれば使えなくはない。あいつら、どこいった。
確かに旧艦艇が軒並み潰されたとして、その流れでヤマト廃棄であるならば理解はできる。が、どっちにせよヤマトを中途半端に特別扱いしているという部分に関しては、大して合理性も必要性も無い場面。
物語に必要が有るかどうかという意味では、このエピソードは不必要だし擁護のしようがない。普通にテレザートからのメッセージを黙殺した地球連邦に対する反乱で十分だったのだから。ドックに眠るヤマトをかっぱぐるだけで構わないのだから。
第3位:ヤマトの反乱
登場エピソード:さらば/ヤマト2・第3話ラスト及び第4話
ノミネート理由:まごうことなき法律違反。それを美談にしようという魂胆が見え見えな誘導。すごくおいしくない。
反乱がうやむやになったことや、反乱をしたくなったという点については擁護可能だが、やっぱりストーリーとしては不必要。
何より、作品の内容がブレる。ブレまくる。しかも、最後の方は反乱だか何だかがうやむやになった――これが一番よくない。
冒険譚なのか、軍記物語なのか。賛美やアンチテーゼの対象が何なのかの方向性、そういったものが全てブレる。この作品の根本にかかわるものであり、それがブレるというのはあまりに……作品の価値を毀損してしまっている。
実は文庫版の方がこの反乱というものにウェイトが結構置かれている――のではあるが、反乱を起こさせた防衛軍が悪い、艦隊全滅まで反乱者のレッテルをはがさなかった防衛軍は無能だ。に終始しているため……ちょっとアナーキー過ぎて気味が悪い。
結局この点は防衛軍も反省すべきだが、ヤマトはもう一段高いレベルで反省する必要が有る。そもそも反乱などさせずに、普通に調査任務を与えた方がよかった。
いっそ、ヤマトクルーが白色彗星危機を感じず、むしろ防衛会議に疑問や危機を持つ。他方でヤマトクルーに手を焼いた防衛会議が無理やり調査任務をヤマトに命じ、これに不満を持ちながらテレザートに向かうという――ストーリー展開の方がよっぽど整合性が取れただろう。ヤマトⅢでやったプロットに近い展開である。
松本作品っぽさが大幅に失われてしまうが、作品としてのまとまりを考えると、やっぱり邪魔。
この辺り2202には期待したんだけどなぁ~最初だけだけど。
第2位:さらばとヤマト2におけるテレサの扱い
登場エピソード:さらば/ヤマト2・第14話から第17話+第24話・第26話
ノミネート理由:大人の事情丸出し。しかも無意味どころか害悪な設定変更。
服着せたのは大人の都合だろう。また、ちょっとしたロマンスを加えて話に厚みを持たせようとしたのだろう。
この判断は、テレサを普通の人間の範疇にしたという事で、彼女自身を巡る様々なエピソードを不必要に、オカルティックな超常現象的にしてSFっぽさを全く毀損してしまった。
ダース・シディアスの銀河帝国もフォースによる支配に頼るオカルト帝国な側面があったが、概ねの場合において現実的な軍事力の有効性を認めていた。ファイナル・オーダーに関してはフォースによる銀河支配を第一と舌オカルト的側面を強く打ち出し――だからハックス将軍、ブチ切れてたんだよね――ていたが、他方で物理的破壊の面においては結局 帝国時代の焼き回しのXyston-class Star Destroyerを利用する(というのが妥当だとJJ・エイブラムスが判断したという事)事になった。
考えてみると、シスだろうがジェダイだろうが一個艦隊を機能不全に追い込めても、惑星の破壊はできなかったものね。フォースの使い手であっても物理・科学に一定程度依存をするのは生身である以上仕方がない。
ヤマト2はこれより圧倒的にひどい。ヤマト2の人間+α程度でしかないテレサが惑星を破壊し、挙句最後に超巨大戦艦に突っ込んでいた。これ、説明大変だよ? 当時の製作陣はいとも簡単に話をぶっこんでたけどさ。
反物質の人間――正物質の我々普通の人間には一種の神のような存在であった彼女ですら白色彗星を打ち払う事は不可能であった。であったはずなのに……ヤマト2はその困難を楽々と超えた。インフレもいいとこ。服を着せなければと思ったならそれはそれだが、別に設定を変える必要はなかった。島とラブストーリーなんで持ってのほか。
何でロマンスを2つもぶっこむかなぁ。
第1位:ヤマト2・第26話
ノミネート理由:露骨なやっつけ仕事、テキトーな風呂敷の畳み方。
見ればわかる。多分、2202はこの雑で感動の無いラストを参考にして見事その本質を受け継いだといえよう(超☆皮☆肉)。
番外編
あんまり数が多くなるとあれもこれも苦言を呈したくなるため、キリのいい5にとどめた。が、どうしてもこれはいらんだろ、まずいだろうというシーンを追加でピックアップしたい。
雪の乗艦(さらば/ヤマト2・第5話)
ノミネート理由:尺がなげぇ、普通に乗れ。さらばにおいては、骸を艦長席に座らせるシーンで十分代用可な描写。
圏外の理由:ヤマトファンに刺されたくないという私の保身
杓子定規に言えば、違法行為。次いで、単純に無意味なエピソード。
フィアンセだからって甘すぎるぞ古代、ネコナデ声を出すんじゃないよ雪……。しかも、あとにデスラー艦内部での戦闘や病床やラストシーンで散々愛情深いシーンがあるのだから、いらんだろこのシーンは。
雪を脱がせたかっただけなのかも知らんが。
マルチ隊形批判(文庫版)
ノミネート理由:単なるヤマトアゲの地球艦隊サゲの提灯
圏外の理由:単純に、このブログで元来取り上げな方針の文庫版だから
色々批判しつつ戦況をモニターし、挙句戦闘後には批判的かつ的外れ過ぎな総括。ヤマトがスゲェかどうかは読む人間に判断させる、それをそれとなく誘導するのが書き手の腕の見せ所なのに、わざわざ書くか普通……この説明過剰は私のようなド素人がやらかしがちな大惨事。蛇足過ぎて一気にシラケた。何であの人に全部のノベライズを頼んだのか理解不能。ここら辺は人事も含めて割と2202的といえる。
なお、ハードカバー版の方が合理的で中立的な描写と説明が加えられた土星決戦が描かれているので、興味があったら調べてみてください。
と、これらのような地雷というか残念描写が多数あるのはまごうことなき事実。一部には、深く考察すればするほど取っ散らかる部分もあったりする。ただ、だからこそ考察にし甲斐があるとも、いえるのである。そしてまた、局所的には合理性を担保可能な事例がほとんどだ。贔屓の引き倒し感がぬぐえないが。
だが、当ブログを読んで「もう一度見よう」とか「旧作も見てみたいな」という感情にかられた奇特な方がおられるならば、あえて……過度な期待は禁物であると申し上げる。だって擁護派の私ですら、ストーリー展開を合理的に考えると辟易する内容が上記の通りに……。
ガトランティス戦役 第二期地球艦隊を率いた諸将
ガトランティス戦役において艦隊を預かった司令は複数人が登場している。それぞれのキャラクターや特性というものを見ていくことで、その行動の妥当性や製作陣が何を仮託したかを推測が可能であると考えられる。
そこで、今回は彼らを網羅的に考察したいと思う。
さらばのみ登場――
氏名:アンドロメダ艦長(本名不明)
年齢:不明(50代から60代)
階級/役職:不明(最低で大将クラス)/地球防衛艦隊総司令兼務アンドロメダ艦長
青い新式の制服に身を包んだ壮年の男性。その名の通り最新鋭戦艦〈アンドロメダ〉の艦長にして地球防衛艦隊総司令である。白髪と整えられた白髭が特徴で落ち着き自信に満ちた振る舞いが印象的だった。ぱっと見、政治家みたいだけどね。
登場は劇中の終盤、太陽系へ侵攻してきたガトランティス前衛艦隊=第6遊動機動隊を迎撃すべく、月面に集結した地球艦隊を率いて出撃。その全力を以て敵の布陣していた土星圏に突入しこれを撃滅した。
しかし、続く白色彗星に対しては艦隊が有する拡散波動砲全門の一斉射撃を以て迎撃を試みたが失敗、〈アンドロメダ〉と共に白色彗星に呑み込まれてしまう。
階級が述べられる事はついぞなかったが、恐らく大将かそれ以上だろう、地球防衛艦隊総司令なのだから当然だろう。ただ、元帥まで行くと現場指揮官という感じが薄れる気がする。態度は大元帥級だけど。
よく無能扱いされるが実際には彼の指揮は堅実かつ非常に落ち着いたもので、自艦隊の能力=火力を最大限生かし、反対に敵の弱い点=的のデカさを突くしっかりした戦略に基づいたもの。地球艦隊の大火力によって彼の指揮が短絡的なイメージで語られるが、実際には安全策・最善策を取ったに過ぎない。
例えば艦載機だが――彼我の航空戦力には測り難い差がある為、うかつに出動はさせられない。しかしてデスバテーターは全幅40メートルの水雷艇レベルであるから密集隊形で迎撃すれば何とかなる可能性は高かった。むしろ密集隊形だから対空戦闘を優位に進めることが出来た。
潜宙艦は――宇宙最強の戦闘艦である。何といってもレーダーにも映らない、次元潜航艇と違い全く視認できない。これは初見殺しと言っていい性能だ、そんな潜宙艦相手ではアレが精いっぱいだろう。逆に、初見で勝てると思うかい? 艦載機攻撃で相手を密集させたバルゼーの指揮が大当たりしたのであり、むしろ即座に反撃の手を打ったのは見事というほかない。
白色彗星のガス体に対し――全力で当たったが、単純に敵の方が強力だった。これは古代の情報伝達失敗が一番痛い。聞いたうえで無視したなら、それは指揮ミスになるがそんな話は劇中にない。つまり不可抗力。
と、以上のように彼の全体的な指揮は十分に擁護可能である。若干、態度が大柄ではあっただろうが、これが士気に悪い影響をしたかといえばこれは否であろう。むしろ、良かった面の方が多いのではないだろうか。指揮官がぶるぶる震えながら陣頭指揮を執るなんて見たくはない。それに白色彗星を侮っていたわけではなく、マルチ隊形からの拡散波動砲一斉射撃の際は汗を流してその時を待った。ちゃんと、腰を据えて本気で戦ったのである。そうじゃなきゃ、精神的な影響で汗は流さん。
ただ……最期の指示が反転180度であったのが非常に悔やまれる。全体に退却命令を出したのは当然の事であるし、ちゃんと指揮官としての責任を果たしたのではあるが――事前の撤退プランに手抜かりがあったというのが説明として自然だろう。かつ前提での出撃なのは当然だが、万が一を想定しない事と同一ではない。それが万が一を想定しなかった……当時の地球のおごりを明確に表現し、それが脆くも崩れ去る象徴的なシーンだろう。
無能な指揮官として描かれたようにも見えるが、つぶさに見ると悪い内容ではない。どちらかといえば、バルゼーの方が無能な指揮官として描かれている。あくまでどちらかといえば、という意味であり実際にはバルゼーは論理的に戦闘を指揮していた。
この描き方の意図としては、それなりに能力を持った指揮官と強力な艦隊でも倒せない白色彗星という印象を視聴者に見せる為だろう。同時に指揮官に幾らか横柄な態度を取らせることで地球のおごりを演出するという側面もあると推測できる。
そりゃバカでも勝てる艦隊に勝った白色彗星なんて、別に怖くもなんともないモノね。生真面目な指揮官に勝ってもただ後味悪いだけで、驕りが見える指揮官じゃないと教訓的な作品にならないモノね。
だから地球艦隊を極めて強力な艦隊として描く必要があった。その指揮官として十分な能力と威厳を持ったキャラクターとして、彼は描かれたと纏められるだろう。
最初に述べたように、最期は旗艦〈アンドロメダ〉や指揮下の全艦隊と共に高速中性子の嵐に呑まれ消滅した。
氏名:アンドロメダ副官(本名不明)
年齢:不明(30代から40代)
階級/役職:不明(佐官クラス)/アンドロメダ副官
新式の制服に身を包んだ割合に若い人物で副官というより参謀だが、副官と参謀の区別が作品では特についていないから正直かれ立ち位置が判らん。階級は恐らく佐官の……大佐当たりだろう。現実において現場に赴任する参謀は大体佐官クラスゆえ、大佐が妥当だろう。
デスバテーターとイーターⅡの大編隊の出撃に対し、やんわりと艦載機による迎撃を進言した。意見が言えることや、艦長が柔和な雰囲気で進言を却下した事から、上司との信頼関係構築は十分とみられる。ブラックな幕僚部や職場だと常識的な意見も言えなくなるようで……それを考えると結構ホワイトな環境の司令部らしい。
残念ながら、ほとんど出番なし。最期は白色彗星にアンドロメダごと呑み込まれた。
新しい地球防衛艦隊では軍服にも大きな変化が見られ、ガミラス戦役で利用した軍服類は全て刷新された。ほぼ全てのクルーは上から下まで青を基調とした服装で統一しているのが特徴的である。
一般クルーはシルエットこそ〈ヤマト〉クルーの白に矢印をあしらった制服と同じだが、しかして青いほぼ無地に変更されている。一方で左胸に白い錨模様をあしらい、右の二の腕にワッペンが張られ所属部隊のナンバー(第15輸送補給船護衛艦隊なら【15】)が書かれている。また、右肩から腰にかけて胸側と背中側に赤い直線が光れている。袖と襟のローマンカラーも赤い。この服装はヤマト2でも継承される。
艦長クラスは折襟で青い丈の短いコートを羽織る。ほぼジャケットにしか見えない。縁が黄色く、裏地が赤。袖が黄色だったりする。このクラスまでは手袋をするならライダー仕様のタイプになる様子。将官になるとまた事情が変わり、副官は少し濃い青の表生地に黄色い裏生地を合わせたミドル丈のコートを着用する。縁が黄色く、袖口も黄色いがすべて無地。下に着ている制服は一般クルーと大差ないが、ローマンカラーは濃紺である。艦長クラスと副官の服装はヤマト2でも継承された。
一方、総司令(アンドロメダ艦長)の服装はまたこれが形が異なる。トレンチコートとほぼ同一の形で、表地青で裏地が黄色。縁も袖口も黄色い。また、ボタンで留めるのかは不明だが黄色いラインが縁とは別に肩から裾にかけて引かれている。なぜかは知らないが、黒い錨のマークが左の襟と袖口或いは手袋に大きく一つづつ描かれているのが目立つ。土方艦長と同様にジャボ、割と細いベルト、肩章、白い手袋と軍帽を着用する。残念ながらこのタイプの軍服はヤマト2では継承されなかった。
土方艦長タイプのコートはミドル丈の黒いコート。デカい以外は普通の折り襟を有し、裏地が赤く黄色い縁と黄色いライン――襟や袖口など黒い錨の描かれている位置と言い、デザインはかなりアンドロメダ艦長のコートに近い。あまり画面には映らないが、白ズボン。ヤマト2ではこのタイプがベーシックな艦隊司令の軍服となった。
ヤマト2のみ登場――
氏名:ヒペリオン艦隊司令(本名不明(英語版Captain Slate)
年齢:不明(土方艦長より年上か?)
階級:不明(将官クラス)/ヒペリオン艦隊司令(地球防衛艦隊・前衛艦隊)
沖田艦長世代と同じ黒いコートの制服に身を包むグラサン艦隊司令。奇襲・強襲を仕掛ける快速のヒペリオン艦隊を預かり、果敢にバルゼー艦隊に左舷後方から攻撃を仕掛けたが火力の差を埋められず旗艦もろとも戦死。
指揮能力が高いか低いかは正直微妙なライン。闘将ではあるが能力的には凡将といったところか。別動隊を任される以上は能力が高いという判定なのだろう。
船足を止めずに敵艦隊に突入を試みたのは当たり前ではあるし、しかし主砲による攻撃に終始したのは硬直な指揮といわざるを得ない。ミサイルや魚雷の豊富な駆逐艦や巡洋艦を多数抱えているのだから砲撃戦よりも誘導弾をぶちかます方が妥当な指揮だっただろう。
他方で、敵の大火力を前にも怯まなかった勇敢さは称賛に値するだろう。更に、ヒペリオン艦隊はアンドロメダの艦内パネルにて戦況が明らかになっていたが――シリウス方面軍第二艦隊に対して最期まで前進し、幾らか後退させることに成功したことは間違いない。これはシリウス方面軍全力を主力艦隊前面に押し込んで、その行動・とれる戦術を狭めるという、地球側が想定していたシリウス方面軍の内情からすれば、ヒペリオン艦隊は最善策を取ったと言える。一定程度作戦が成功したと評することが出来るだろう。要するに一応、かく乱は成功した。
また、遺言となってしまった「我が旗艦の――」との通信は最期まで彼我の戦力分析を行い、土方司令部に情報を送ろうと試みたと考えれば、指揮官の鑑という評価もできるだろう。若干贔屓の引き倒しな所があるが。
サングラスのおかげで土方総司令より年齢が上に見える。砲撃にこだわったのを作画に要因を求めないならば、砲術畑の人という事になろう。
階級は不明瞭で、正直判断がつかない。防衛艦隊がアメリカ流のあまり年齢や期にこだわる事のない組織であれば、土方総司令と同格の大将クラスでも問題はない。必要事由さえあれば年齢やハンモックナンバーはそんなに関係ない。一方で日本海軍的な年功序列で硬直した組織であれば、土方総司令より年上だった場合は追いこされてしまったという事で割と出世コースを外れた人物という事になり、少将か最高で中将がせいぜいと予想できる。
登場理由は多分、バルゼー艦隊の強力さの演出が役割であろう。そのためのキャラクターで、それ以上でも以下でもないのだろう。存在としては正直、製作陣にとってウェイトは小さいだろう。
ただ、ヤマトファンにとっては……何となく哀愁というかそういったものを感じる彼の存在は――非常に大きい。最期は先に述べたように反転してきたシリウス方面軍第二艦隊の衝撃砲により旗艦と共に爆散した。どうでもいい事かもしれないが英語版だとアラン(Alan)というファーストネームがあるらしい。
氏名:副官(本名不明、英語版でも言及無し)
年齢:不明
階級/役職:不明(佐官クラス)/土方幕僚部副官
さらばにおけるアンドロメダ艦長の副官に当たる人物で、服装も同じ青いコート。役割も同じだが、土方総司令の性格が性格だけに……信頼はされているようだが、ブラックに近い職場環境。まあ、意見具申はそれなりに出来るようなので、少々古臭い普通の職場といえばそうなのかもしれない。
第18話で見たようにガトランティス戦役を闘った地球側登場人物で珍しくというかほぼ唯一、ホルスター的なモノをベルトの左側に引っ提げている。
ヤマト追撃戦などで見せたように、決して臆病な性格では無く、むしろ果敢な性格であることが判る。ただ、オーバーな表現をしがちな人物でガス体を取っ払ったのに「全く効果がない」などと、表現が過剰なのが玉に瑕。ちなみに彼の隣に居るメガネは波動砲砲手らしい。
彼は全般的に防衛司令部より土方総司令に与し、艦隊集結も常識的な反論をしたが結局は集結命令を発して反土方的画策などは何もしなかった。また、拡散波動砲の早期使用を意見具申して戦場に留まる様に土方司令に働きかけたり、アンドロメダ以下の都市帝国突入においても異論を唱えなかったなど――一見官僚的だが、なんだかんだ言って武人的気質の持ち主と評価できる。シビリアンコントロール的には軍紀的には、どちらかといえばよくない傾向だとは思うが……土方総司令との信頼関係はちゃんと構築されている模様。
役割としては土方総司令の決断力と求心力の演出が大きかっただろう。また、ヤマト世界は案外司令官と副官がワンセットになっていることが普通。それを考えると、そう大きな役割と製作陣が期待したとは思えない。
が、印象には結構残った。そして彼は都市帝国攻撃の際、土方総司令より先に燃えるアンドロメダ艦橋で戦死した。
氏名:第一空母艦長(本名不明)
年齢:不明
階級/役職:不明(佐官から将官)/第一空母艦長
ヒペリオン艦隊司令らと同じ黒いコートの制服を羽織った艦長。巡航空母艦隊の指揮官かもしれないが、不明。階級は不明で艦長なら大佐だろうし、隊司令なら少将から中将ぐらいの格は欲しい。
声が凄いはきはきして、何ならうるさいレベルだが登場シーンが登場シーンゆえにカッコいいというほかない。残念ながら雷撃隊を発進させるシーンで自空母の攻撃隊に下令したのみの登場。仮に指揮をしていたとしても、前線に出たヤマトに代わって機動部隊の指揮を引き継いだ程度だろう。この人に関しては情報がなさ過ぎて考察のしようがない……。
この人に関しては階級がいまいち予想できない、立ち位置もわからん。艦隊司令ではあるが、航空戦のプロでは無く奇襲作戦成功の為に歴戦の古代に指揮官を譲った――という前提があれば、将官であっても不思議はない。この場合は少将や准将ぐらいが想定できるだろう。他方で、単なる艦長の可能性もなくはないだろうから……全然わからない。服装からすれば……将官だろうか。巡航空母艦隊が基本的には編成上の単位で、元々は空母が単艦で活動していたとすれば、艦長=艦隊司令扱いでも何とかこじつけられる……か?
多分それっぽさを演出するための登場だろう。そんなに深い想いとか考えがあって登場させたキャラクターではないはず。思入れが有ったら名前ぐらい付けるだろうから。しかし、威勢のいい出撃命令、明らかに現代の海軍軍人っぽい雰囲気といい、良い感じに濃ゆいキャラであり……是非活躍してほしかったのだが……。
恐らく僚艦と共に突如現れた白色彗星のみ込まれ、旗艦と共に運命を共にしたと思われる。きっと最期まで踏ん張っただろう。
タイタン基地に集まったその他の皆さん――
将官クラス、佐官クラスの各指揮官が多数タイタン基地に集結し、対ガトランティスの戦闘を議論した。古代をはじめとした青く丈の短いコートと土方総司令ら黒く前を重ねるタイプのコートに加え、事務らしき防衛司令部要員と同じ緑色の背広型軍服の3種類の服装の人物が登場している。また、青コート以外はジャボを首に巻いている。なお、コートすら羽織らない青い制服の諸兄はいわゆる下っ端と思われる。
青コートは佐官から代将クラスと思われる。小中型艦の艦長ないし、それらによって構成される戦隊司令辺りが職責だろう。無論、能力によってもうワンランク上の大型艦や艦隊司令を受け持つこともあり得るとするのが妥当。他方――類似した色合いコートであっても、後方の幕僚部に所属する者は将官クラスの型のコートを着るのだろうとこじつけ推測できる。
黒いコートは十中八九将官クラス。ジャボが妙におしゃれというか貴族趣味。土方さんに意見したのは彼等であり、分艦隊であるヒペリオン艦隊司令も同格の服装に身を包んでいた。このタイプの服はさらばでは土方さん以外には着用しておらず、何度考察してもガミラス戦役からの使用とするのが妥当。他方、ヤマト2においては青コートの方が少なく――これは理由が不明。新体制の防衛軍と旧体制の防衛軍の内部対立として説明もできるが……本筋に関係ない感が否めない。
緑軍の背広型は明らかに防衛司令部の要員で見るからに完全に事務職だろう。武官(いわゆる制服組)ではなく防衛省職員(いわゆる背広組)で次官や審議官といった別個の役職があると思われるが、それを示すような章は特に事務系では見受けられない。ガミラス戦役時代の赤茶色のそれとは異なり、緑でシルエットは結構洗練されている。現場指揮官とは明確に異なる服である事は一種の差別化であり、シビリアンコントロールの現れという説明も可能だろう。
ジャボは多分、高官一般を現す印。
防衛軍長官のジャボは白で参謀は色付きのジャボであるが、他の司令部要員はジャボすらなかった。基地司令部に派遣されている司令部要員に関しては作戦会議に参加したあの人は白ジャボで、中央司令部とはいくつかずつ階級が下がる=派遣先においては格が相対的に上昇するという事だろう。他方、現場指揮官=武官でジャボを付けている人は例外なく黒コート。副官は残念ながらジャボなし。恐らく、黒コートの時点で高位艦隊司令であり、ジャボを自動的に着用することになるのだろう。
さらば、ヤマト2双方に登場――
氏名:土方竜(英語版:Draco Gideon)
年齢:不明(52歳前後)
階級:不明(正直推測が出来ない)
役職:第11艦隊司令→ヤマト艦長(さらば)/地球防衛艦隊総司令兼務(ヤマト2)
どの作品でもジャボを付けた黒いコートの制服に身を包んだ少しロン毛な白髪の男性。基本は寡黙だが、必要な場面ではちゃんと喋る。部下に下す命令は必要最低限で、しかもその命令の内容自体も必要最低限だから結構怖い印象。平成や令和基準から言えばかなりスパルタな昭和漢との評価になるだろう。
口の悪かった沖田時代とは異なり、部下への叱責は結構言葉を選んでいるのか、NOを意味する言葉以上の装飾はしなかった。名前はヤマトによくある新選組のメンバーからの明らかな借用、つまり土方歳三。
指揮は性格同様、冷静沈着にして果断。
さらばにおいては砲術の専門家を思わせる波動砲発射をテレザートで行い、地球前面域ではある意味で機動戦といえた白色彗星迎撃~都市帝国攻撃までを指揮。ヤマトの能力を最大限に引き揚げガトランティスと対等な戦闘をけん引した。
古代に波動砲をゆだね自身は爆発圏からの艦離脱を指揮、その後に出現した都市帝国に大いに動揺したヤマトクルーに対しひたすら冷静に全砲門の発射用意とコスモタイガー隊の出撃を命じる。しかし回転ミサイルの猛攻に打つ手無く、都市帝国下部への回避を命じたが下部にも要塞砲はあり、あまり被弾を避ける効果はなかった。
この激戦の中、コンソールの爆発か艦長席にてついに致命傷を負う。
苦しい息の中、空間騎兵隊の斉藤隊長に支えられつつ「次の艦長は君だ」と古代を指名。更に発見した艦載機射出口からの内部突入、動力炉の破壊を指示し「戦え古代、地球の運命は君の肩に、君たちの肩にかかっているのだ」と鼓舞する。そして「頼むぞ……古代」と言葉を残しこと切れた。
ヤマト2においては物理的にヤマトの進路を妨害した第1話や第5話を除き、常に後押しする立場で振る舞う。
艦隊司令としては第10話で戦力が足りないと長官に対しアンドロメダ級5隻を白色彗星の地球到達まで100日を切る中で要求、第15話ではアンドロメダ級を10隻以上必要だと要求を引き揚げた。結果として首相に艦隊建造計画を、首相が納得した上とはいえ変更させる暴挙に繋がる。
佳境に入った第18話では外周艦隊がキャッチした情報を受け、出撃してきたバルゼー艦隊を迎撃すべく防衛会議をガン無視して艦隊の配置転換を強行、全艦隊を土星圏に集結させた。艦隊指揮権を掌握していることをいい事に、長官が地球の未来を想えばこそ罷免などできず事後承認する他ないと知っていて、決断を既成事実化して迫ったのである。
第20話において、プロキオン方面軍の航空戦力を危険視してヤマトに機動部隊を率いさせ奇襲攻撃を敢行。その戦果を以て第21話にてシリウス方面軍と直接対決。ヒペリオン艦隊に先制攻撃を掛けさせたが、強力なシリウス方面軍相手に作戦を変更せざるを得なくなり拡散波動砲の先制攻撃により敵艦隊粉砕を試みた。だが、バルゼー総司令が自慢の火炎直撃砲により艦隊が大損害を負い、土星本星への転進――ヤマト機動部隊と共にシリウス方面軍を円環に誘い込む。そして、水蒸気爆発を誘発させ敵陣を乱し反転攻勢に出た。この猛攻によりバルゼー艦隊を壊滅、旗艦〈メダルーザ〉と決戦を挑みこれを粉砕し知略を以てバルゼー艦隊を迎撃しこれを粉砕した。まさにハンガリーの諺「逃げるは恥だが役に立つ」をこれ以上ない形で正統に表現したといえよう。
だが、突如現れた白色彗星により艦隊は更なる損害を負い、ヤマトが遭難。戦力が不十分な状態ではあったが拡散波動砲一斉射撃を以てこれを迎撃。ガス体を取り払う事には成功したがしかし、艦内機構が損傷したのか続く都市帝国との決戦ではショックカノンで挑むほかなく……「砲撃用意。エネルギーが尽きるまで、怒りを込めて打ち尽くせ」と下令、全艦突撃を敢行。だが、しかしガトランティスを打ち破ることは叶わず。
次々と僚艦が沈み、ただ一隻となる。そしてヤマトよ生きていたら聞いてくれと通信を送り、都市帝国下部への攻撃を指示。直後、旗艦アンドロメダと共に都市帝国回転リング部へ突入、戦死した。
彼の階級は何だと考えると――さらばにおいては、第11艦隊が辺境地に配備されている点と規模がさほど大きくないと予想されるため、少将クラスと推測が可能。少将ぐらいならば小規模な戦力や艦その物の指揮も鈍る程に現場を離れないだろうし、宇宙戦士訓練学校の教官が通常の兵学校と同じように教官が大佐であれば――少将は大佐の一つ上でから昇進と配置換えが同時に行われたと説明は可能。海上自衛隊式なら群とか隊司令なら一等海佐での就任例があるゆえ、なお矛盾はない。
沖田艦長に続く、そして性質が反対に近いタイプのリーダーを製作陣は求めたのだろう。沖田艦長という第一作ファンにとって絶対に近い存在に匹敵し得る、それだけの能力を持ったリーダー。これを実現するには土方艦長は極めて有能な戦術家でなければならず、熱い男であった沖田艦長と被らないように冷静な男でなければならなかった。そして実際それだけの指揮と冷静さを劇中に見せた。彼の存在によって古代を成長させ、最期のヤマト艦長という大役へと導く。鍵中の鍵なキャラクターといえるだろう。
ヤマト2においてはまごうことなき大将だろう。本来が中将であったとしても、総司令就任に当たり昇進という事もあるから大将が妥当。問題は割と最近まで共感をしていたという点で……教官=佐官クラスで艦隊総司令などなれるはずもなく、この点が大きく古代のセリフと齟齬が出る。教官ではなく宇宙戦士訓練学校の校長ならば、恐らく少将か中将クラスが就任すると想定できるため齟齬がなくなる。つまり古代が火星で訓練中に校長就任してもらえば、ごまかしは利く。
土方艦長が土方総司令になったのは演出マターだろう。登場済みキャラクターの中では他に適任なキャラクターもなく、新たに作るには不都合があったと思われる。
何といってもヤマト2はテレビシリーズだ、映画とは違い非常に長く尺を埋め演出効果を高めるには地球艦隊を丁寧に描く必要性が出て来た。この地球艦隊を製作陣自らが印象を悪くしてしまったアンドロメダ艦長に任せるのでは無く、土方さんに任せることによって――堕落した地球や政府と、その中でも誇りを持った地球人・地球艦隊という対比やヤマトが旅立つバックグラウンドの形成を行った。というのが真相だろう。
特に、艦隊の配置転換を独断専行で行ったアレは際立ったエピソード。元々果断で柔軟で芯のある武人としての描かれ方をしたからこそ、妥当性を持ったエピソードである。他のキャラクターでは無しえなかっただろうし、アンドロメダ艦長にやらせれば傲慢以外の感想が生まれない危険もあった。
土方司令はさらば・ヤマト2共に基本的には静かな闘将で一貫して描かれている。別に叱りつけるタイプではなく、必要最低限にして十分な言葉を相手に使うというのは何とも職人肌な描かれ方である。
ただ、ヤマト2ではさらばよりも果敢さが強調され、豪快で豪放なバルゼー総司令と対になる指揮官としての側面を強調され、それが作品の盛り上げに好材料となった。ヤマト2の艦隊決戦として最高の盛り上がりを土星決戦で演出できるだけの、有能な指揮官としての表現の積み重ねが成されたのは断言していいだろう。20話掛けて少しずつ描いた有能さが、土星決戦での拡散波動砲戦から砲撃戦への転向を決定できるだけの胆力を、確証バイアスを自ら脱せられるだけの指揮能力を発揮できる論理性を書き起こしたのである。
土方総司令(艦長)は指揮も優秀だが、そのキャラクター性もまた優秀でガトランティス戦役における盛り上がりを創出した武勲者。ヴィジュもカッコいいが、そのエピソードやセリフがまたカッコいいのである。
さらばにおいて、第11番惑星での敗戦から常に死に急いでいたがしかしてクルーを巻き添えにしようとは決してしない姿勢を堅持。最期は「生きて汚名を晒していた私もやっと……」と、それでも最期まで最期の後も指揮をすべく頭脳を働かせた。カッコいい以外の言葉を掛けようがない。そりゃ古代も土方前艦長の命令を決行するッ! と意気込むだろうし、元から勇敢な空間騎兵隊が益々決死隊に参加する動機になっただろう。
ヤマト2では艦隊司令として先を見据えて戦いをプロデュースしていった。特に土星決戦では火炎直撃砲を前に「これが敵の決め手か……」と、しかしこれを知略によって打ち破った。その後白色彗星に対しては立ち上がっての拡散波動砲発射を命じ、現れた都市帝国に対して果敢に戦闘を挑んだ。この古武士のような戦い方はしびれるというほかないだろう。
また、最期まで打ち破る術を探り「そうか……ヤマト、生きていたら聞いてくれ。彗星帝国を攻めるのは、あの下の部分だった。我々はあの都市に目を奪われ過ぎていた。ヤマト、ヤマト、我々は負けた。だがヤマト――」とヤマトが戦線に復帰すると信じて通信を飛ばした。その途切れ途切れの、何度も「生きて」とフレーズを繰り返す通信は様々な文章を想像させる。
劇中、唯一先を見通せなかったのが白色彗星迎撃であるが、しかしその先をヤマトに託した。平たく言って、泣けるね。
土方さんがいなければ、ガトランティス戦役を描いた二作品はただ、地球艦隊が壊滅したり、ヤマトクルーがたくさん死ぬだけの作品になってしまっていただろう。
確かにかなり人は死ぬ、しかしてそれが無駄とか打算とかの産物ではなく、ちゃんとした理由のある死を迎える。とにかく地球を守るというその目的の為に、無謀でも挑まねばならない。その挑む姿勢を登場するキャラクターの中で最も強く見せたのがこの男、土方竜。
この男の存在無くして、ガトランティス戦役は伝説になりえなかった。それほどの影響力のあるキャラクターと断言して構わないだろう。
諸将総括
極めて優秀な指揮官であるかは見方によるが、他方で意外かもしれないが無能な指揮官はいない。全員が一定レベル以上の能力を持った指揮官だった。
とはいえ――正直な所、土方さん以外はあまりしっかりした描かれ方はしていない。ストーリー上は必要ない事であるし、尺のとれないさらばにおいては無理のない事。
しかし、些細なセリフでもそれが存外に重いものである事も少なくはない。そう言った味付けによって、大きく性格を印象付けられたキャラクターが図らずもこの作品の厚みを増したのだといえる。
例えばアンドロメダ艦長、彼は地球のおごりとその裏付けの軍事力を見せつけた――存在が作品価値として非常にプラスになったキャラクターであろう。あるいは、タイタン基地に集まった諸将から出た疑問の声は地球艦隊が決して硬直した組織ではなく、地球を守る為に集結したプロフェッショナル集団であるという事を明確に印象付け、更に土方総司令の決断力や慧眼を強く視聴者に訴えかけた。
主人公の扱いに比べれば、彼等指揮官は土方さんを除けば皆モブキャラに近い。しかし、そのモブキャラのちょっとした行動が、作品にリアリティを持たせてくれるのだ。
彼らは作品中におけるガトランティス迎撃の根幹であると共に、作品の価値を高めてくれる対視聴者における極めて優秀な指揮官達であったといえよう。
大帝星ガトランティスの考察 敗戦後の予想
ガトランティスのその後は推測するのは簡単である。似たような体制の国家の末路や、ガトランティスの性質を考慮すれば、一つには絞れないだろうがいくつかの可能性は提案できる。
以前にも軽くは触れたが、これを深く考察してみたいと思う。
国家が消滅した際の末路は以下の4つに大別可能である。というより、これ以外の選択肢はあまりなく――あっても名目的なもので人民を伴ったものでは無い。
1:完全滅亡
2:継承国家成立+鼎立
3:流民化
4:他国による併合
色々な類例を出すことが可能であり、適宜示すのもいいが――非常に例が多くなってしまうため、今回は最初に類例を示してイメージを掴みやすくしようと思う。
類例(一部重複)
1:ジュンガル、羯族、西夏、四川人、カランカワ、タスマニア・アボリジニ、アント人
2:マケドニア帝国、ローマ帝国、東ローマ帝国、フランク帝国、漢帝国、モンゴル帝国、パルティア、ササン朝、月氏、オスマン帝国、ムガル帝国
3:殷、南宋、エフタル、クルド人、ロシア帝国、英委任統治領パレスチナ、アラカン王国(ミャウー朝)
4:チベット、テュルク、ポウハタン、アステカ、エチオピア、ソコト、モノモタパ、コンゴ、ズールー
その後の考察
1はまずありえない。だってアンドロメダ星雲を制覇しているのだから。さらばにおいても、ヤマト2においても白色彗星の後方ないし前方に兵站基地的な惑星を設けてここで資源を収奪している。ここで他勢力の侵入を排除する駐留艦隊が存在していて不思議はないし、これが各地にあれば、場合によっては連携を取って第二次彗星帝国のような物を作ったとしても不思議はない。
ガトランティスは確かに植民地経営をするという考え方がない可能性が非常に高い。他方で、基地を設置して運用するという事は当然考えている。ヤマト2において地球を侵略した理由は宇宙征服の拠点の一つとしてこしらえることも念頭に入っていたことが明確に語られている。
これらを考え合わせると、どうあがいても物理的に勢力は少しは残るのだ。
ジュンガル、羯族、四川人のようにある意味で悪意というか憎悪やむき出しの敵意を以て攻撃を受けた民族ならば絶滅の憂き目もあろう。が、広大な宇宙という事を鑑みても、たとえガトランティスが憎悪の対象となったとしても存在が完全に消えることはないのである。
ただ、再建は非常に難しいだろうからガトランティス単独のまとまった勢力としての未来は描きづらい。
4の場合、ガトランティス自身が強力な侵略国家である為この想定は難しい。
ガトランティスの地位を奪うのは同じガトランティスというのが相当だし、彼らを取り込むには戦闘を繰り広げなければならないがこれが難しい。もっと言えば、自給自足の概念に乏しいガトランティス単独であれば、他国の侵略を待たずとも消滅している可能性が高い。
地球に限って言えば、地球は彼らを取り込まないだろう。ガトランティスに多数の生き残りが太陽系にいるとは思えず、アンドロメダ星雲内の――ガトランティスの後衛を迎えに行く理由もないし、わざわざ地球が攻撃を仕掛ける理由というか体力がない。
ガトランティスの後衛が、アンドロメダ星雲に侵入してきた勢力と戦闘を行う可能性は十分あるし、これが敗北した結果併呑される可能性はある。
が、ガトランティスの戦術から考えて一か所にずっと留まるという可能性は低く、正面切って交戦したり併呑されるという可能性は非常に低いだろう。転戦してそのうちアンドロメダ星雲を脱出して……南宋のように艦隊自体を本拠地とした勢力を築く可能性の方が高い。
併呑されるより残存勢力が勝手に衰退していくというシナリオの方が自然。南宋人やクルド人っぽい事になりそう……。
3の想定は、4の想定と半分被る。何なら2とも被る。
ガトランティスの勢力が全て、拠点となりうる惑星から追い出された場合に、成立する可能性があるだろう。
少なくとも、太陽系に突入したガトランティス本隊の生き残りは確実に流民化する。先に述べた通り、地球は受け入れないだろう、受け入れたとしてもどこの国が責任を持つのか等々様々な問題に直面し、相当美男美女であるとか国家にとって有益な人材以外は全く持って所在がなくなる。
ガトランティス後衛が流民化する可能性としては、別の侵略国家の登場や国家間の戦闘によって敗北や荒廃で惑星を失った場合に限定される。
恐らく、この可能性は2と4の過程を過ぎた後のガトランティスの末路として想定が可能だろう。そりゃ、一部ははじめっから流民化しても不思議はないが。
3が一番可能性が高い。というか一番妥当。
当然太陽系内には残党が多少いても勢力は築けないだろう。となれば、主たる場所はアンドロメダ星雲に置いて行かれたガトランティスの後衛だ。
まず、したたかな現地勢力と、バランス感覚のあるガトランティスの現地司令が手を組めば周辺域を征服できる小さな帝国は建設可能だろう。これは地味に強力。イメージとしてはモン・カラマリの支援を取り付けた反乱同盟軍の立場(どう見たってガトランティスが銀河帝国のイメージではあるが)といったところか。
現地勢力が上から下まで結びつきが強ければ、反乱という内部の爆弾を抱えずに済む。人員の補充も確保可能だろうし、安全な物理的な拠点を確保出来ているというのはかなり好都合。
現地勢力が専制的であった場合はいつ反乱を起こされるかわからないため若干まずいが――最悪それを打倒して民衆の味方ぶれば、多少は立つ瀬もあるだろう。
ガトランティス人単独で勢力を形成するならば、現地の勢力というものは一掃したかほとんど微弱なものであるという前提が必要だろう。この場合、兵員の補充に結構キツイ問題を抱えることになる。今までのようなバカスカ攻撃をしまくって人員を無駄にしかねない戦い方は二度と出来ない。
現地勢力をガトランティス側がからめ捕りにかかる場合、現地を分断なりする必要が有る。あるいはゼロからガトランティスに染め上げる必要が有る。やって出来ない事はないが、手間がかかる上に計画的に行わなければならない。この手合いの政治であるとか教育はガトランティスの性質からして本国一任ないし、後衛の総司令官的立場の人間に任されるとするのが妥当だろう。権力の非分散。であるならば、総司令官が踏ん張ることが出来れば勢力の建設は難しくはない。
が、総司令官が本国敗北のあおりを受けて部下の信任を失うなどすれば一気に脆弱になってしまう。勢力を形成も難しくなる。戦闘のプロでも政治のプロではない人間がこの手合いの事業を推し進めるとなれば、簡単にはいかない。
一番妥当な想定だが、当たり前だがそう簡単に事が運ぶ可能性は非常に低い。いくらフィクションであっても。
他の可能性
他の可能性は当然考えねばならないだろう。人間は案外とんでもないモノに惹かれたりもするし、或いは転機の到来によりなにがしかの大志を抱くこともあろう。
つまり、反ガトランティスと親ガトランティスの発生という可能性だ。
なお、これは2202では無く、スターウォーズを見た後に思いついた話。どうでもいいけど私は割とキット・フィストー推し。プレデターとか……基本、ドレッドヘアー的な頭の宇宙人が好き。
A:反ガトランティス勢力の登場
B:親ガトランティス勢力の登場
反ガトランティスは非常にわかりやすい。現実の世界でもフィクションの世界でも戦争ものでは必ず現れるレジスタンス勢力だ。
白色彗星という強力な移動兵器が有るから大抵の国が首を垂れざるを得ない。が、これが遠くへと去った――反撃のチャンスである。ガトランティスのイデオロギーは、宇宙は全てガトランティスの者であるという非常に尊大なものである。
ガトランティスであれば、すべて自由だが、ガトランティスでなければ一切の自由がない。当然、反発を受けるだろう。これに喜んで統合される勢力があるとすれば、それは元々の支配勢力を余程嫌っていたというかなり極端な例や、終末を望む破滅主義な人間だけだろう。
だからと言って、そう簡単に立ち上がれるはずもない。
どう考えても銀河帝国より強力で破壊的な兵器=白色彗星を持っているのだから、反ガトランティス軍もそう自由に活動できないだろう。故に、他の勢力を引き込むと言うような工作も必要だろうし、あちこちに発生した同志を結び付ける必要だってある。これらがガトランティス本国滅亡の知らせを受けて、一気に攻勢に出る可能性も十分ある。うまく各個撃破出来れば、反乱軍にも十分勝ち目があるだろう。
親ガトランティスの登場もあり得なくはない。
身の程知らずにも自身を征服する側の人間だとして、ガトランティスに迎合する、その再来を熱望する勢力が多尿する可能性は決して少なくはない。税金を搾り取られる側のくせに、税金の無駄遣いを平気で容認して、それで国家への貢献だとか――マゾヒスティックな考えの人も、ネットには結構いるから想像はつくだろう。
この質の悪い集団が、周囲にガトランティスとほとんど関係ないにもかかわらず、同じような侵略戦争を吹っ掛ける事態は十分考え得る。この勢力がガトランティスの残存戦力に協力してくれれば、ガトランティスが再起は出来ない事はない。
しかし、この手合いのヤツは自分たちこそが本流だと確信していたりと色々扱いがヤバイ。本流の流儀を会得している可能性は確かにあるだろうが、それは前提条件付きであり……。反対に勘違いして「我らこそ正統」とガトランティス残存を攻撃してきかねない。ネオナチなんて、ナチスから嫌われていたが――何と彼らはナチスの高官の一部を非ナチス的などと言って批判していたりする。めんどくせぇ……。
反ないし親ガトランティス勢力の登場は恐らく、ガトランティス勢力が3の状態になった際に大きな役割を果たすだろう。宇宙からガトランティスの名が完全に消え去る保の一押しか、再建のための礎となるのか。これは不明。
結局ガトランティスは滅亡した。その後の登場もなかった。強力な本隊が消滅した以上、全ての勢力を統括するような指導者は現れないだろうし、それだけの力を取り戻せる可能性は低い。ガトランティスの敗北の理由の一つにガトランティスという勢力のガバナンスに問題があったのも、再建が難しくなる要素だ。加えて、オリオン腕に再び侵攻するだけの物理的な力もないだろう。
残存勢力は恐らくガミラス以上に困難に直面するだろう。なにせガトランティスは絶対的なイデオロギーを失ったのだ。再起は――やはり困難といわざるを得ない。その意味では、ガトランティスの名前が以降のヤマトシリーズに登場しない事も、彼らの主戦場がアンドロメダ星雲に移った為と説明可能になる。
主戦場が太陽系から外れれば、ヤマトシリーズに姿を現せないのも当然であるといえる。
地球防衛軍の人員・質への考察
あれだけ毎年地球に敵対勢力が侵攻してきてよく地球防衛軍が持つな。実際、恐ろしい回復力と評価できよう。この点を考察せずしてヤマトのご都合主義への合理的な説明が出来たとは言えないだろう。
現場指揮官の質
地球艦隊司令官の質は作品中、向上はしなかった。良くて維持、悪くすると緩やかな下降線を下る――
といっても、目立って登場した現場指揮官は沖田艦長、アンドロメダ艦長(さらばのみ登場)、土方総司令、ヒペリオン艦隊司令、山南艦長、第4期地球艦隊司令、水谷艦長の7人及び斉藤隊長。これらに加えて第一空母艦長、321ないし324磯風の艦長、603朝霜の艦長など非隊司令クラスの指揮官らが登場している。
そもそも登場した人数は多くはないんですよね。
世代を見てみると、沖田艦長、土方司令、山南艦長は多少期が前後するが事実上の同期として扱っても構わないだろう。水谷艦長もそう年齢が下には思えないヴィジュアルである為――山南艦長の一期か二期程度下の世代と推測可能だろう。さすがに少し時代が下がる為、水谷艦長は沖田艦長の後輩世代と言えるかもしれない。
沖田さんより上の世代は恐らく、7年かかったガミラス戦役に多数が戦死してしまったとして不思議はない。無論、生き残った戦士もそれなりの数いただろうし、そのうち幾人かは軍の最高幹部にはなっただろう。タイタンで土方総司令の作戦に対して疑義を呈した幾人かの指揮官は同世代か兵学校で一つ二つ上の卒業生とみても矛盾は無かろう。
このなけなしのベテランをほぼ全て失ったのがガトランティス戦役……。これは痛すぎる、短期的には防衛軍の質が上がるどころか下がって当然だ。
宇宙戦士訓練学校の人事
山南艦長は、もとは宇宙戦士訓練学校の校長。恐らく……宇宙戦士訓練学校の教官などを務めただろう沖田艦長が前線に出る一方で、土方さんが校長(ヤマト2の場合)として後方に下がり、その土方さんが前線に出たため山南艦長が校長職に就いたという時系列になるだろう。
兵学校の校長の入れ替わりは割とよくある事で、必要な人材だと判断されれば前線指揮官として転出するのは帝国海軍でよく見られたし、現在でも様々な国の軍学校校長が最高司令官格の役職に転出する事が度々ある。
沖田艦長が校長であったかは不明だが、最後の艦隊を率いかつ病魔に侵されていた事を考えると最初は前線に出ても途中で後ろに下げられ、いい加減まで後方にいたと考えていいだろう。だが、予備役に入れるのはもったいない。沖田艦長の胆力や寄せ集めに近い部隊をまとめ上げる能力は期待に値する。宇宙戦士訓練学校に携わらせて戦力を育ててもらう必要がある。艦隊司令を務める有力指揮官としても、校長でなくとも教官ぐらいは勤めて当然。まだほかに戦えそうな人間がいるにもかかわらず、死にそうな人間を優先して前線に出す理由は薄い。戦争が最悪な状況を迎える前であれば沖田艦長のお出ましを願うよりも治療と後輩育成に努めてもらった方がずっと合理的で論理的。
で、実際にピンチになった為沖田艦長のお出ましを願った。
その際に下げられたのが土方総司令とするのがストーリー展開上も人材の配置的にも妥当なのではないだろうか。土方総司令ならば前線で活躍をしてくれることは間違いないが、死なれて後輩教育に支障がきたす方がマズイ。ルーデルと同じである。
実戦系の教育で何より大事なのが時代のニーズに合った人物の創出。今行われている戦闘、その前線で得られた今生きた戦訓を以て新世代を育成する必要性が当時の地球には間違いなく沿ないしていただろう。より攻撃的な次世代の軍人を求めるならば、きっとかなりエグイ戦闘を展開したであろう土方総司令が宇宙戦士訓練学校で教鞭をとるなりしてくれた方が、大局を見れば妥当な判断となる。また、沖田艦長と土方艦長はどの作品でもそれなりに親交があった事を思わせる為、代わりの人事としては教育の方向性がある程度保てるため適任だろう。
その直撃世代が古代進だった。そうやって古代進に土方イズムが注入され、司令部の命令も正しいと思ったことを前にすると軽く無視する世代が出来上がった――出来上がってしまった。土方総司令が訓練学校でどんな職に就いていたかは、想定に幅合っても問題ないだろう。古代の居た時期には教官だったが、火星で特別訓練を受けるタイミングで校長になった。あるいは古代とは一年程度しか付き合いがなかったが、あまりのキャラの濃さによく覚えていただけという話でも整合性は取れるだろう。
ただ、数年でガミラス戦役はヤマトの活躍によって終焉。この攻撃的な戦士を産む体制は役目を終える。土方竜という男の性格を鑑みれば――新設されたか、刷新されたかは不明だが自己保身的な防衛会議にとっては彼は危険分子以外の何物でもない。絶対に排除せねばなるまい……そこで、白羽の矢が立ったのが山南艦長。人当たりの良さそうというか、無能な人間から見れば無能に見える山南さんに宇宙戦士訓練学校の校長職が舞い込んでも不思議はないだろう。無能な防衛会議ならば、彼が自分たちと同じ無能に見えても不思議はない。
代わりに土方総司令をおくりだした。これにより背後で何ぞ画策されることはなくなり、反対に土方総司令は正面切ってシビリアンコントロールの洗礼を浴びることになる。人事権者であろう防衛会議の期待とは異なり、あんまり洗礼を浴びなかったが。
そうやって新補された山南艦長もとい校長だが、実際には彼はかなり確固たる自己と自信を有する。その裏付けがあって部下に対する信頼や指導者としての振る舞いが出来る人物なのだ。防衛会議が望むような冷たい機械人間を量産するような体制は山南艦長の居る限り成立し得ないのである。挙句、山南校長は長官の密命を帯びてヤマトを預かすとう任務まで遂行しているのだから事実上防衛会議の目論見は木っ端みじんとなった。
しかし、そんな山南校長も地球を救うため、自ら育てたクルーや先輩たちが育てた旧クルーと共に往復80万光年の旅路に就いた。絶対に勝たねばならない作戦、長官がヤマトと真田技師長を預けるほど全幅の信頼を置いた山南校長もとい艦長。だが彼も地球を救う戦いの中で倒れた。
あの時点では最上級の指揮官だっただろう、指導者でもあっただろう。いうなれば山南艦長はあの時点ではヤマト以上に地球にとって虎の子と言ってもよかったかもしれない。そしてこの虎の子を永遠に失った。
多分この挽回は短期的には難しいだろうし事実、完結編では微妙な結果をもたらした。指揮官は無能ではないが、しかして詰めが甘い。艦長たちもめぼしい者がいるには居るが、しかし技術や理論が不十分。完結編での艦隊も全滅し、人員的な大損害を創出してしまった。物理的に人員確保が困難になった以上、より人員の質の確保は困難になったと言えよう。
ただ、希望はあるだろう。沖田艦長や土方総司令、山南艦長らが立てた教育のプロットを慎重に実現していけばいい。理論が間違っていなければ、何より何が大切で何が大切でないかを見定める方針が間違っていなければ、時間をかけて戦士を訓練すればが解決してくれる。
復活編を見る限り、不十分だったようだけどね。
現場指揮官の確保困難
ガトランティス戦役で名将から凡将までをまんべんなく失った。せっかく育てた航空戦力も一気に失う。中にはガミラス戦役の生き残りもいただろう。
ウラリア戦役では重要だから下がったのか、或いは指揮能力に不安があったから前線に出なかったのか。いづれにせよ指揮官を重ねて失った。基地にまで損害が出た。最悪だったのは山南艦長の戦死。全体的に満足感の下がった中での名将から凡将まで、しかも今回は艦隊と空間騎兵の指揮官をまんべんなく失った。
この状況では、セオリー通りの攻撃しか行わない艦隊司令が生まれても不思議はない。しかも、新戦艦はヤマトに近い武装と言う以外は特にこれと言って特徴のない戦闘艦で、相手は艦隊戦を挑んできたのだ。波動砲攻撃を優先させたのも無理はない。相手が大型戦艦で固めてきた以上、取っ散らかった武装の巡洋艦や駆逐艦では無く戦艦で固めるというのもわからなくもない。
取っ散らかった武装の駆逐艦ではヤマトを効果的に掩護することは難しかっただろう。しかも寄せ集めの可能性が高く、水雷戦隊としてまとまり切れず指揮を効果的に出来なかった可能性は十分ある。
残念と言わざるを得ない艦隊を、十分と断言できない能力の指揮官に任せればそりゃ、勝てない可能性の方が高くなる。
誰それが居なくなったから艦隊が弱くなった。これはあまり類例のある事ではないし、地球艦隊の場合――名将の損失も度々あったが、それよりも総合的な人的損失の巨大さゆえの面がかなり大きいといえよう。
が、この名将の不在に地球艦隊の弱さを求めることも可能といえば可能だ。
オランダの誇る闘将ミヒール・デ・ロイテルは祖国のために死力を尽くして英仏の二大大国の艦隊に対して果敢に立ち向かい勝利を挙げた。しかしその死後、オランダ海軍は決定的に劣勢に追い込まれてしまう。
オーストリアの誇る勇将ヴィルヘルム・フォン・テゲトフは海軍の育て方の妙を知っていたが、彼の死去後そのメソッドを失ったオーストリア海軍は何十年分も後ろ向きに進んでしまう。
ロシアの猛将ステパン・マカロフはその熱意によって不十分な状態の太平洋艦隊の能力を引き揚げ、日本海軍にとって十分すぎる脅威へとまとめ上げた。さらに積極攻勢の構えも見せて、徹底的に日本艦隊とにらみ合う。しかし、その突然の死は艦隊の士気を思いっきり低下させることに繋がり、積極攻勢を微塵も取らなくなってしまう。
フィクションの世界であればアクバー提督。彼亡き後のレジスタンス軍が一体どうやって、やたら目ったら強いファースト・オーダーと戦うのだろうか。あげくホルド提督まで失い、それで戦術的勝利のみ……。彼等が居ても大分劣勢だったのにね。
地球艦隊も名将と言われる存在を度々失い、普通の指揮官すら多数失った地球艦隊に、戦略的に敵より優位を確保できる人間は――ほとんどいなかったのだろう。であるならば見方は純粋な火力勝負となり、敵は少し頭を使うだけで十分勝てたのかもしれない。
人員の変遷
第二期地球艦隊の人員確保は大して難しくなかっただろう。突撃駆逐艦の人員が50名程度、司令船が100名程度と仮定した場合。撃沈されたとしても数名は生存が見込めるだろう。大破したとしても十数名は生存しているとみても問題ないはず。
火星圏がガミラスの手に落ちたとしても、ヤマトがそれなりに航行可能かつ土星圏まで割合普通に航行できたことを考えると――ガミラス艦隊の数はさほど多くないことや地球艦隊が無理なりに善戦した事が想定可能だろう。
2000年代以降の現代海軍において、超大国は大体1000隻前後で人員も200万人前後。航空戦力も3000前後が目安になる。
この数字は中身のあるものかと言われれば正直微妙でアメリカが11の空母を保有し中国が4・5隻保有を目指す。強襲揚陸艦はアメリカが10ほど、フランスは3に加えて中国やイタリアが2隻ほど。これらに準ずる大型艦を日本は4、ブラジルなど複数国が1ないし2隻以上を保有している。
300メートル前後の大型艦は全世界を対象にすると、恐らく40ほどか。人員はアメリカのずば抜けたそれを含めて2万6000、英仏伊などが合わせて8000、これにほぼ同数の航空要員――合計6万8000人。揚陸艦は全部あわせて1万人ぐらいだろうか。
170から130メートル以上の中型艦を考えると日本は8、スペインやイギリスなどは約5、えげつないアメリカは20と案外世界中多数存在する。まともな海軍を持っている国は案外この手合いのを型式は別にすれば数として5以下は保有している。これを考えると全世界に100隻は下らないだろう。どの艦も大体300人ほどが人員であろうから、3万人は下らない。
現在の地球上にある海上戦力を運航するには、航空要員も含めると人数としては10万人は最低ラインとして設定可能だ。これを地球防衛艦隊に落とし込んでいく。
幸いな事にヤマト世界における戦闘艦はかなり省力化が進み、ヤマトのような巨大戦艦でも100強で運行が可能となっている。どう多く見積もっても艦の規模や任務からして先に述べたように突撃駆逐艦の人員が50名程度、司令船が100名程度と仮定可能だし、これよりも少ない人数でも運航自体は可能だろう。
第一期の場合、全般として艦艇が一回り小さく、沖田艦も200メートル前後、突撃駆逐艦は設定では70メートル以下で再設定しても140メートルを上回らないだろう。
これを考えると数的には第二期のそれを何割か上回る数を確保出来るだろう。また、第一期においては人員の面では現代艦艇の1/10から1/100ほどを当然見込めるため、現代海軍と同じ数の人員を確保出来るならば艦艇は10倍を確保可能になる。
第二期地球艦隊と現代の大型から中型の戦闘艦艇の数が近接していることを考えると、地球型の文明や人口では物理的に整備し得るのが大型艦が多くて50、中型が多くて120程度と推測できるだろう。戦艦が90名、巡洋艦が50名、駆逐艦が30名程度と予測すると1万人強。その他艦艇も合わせても1万1000人前後と推測できる。
地球史上最大の戦力、第二期地球艦隊の運航に必要な計算上の総人員が、実際の軍艦の運航に必要な総人数の約1/10程度に収まる事を考えると航空要員も含めても人数としては――地球防衛艦隊を運航するには人員1万人程度を最低ラインとすれば十分だろう。つまり十分要員は予備役含めて3万人程。
これらに加えて、支援艦艇や事務(地上勤務の司令部要員)などを含めた場合、10万から20万人を確保できれば地球防衛艦隊は機能可能と思われる。ただし、当時の地球の人口が不明であるから――これがどの程度の規模といえるのか評価は不能。
艦隊人員変遷の予想は次の通り――
第一期 主力・支援艦隊人員合計約3万。志願増加を鑑みて主力艦隊人員4万から5万ほどが最大。支援艦隊は2万前後で推移。戦死を6割前後として残存は2万。負傷兵は予備兵へ。事務3万。
第二期 主力艦隊人員約2万+新規数千。支援艦隊は予備役ないし新規約を回して1万に圧迫。結果ほぼ全喪失、残存は負傷兵1万程度か。事務3万、幾らか被害。
第三期 名目上ゼロ。実際は新規教練中2万人+治療中の予備兵1万。事務3万、多少の被害。
第四期 主力艦隊人員/約2万人+先の戦役での喪失分補充(新規・予備兵)1万。支援艦隊人員/新規1万+復帰予備兵数千。ほぼ全喪失。事務3万。
なお、事務職員の人数は、日本最大の官庁たる厚労省を前提に3万とした。これだけの規模があれば、完璧とは言わないまでも効率化を推し進めれば恐らく、太陽系全域の保安任務の事務を担える――はず。
存外に第二期地球艦隊の建設は簡単かもしれない。第四期も第三期に人員がほとんど前線に繰り出されなかったからこそ、あの安定した建設が可能だったかもしれない。第二期と無人艦隊の失敗を念頭において原点回帰=人間が運航のイニシアチブを握る艦艇へと戻したのかもしれない。この場合は第四期は航空戦力を除いても人員定数で第二期を抜くだろう。
が、ディンギル戦役後には恐らく――ほとんどの戦力が失われていただろう。地表の宇宙港まで攻撃を受けたのは痛かった。これで事務職や技術職まで相当数被害が出た可能性が高い。
仮にこの状態で翌年、敵が来襲した場合は恐らく……かき集めて艦隊戦力1万人で迎え撃たなければならなくなるだろう。ヤマトもいない。
そうなった場合、完全に詰みだった。
陸戦兵の人員変遷
要塞の人員は平時は1000名強が普通だろう。エバン・エマールのような、まあまあな規模という前提で。いや、少ないか……。
街規模であれば、戦時であればどこも大体3万は投入する。ガリポリでもオデッサでも――後者は12万にまで最終的に戦力が投入されたが。ディエンビエンフーの戦いではフランス側は1万3000程度であるが、それでもマジノ線みたいなのに頼りたくなるほど人口減のきつかったフランスの戦力から考えれば結構大量といえよう。
マジノ線レベルになると、小要塞が100から200人、基幹要塞になると500から1000人を擁し、これらの要塞が108個15キロに及んで並ぶ。最低でも2万人ほどがはりつき、10万人ほどを戦力として投入可能な防護用巨大要塞である。
これらの数値を想定の前提とする。
惑星一つに1要塞というわけはないだろう。複数個が展開していて当然。
拠点となる要塞が3つか4つ、その援護用要塞が10。これを駐屯地の広さに合わせて全球状に5以上は設けたいだろう。ぶっ放す砲長、旋回担当砲手、仰俯担当砲手、装填担当調整担当砲手、プラス補助。これらが砲には絶対必要で、大型であればあるほど補助が必要だったりする。別に海軍でも陸軍でもそう大差はない。
ヤマト世界の場合は省力化が極めて進んでいるため、装填はほぼ確実に自動。照準や旋回に角度調整も補助が付いているだろう――これらの状況を鑑みると要塞砲も一門に何人もへばりつく必要はないはず。第11番惑星派遣隊のように1基につき一人が張り付いて攻撃を行ったが、別に防衛システムが完全に機能していればヤマトのパルスレーザー砲群のように自動的に砲撃だって可能だろう。たとえ、相当数の砲を擁する要塞であったとしても、それだけの人員が必要とは限らない。
地球本土、月面、火星、木星圏、土星圏、天王星、海王星、冥王星、第11番惑星。それぞれに基地を設けたとして、全球状に15ほど要塞コンプレックスを設けよう。一つの要塞コンプレックスを15キロ圏内を縄張りにさせ、周囲100キロ圏内を担当させれば全球をくまなく防衛することは不可能だが、それでも半分強はカバーできるだろう。
第二期の時点で基地戦力は平時には200人程度で一個を運用してもらうとして全球で2000人程度を基準とすると――冥王星と第11番惑星はそれぞれ2000人強。月面、火星は倍の5000人で天王星、海王星及び木星圏、土星圏は散らばる衛星に駐留させることとなる為平均して1惑星に3個衛星基地で6000人。本土に1万人で合計すると4万8000人程。ここに航空要員を上乗せすると一気に倍の総数8万から最大10万は配備人員として見込まれるか。
惑星基地要員の変遷予想は以下の通り――
第一期 元来8万、最盛期10万から12万を推定。基地は順次放棄して撤退すれば損害は抑えられるため戦死は意外と少ないと考えられる。損失は3万弱ほどか。事務は各惑星5000人、総数4万。
第二期 ガミラス戦役残存5万+予備ないし新規5万前後。内、航空戦力は4万前後。さらばでは火星基地等、大損害。ヤマト2では航空要員ほぼ全喪失、複数基地に損害。損失は6万から7万。事務総数4万、損失多数。
第三期 ガトランティス戦役残存3万+本土戦力より抽出6万+新規・予備3万。損失1万から最大8万人。最悪の場合、ほぼ壊滅。事務総数4万、相当数損害。
第四期 残存戦力約3万人+本土戦力より抽出航空要員2万の陸戦転用+艦隊より抽出1万から2万、加えて新規2万。事務総数2万5000。損害多数、数万を見込む。
基地の事務要員数はそこそこの規模の県庁の行政部門職員を前提に算出。また、地球本土には歩兵・機甲師団・航空戦力合わせて40万+事務職15万人をみこむ。事務職はアメリカ国防総省の文官と武官の割合を参考にした。
ガミラス戦役もガトランティス戦役もかなり痛いが、建て直しが不可能というほどではなかったはず。特にガミラス戦役は大した問題はなかったはずだ。
地球本土戦力を中々、惑星基地に送れないが――それは惑星基地側のキャパシティの問題であり地球本土を多少手薄にしても本来は数万単位で惑星基地に送り込むのが本来取るべき手段だろう。
地球防衛軍の陸上戦力にとって最大の危機は……多分、戦力を補完するために圏内に配置した部隊が一年とたたずに暗黒星団帝国にやられたあの時だろう。あれはガミラス戦役やガトランティス戦役とは異なり陸上戦力が戦いの中心であり、奇襲を受けて大損害を負ってしまった。あれは非常に痛い。痛すぎる。まさか本当に全滅したという可能性はないだろうが――相当数の被害が考えられるだろう。
大局的に見れば、ディンギル戦役では惑星基地への攻撃は破滅的なモノでは無かったであろうから、それなりに戦力を温存可能だったはず。まだ、建て直しは可能だろう……が、そうはいっても連戦に耐えられるだけの体力はなかったはず。
地球の人口は推測できる要素がない。世界人口が2200年前後でどの程度になるだろうか――10年ごとに約10パー増加であれば、2100年に100億を突破し2200年前後には170億人に到達する計算になる。80億人が限界だろうという推測もあるし、何なら先進国病である超低出生率が世界に及んで2200年には現在の人口である75億人強の半分にまで落ち込むという推測もある。
仮にガミラス戦役時の人口が150億人で、これが地球と火星に分かれて居住するとする。前者が80億人、後者が60億人、スペースコロニーに10億人。仮に80億人であれば、本土60億人、火星に20億人ほど、スペースコロニーに3億人ほどと勘定できるか。
火星にこれだけのキャパシティがあるかは疑問だが――7年ほどの時間をかけてのガミラス戦によって環境が再び急速に再火星化してしまった為、あのような状態になってしまった。とこじつけはできる。
現在、世界中には10を超える2千から3千万の人口を抱える都市圏が存在する。市域に限定してもほぼ同規模の市が10は存在する。一回り規模の小さい市や都市圏はこの倍以上存在する。これらを遊星爆弾で狙い撃ちされた場合、いっぺんに3千万人が消滅しかねない。少なくとも居住域が失われる。40発の遊星爆弾が巨大都市それぞれに直撃した場合、最大で5億の喪失は覚悟しなければならない。
仮に人口が現在よりも多ければ、それだけ目標が多くなるか一発当たりのダメージが大きくなるかのいずれか。最悪、10億人が一瞬で消える可能性もある。人口増だけでは無く、サスティナブルな生活の為に先進国が人口を集中させて過疎地を切り捨てて結果的に的を巨大にしてしまうというシナリオもあり得る。
残りの地球人はアフリカや中央ユーラシアあるいは島嶼部の各国が主力となるだろうが、残念ながら失礼ながらいわゆる先進国と同等の学習環境や経済環境にあるかといえばかなり疑問。即戦力化は先進国の人間を訓練するよりも若干困難になることが予想可能だ。
火星の人類に至っては全員見捨てなければならなくなるだろう。地球に何十億もプラスして養えるキャパシティがあるかは不明であるし、まして遊星爆弾の被害が出ている状態ではなおの事見込めない。
恐らく地球80億人で戦わなければならないだろう。遊星爆弾の第一波被害が出た途端に70億、地下都市への退避が遅れればそれだけ被害は大きくなり第二波では60億を割り込む。60億にまで落ち込んでも、地下都市の建設が速やかかつ、大規模に行われなければ60億の人間をかくまえない。そうこうしているうちに第三波の攻撃まで受けてしまえば50億、続く第四波では40億まで平気で低下するだろう。
元が60億人であった場合、第三波の直撃後には30億ぐらいに減ってしまう。第四波の直撃を受けてしまえばWWⅡ前後の人口にまで減ってしまう。仮に地球を先に攻撃された場合、なおの事火星の居住者は切り捨てるという事になってしまうだろう。無論、決死の脱出作戦は行われるだろうが、よくて数千万程度しか脱出できないだろう。
ガトランティス戦役において、特にヤマト2では地球への直接攻撃が行われた。やたら目ったらにぶっ放したおかげでそんなにヤバい被害はない――かもしれないが、いきなりの砲撃に近く、結構地面を抉っているため、数億人が被害に遭っても不思議はない。万が一都市部に直撃していれば、一発で数百万人は消滅する。
特に、移動できないお年寄りを中心として大被害が出ているだろう。
人口と軍事力の対比から言えば、10億人に落ち込んだとしても、100万人だって依然として確保可能だ。数としては。
だが、艦隊戦力3万人+基地要員10万人を訓練するには3カ月から半年の年月と数万人の熟達した軍人が必要である。これを支援する人員もまた必要である。彼らが働くために、専門的な技術者も数万人確保する必要が有る。これら背後の人員の訓練も必要である。結局、十数万人の人員を確実に戦力にするのにその3倍近い、背後の人員を確保しておく必要が有る。実はこれが結構厳しい……。
地球防衛軍の人員と、その供給源の関係は――想定としては、日本の人口と自衛隊の人員の比率に近いかもしれない。それって結構苦しいぞ……。綱渡りで、しかも教育部分や財政部分がかなり先行き不透明。
地球連邦の場合、徴兵制があれば――あるいは、うまく政府がプロパガンダを打てれば志願兵を確保出来るだろう。人員確保としては地球の総人口が10億人を下回らない限りにおいては十分継続して、それなりに安心して数を確保可能。ただし、教育をどう行うかが戦力化のネックになるし、何度も負けている点から財政が拡大どころか縮小されかねない。いい加減、勝たにゃならん。
忘れていたが、地球そもそもの人口の内容がどれだけ充実できるかは考える必要が有る。
ガミラス戦役では初めに年齢的中間層が、次いで若者が前線に立たされた。若者が前線に駆り出されるのは、年齢的中間層が消滅したが、勝てる見込みがないのに結構手をかけて作り上げた戦力を無駄にしないため――非道だが、リスクヘッジという点では理解できる。
次いでガトランティス戦役。地球防衛軍が最も充実していた期間だが――この時においてガミラス戦の生き残りがごっそり持っていかれた。新規編入の幾らかの若者と、移動できない多数のお年寄りが被害に遭った。ガトランティス戦役では社会保障的には割と楽になったかもしれないが……連続二回の戦争で結婚適齢期の人員が多数戦死したのは痛い。
この総力戦おかげで、あと一歩で年金にお世話になる世代(ギリギリ戦地に投入されなかった世代)と、これから進学するか社会に出るかを決める世代(戦地に向かった若者の弟世代)と赤子しかいなくなってしまった。これはかなりヤバいくらい、いびつな人口構成比だ。まるでナポレオン戦争後や世界大戦後のフランスのよう。
ウラリア戦役では本土防衛で生き残った人員に加えて、四十肩五十肩に苦しむ諸兄が駆り出されたに違いない。まさか赤子や中学生を学徒動員できるはずもない故。だったら、上空から奇襲を仕掛けて来た降下兵に気が付かなかったのも仕方がないかもしれない――マインド的に無茶な首や肩の動きはしたくないのだから。そして、地球はこの戦役で更に大損害。地味に民間人にも被害多数。
ディンギル戦役時点では地球の人口構成比はほとんどボロボロだっただろう。歴戦の勇士は最早年齢関係なく貴重すぎる戦力だし、若くても活きが良ければ採用、年齢が行っていても技術に対応できるならば投入……奉天付近の日本軍やベルリン包囲を受けたドイツ軍に近い状況だろう。挙句これも結構な数を失う。
全体として、たとえ地球防衛軍を数の上で維持可能な人口を地球が擁していたとして、その人口比はボロボロである為――地球防衛軍の質を維持できていたかは大いに疑問。むしろできなかったとするのがだろうではないだろうか。つまり、もし、あと1勢力でも地球に侵攻していた場合は――地球連邦は木っ端みじんになっていただろう。
少なくとも、完全に波動砲頼りの、極めて頭の悪い戦術を取らざるを得なかったはず。しかもリスクも大きい戦術。
地球防衛軍は恐らく、人員の数は案外容易に確保できるだろう。ディンギル戦役においては苦しくなるが、ぎりぎりのラインで確保可能と予想できる。
ところが、その質に関して言えば戦争を重ねれば重ねるほど、低下して行ってしまう。特に事実上の敗戦を重ねていっているのも痛い。指揮官の質も、主要幹部が次々と戦死したという事も考え合わせると、これも質の低下につながる。地球防衛軍は恐らくガトランティス戦役を前後してその質が決定的に変化し、一部を除いて低下傾向になったと説明できるだろう。
ボロボロな戦闘しかできなかったというのも無理からぬことかもしれない。ご都合主義というより自然な流れ、と説明可能だ。
戦争は勝ったか負けたかも重要だが、勝ち方や負け方も重要であるといえよう。真面目な話。